一期一会 ~万年筆店店主のブログ~

哲学、想いを発信している、Pen and message.店主吉宗史博のブログです。

今年一年を振り返って

2007-12-31 | 仕事の考え
今年一年を振り返ってみたいと思います。少し長いですが、お付き合いください。
今年ほど長く感じた年はありませんでした。
1月から5月は今後どんなふうにしていくか、どんな店を作るかといった構想段階で、何をしていいのか分からない手探りの状態でした。
いろんな人の話を聞いて、独立するということがどんなことなのか知りたいと思いましたし、活動の精度を上げたいと思っていました。
この時期から夏頃まで、元やり手のビジネスマンのS氏とよく話しました。
S氏は非常に多くのお金を動かし、たくさんの利益を得ることができたいわゆる勝ち組のビジネスマンでしたが、今ではそういったことから一切手を引いて、鞄の修理の仕事をマイペースでしています。
S氏と話していると、とても勇気付けられ、励まされました。ビジネスの最前線で働いてきた人に備わっている冷たいところが全くなく、私がやろうとしているあまり効率的ではないと思える仕事に大いに共感してくれました。
S氏のベンツに乗って、いろんなところで打ち合わせを持ちましたが、どの話し合いでも刺激を受け、自分の中でモヤモヤしていたことがクリアになっていくのが分かりました。
会社を退職して、準備段階に入った時が精神的には一番きつかったように思います。
決まっていく場所もなく、収入もなく、オープンと決めた日は迫ってくる。なかなか決まらない全てのことに焦っていました。
この時には、万年筆用ノートを先日完成させた大和出版印刷にお邪魔していて、熱く、誠実な人たちの作り出す雰囲気に大いに救われました。特に武部社長と川崎さんには感謝しています。
気の迷いからか、少しでも人通りの多い場所がいいと思って選んでいた商店街の中の物件が、8月に駄目になった時に全て吹っ切れたと今になって思います。
今の場所で開店することを決めてから、いろんなことが動き出しました。
この時には、取引したいと思っていたメーカー、問屋の方々の承諾が全て揃っていて、そのことにも感謝しています。
どんな店にしたいかという、言葉によるイメージはありましたが、具体的な絵が描けていませんでした。
でも、自分の好みに忠実になってもいいというスタッフたちの助言があり、具体的なものが出来上がっていきましたが、実際に本当に出来上がったのは、家具を置いて配置を決めたときで、オープンが迫った数日間は思い出したくないほどバタバタしていて、前日もスタッフともに最終の電車で何とか帰りました。
オープンの日は本当に晴れやかな日でした。
たくさんの花が送り届けられ、たくさんのお客様が来てくれました。
趣味の文具箱vol.8に記事を書かしていただいた効果も大きく、それを見て来てくれた方も多くいました。
オープンしてから、頭の痛いことはいくつもありましたが、何をしていいのか分からなかったオープン前のことを考えると苦労でも何でもなく、あっという間に年末を迎えてしまいました。
ここまで自分一人でできるはずもなく、多くの人に助けてもらったのは言うまでもありません。
独立するということは、一人で仕事をしていくと考えがちですが、会社にいた時よりも多くの人に助けられ、協力してもらっていくのだと思いました。
今回の独立の件で最もお世話になったのは、ル・ボナーの松本さんでした。
ル松本さんはその人脈の多くの人を紹介してくれたり、商品を供給してくれたり、商売の秘訣を教えてくれたりしました。影響力の大きなブログに紹介していただいたことも助かりました。
すごくお世話になっているにも関わらず、そんな所を少しも見せず、すごく自然にさりげなく手助けしてくれることにとても感謝しています。
私も松本さんのようにさりげなく人を助けられる人間になりたいと思いました。
松本さんご夫妻とは2006年夏頃から、古山さんの紹介で知り合っていて、私が独立を目指したのは松本さんの影響もあるのかもしれません。

万年筆を一人でも多くの人に使ってもらうために、自分の一生を賭けた仕事をしていきたいと思い、その場所を作ろうとした一年でした。
そして、皆さんのおかげで出来上がったのは、万年筆という物だけではなく、精神的なものも共有することができる今までに見たことのない店になりました。
この店に関わってくださった全ての人に感謝の気持ちを持っています。
今年一年を少し振り返ってみましたが、これからは前だけを見て進んでいきたいと思っています。
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最終営業日

