元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

話すこと

2010-03-30 | 仕事について
かなり以前から話すということにコンプレックスを持っていました。
大学生の頃、当時付き合っていた彼女は、あまりにも順序立てて話すことが下手な私が親から放ったらかしにされた幼少期を過ごしたと思い込んでいました。
恋人同士の車の中での会話でさえそんなふうでしたので、何かを報告したり、説明したりすることは全く話しになりませんでした。
そんなふうに話すことにコンプレックスを持っていますので、何人もの人の前で話す時はあがってしまいます。
お客様と話す1対1の会話では、饒舌な方ではありませんが平気なので不思議です。
話すことに関しての私の栄光は小学校6年生でした。
団地の中のマンモス校の生徒会長をしていた私は、朝礼などで1600人くらいの生徒たちの前で話す機会もよくありましたが、あがることなく平気で話していましたので、あの時の自分に戻りたいと思うことがよくあります。
話すのが下手なわりに話すということに興味を持っていて、お客様や周りの人の話をとても気にして聞いていて、皆様のおしゃべりの技を盗もうとしています。

聞香会開催します 3月22日(月祝)15時~17時

2010-03-22 | 仕事について
お馴染みになりました、香道師森脇直樹さんの聞香会を開催いたします。
お香というと堅苦しいイメージを持ってしまいますが、森脇さんの聞香会はお香の楽しさをたくさんの人に知っていただきたいという志のもとに開催されるもので、楽しく、お香に親しめる工夫がされています。
平日の開催が多く、今まで参加したくてもできなかった方もおられると思います。
今回は祝日の開催になりますので、ぜひ皆様ご参加いただけますよう、お願い申し上げます。

日本でいちばん大切にしたい会社(坂本光司著 あさ出版)

2010-03-22 | 仕事について
とてもいい本を読んだと心から思いました。
この本は自分で書店で選んだのではなく、和歌山に単身赴任中のY様からお借りしたものでした。
書名は本屋さんで目にしたことがありましたが、タイトルが好みに合わず手に取って見ることはありませんでしたので、読み終わってY様にとても感謝しました。
定期的にこういう本を読んでいないと、とても大切なことを見失いそうになります。
とても小さな店で、経営とか企業活動というと、恥ずかしいですが、私の心のあり方、考え方がこの店の方向性を決めてしまいます。
私が、この店が長く続いていくために必要な考え方を持って、それを実践した経営をしていかないと、この店は迷走してしまい、お客様をはじめとする周りの人たちから愛されない店になってしまうと思っています。
つい数年前、会社に勤めていた頃、本当に何も分かっていませんでした。
企業経営にとって一番大切なことは売上を上げ続けて、利益を増やすことだと思っていました。
しかし店を開けて日々営業し、多くの方々と話し気付きましたが、企業にとって一番大切なことはとてもシンプルなこと、長く続けるということ、そして全ての活動が愛によってなされなければならないというでした。
売上、利益、成長は長く続けるための手段に過ぎないということを改めて思い出させてくれる本でした。
たまに読み返したいと思い、読み終わった後、同じものを購入しました。

神谷利男さんのブログ

2010-03-15 | 仕事について

グラフィックデザイナー神谷利男さんの自費出版「My Favorite Fountain Pens」を何度も読んでいるのに、私はいまだに読むことがあります。
神谷さんが文章と絵と写真で作り出す独特の空気感。それは神谷さんそのもので、触れると元気がもらえるような気がします。
神谷さんの本と出合った時、こんな本が読みたかったと思っていて、それは今も変わっていません。
神谷利男さんが、個人ブログを始められました。神谷さんが作る空気感 を本以外でも感じることができるようになりました。
http://blogs.yahoo.co.jp/kamitanidesign


延長営業日のご案内 3月19日(金)

