元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

コラボメモカバー完成

2009-03-29 | 仕事について
ル・ボナーさんと当店とのコラボレーション企画第1弾はメモ帳のカバーです。
縦開きのメモ帳が多く、それがメモをとる時の基本姿勢になっているとも言えますが、なるべくさりげなくメモがとれて、ポケットにも邪魔にならずに入れておけるものを作りたいと思いました。
メモは発想の原点であり、これを習慣化することによって、私たちの感性はよりクリエイティブに活性化されると思っています。
仕事道具において、最も大切なメモのための道具をコラボレーション第1弾に選んだのは、今回の企画への思い入れの強さからでもあります。
中に入るメモ帳はA7サイズの横開きのもので、コクヨ、ナカバヤシなどいくつかのメーカーから発売されています。(当店ではコクヨのものを扱っています)
中には切り離すためのミシン目の入った」ものもあり、私は使うほどに薄くなっていくこのタイプを40歳近くになって衰え始めた記憶力を補うためにも愛用しています。
2年半ほど前、ひっそりとした万年筆売場で松本さんと出会った時に、私の人生が動きだしたと思っています。
何かを語り諭されたとか、具体的に教えを受けたということはありませんでしたが、刺激を受けたという表現が一番正しいかもしれません。
あの時、松本さんが古山画伯から私を紹介されて、店に来られることがなかったら、私の人生は止まったままだったのかもしれないと思うと、出会いの不思議さ、人生の偶然性に冷や汗をかきます。
松本さんの革製品を扱いたいという気持ちは出会った頃から持っていて、それはこの店がオープンした時に実現しましたが、お互いの共同作業によるコラボレーションの企画はありませんでした。
松本さんが作る売れ筋のペンケースのタフな仕上がりにも満足していましたし、ご自分のお店で販売する鞄作りでとても忙しいことはよく分かっていましたので、こちらから何か作って欲しいという依頼を遠慮していました。
しかし、あまり良い話を聞くことが少なくなった世情などを見ていて、お客様も、自分たちも元気の出ることをやっていきたいという想いから、ル・ボナーさんとコラボレーションしたものをしたいと思いました。
松本さんは私の気持ちを分かってくれて快く引き受けてくれました。
私のラフなたたき台をもとに、アイデアを出してくれて、いくつかの試作品を作ってくれました。
なるべく薄く、小さなペンも挟めて、クリップを通すと開き留めにもなるというものに仕上がりました。
上着のポケットに入れておいても邪魔にならず、中に入れるメモ帳もどこでも手に入るもので、毎日の仕事の中で便利にお使いいただけると思います。
ル・ボナーさんのペンケースと同じブッテーロ革を使い、同色で揃えることが可能になっています。価格は中身別で5,250円です。

聞香会の夜

2009-03-22 | 仕事について
3時半頃、香道師の森脇直樹さんがすでにお馴染みの和服姿で現れました。
荷物を置いて、街の方へ用事を片付けに行くので、5時頃には帰ってきます出掛けていきました。
こうやって森脇さんを送り出す時、父親のような気分になります。
親子といってもおかしくないほど齢の離れた18才の森脇さんが講師を引き受けてくれた聞香会がお客様方の要望で、2回目も開催することができました。
前回7人のお客様が参加されましたが、今回神谷さんご夫妻、楔の永田さんを含めた11人の方が聞香会の当店に集まって下さいました。
前回参加されたリピーター組は、I先生とHさんがこの日購入されたばかりの楔さん・ルボナーさんのコラボレーション企画コンプロット10を囲んで盛り上がっていて、こちらもとても楽しそうでした。
聞香会は18才とは思えない森脇さんの上手な説明や、タイミング良く出る質問などで、テンポ良く進んでいきました。
最後には皆さんの暖かい拍手によって終わり、森脇さんも皆さんの真剣な態度に、閉店後行ったラーメン屋さんで聞香会を嬉しそうに振り返っていました。