2007-12-30 | 仕事の考え
開店初年度の営業最終日は15時すぎ頃から、とてもたくさんのお客様が入れ替わり来られ、賑やかな1日でした。
店をオープンさせる前は、準備段階で数々のつまづきや不安があり、何でこんなことをしようとしたのか自問して、眠れなかった夜もありましたが、オープンしてからは毎日が特別な日で、店を作って本当によかったと思っています。
数は多くないけれど取引先の方々との厚い絆があり、旧知のお客様は励まし、心配してくれて、新しいたくさんのお客様に出会うことができました。
商店街やショッピングセンターの中でもなく、人の流れから離れた所ですが、お客様はこの場所を愛して、自分の場所だと思って、寛いでいただいています。
初対面の人同士が、お客様、取引先の区別なく語らっていることも毎日です。
始めから意図して作ったわけではなく、ここに来てくださっている人全てが、この店の優しい雰囲気を作ってくれています。
私もスタッフKもこんなにまっすぐに成長しようとしている店の中にいて、正直驚き、こうやって2007年を終わらせることができたことに、半信半疑で店を閉めました。
毎日がドラマのようなシーンが展開されるこの店で、2008年もまたいくつものストーリーに立ち会いたいとおもっています。
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大和出版印刷の万年筆用ノート入荷

2007-12-28 | 仕事の考え
先日からNHKの放映、新聞記事、ル・ボナーの松本さんや私のブログでの告知により、話題になっていた、大和出版印刷のノートが入荷しました。朝早く、私がまだ掃除をしている店に川崎さんがダンボールを抱えて入って来ました。前日に完成していましたので、完成の喜びは静まっている様子でしたが、発送作業がてんてこまいだと嬉しそうに話される言葉に、充実した様子を感じました。出来たばかりの万年筆用ノートを手にしてみて、松本さんが持ち込んだ企画を取りまとめて完成させた担当の川崎さんを始めとする大和出版印刷の人たちなど、関わった仕事の美しさを意気に感じました。罫線を手間のかかる活版印刷機で静かに刷った印刷工の方、息をのむほど美しい装丁をした製本所の方などの形に残った仕事はもちろん、関わった人たちの美学に溢れたものだと思いました。その直後に訪ねてきてくれた松本さんとも話しましたが、ただ書きやすいノートは数百円も出せば買えるけれど、書きたくなるノートはそうはないだろうと話しました。松本さんがブログで言っているように(http://www.kabanya.net/weblog/)、お金だけではない価値のある物がノートの形をしてそこにあると思いました。 川崎さんが試し書きの紙を用意してくれましたので、ル・ボナーさんでも当店でもノートの書き心地を試していただくことができますので、ぜひ試しに来て下さい。そして、ノートを手にとって、自分なら何を書くか、ぜひイメージしてみてください。
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切り抜き

2007-12-26 | 万年筆
定休日でしたので自宅の机まわりの大掃除をしました。
仕事環境に変化のあった今年は特に片付けないといけないものが多く、いっぱいのゴミ袋がいくつもできていきました。
以前の企画の資料(没になった企画が山ほどありますので)、メモ、イラスト、ファイルなど、いつか役立つ日が来ると思って、机の引き出しや本棚にしまっておいて、二度と目を通すことのなかったものがたくさんありました。
6年前に一度引越しをしていて、その時にきれいにしたはずでしたが、後の6年でたまったゴミでした。
そんなゴミの中に雑誌の切り抜きが詰まった厚いファイルがありました。
いつもきまって購読していた雑誌で、世界で何が起こりかけているのか、どんな動きがあるのかを教えられました。
そんな中で、特に気に入った記事を切り抜いて取っておいたものでした。
大きな仕事をしている人たちのクリエイティブな思考の源であるワークスペース、道具などについて集められたものが少しずつ変わっていき、デザイン中心のコレクションになっていきました。
それらは私の血になって、本人の思いもしないところで、いろんな形で現れてくれることがあります。
紙の資料は全て捨ててしまいましたが、切抜きのファイルだけは元の場所に戻しました。
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渋い! ~プラチナ屋久杉デスクペン~

2007-12-25 | お店からのお知らせ
クリスマスに渋い万年筆をご紹介します。
プラチナから発売された屋久杉のデスクペンです。
キャップをつけなくても、キャップをつけたような長さのペンの需要は多くはありませんが、確実にありました。
尻軸に付けたキャップが外れるのを気にしなくてもいいとか、持つ場所を気にしなくていいとか理由は様々ですが、こういうデスクペンに共通して言えることは、バランスが非常に良いということです。
デスクペンを愛用し出したら、他のペンは使いにくく思えるほどのものですが、携帯には不向きで、デスク専用になってしまいます。
そういう理由もあって。プラチナはこのデスクペンに合わして、専用ペンスタンド52,500円(1本用)も作ってしまいました。
書く人のことを考えた、なかなか渋い良いペンだと思います。このような定番商品が出てくると、万年筆の業界はもっと活性化してくるのではないかと思ったりします。(31,500円で、細字、中字、太字があります。)