2010-03-15 | 仕事について
3月19日(金)は延長営業日です。夜9時まで営業しておりますので、ぜひご来店ください。
工房楔の永田さんが当店用にウォールナットの素晴らしいテーブルを持ってきてくださいました。
とても立派なもので、このような無垢の材料の存在感のあるテーブルがあるととても気分が良いものです。
家具などもこのような良い材料のものを選ぶと、それは高価ではありますが、それらのものから得られるインスピレーション、良い精神状態など、効果は大きいのかもしれません。
これからも、ここのテーブルでお客様同士が語らい、知り合うといった場面が展開されるのだと思うと、相応しいものを置くことができたと思っています。
開店の時から使っていたテーブルは、ル・ボナーさんの新しい倉庫兼レクリエーション室に行きました。
永田さんはこのようなテーブルのオーダーも受けていて、ペンだけではなく家具のような大型のものも扱っていて、ペンに負けない良い仕事によって作られているのだと、改めて思いました。

息子の卒業式

2010-03-12 | 仕事について
私たちはさっきまでガタガタ震えていた寒さも忘れて、目の前で行われている卒業式の全てのシーンをひとつも見逃さないでいたいと、時折熱いものがこみ上げてくる目頭を押さえながら、必死で目を凝らして、耳をすましていました。
卒業証書授与では、名前を呼ばれると皆とても大きな声で、気持ちを込めて返事をし、きちんとした作法で証書を受け取っていました。
息子が指揮をした合唱では、多くの子が涙を流しながらも前を見て、精一杯歌っていましたし、息子も同様に涙をこらえながら最後まで指揮を振り切りました。
自分の子供が3年間の中学校生活を終えるという親としての感慨のようなものに感動したのではなく、卒業式という自分たちのための大イベントを成功させたいという純粋な熱い想いと、その気持ちで過ごしてきた3年間を懐かしむ涙を見て、私たち大人は一人残らず強い感動を覚えました。
やらされているのではなく、自分たちで式を行っているという誇りを感じました。
半数の子は、息子と同じ小学校で小さな時から知っている子ですが、皆本当に立派になっていました。
この子たちの成長と、自分たちの中学時代の心情を比べてとても恥ずかしくなりました。
同じ年月を過ごして、私はどれだけ成長することができたのだろう。
同じ年頃の時こんなに真っ直ぐに熱く物事に取り組めていたのか考えると、そうではありませんでした。
一生懸命物事に取り組むことや、熱い情熱を何となく恥ずかしいと思ってしまう気持ちがあって、気持ちをストレートに表すことから逃げていたように思います。
今の若い子たちは、私たち大人よりも余程ちゃんとしていて、一生懸命に生きていると思いました。
3年間、この子たちを見る機会がありましたが、1年生よりも2年生、2年生よりも3年生というふうに、年を追うごとに皆の団結力が強くなっていきました。
卒業式が終わって、保護者だけを前に学年主任の先生が話されていましたが、日本中でこんなに幸せな卒業式をあげることができた中学校がどれくらいあるだろうか、という話は本当にそうだと思いました。
もちろん、こんな学年に成長させることができたのは先生方の弛まぬ努力の賜物ですが、子供たちの優しい心根に拠るところもあるのかもしれません。

加藤さんへのメッセージお届けしました

2010-03-07 | 仕事について
早朝(私には)に家を出て、1月23日に亡くなられた加藤清さんのお宅を訪ねてきました。
店の開店があるため、朝9時にお邪魔して、すぐ引き返してくるだけでしたが、皆様からの大切なメッセージを加藤さんの奥様にお渡しするという役割を果たすことができました。
地下鉄千日前線の小路から歩いてすぐの所にあり、何度も歩いた道ですが、加藤さんのお宅が見つかりません。
それらしい建物の前で電話をかけてみましたら、やはり加藤さんのお宅でした。
聞いてみると、カトウセイサクショカンパニーと書かれてあった玄関の扉を交換されたとのことでした。
前日49日が済み、少し落ち着いてきたという、加藤さんの奥様はしっかりとされていて、とても安心しました。
いつまでもお元気でいていただきたいと思います。
加藤さんがまだ輸出をしていた時、奥様と娘さんは加藤さんのお使いで、元町海岸通りに何度か来られたことがあったそうで、神戸の街には馴染みがあるとのことでした。
娘さんが当店を訪れてくださったとき、この店を加藤さんに見せてあげたかったと思ってくれたそうです。
晩年は国内向けの販売にシフトして、お忙しくされていました。
大阪の万年筆職人という扱われ方が多かった加藤さんでしたが、その気持ちはいつも世界に向いていたそうです。
皆様からのメッセージを奥様はものすごく喜んでくださいました。旦那さんとお二人で作られたペンに魅せられて、毎日の道具として、とても大切に使っていることを知っていただく機会になることができたと思っています。

