元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

工房楔イベント 3月25日(土)26日(日)

2017-03-19 | 仕事について

工房楔のイベントがいよいよ次の週末になりました。

今回のイベントの目玉は、こしらえの種類の多さと、新型2mm芯ホルダー、そして永田さんが秘蔵していた黒柿だと思っています。

ぜひイベントにご来店いただきたいと思っています。

 

 

私の周りにそんな人はいないけれど、自分の仕事がどれだけすごいか、どれだけ難しいことをしたかと喧伝する口数の多い職人は大したことのない人だと思っている。

それは自分がペン先調整という、職人の真似事をしているからよく分かります。

自分の仕事には自信があるけれど、向上心を持っていて、もっと良くしたい、もっと美しくしたいと美意識を持って仕事をしている人は多くは語らないと思っています。

工房楔の永田さんは、自分が手に入れた木については多弁になって私たちを楽しませてくれるけれど、自分の仕事についてはあまり語りません。

銘木の中でも複雑な模様が美しく出る杢の部分は、硬さなどがほかの部分と違うため、加工が難しいけれど永田さんは何でもないことのように美しいラインを持たせて仕上げてきます。

それが私が永田さんを信じている理由のひとつです。

他の木工家の人が使わないような、様々な銘木も見て欲しいけれど、永田さんの技術力も見て欲しいといつも思っています。

例えばパトリオットボールペンの中央付近のふくらみを残しながら、両エンドを絶妙なバランスで先細りにしてシャープに仕上げるのは、微妙な違いで大きくその姿は変わってくると思っています。そんなところにも職人としての力量とともに、センスも感じることができる。

木工家はただ木を扱っていればいいわけではなく、良い素材の良い部分を見抜いて使わなければならない。そしてそれを美しく仕上げなければならない。

その違いが我々には分かりにくくても、それを追究する生き方が木工家なのだと永田さんを見ていて思うようになりました。


文集「雑記から3」原稿募集のお知らせ(3月末まで)

2017-03-14 | お店からのお知らせ

当店のメモリアルイヤーにはいつもお客様から原稿を募集して、文集を作っています。

10周年を迎える今年も作る予定で、3月末まで「記念の万年筆」についての1200文字程度の原稿を募集しています。

何かの記念に手に入れた万年筆にまつわる話、個人的な想いなどをお寄せ下さい。

メール(penandmessage@goo.jp)でお送りいただくと、有り難く思います。

当店は万年筆店なので、お客様方になるべく万年筆で書いていただきたいと思っています。

書くことを楽しんで、それを日々の生活の張り合いのように感じていただきたいと思っています。

もしかしたら、当店にとって万年筆というのは二義的なもので、この店の第一の目的は書くことを楽しんでもらうようにすることにあるのかもしれません。

書くことを楽しむために万年筆が最も適している。だから当店は万年筆店なのかもしれません。

万年筆で特別なものを書いていただきたいとはいつも思っていなくて、手帳を書いたり、日記を書いたり、メモを書いたり、日々皆様が書かれているものを万年筆で書くことによって、それが楽しいと思っていただけたら素晴らしいと思う。

毎日の暮らしの中に書くことが溶け込んでいて、その生活にさらに潤いを感じる人が増えたらいい。それが当店の役割だ思っています。

もしかしたら非日常的な晴れの日の記念に手元に来た万年筆もあるかもしれなくて、それについて書いていただいても大いに結構ですが、それぞれの方の生活とともにある万年筆の何でもない話も書いていただきたいと思っています。

「記念の万年筆」というテーマでそれは難しいかもしれないけれど、様々な記念があると思います。

私もありふれた平凡な記念の万年筆にまつわることを書きたいと思っています。


仕込み

2017-03-12 | 実生活

私にも毎週、毎月やってくるいくつかの締め切りがあります。

人に決められたことなら逃れる言い訳もあるかもしれませんが、どれも自分で決めたことなので誰のせいにもできず、守るしかなく、確か一度も遅れたことはないと思います。

何かを無理やりに書こうとすると本当に苦しく、こんな面白くないものを誰が読んでくれるのだろうかと、自分で書いていて思うこともあります。

私の書くもの(ブログ、ホームページなど)が面白くない時に楽しんでいただく方法は、今回は相当苦しそうだなと私の状況を推察することだと思っていただきたい。

文章の中に、他人のものではない、自分独自の考えを展開できたり、自分の経験から何か述べることができたら、その時は自分なりに充実感を感じています。

以前はいざ書こうと、あるいは書かなければいけないと、頭が空っぽなのにペンを持って紙に向かっていたけれど、私の場合はそこから何も生まれないことが分かりました。

どんな小さな芽でもいいから頭の中に仕込んでおいて、それを繰り返し考えてはじめて短い文章になる。

繰り返し考えることで、自分の考えなども生まれて、文章に盛り込むことができる。

手で書くということはもちろんしていて、大切な作業だけど、その前に頭に仕込んで考えるという締め切りのない作業がとても大切でした。

でも、それはいろんなことに言えることかもしれない。

10年後、3年後、今年、今月、明日、どんなふうな仕事をするかということを頭に仕込んで考えておかないと、いざその時に考えようとしても、何も残せない時間を送ることになります。それを自分ができているとは言えないけれど、イメージは持っておきたい。

学校の勉強で予習が大切でとても有益だということを仕事をするようになってから実感していて、何にでも仕込みということは必要なのだと思っています。


街への愛情

2017-03-05 | 実生活

あまり意識していなかったけれど、私も地元への愛情があるのだと思います。

特に神戸でないととか、神戸にこだわっているわけではないけれど、神戸で神戸の情報を発信している媒体が好きで、その手の本はつい手にとってしまうし、とっている新聞も神戸新聞です。

新聞雑誌の役割はインターネットに取って代わられたという時代だけど、ネットニュースにも載らない情報、ニュースなどがあって、これは地元誌でしか読むことができません。

そういう意味でもまだまだ紙媒体の存在意義はあると思っています。

地元への愛情があると思うようになったのは店を始めてからです。元町駅北側の商業地域と生活圏の間のような雰囲気を歩くようになって、これが私にとっての神戸だと思ってる。

ただ美しいとは違う、趣きを持った街の風景に惹かれ、いいなあといつも思います。

 

神戸の情報を神戸やその周辺地域に発信しているAMラジオ局 ラジオ関西というものが神戸にはあって、私が若い頃は須磨にありました。神戸の人で知らない人はいないと思います。

今はハーバーランドの神戸新聞のビルの中にあります。

ラジオ関西の番組に出てもらえないかと言われた時、話すことが苦手だと自分で分かっているのに2つ返事で承諾してしまいました。

神戸のメディアと聞いて反射的に好感を抱くのと、声を掛けてくれた人の役に立ちたいという気持ちと、自分の苦手なことに立ち向かいたいという気持ちもありました。

放送はやはり緊張して、あまり上手く話せなかったけれど、でもラジオの世界で働く人の仕事振りを間近で見ることができました。

進行役の林真一郎氏のその場の空気を作り、進行をぐいぐい引っ張って行きながら、それぞれに的確なパスを出してコメントを引き出す手腕には感動しました。

でも、終わって数日経つけれど、次はもっと上手く出来ると思ってしまっているので、バカだと思っている。