年末年始営業日のご案内
12月30日から1月3日までをお正月休みとさせていただきます。
5日間も休んで、申し訳ありません。その間、このブログはできるだけ更新するようにしますので、ぜひご覧ください。
よろしくお願いいたします。
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万年筆ストーリー3 ~遠距離恋愛と書きにくいペン~

2007-12-21 | 仕事の考え
万年筆カフェの店主の前のテーブルに1組のカップルが座りました。
「大丈夫元気出して、すぐに直してもらえるから。」
女性が小声で彼を慰めていますが、彼の表情は曇ったままでした。
店主は、聞こえないふりをしています。
彼はバックからノートとまだ箱に入ったままのペリカンを出して、文字を書いていますが、思うようにインクが出てくれないようでした。
「どうしたの?」
店主が二人に声を掛けました。
彼女は二人で前日に文房具店でそれぞれ万年筆を買ったけれど、彼のペンのインク出が悪く、押さえないと書けないということを話してくれました。
これを買ったお店に持って行っても、修理となれば1ヶ月以上待たされると分かっているので、持って行く気になれず、「万年筆とカフェ」の下に万年筆ペン先調節と書かれた看板を見て、入って来たようでした。
「彼は山口から出てきて、久し振りに会って、楽しく万年筆を買えたと思ったら昨日からこの調子です。」
「ちょっと見せてください。」
店主はルーペでペリカンのペン先を見ました。
ペリカンの切り割の寄りが強すぎて、インクの流れが悪くなっていましたし、ペンを寝かして、少し親指側にひねる彼の書き方には合っていないようでした。
「治りますよ。」
店主はすぐにインクの流れを良くして、彼と何度かやり取りして書き癖に合うようにペン先を合わせました。
「書きやすくなりました。」
彼の表情は明るくなりました。
「昨日万年筆を買って帰ってから、ずっと落ち込んでいて、暗い顔でノートにかすれた字を何度も書くんですよ。全部万年筆に気持ちを持ってかれたって感じで。」
彼女は落ち込んだ彼の様子をとてもおもしろおかしく、店主に話しました。
「この前はインターネットで買ったペンの調子が悪くて、電話で話しても落ち込んでて、黙り込んだりしていました。電話で黙られるとどうしていいのか分からなくなってしまいます。」
「僕は完璧主義者なんで、何にでも完璧を求めてしまうんですよ。」
「完璧主義者だけど、いつも何かオチを用意してくれています。本当に完璧な人なんて興味がないですが、この人は放っとけない気がして。」
話を聞けば聞くほど、二人はお似合いでピッタリの美男美女のカップルでしたが、店主は二人の話を聞いて、時間を忘れてずっと笑っていました。
「最初は入りにくい店だと思いましたが、もうそんなことはないです。また来ます。」
彼はこの日に山口に帰るということで、残り少なくなった二人の時間を楽しんでもらいたいという気持ちから、店主は近くのお店を何軒か紹介して、送り出しました。
笑顔で出て行く二人の他にも万年筆のちょっとした初期不良で使うのが嫌になってしまった人がいるのではないでしょうか。
万年筆を諦めずに、使いにくいものがあれがぜひ、万年筆カフェに来て欲しいと店主は思いました。
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年末年始営業日のご案内

2007-12-19 | 仕事の考え
アナウンスが遅れて大変申し訳ありません。
年末は12月29日まで、年始は1月4日から営業します。
年末年始の休みは、私一人ならいらないと思っていますが、家族もいますし、スタッフの都合もありますので、会社勤めの時には考えられない長期の休みになってしまいます。
大した予定もありませんが、元旦は上賀茂神社にでも初詣に行こうかと思っています。
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六甲アイランド定期訪問

2007-12-19 | 万年筆
毎月第3水曜日に会計士の先生のところを訪ねることにしています。
小さなお店の帳簿くらいががんばれば自分でできると言ってくださる方もいますが、私はいろんな人と一緒に仕事ができることに価値があるように思っています。
会計士の先生もル・ボナーの松本さんから紹介してもらった、神戸合同会計の大原先生で、六甲アイランドに事務所を構えておられるので、毎月1度は必ずこの人工島に来ることになっています。
六甲アイランドはとても不思議なところだと思います。
三宮、大阪へ通勤される方のためのベットタウンという面と工場、事務所など会社が集まっているという面と二つの面が高い次元で両立されているからです。
この人工島の中で仕事も生活もすることが可能で、島内独特のコミュニティが存在しているように思います。
そんな六甲アイランドのコミュニティの中にも存在しているル・ボナーさんの人脈を紹介していただいて、大和出版印刷や神戸合同会計などの会社と縁ができました。

