一期一会 ~万年筆店店主のブログ~

哲学、想いを発信している、Pen and message.店主吉宗史博のブログです。

用途

2011-06-30 | 仕事の考え

往年のスラッガー門田博光氏が、外野手は外野手用のグラブを練習から使っていないといざというときに上手く使いこなせないという内容のことを何かで語っておられました。

練習の時、内野手用の軽く小さなものを使っているようでは、いつまでたっても一流にはなれないといったところでしょうか。

中学生か高校生だった私はそれを神の言葉のような気分で読みました。

野球のグラブは各ポジションによって、大きさ、形などが微妙に違っています。

キャッチャーミット、ファーストミットが他のポジションと違っていることは分かりやすいですが全て違う。

セカンド、ショート用は球を捕って持ち替えずにすぐになげられるように、芯が浅く小さめのもの。

サードは球を深く捕ってもいい場合が多いので、少し深く大きなもの。

外野手は少しでも遠くの球が捕れるように、可笑しいくらい長い形のグラブ。

外野手の長めのグラブの効用はフライやライナーの届くか届かないかのわずかな違いを埋めてくれるもので、弱いフライなどグラブの先端に引っ掛けるように捕れるテクニックがあると守備範囲が広くなる。

晩年、指名打者ばかりだった門田氏でしたが、専門のバッティング以外にもこういった守備の職人芸にこだわっていたという事実は野球少年にはたまらない話だった。

野球のグラブは作り手が明確に用途を決めて使い手に提案しています。

万年筆にも用途はきっと存在するのでしょうが、あまりはっきりしたアナウンスがありません。

我々売り手がそれを分析して、門田氏のようにその効用を皆様にお伝えしなければいけないのですね。

 

あまりにも万年筆からかけ離れた話でしたが、プロの道具の話は心惹かれるものが多いですね。

 

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アウロラ 大陸シリーズ アメリカ発売決定

2011-06-28 | 仕事の考え

アフリカ、アジア、ヨーロッパの大陸シリーズ、あるいは以前の75周年記念、ソーレ、プリマベーラ、マーレのアウロラの年間生産の限定品には揃えたくなるような魅力があります。

でもアウロラの限定品にはなぜ揃えたくなるような魅力があるのか。

その理由を以前から考えていましたが、なかなか理論的な理由が見当たりません。

ただ魅力があるから。

そんな理屈ではない、アウロラの限定生産品に魅力を感じているいる人は多く、だからこそそのシリーズがつづいているのだと思います。

ヨーロッパが発売されて、次はオーストラリアで赤?、南極で白?いやアメリカで青だろうなど様々な憶測を呼んでいました。

こういう憶測を呼ぶのもアウロラの魅力で、皆が興味を持っている証拠だと思います。

しかし、ヨーロッパに続く大陸シリーズはなかなか発売されませんでした。

本来ならとっくに大陸シリーズの新作が発売されていなければいけない時期でも何のアナウンスもありませんでした。


大陸シリーズはもしかしたら、ヨーロッパで終了するのかもしれないと多くの人に思わせてしばらく経った今、大陸シリーズの新作が発表されました。

大陸シリーズの新作は、アメリカです。

アメリカ合衆国の星条旗の色をボディカラーに取り入れた色、キャップトップには赤のカボション、リングにはインディアン、サボテン、コンドル、幌馬車をモチーフとした模様があしらわれています。

例えば工房楔のコンプロット4ミニに、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、アメリカと揃ったところをイメージしてください。

とても魅力的だと思いませんか? 

万年筆で84000円、7月上旬発売開始予定です。
写真がなくて、ごめんなさい。

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ペン先調整いろいろ2

2011-06-28 | 仕事の考え

ご依頼いただくペン先調整の内容はいろいろで、「愛の千本ノック」なる怪しげなタイトルがついてしまった(自分でつけたのですが)高い要求のものから、何年も放っておいてインクがコテコテにこびりついて書けなくなったものを書けるようにするというものまで様々です。

