元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

Bellago(ベラゴ)取り扱い開始

2012-09-30 | 仕事について

三宮旧居留地に鞄・革小物工房兼ショップを構えるベラゴさん http://www.bellago.jp/ の取り扱いを始めました。

特長的なデザインを上質な革、金具で仕上げた、ガマ口型ペンケース、コインケース。

何か人を食ったようなデザインですが、でもどこか上品で育ちの良さが感じられる、とてもベラゴさんらしい、牛尾さんらしいモノになっていると思っています。

ベラゴの牛尾龍さんと知り合ったのは、昨年の夏頃でした。

当店の近所に独立してやっている革職人さんがいるということをル・ボナーの松本さんから教えてもらって、駒村氏と二人で手書きの図面を持って訪ねました。

それらは牛尾さん流の断りの言葉「非常に難解ですね」によって、まだ実現していませんが、たまに土曜日の夜のWRITING LAB.の打ち合わせに顔を出してくれたり、ペンケースSOLO などを作って下さっているイル・クアドリフォリオの久内さんご夫妻、「もしかして皆さんが作りたいと考えておられるものと合っているかと思って」と紹介して下さったりして、関わりは持ち続けていました。

当店でもベラゴさんのモノを扱わせて欲しいという意思表示はその間ずっとしていましたが、牛尾さんが大丸元町店でのイベント参加やオーダーの製作など多忙を極め、1年も経ってしまいましたが、扱えるようになったのはなかなか感慨深いものがあります。

牛尾さんのような職人さんが作品を提供してくれることは、当店のような小さな店を面白くする生命線だと思っていますし、こういった出会いがあるからお客様は当店に足を運んで下さると思っています。

ル・ボナーの松本さんから始まり、工房楔の永田さん、カンダミサコさん、イル・クアドリフォリオの久内さんご夫妻、そしてベラゴの牛尾さんという腕の良い、センスの良い職人さんたちとの縁と、それらの作品を理解してくれてご自身の日常に取り入れてくれるお客様方に感謝しています。

ベラゴがま口コインケース、ペンケースは山科のRIVER MAILさん http://www.river-mail.com/ でも扱っています。

ペンケース14700円、コインケース11550円です。


工房楔「楔が奏でる木の文具」展開催 10月6日(土)~8日(月祝)

2012-09-29 | 仕事について

毎年恒例になっております、工房楔のイベントを開催いたします。

工房楔の木工家永田篤史さんとは1年を通じてやり取りさせていただいていて、特に繋がりの強い職人さんの一人です。

永田さんと出会わなければ、木にこれほどの種類があることも、使ううちに艶が出てきたり、木目が際立ってきたりして、愛着が増すようなその良さを知らずにいたと思います。

もちろん当店においても、多くの人の心を惹きつける工房楔のモノがあることによって、他店との差別化ができていて、なくてはならない存在にもなっています。

永田さんをそのブログ http://blog.setu.jp/ などで知る人は職人というイメージを強く持たれていると思いますが、実は商品の説明なども上手く、洗練された部分も兼ね備えた人で、私はそういったところでも信頼しています。

来るたびに何かあって、それを手に入れる喜びがあり、またそれを使う喜びも得られるイベントとなっています。

ぜひ、ご来店ください。


獨往

2012-09-25 | 仕事について

当店5周年の日を気にかけてご来店いただきました皆様、本当にありがとうございました。

お花も、お菓子も、お言葉も心から感謝して受け取らせていただきました。

一介の店の開店記念日を気にかけて駆けつけてきてくれるお客様がおられるということで、この店が本当に恵まれているということを改めて確認し、店を続けることで皆様に恩返ししていきたいと、心に誓いました。

 

 

大和座狂言事務所の安東伸元先生から「獨往」という言葉を会津八一のまさに独往の書をもって贈られました。

他を省みず自分の道を進むという意味の言葉ですが、その言葉を知って自分の心の中にいつもモヤモヤとあったものが、スーッと獨往という言葉の中に吸い込まれていくような気がしました。

自分だけでなく、誰もがこうあって欲しいとずっと思っていた想いは、この「獨往」だったのです。

子供の頃から親によく天邪鬼と言われ、特に強く決意しなくても人と違う方向に進もうと思う性質ですし、他に誰もいなくても、先に歩いている人がいなくても不安に思う方ではなく、むしろその方が自分のやるべきことのように思えて、腰を落ち着けることができるようなところがありました。

