元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

今年最後の営業日

2011-12-29 | 仕事について

この店を始めてからの時間が過ぎ去るスピードがとても早く感じられます。

店で以前にあった出来事など、その時々の雰囲気などを思い出すととても懐かしく感じられて、たった4年なのに店も変化しているのだと、同じ場所での日々だけど、過ぎ去った日々がもう戻ることのできないものだと思えます。

実際に営業を続けていると、たくさんの出会いと別れがあって、前の時間には確かに戻ることはできないのです。

過ぎた日々、離れてしまった繋がりを取り戻すことはできないけれど、店は続いていて毎年初めて来られるお客様がたくさんおられる。

初めて訪れるお客様は、場所が分かりにくく道に迷いそうになる小さなお店だけど、この店は4年間ここにあって万年筆を使いたいと思う人が訪れてきた。

そして、5年10年20年と続いていければ、同じように年を重ねていくのだろう。

ただ生きていれば当たり前に感じられる時間の流れが、この店を主体に考えると、とても愛おしく想えて、大切なものだと思えます。

2011年のこの店の時間も終わってしまった。

今年1年当店に関わって下さった皆様、本当にありがとうございます。

来年も別れのない、出会いだけの年でありますように。

年始は1月5日(木)から営業いたします。

来年もよろしくお願いいたします。

 


ポストカード

2011-12-22 | 仕事について

ある程度年齢を重ねた男性は皆、私と同じように思っているのではないかと思いますが、何かお便りを出したいと思った時に既製品のポストカードで使えそうなものが少なくて困ります。

キャラクターなどの可愛い絵柄のものはあり得ないし、写真入りのポストカードはものすごくきれいだけど、テンションが違っていて自分の日常とは大きくかけ離れているように思います。

葉書などのお便りで、あまりにも自分の気分に無関係なものを出しても意味がない。

それよりも自分が好きなものが写っていたり、落ち着いている時の自分の気持ちを表現してくれているようなものを使いたいと思います。

写真の雰囲気はよく売られている写真のポストカードのようにテンションの高いものではないし、その題材やモチーフはアンティークや現代の良品などで、とても共感できるスカイウインドさんのポストカードは日常的に使えると思っています。

この写真を見て、私はスカイウインドさんが住む加古川の地をイメージします。

それはきっと私がスカイウインドさんのことを知っているからですが、これをお便りとして出せば相手は差出人の人の暮らしや生活を考えるのではないかと思っています。

このポストカードにはそんな魅力があります。https://www.p-n-m.net/contents/products/PL0116.html

スカイウインドさんは同じ世界観を持ったカレンダーも作っています。https://www.p-n-m.net/contents/products/PL0117.html


黒と金の万年筆

2011-12-20 | 仕事について

私の場合でしかないけれど、男は40歳を迎えると様々な変化が急激にやってきます。

急に体力がなくなって、寝不足が翌日に響いたり、肩や腕が痛くなり始めたり。

心境の変化としては、人生を折り返した感を感じ自分の存在の終末について考え始めたり。

そういった体や心境の変化とともに、今まで思ってもみなかった黒と金の万年筆が好きになるというすごい変化が訪れます。

ついこの前までの30代までは黒金などあり得ない、金具はシルバーでないと嫌だと思っていて、黒金には昔からの惰性で作られてきた無難なカラーリングという印象を持っていたのに。

しかし、40歳を迎えて急に黒金に、ただの色の組み合わせではない、メッセージを感じるようになりました。

そのメッセージは完全には解読できていませんが、これも最近の変化ですが男っぽいものへの憧れからくる、男の持ち物たる姿や世界観への理解なのかと思っています。

黒金の万年筆には、そんな奥深さがあって、例えば国産の万年筆メーカーなどは黒金の万年筆を主力にしているのは大人の男の持ち物ということを強く意識していたのだと気付きました。