六甲アイランドに来た時に、勝手に足が向いてしまい、やはりル・ボナーさんは素通りすることができません。
松本さんの万年筆好きは今では有名ですが、ハミさんも負けてはいないことを薄々は気付いていましたが、今日確信しました。
お客様からのプレゼントなどで本数が増えていましたし、愛用の金魚柄の中屋万年筆はタクヤさんのとてもきれいなペンケースに納められていました。
そして、ル・ボナーさんからの荷物にはいつもハミさんのカラーインクでの手書きの、とても粋なお手紙添えられています。
松本さんは最近手に入れたスティピュラダヴィンチを首から下げていましたし、なかなか夫婦共通の趣味を持つことは難しく、理解されない人が多い中、とても幸せな環境にある珍しいご夫婦です。
松本さんもご自分のスタイルを持っていてかっこいいですが、ハミさんもとてもかっこいいと思います。
ここには万年筆に関するニュースがいつもあって面白いですよ。

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大和出版印刷万年筆用ノート2

2007-12-18 | お店からのお知らせ

とても大型で最新の機械が揃う大和出版印刷の工場の中に真っ黒な鉄の塊といった感じの活版印刷機があります。今ではあまり使われることがなくなってしまいましたし、震災のあった神戸では特に活字がバラバラになってしまい、工場の再建を諦めた古くからの印刷工場が多いと印刷業の方から以前聞いたことがありました。そんな活版印刷ができるこの会社は貴重な存在です。全てが均一で乱れのないオフセット印刷は確かに美しくスマートですが、活版印刷はオフセット印刷にはない、勢いと温かみのある印刷をすることができます。大和出版印刷が先日発表した限定生産の万年筆ノートはこの活版印刷で罫線を印刷しています。横一直線だけのノートの罫線くらいわざわざ活版印刷にしなくてもいいようなものですが、そういうちょっとしたことにもこだわり抜いて、ひとつの形になっているところにこのノートの価値があります。限定200冊分だけに使用されているバカスという紙の書き味もなかなか見ものですし、プロの中のプロと言われている甲南前田製本の前田氏が手掛けた装丁も美しく仕上がってくると思います。 先日の朝日新聞の記事は、多くの方が読まれていて当店にもたくさんの問い合わせとノートの予約をいただいています。大和出版印刷にも当然、多くの問い合わせがあり、ノートを販売する楽天内のサイトfromkobe(http://www.rakuten.co.jp/fromkobe/index.html)も好調な売れ行きのようです。もしどうしても手に入れたいと思われている方がおられましたら、fromkobeで申し込むか、ル・ボナーさんや当店で予約されることをおすすめします。

 

 

ブックマークにanother parsonさんのできたてのブログ追加しました。http://anotherperson761061.blog42.fc2.com/

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素敵な出会い

2007-12-14 | 万年筆
お客様のつながりから、素敵な出会いをさせてもらいました。
三宮で和食の店をされているTさんは、万年筆で10数年続けられている日記を書こうと思い立って、当店でアウロラフォーコを買ってくださいました。
Tさんの紹介で、カフェ・ハルをされている同じくTさんが来られ、カフェ・ハルのTさんの紹介でカフェ・クリュのオーナーさんが来られました。
3人とも自分のスタイルをしっかりと持っている、とても素敵な女性たちで、とっても刺激を受けました。
カフェ・ハルが当店から、とても近い距離にあるということで、オープン前の時間を利用して遊びに行きました。
JR、阪急の高架の北側の道の山側、花隈駅西口のすぐ西にカフェ・ハルがありました。
小さな植え込みに緑があって、とてもかわいらしいお店で、内装もオーナーTさん自ら設計したこだわりの空間でした。
カウンターの正面にはアンティークもある、カップのコレクションが飾られていて、言えば好みのカップにコーヒーを淹れてくれるとのことでした。
私は今月のおすすめコーヒー「マサイ」をこげ茶色のどっしりとしたカップに淹れてもらいました。
もっと尖った味かと思っていましたが、ネルドリップで抽出されたマサイは、飲みやすくとてもさわやかな味。モーニングコーヒーにぴったりでした。
表は車が行き交い、駅に向かう人が通ったりしていますが、店内はおしゃれな曲が流れ、居心地の良い、ハルワールドでした。
Tさんとのおしゃべりも心地よく、あっという間に店を開けなければいけない時間になったのでおいとましましたが、時間が経つのを忘れてしまうお店のひと時を楽しみました。
また一人魅力的な人、お店にめぐり合うことができました。
(カフェ・ハル 神戸市中央区北長狭通7-1-8 TEL078-341-4620 平日8時~20時、土日祝10時~18時営業、水曜定休)
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