先に誰も歩いていない道を自分の歩き方で歩く方が私には向いていて、誰かが歩いた後をもっと上手に歩くということは得意としない。

色々歩き方を教えてもらって、それを忠実に守るよりも、自分で歩き方を見つけて、失敗しながらでも、粗削りでもいいから誰も歩いていない道を切り開きながら歩く方が私は好きなのです。

もともと自分の中にあった「獨往」への想いがはっきり姿を現したのは、万年筆を使うようになってからで、万年筆によって私の「獨往」は後ろ盾を持ったような気がします。

でも仕事において、結果が思わしくなかったりすると、弱い心が起きてきて、他の人と同じようにしようとしてみたり、自分のやり方と違うことをしようとしたりすることもあります。

「獨往」はそんな自分の弱い心に打ち勝つための言葉だと思いました。

安東先生は家元を飛び出し、大和座狂言事務所を立ち上げました。

古い考えと保護されて安泰な立場により閉鎖的になってしまった伝統芸能の世界に嫌気がさしたのです。

家元にいれば生活や地位は保証されるけれど、その中に自分のやるべきことを見出せず、溶け込ませることができなかった不器用なご自分の生き方と、情熱だけで誰もが失敗すると思った万年筆店を開いた私の生き方を重ね合わせて、それを貫いてほしいと贈って下さった「獨往」の言葉。

先生と違って、時には弱い心が出て、それを見失いそうになる私にとって、「獨往」はお守りのような言葉なのです。

 

大和座狂言事務所の大阪能楽堂での公演が12月26日(水)にあります。皆様ぜひ狂言を観に、安東伸元先生の生き様を観に来てください。


決断

2012-09-23 | 仕事について

長く家事手伝いをしていた妹が海外に就職先を見つけて、そのための生活準備金を稼ぐために、関東の温泉に住み込んで仲居さんのアルバイトをすると家を出ました。

動き出したら極端に行動するのは吉宗家の家系で、人生を180度ひっくり返すような大技に突然出るのは妹らしいと思いました。

そこまで極端な行動ではなく、自然な流れだったと思っているけれど、5年前にこの店を始めました。

振り返るともはや懐かしく思うことがありますが、お客様に恵まれ、周りの人に助けられてばかりだったので、もう一度同じことをやって来られる自信がないので、絶対に戻りたいとは思わないですが。

毎年、開店記念の日がやってきて、初心を思い出すことができて、次の年、また次の年とスタートが切りなおすように気持ちを改めるのは、必要なことだと思っています。

でも、すでに店があって、お客様や仲間達が居てくれる現在の当店において、そのスタートはまた新たな1年の始まりという冷静で淡々とした気持ちに近い。

でも、ひとつだけ強く思うのは、今年も良い年になればいいなあという願望ではなく、それは自分で実現していくという、人が叶えてくれるのを待つのではなく、自分で実現するように行動したいということ。

これから先、妹のように180度ひっくり返すくらいの決断をしなければならないとき、勇気を持って行動したいとも思った、開店記念の日の朝でした。


開店5周年企画

2012-09-22 | 仕事について

9月23日(日)の5周年記念企画商品が出来上がり、明日(9月22日)から販売させていただきます。

「はじめての万年筆」文集は、私の呼び掛けに応じて寄稿して下さった40人の方の「はじめての万年筆」物語を集めています。

当店の略年表を収録し、表紙、後表紙の絵も凝って(?)います。

それぞれの方の万年筆の心象風景を見る思いで、良いものができたと嬉しく思っています。

印刷代の一部をご負担いただく形で200円でお渡しさせていただきます。

遠方の方には280円で郵送も承ります。メールにてお申込みお願いいたします。penandmessage@goo.jp

文集に投稿してくださった方には、1冊ずつ郵送させていただきます。 

 

5周年記念企画商品として、カンダミサコさんにA7メモカバーを作ってもらいました。

表紙にシュランケンカーフを使用し、ブラックは内側にブッテーロ(ネイビー、ワインあり)、ライトレッドとスカイはナチュラルなヌメ革を内側に使用しています。

とても丁寧に作られた、カンダさんならでは完成度の高い小品といった趣で、メモをとることが楽しくなる、あるいはメモをとらなくても持ちたくなるものだと思っています。

 

オリジナルダイアリー2013年版も入荷しました。

万年筆での書き味、インク映えを追求した紙リスシオ・ワンを使用して、ウィークリーダイアリーの罫線レイアウトは分度器ドットコム http://bundoki.com/ の谷本さんのアイデア、マンスリーダイアリーは共同作業で作りました。