書く気を保つために

2010-03-05 | 仕事について
郷土史家のKさんが、原稿が書けない時は万年筆のせいにしたり、インクの色のせいにしているから、万年筆は100本以上、インクは生きている間に使い切ることは難しいかもしれないと言われました。
私は、本を何冊も書いておられるKさんほどハードに書いているわけではありませんが、いつも何かを書かなければいけない締め切りに追われています。
書かなければいけないのに、何も浮かばず、大して面白くもないことしか書けなかった時は、自己嫌悪に陥りますし、全く筆が進まないこともあります。
Kさんのように、万年筆を替えたり、インクの色を替えたりしてでも前に進んでいくたくましさ、粘り強さがまだ備わってないことに反省させられました。
何も浮かばなくても、何かを描いていればそれが頭のウォーミングアップになって、手が勝手に動くようになるということは、神谷利男さんも著書の中で書かれていて、まず手を動かすということは良い効果があるようです。
私はものすごく筆が進んで、次から次と書きたいことが浮かんで来てずっと書き続けている時と、本当に何も書きたいことが浮かばない時との差が非常に激しく、書くということがまだ生き方の中心になっていないと感じます。
自分が書くことのプロだとは思っていませんが、書くことが自分の仕事のうちで重要なことのひとつであるにも関わらず、Kさんのような気迫がなかったのです。
今私がこの文章を書いている万年筆は、久しぶりにインクを通したパーカー75で、父から私へと伝わってきたものです。
万年筆には、ウルトラマンのカラータイマーのように書く気にさせてくれる持続時間があって、最初のうちは書く気にさせてくれますが、やがて飽きがくるのかもしれません。
1本の万年筆を大切にずっと使い続けることは、とても尊いことですが、書くことを仕事にしている者にとって、そうも言っておられず、カラータイマーが光ってしまった万年筆は、そっとコンプロット10に戻すか、インクを抜いてコレクションボックスに仕舞い、新たな気分で再会できる日まで、違う万年筆で書く気を煽り続けて、書き続ける。
書き続けること、それは万年筆を取替え続けることなのかもしれないと思い始めました。

接客

2010-03-04 | 仕事について
休みの日に訪ねる場所のパターンがいくつかあって、それぞれの場所で立ち寄る店は決まっています。
何回か行って、時々買物をすればお店の人はこちらの顔を覚えていて、他の客とは違う言葉を掛けてくれるようになります。
私も接客業なので、よく分かりますが、たいてい2回目の来店くらいから、何も買わなくても意識し始め、印象に残るようです。
顔見知りだけどついて回らず、適当に放っておいてくれて、用事がある時に傍に来てくれるのが理想の接客で、非常に難しいことですが、そのような接客に出会うと上手いなあと思いますし、また行ってみたくなります。
私はあまりちゃんと接客の教育を受けたことがなくて、自己流でお恥ずかしいものですが、プロの仕事に出会うと本当に感心しますし、あまりにも配慮のない仕事を見ると二度とその店には行きたくなくなります。
お店には、繁忙期、閑散期があり、曜日や時間帯で必要な人数が違いますので、接客をアルバイトの方や派遣社員の方、メーカー応援の方に頼っているお店がたくさんあるのは仕方ありませんが、接客は本当に奥が深くて、熟練の技が必要です。そして、修得された熟練の接客術は古くなることはありません。
世の中に、ものすごくたくさんの商品があって、売っているお店もものすごくたくさんあります。お店だけでなく、ネットショップもたくさんあり、その中で買っていただける店として生き残るのは本当に大変ですが、お店の人の接客によって、そのような店の候補になれるかどうか別れるのかもしれません。
でも接客の良いお店は本当に強く、志の高い店員さんに出会うとその店以外で買おうと思わなくなり、そのお店にあるものの中から買いたいものを選ぶようになります。