マニアックな自分仕様の調整も楽しいですが、全く書けなかったものが書けるようになった時にはお客様と一緒に感動を分かち合う瞬間です。

マニアックでない、万年筆の一般的なユーザーの方でもペン先調整を望まれていました。

ペン先調整に対する需要が非常に多いことを店を始めてから知りましたし、それは驚きでもありました。

皆様ご存知のようにペン先調整を無料でしてくれる万年筆クリニックというものが大手文具店では行われることがありますが、そういったものを利用せずに、持込調整が有料である当店に調整を依頼してくださることに感謝しました。

ペン先調整はそれ単体で成立する技術ではなく、万年筆を販売する店として必要なスキルだと思っていました。
眼鏡屋さんや自転車屋さんの調整と同じようにそれを快適に使うためにはなくてはならないものだという考え方で始めたのです。

しかし、自分の店で販売していないものに対してもお客様と関わりを持つことがペン先調整でできることが分かりました。

それはたくさんのものを消費するのではなく、良いものを大切に使うという風潮に合っているのだと理解することができます。

2500円で新しいモノは手に入らないけれど、今まで使っていたものがより使いやすくなる。
そして、そのためにお金をかける。

お客様がすでにお持ちのものを書きやすくすることによって、当店が世の中の役に立つことができる(続いていける)と分かったのは発見でした。

万年筆を使われる方が、万年筆という特別な筆記具に期待していることを実現するためのペン先調整なのですね。

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メモ用万年筆2

2011-06-27 | 仕事の考え

昨日の続きです。

どんな大きな仕事でも、壮大なストーリーもきっと一片のメモ書きから生まれたのだと思うと、メモにはロマンがあるといつも思っていて、それは多くの人が理解してくださることだと思います。

メモそのもの自体は、走り書き、覚書といったもので、それは永久に保存されるものではないけれど、メモは何か他のものに姿を変えて初めて価値が生まれると思うと、メモは大切に保存するような豪華なノートや手帳に書くべきものではなくて、切り離してしまえば後はゴミになってしまうようなものに書かれるべきものだと思います。

 

胸ポケットに2本以上の万年筆を差すことはなくて、3本あるメモ用万年筆をポケットの深さ、服の色などとのコーディネートや気分によって使い分けていました。

しかし、夏の半袖になって、ベストも着ていないので、胸ポケットがなくなってしまいました。

当店オリジナルで作ったペンレスト兼用万年筆ケースがあります。

3本の万年筆を収納することができて、蓋をあけたままにしておけば上部から万年筆をすぐに抜き出すこことができ、蓋を閉めれば脱落の心配がない。

普通のペンケースとして使い出したペンレスト兼用万年筆ケースですが、ポケットの代わり、ポケットの延長として機能しているのではないかと気付きました。

今までは朝出掛ける前の気まぐれで、その日使える万年筆が決められていましたが、これで3本気が向くままに使えるようになりました。

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夏の服装

2011-06-26 | 仕事の考え

梅雨が終わって(街の噂)、急激に暑くなってきました。

ベスト着たいといつも思っていますので、なるべく長袖のシャツで通したいと思っていましたが、朝一番の掃除で汗だくになってしまう。
さすがに暑くてかないませんでした。

半袖のシャツを着ることにしました。

ほんの数年前まで夏の間じゅうも仕事は長袖で通していました。

誰かのエッセイに、大人の男は半袖など着ず、どうしても暑ければ腕まくりをしなさいという内容の記述があり、それを忠実に実行していたけれど、昨年の夏からやめました。

日本の夏は本当に暑くなりました。

そのエッセイが書かれた時はきっと今のように暑くなかったのだろう。
そうでないと、40度近い温度の中長袖でいろとは思わないに決まっている。

それにその作者のライフスタイルと私のライフスタイルは違う、彼はバス停まで10分も歩かないし、朝一番に汗だくで店の掃除などきっとしない。絶対に。

世の中、節電の影響で、スーパークールビズという号令がかかっています。

でもよく考えたら、仕事をする社会人ともなれば自分の服装くらい自分で決めて、自分の仕事にとって一番成果が上がる服装を会社から言われなくても選ぶのではないだろうか。

節電でもお客さんに会うときは皆それなりにきっちりしたかっこをしている。

こういう服装をしましょうと決めるのがおかしいし、相手が自分と違うかっこをしていることを気にするのもおかしいかな。

半袖でもブルックスブラザーズのシャツをいくつか持っていて、お気に入りはカバーオールというボタンが胸のあたりまでしかないもの。
色、質感が気に入っているオックスフォード生地。数少ないメイドインUSAです。