オープンの日に居合わせて

2009-03-20 | 万年筆
垂水の三井アウトレットパークマリンピア神戸が拡張し、リニューアルの日、自宅の近くなので遊びに行ってきました。
開店時間の少し前に着きましたので、オープンを待つ人たちの長い列に並び、神戸ナインクルーズのナックルボーラーなどを招いた華々しいセレモニーを見物しました。
近所のブルメール舞多聞という小さなショッピングセンターがオープンした時も、居合わせていて、その時は風船を渡され、開店と同時に風船を空に放ちました。
たくさんの人の希望や情熱が込められた、このような施設のオープンを見るのは嫌いではなく、お客さんの入りを気にしながら真剣な表情で話し合う、それまでとても忙しかったであろう、スーツ姿のビジネスマン、ビジネスウーマンの姿がたくさんありました。
たくさんの人が店内になだれ込んでいきました。
どのお店も普段よりも多目のスタッフがいて、お客様の対応に隙がないように気が配られていて、元気良くこの開店の日を盛り上げようとする気持ちが感じられました。
この場に居合わせて、当店のオープンの日を思い出しました。
開店と同時に何人ものお客様が来てくださって、何度も何度も心から感謝の言葉を口にしました。
お客様が店に来て下さることがこんなにも有り難い事だと知ったのは初めてでしたが、それは創業した者だから知ることができた特権で、その気持ちはオープンの日よりも大切な継続していくということにおいて、最も大切に持っておかなければならない気持ちなのかもしれません。
景気が悪いと言われ、消費が低迷する中、それぞれのお店が続いていくのは、運や資金も関わってくるかもしれませんが、一番大事なのは手法や仕掛けではなく、その気持ちなのだということを開店してまだ1年半しか経っていませんが分かってきました。
これは建前とか理想ではなく、店を運営する者の肌感覚とでも言うべき現場意識から日々感じていることです。

卒業式に出る

2009-03-12 | 万年筆
自分の子供や家族について他人に話すことを今まで一切しませんでした。
それは初め意識していましたが、やがて自分の習慣になりました。
しかし、昨日あまりにも心が動いたことがあったので親馬鹿な話をします。

中二の息子が卒業式で送辞を読むということで、先生からのお誘いもあって卒業式(卒業証書授与式というのですね)に行ってきました。
授業参観や運動会、合唱コンクールなど、会社にいた時は都合をつけて行くようにはしていましたが、店を始めてから難しくなっていたので、久し振りの学校行事への参加でした。
三年生の保護者の方々に混じって、妻と席について静かに厳かに執り行われていく式を見ていました。
卒業証書授与、校長先生、PTA会長のお話が終わって、息子の名前が呼ばれました。
大勢の人たちに見られているにも関わらず、落ち着いていて、堂々とした態度は席を立って歩き出した時に分かりました。
送辞を読み出した時、マイクの調子が悪くなり、音を拾っていないことを理解した彼は生声で会場全体に聞こえるように声を大きくして、はっきりと話し始めました。
淀みなく5分程の送辞を読み終えましたが、最後に感極まって声を詰まらせました。
それでも背筋を伸ばして顔を上げたまま席に戻っていく彼を見ながら、甘えん坊で頼りなく、かわいかった頃のことをとても懐かしく思い出しました。
知らない間にここまで成長したという満足感よりも、もうあの頃に戻れないという寂しさを強く感じました。
親らしい振る舞いや、躾らしい躾もしたことがありませんでしたし、塾などに通わせなかったのに、彼は成績も良く、生徒会の活動でも皆を引っ張るリーダーのような存在になっています。
子は勝手に育つようですが、自分は彼の人生にどれだけの良い教訓を授けることのできる存在なのか、親としての力の無さを感じました。

神谷さんのいる日曜日

2009-03-09 | 仕事について
店から万年筆だけでなく、いろいろな情報を発信したいと思っていましたし、この店での時間が来られた方にとって特別なワンシーンとなって欲しいと思っていました。
本当は考えないといけないのかもしれませんが、店の利益とか売上関係無しに自分がおもしろいと思うものを皆様と共有したいという想いもありました。
知り合った時から、その人柄に惹かれて楽しくお話させていただいていた、神谷利男さんが出版された「My Favorite Fountain Pens」の写真と絵の展示をしていて、昨日は一日中神谷さんが店にいてくださった日でした。
以前から店に来てくださっていたお客様もおられましたし、神谷さんの広いネットワークの人もたくさん来られました。
神谷さん関係の人の中には万年筆に興味は持っていたけれど使ったことがないという方が多く、そんな方に万年筆の説明をしたり、万年筆が好きでこの店によく来てくださる方と話したりして、神谷さんもこの店のスタッフのように忙しくされていましたし、お客様にも楽しんでいただけたようでした。
神谷さんと仕事をしたことのある人は神谷さんのことをよく知っていて、皆さんそのバイタリティと才能に敬意を持っておられることが分かり、改めてデザイナーとしての神谷さんの影響力の強さを知りました。
日曜日の当店は、確かに特別なワンシーンがたくさんあって、それはここが世界の中心だと思えるほどのものだったと、大袈裟でなく思いました。
次に日曜日(3月22日)も神谷さんは店にいてくださいます。