今まで嫌っていた黒金の万年筆に急激に惹かれて、万年筆が少しずつ黒金になっています。

黒金メッセージの解読は引き続き行いたいと思っています。


伝える力

2011-12-19 | 仕事について

外に出ていろんな人と会ったりすることも少ないし、テレビもあまり見ない方なので、私のインプットのほとんどはお客様をはじめとする皆様からお聞きした話がほとんどになります。

そうやって皆様のお話を伺って思うのは、自分の話す力の拙さです。

皆様の話は、要点がちゃんと伝わってオチがちゃんとあって、聞いていてすごく上手いと思いますし、素晴らしい組み立てだと感心します。

私は「おもしろい話があるんですけど」と最初にハードルを上げてしまうので、聞いてみると、自分でも話してみるとそれほど面白くなかったということが多々あります。

話の上手い人は瞬間瞬間に頭が働いて、話をおもしろく組み立てられるのだろうか?

話す力というのは本当に大事で、その巧みさによって心の強さを表現できるかできないかが、かかっている時があるので、切実な問題になることがあります。

本当は心の強さを比べることは男女間の恋愛レベルに意味のないことだけど、でも話しが上手い人というのは伝えたい、話したいという気持ちが強くて、私にはもしかしたらそれが欠けているのかもしれない。

最近その傾向は少しやわらいできたけれど、誰も自分の話など聞きたいとは思っていないとずっと思っていて、自分のことを話すことが極端に少なかった。

それは子供の頃からで、親にもあまり自分のことを話した記憶がない。

そのまま大人になってしまって、今伝える力が欠如した大人になってしまったけれど、そんな私が書くことが好きだというのは多分辻褄があっていて、自分のことを伝えたいという気持ちは話すことにおいてはないけれど、書くことにおいては大いにあるだろうと思うことがあります。

 


大和座狂言事務所師走公演

2011-12-15 | 仕事について

千里中央のA&Hホールで開催される大和座狂言事務所の公演に毎回行くようにしていて、昨日も今年最後の公演にお邪魔してきました。

私が大和座の公演を観にいくのは狂言師安東伸元先生の生き様になるべく触れていたいからで、安東先生の生き方に近付きたいといつも思っているからです。

安東先生は能楽の家に生まれ、狂言方能楽師としてそのキャリアをスタートさせましたが、世襲制で権威的な家元制度の下では狂言は人々に浸透しないと、反発して団体を飛び出し、独自の狂言団体を設立しました。

師家にいればその身分も保証され、生活に困らないのに、それを捨ててご自分の道を歩んだこと、76歳になる今でも孤軍奮闘してその生き方を貫いていることを自ら「ドン・キホーテ」のような生き方とおっしゃっておられますが、そんな夢やロマンを追い求める生き方をお手本としたい男の生き様として見ています。

生活の安定や将来の安泰を考えると安東先生のような理想を追い求めた生き方はなかなかできないと思いますが、狂言を多くの人に観てもらうことで、日本人としての誇りを皆様に持ってもらいたい、そしてそれをするのはご自分の他はいないと決断されたのでしょう。

安東先生が舞台に立つ姿を見ながら、誰よりも響く低い声を聞きながら、安東先生が40年間近く背負ってきたものの大きさを垣間見た気がします。

当店で安東先生がおっしゃった「ただ好きで、信じたことを続けてきたら何とかご飯を食べることができるようになった。それでいいのではないでしょうか。」という言葉をいつも思い出します。

 


WRITING LAB.を象徴するデスクが完成しました

2011-12-13 | 仕事について

自分の仕事が今自分が手元でできる範囲のことだけをしていて、根本的な改革にはならないということには気付いていました。

万年筆を扱っているから、万年筆とインクと紙のことだけを考えて、その範囲の中でアイデアをコネくり回しても同じようなものしかできない。

それは世の中にたくさんあるものと、同じようなものを生み出すだけなのだと。

それでもその範囲から出ることが出来なかったのは、当店は万年筆店であるという自分で設けた制約と取り組んだことのないものに対する恐怖心でした。

何か分かれ道に来た時、どちらの道を選択するかの判断基準は勇気が必要な方を選ぶべきで、その選択をすると余程の無謀をしない限り上手く行くことが多いことが分かっていても、なかなか未知の領域には踏み込めないものです。