でも伸縮性が皆無で、着るとき縄抜けのように半ば肩の関節を外して(嘘です)着ますが、四十肩の私にはこれが相当きつい。

そのうち本当に外れるかもしれないけれど、でも気に入っているから着ます。

 

 

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メモ用万年筆

2011-06-25 | 仕事の考え

他の人はメモ用万年筆というものを決めておられるのか分かりませんが、私にはそれが3本あります。

なぜかどれもペリカンです。
ペリカンがメモに最も適していると決め付けるつもりはありませんが、私がメモ用の万年筆とする条件にペリカンが合うのです。

私がメモ用の万年筆に挙げる条件は、シャツのポケットに差してもさほどかさ張らないサイズであるということ。

シャツのポケットに差すのだから、クリップも適度にしっかりしていて、適度に柔らかくなくてはいけません。

メモ用であるから、字の形を気にせずどんどん書けるものでないといけないので、丁寧に引っ掛かりが出ないように書く細字よりも中字以上の太さが必要になります。

いつもポケットに入れているので、他の万年筆に比べて使用頻度が高い。

メモ用の万年筆に関してはそういうこだわりがあって、手紙用には手紙用の、日記用には日記用のそれがあって、今そういう持っている万年筆の用途について考えています。

原稿を書きながら、考えるのはいつも自分の万年筆との関わりです。

 

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ペン先調整いろいろ

2011-06-24 | 仕事の考え

ご来店されたお客様から調整をご依頼いただく時、あきらかに書きにくいという症状があり、その症状には必ず目に見える原因がありますので、それを直せば症状はなくなります。

そういった調整がほとんどで、それらには気持ち良く書くことができるように最大限の努力をします。

でも中には万年筆の最低保証条件である気持ち良く書けることの実現とは違う調整もあって、それらはユニークなものがほとんどです。

件数は少ないですが、最近立て続けにあったのは採点に使う万年筆の調整です。

学校の先生方は本当にたくさんの数のテストを採点します。
○あるいは×、さらに小さな文字で書き込み。

○×をつけている時は万年筆は寝た角度で、書き込みはペンを立てて細かく。

採点万年筆の調整をお申し付けくださった先生はお二人ともの○×の書き方は、書き慣れているを通り越して、風格すら漂う書き方で、無駄な力が一切入っていない、まるで息をするように書く手が枯れている書き方。

本当にたくさんのテストを採点してこられたのだと感動すら覚えました。

ペンを寝かした状態で太く書けて、筆記角度を高めで細く書けるようにすることが、採点万年筆の調整に課せられた使命でした。

セーラーのズームというペン先があって、ズームのイリジュウムの形がそれを実現できる五角形です。

でもズームのままだと太い線が書ける角度は60度くらいの角度ですので、角度の低いズームを作ることにしました。

依頼主のお仕事の役に立つ万年筆にする、強いこだわりや高い次元の要求におもしろいと感じてしまう。

それは万年筆をそれぞれのお仕事に使う人の仕事に向かう姿勢が感じられて、その気持ちを意気に感じるからなのか。

大変だけど難しい要求もできるだけ応えたいと思っていますが、それを大声で言うとどうなるのだろう。

 

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親に似るところ

2011-06-23 | 仕事の考え

父は普段、穏やかで口数のあまり多い人ではないけれど、自分の興味のある分野、例えば仏像などの話題になると多弁になりました。

大人に対しても、子供だった私たちに対しても同じように仏像の講釈をして、特にそれは普通のこと、日常のことだと気にも留めませんでしたし、父の講義をいつも聞いているふりだけしていました。

しかし、それが少しおもしろいところであることに大人になってから気付きました。

高校の歴史の教師だから仏像にやたら詳しくても仕事柄当然だと思っていましたが、教科書に出てこない仏像のひとつひとつの薀蓄など教科書を完全に超えていて、それはやはり好きだったからだと思いました。