あまりの混みように手が回らず、I先生、Tさん、Sさんには申し訳ないことをしましたことを、お詫び申し上げます。

3月20日(金・祝)第2回聞香会開催いたします。

2009-03-06 | 仕事について
夜九時までの延長営業日の3月20日夜7時より、2回目の聞香会を開催いたします。
お香のことをもっとたくさんの人に知っていただきたいという香道師森脇直樹さんからのお申し出で2回目を開催することになりました。
前回は告知が急になってしまいましたので、参加したかったのに来ることができなかったという方が多かったようです。
もちろん前回参加された方も大歓迎です。
一人でも多くの方の参加を森脇さんとともに望んでおります。

前回の内容から、初心者の方でも気楽に楽しめるものとなっていることが分かりました。お香を楽しむ、それがこの会の目的ですので、気軽にご来店ください。

ビジネスのスピード

2009-03-04 | 仕事について
神谷利男さんが本を出版すると決める前からお話は聞いていて、大和出版印刷の多田さんを紹介したりしていたので、その進捗状況が耳に入りました。
1月中旬に作りたいと思っていると言っていたものが、2月の末にはとても美しい本になっていました。
そして、その本の印刷と平行してDMの作成も進められていた神谷さんの手際の良さと、それについていった大和出版印刷、双方の驚くべき仕事の早さに驚き、感心しました。
きっと世の中はこのスピードで進んで行くのだろうと思い、自分の生きてきた業界がいかに遅く、のんびりとした時間で動いていたかを知りました。
神谷さんの仕事の早さを知って、私も少しは仕事のスピードを上げたいと思いました。
仕事のスピードを上げるには、まず仕事を貯め込まないことで、今日できることがあれば明日の分もやってしまい、翌日の時間を作る。
そうやってできた翌日の時間をクリエイティブな時間に当てる。
明日のクリエイティブな時間は、今日の地味な作業が作るということを神谷さんの仕事を見て知りました。

神谷利男 MyFavoriteFountainPens 出版記念展開催 3/1(日)~31(火)

2009-03-01 | 仕事について
出来上がるのがとても楽しみな1冊の本があります。
3月1日当店で発売させていただく、グラフィックデザイナーの神谷利男さんがご自身のコレクションの中から33本を厳選し、そのペンとそのペンにまつわる話を綴ったエッセイです。
今回この神谷利男さんの本「My Favorite Fountain Pens」発売を記念して、神谷さんが万年筆で描いた絵画と写真の出版記念展を3月1日(日)から3月31日(火)まで開催します。
期間中の3月1日、29日を除く日曜日は著者の神谷さんも当店におられますので、ぜひ展示を観に来ていただけたら嬉しく思います。
校正段階にあった、その本のゲラを全て読ませていただきましたが、その本には神谷利男という一人の男の生き様が書かれていて、彼のホームグラウンドである京都の雰囲気が伝わり、デザイナーのクリエイティブな感性が感じられました。
私は神谷さんに会って話しをすると元気をもらったような感じになりますが、この本を読んだ後にも、そのような前向きなエネルギーをもううことができました。
神谷さんのことを知らない人でも、この本で神谷さんの考えること、感じることに触れることで、33本の万年筆への想いから始まる心象風景を感じることができると思います。
神谷さんが常に持ち歩いている、10本ほどの万年筆は様々な色のインクが入っていて、その万年筆で書かれたA4サイズの大きなハードカバーのノートを見せていただいたことがあります。
そこには神谷さんが移動中やその活動の中で感じたこと、見た風景や人物などが描かれていて(あるいは書かれていて)、そのノート自体が作品のように思いました。私は今まであんなにすごいノートを見たことがなく、大いに刺激を受けました。
そんなクリエイティブノートから生まれた、絵、写真、文章の詰まったエッセイと作品を当店から発信できることをとても光栄に思っています。