現在、ル・ボナーさん http://www.kabanya.net/weblog/ が新作カバーを製作中で、そちらも出来上がりが楽しみです。


最後まで立っている

2012-09-18 | 仕事について

当店ではお客さんと商品以外の話をすることが非常に多い。

それは私がそのお客様がどこから来られたのか、どんな仕事をしているのかなど、その人のことに興味があって聞きたがるからなのだと理由は分かっています。

しかし、ご自分のことを話したがらない方には聞かないデリカシーも持ち合わせていますのでご安心ください。

もう10数年前から顔見知りでしたが、その方がミュージシャンだと知ったのはこの店を始めて、商品以外の話をよくするようになったからでした。

その方は関西を拠点に、日本はもとより海外でも活動しているアカペラグループBe in Voices http://www.beinvoices.net/ のリーダーであり、サックスプレーヤーでアロージャズオーケストラ http://www.arrow-jazz.co.jp/ajo/ にも参加している泉和成さんです。

当店で、泉さんがリズムを刻んだり、ハミングをしながら楽譜を書いている姿を見掛けられた方もおられるかもしれません。

泉さんとは文具の好みや文具に期待することがよく似ていて話がよく合いました。

電車の中で書き物をする場合、立っている方が振動を膝で免すことができるので、座っているよりも書きやすいということで共感し合えた初めての人でした。

Be in Vicesは泉さんが大学時代に結成したグループで、今年20周年を迎えます。

流れが強く、移り変わりの早い音楽の業界で20年も活動し続けてきたことが並大抵の努力では成し得ないことだということは、素人である私でも分かります。

私たちは成功とは何だろうと考えました。それは人によって違うものだと思うけれど。

私の場合、成功とは最後まで立ち続けることだと思っていますが、泉さんは「野心がなさすぎると言われるかもしれないけれど」と前置きをして、今のままでずっと活動し続けることが自分にとっての成功だと言います。

テレビに出たり、ドラマの中で演奏が流れたりすることは泉さんにとって成功でも、目標でもない。

私も瞬間的に店が良くなることには興味がなくて、ずっと続けていくためになることしか考えていません。

そうすることが私がライフワークと決めた、万年筆を使う人を増やすことにつながるからです。

私たちの世代は(泉さんはあたしの2つ年下)、バブル景気を経験しておらず、あの時は良かったと思える美味しい時を知りません。

今を必死に活動して、それを何十年と積み重ねていくことが、自分たちが描く成功につながるかもしれない唯一の方法だということを直感的に知っている。

それしかないことを知っているのは、私たちの世代の強みなのかもしれないと思っています。

 

私が宣伝するのは本当におせっかいなことですが、11月5日(金)伊丹アイフォニックホールで泉和成さん率いるBe in Voicesのコンサートがあります。

当店にもチラシをご用意しております。よろしくお願いいたします。


イル・クアドリフォリオのイベントが終わって

2012-09-17 | 仕事について

連休の最終日の夜はお客様の引きが早くて、私が帰る方向の電車の中も寂しい。

その現象は連休が長くなればなるほど顕著だと思っています。

でも私はそんな空いた電車やバスの風景が嫌いではなく、風情さえ感じます。

連休の最終日や日曜日夜、ガランとした車内で、ほとんどの人が休日なのに、自分と同じように仕事に出て帰ってきた人、友達と遊んで帰ってきたと思われる若い人や、週末家族との時間を過ごして単身赴任先に戻ってきたサラリーマンの姿を見ている。

私は週末が休みではないから、この風景が好きだと言えて、土日が休みだったらまた違う気持ちなのかもしれない。

私にとって、今日のような連休最終日や日曜日は、明日から始まるにぎやかな1週間の前のわずかな静けさだから。

 

でも、15日、16日と開催していましたイル・クアドリフォリオのイベントが終わったばかりということで、この連休最終日は祭りの後の寂しさを味わっています。

来店してイル・クアドリフォリオの製品を手にとって、久内さんご夫妻から話を聞いて下さった皆様に心から感謝しています。

いつも明るいイル・クアドリフォリオの久内さんご夫妻や、駒村さん、花房さん、森脇さんというWRITING LAB.の仲間達にも感謝している。

イル・クアドリフォリオの製品に関して、「磨く」というキーワードがこのたびのイベントで、自分の中に生まれました。

靴と同じように、色を重ね塗りしたパティーヌ仕上げのものは磨きをかけることで、透明感のある艶を見せます。

以前買っていただいたものも、イル・クアドリフォリオのイベントで磨き直すことによって、状態によるけれど美しく蘇る。

依頼された方は少なかったけれど、今回のイベントの出し物として、で久内さんは靴の磨きを承るということを提案してくれました。

パティーヌされたイル・クアドリフォリオの製品は磨き直すことで、エージングとは正反対の新品のような輝きを取り戻します。

そんなまた違う革の良さを目の当たりにしたイベントでした。

 