父もまた自分の好きなことと、仕事が合った幸せな人だったのかもしれません。(まだ生きていますが)

物静かで歴史に詳しい父ですが、車に乗ると大そうスピードを出しました。

物心ついた時からそういう車に乗っていましたので気付きませんでしたが、自分が免許を取ってからいかにスピードを出しているか分かりました。

昭和50年代中ごろまで乗用車にはある程度のスピード以上になると「キンコン、キンコン」と警告音がなるようになっていましたが、うちの車は走っている間じゅう「キンコン」が鳴っていました。

親子というのは本当に似なくてもいいところが似るもので、私が父から譲り受けたのは、天然なところと、前に前に行こうとする運転だけでした。

私は電車に乗ると寝てしまい、降りる駅を乗り過ごしてしまうのでなるべく座らないようにしています。
それくらい何度も乗り過ごしたことがあって、駅まで車で迎えに来てくれている妻にはよく迷惑をかけた。

そういうところを物心ついた時から見てきた息子は私に似たところを妻に指摘されるととても嫌がります。
本当に、私が傷つくくらい嫌がる。

高校の帰りのバスで爆睡してしまい終着の停留所まで行ってしまったことが何度かあるくせに。

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ノートをおろす

2011-06-22 | 仕事の考え

担当編集者の方からの号令がかかったら、それまで何となく考えていて気掛かりになっていた原稿を書くためのノートを1冊おろします。

こういう時どのノートを使うか少しだけ迷いますが、結局大和出版印刷の薄型ノートhttps://www.p-n-m.net/contents/products/LO0105.htmlに落ち着きます。

本当は立派なぶ厚いノートを使いたいけれど、1つの項目1冊にした方が自分の使い方には合っているし、荷物が重くならないので、実は正解は最初から決まっているのだけど、少し迷いたいのが何か始める時のノート選びかもしれません。

薄型ノートは36ページのホッチキス留めA5サイズのノートで、知っているノートの中でも最も簡素なものかもしれません。

でも極上の書き味のリスシオ1紙を使っているので、中字くらいの万年筆で思いついたことをひたすら書いていくのは快感とも言えます。

少なからず生みの苦しみを感じる原稿書きの作業に楽しみの要素を与えてくれるものだと思っています。

前回の原稿も、その前の原稿も、基調講演の原稿もこのノートを使っていて、1冊をちょうど使い切っていた。

薄いことが機能であるということはこのノートで初めて知りました。

 

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注意してもらえる

2011-06-21 | 仕事の考え

いい大人になって、人から注意してもらえることが少なくなってしまいましたが、やはり人から注意してもらって改めようと思うことはあるし、それはとても恵まれていることだと思います。

今までの人生で、自分に親身になって注意してくれた人は何人かいて、そういう人にはやはり頭が上がらない。

注意してくれたこともそうですが、言いにくいことを嫌な想いをしながらでも言ってくれたその気持ちに感謝して、頭が上がらなくなる。

考えてみると、人に注意するよりも、注意されることの方が多かったような気がする。

それだけ無邪気で、自分の考えだけで完結して、周りのことが見えていなかったのだと思います。

 

話は少し違うけれど、妹はそうでもなかったけれど子供の頃から母親によく怒られた。

よく怒られたけれど、あまり言うことを聞く子供でもなかった。

落ち着きがない、余計なことをする、勉強をしないなど、勉強しなさいというのはしょっちゅう言われていた。

本当に勉強が嫌いな子供で、それを見て母は焦ったのだと思います。

父も母も優等生で(多分)、学生時代勉強はできた方だった(多分)から、自分の子供を見てなんでこんな子になってしまったのだろうと、自分たちの育児能力をうらんだりしたのだと思うと両親が気の毒に思います。

でも、子供は親とは全く違う独自の人格を持っているので、親に似ず勉強のできない子供が産まれることもあると思うけれど、そうはなかなか思えなかった、この子は勉強すればできるようになると信じたのかもしれません。

母親は亡くなってしまったけれど、父親には何か遠慮みたいなのがあって、それはやはり頭が上がらない。

子供の頃、言うことは聞かなかったけれど感謝しているのだと思います。

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