WRITING LAB.はアパレル業界で雑貨を卸す会社や山科のインディアンジュエリーのお店リバーメール(http://www.river-mail.com/)をされている駒村和司氏との共同作業のブランドですが、今回完成したデスクが実はWRITING LAB. の仕事が始まったきっかけでした。

前述の通り、手元のことしか意識していなかった私が空間作りについて考えるきっかけになったものです。

当店のようなお店はモノを扱うのではなく、モノや行為をキーワードに集まってくださっているお客様方に楽しい時間(店におられる間だけでなく)を提供する、大袈裟かもしれませんが私たちから見た楽しい人生を提供するのが仕事だと思っていましたが、それがなかなか具体的に考えられませんでした。

駒村氏が持ち込んだ、デスクの製作はそんなモヤモヤを壊してくれる役割も果たしているのです。

企画者としての私たちの想いも言い出したらキリがないほどですが、製作者である工房楔の永田さんのこのデスクに対するこだわりも相当なものだとこの3ヶ月の間に思いました。

回転する天板は、永田氏のアイデアだったし、収納スペースもいろいろ考えて取り付けてくれた。

アメリカ産ウォールナットから成る全てのパーツを同じ木からとって、まるで隣同士のパーツの木目が連続しているかのように見せている。

失礼な言い方になるけれど、ペンや文具だけでなく、家具でもすごいものが作れることを再確認しました。

面白さ、完成度、存在感ともに充分な天板が回転するライティングデスク、平机のラボデスク、完成しましたのでぜひ見に来てください。

 

価格は、ライティングデスク(幅660mm奥515mm高720mm)35万円、ラボデスク(幅1200mm奥600mm高720mm)22万円です。
平机はご希望のサイズで製作することが可能です。全て受注生産になります。

 

 

 

 

 


Think,shift the angle

2011-12-10 | 仕事について

言葉では分かっていても、何か課題に向かった時に忘れがちなことだと思っています。


その物事に対する取り組み方を変えるとおもしろくなるのに、真正面から工夫なしに取り組んでしまう。


文章などを書く時などは特にそうで、私に与えられた題材は限られているのにそれらを自分の普段の目線で捉えていると月並みな表現しかできない、本当につまらないものになってしまいます。


今まで数多くのつまらないものを書いてきてしまいました。


目の前に当たり前にあった自分が書けることの切り口を変えると今まで気付かなかった全く別のものになってくれたりする。


いつも心掛けていないと忘れている本当に大切なことだと思います。


店での品揃え、スペース、できることは限りがあるし、ブログやホームページなどの文章も前述の通りです。


それらの限られたもので表現していくためには、同じものを切り口を変えて違うものにする必要がある。


使い古された言葉ですが、私のような仕事にはとても有益な教訓だと思っています。


何か物を書く時には必ず心掛けたい言葉として、新しく手に入れた書くことがバカみたいに楽しい万年筆のキャップに刻印しました。


名入れというか、こういうボディへの彫刻を今までしたことがなくて、一度してみたいと思っていました。


でも名前や店の名前では面白くない。


自分が心掛けたい言葉、その万年筆から教えられるような感じにすることができたと思います。


書く道具である万年筆がより特別なものになってくれると思いました。


旅の扉更新しました

2011-12-06 | 仕事について

WRITING LAB.のブログ「旅の扉」(http://writinglab.jp/)更新しました。

トロンコの友達ボンクは、世界中を旅するなかなか男前な、仕事のデキる男です。

モノにこだわりが強くどんなものにも凝って揃えてしまう。

誰からも羨ましがられるようなボンクの生活ですが、ボンクはそんな生活に何か物足りなさを感じています。

そんなボンクの意外な少しセンチメンタルな心中も垣間見ることができる物語です。