 


イル・クアドリフォリオオーダー靴

2012-09-16 | 仕事について

革靴が好きになったのとほぼ同時に、イル・クアドリフォリオの久内さんと出会ったのは、すごい偶然で面白い縁だと思いました。

レッドウイングとか、トリッカーズ、パラブーツなど日々の仕事や生活の中に溶け込ませることのできる靴の中で一番好きだと思えるものを選んで少しずつ揃えようとしています。

久内さんに靴を作ってもらいたいという願いは持っていましたが、私の感覚からはとても高価(20万円)なので、なかなか現実的に考えられませんでした。

でもそれは久内さんに足を採寸してもらって分かったことだけれど、一般的な男性よりも踵が狭かったり、ボリュームが少なかったりして、サイズが合っていても足が靴の中で泳ぐような経験をしていると、自分の足のために作られた靴を履きたいという想いは強くなっていく。

駒村氏は私が悩みに悩んで出した靴を作るという決断の後の呼びかけにその場で軽く応じてくれて、一緒に作ることになりました。

イベント初日の昨日、サイズをチェックするための仮履きの靴を試しました。

底はゴムですが、アッパーはちゃんとした革で私のサイズに作られている。

履いてみるとピッタリ足に合っていて、当たって痛いところもなければ、空いているところもない。

これでいいと思いましたが、久内さんは靴の上から足を押さえながら、木型に何か書き込んでいく。

書き込みが終わると、何と仮履きの靴を刃物で切り込みを入れ、もう一度私に履かせて、チェックする。

ここまでしてもらって、合わないはずがないと思い、とても嬉しくなりました。

オーダーしているのは、馬革のスエードを叩いてつぶしたザックリした好きな風合いの革にストレートチップにフィレンツェ風のメダリオンの入った焦げ茶色の紐靴。

出来上がるのが、とても楽しみです。皆様もいかがですか。


神谷利男デザイン「925nib ring」

2012-09-13 | 仕事について

万年筆を使うということは、書くということに特別な強いこだわりを持つことで、それはひとつの生き方だと言って笑われたことがあります。

今でもそれは変わらずに感じているけれど、万年筆を使っている人には、それぞれの生き方の主張のようなものをいつも感じていました。

働き始めたばかりの頃に勤めていた文具店のお客様方のちょっとしたお話しや雰囲気などから伝わってきて感じていたことでした。

そういう人たちの影響を受けながら、私も万年筆を使いながら自分らしい生き方を創り上げてきたような気がします。

グラフィックデザイナーであり、神谷利男デザインという会社の代表取締役である神谷さんも私にそんなふうに影響を与えた人の一人で、前に向かう力強さと他人を思いやる心の同居した豪快で繊細な人だと思いました。

神谷さんは万年筆のペン先の美しさやデザイン的な面白みを見て、このペン先型リングをデザインしたのだと思いますが、万年筆を使うことは生き方を表現することで、このペン先型リングを身につけることに精神的な意味をも見出すと私が言うと、大袈裟だと思われるだろうか?

当店のホームページになる言葉、「万年筆は人の生き方を変える力がある」という言葉は大袈裟でも何でもなく、私自身が心から思っていることなのです。

神谷利男さんがデザインして、神谷さんの大学の後輩である宝飾作家であるアトリエシミズの清水範康さんが製作を担当しているペン先型シルバーリング「925 nib ring」完成しました。

当店には8号、14号、19号の在庫ございますが、基本的に受注製作で納期約3週間です。よろしくお願いいたします。

ホームページでも販売しております https://www.p-n-m.net/contents/products/category2-8.html

 

 


カンダミサコさんの神戸大丸でのイベント(9月12日~25日)(カンダサン滞在は18日まで)

2012-09-11 | 仕事について

カンダミサコさんの春の大丸でのイベントは大好評で、半年も経たずして、再度出店になりました。

今回は、私の家にも入っていたので、神戸市内全域だと思われますが新聞折込にもカンダさんのバックが選ばれて出ていました。

確かに前回のカンダさんのブースは練りに練られた秀逸な売場だったと思いましたし、品数も相当ありました。

モノ自体は信頼性の高い、丁寧な仕事が施されていますので、売れないはずがない。

さすがカンダさんと、自分のことではないのに誇らしい気持ちになります。

ぜひ皆さま、神戸大丸へもお越し下さい。当店はそこからもう少し行ったところです。