私たちが身に着けるものは全てファッションで、それによって他人からどう見られたいかを表す。もちろん自分の気分が良いという自分への作用もあるけれど。
中にはそういうことに無頓着で、どう見られようと気にしない人もいて、そういう人の心の強さが羨ましく思うけれど、自分には難しいと思う。
見栄え良く見られたいというのがファッションの根底にあるものだと思いますが、見栄えが良いというのはひとつの強みだと言えなくもないので、それにこだわることは人間の防衛本能なのかもしれません。
ファッションは他人から良いように見られたいという目的の他に、自分はこういう生き方をしている、あるいは目指しているといった精神性も表していると思います。
なかなか難しいけれど、私くらいの40才代後半になってくると、他人から良いように見られたいという以上に、こういう生き方をしている、あるいは目指しているという精神を表すものを身に着けたいと思ってきます。
それは本当に難しいことだけど、服装も自分の精神的支えとか、心の拠り所として考えるようになってくるのだと思います。
自分の精神性、考え方を表すものとして、ペンは服装以上にそれを物語ってくれるものだと思っています。
ペンの良し悪しによって、その人が書くことを大切にしている人なのかどうかということが伝わるし、万年筆はさらにそれを強烈に物語ると思っています。
さらにちょっとペンに詳しい人(全人口のどのくらいの割合存在するのか分からないけれど、日本に130000人くらいか?もうちょといるかな?)が見た時にこの人はすごいと思わせるペンを持っているかどうかは、勝負は斬り合う前からほぼ決まっている武士の心境にさえ近いのではないか。
そういう話をすると万年筆は実用の道具ではなく、装飾品、アクセサリーではないかと言われる方もおられるかもしれませんが、私はそれを否定したことはなくて、気持ち良く書くことは当たり前に備えていて、その上にその人の生き方を表す力があるものが、良い万年筆のひとつの条件だと思っています。