元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

一年の実感

2015-12-28 | 実生活

今年最後の営業日を終えました。

皆様、今年も誠にありがとうございました。来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。


毎年最終営業日を終えた時には、今年も無事終えることができたという安堵感を抱いていました。

何事もなく生き残っていることができている。こうして立って、来年も迎えることができていると思うのは、戦場で生き残ることができた兵士のような感覚なのかもしれません。

でも今年は一年が終わった安堵感などなく、もう終わってしまったという焦りを感じている。

12月10日にスタッフMを迎えて、いろいろ仕事を覚えてもらいたいと思っているということもあるけれど、来年に目標があるからなのかもしれません。

いずれにしても、生きていられることの感謝から、時間が足りないという、感覚に一年を終えた実感は変わってきています。

今年も私が探究しているのは自分自身に何ができるのかということです。

それを追究して、何かできる可能性や電波のように周囲に伝染する影響力のようなものを強くしたいと思ってきました。

自分自身という個の延長として、自分の店に何ができるかということにも興味があって、その可能性や影響力を大きく、強くしたいといつも思っていて、それはきっとこれからも変わらずに思いつづけているのだと思います。

 

良いお年をお迎え下さい。


第二章

2015-12-20 | 仕事について

今年の営業日もあと1週間で終わろうとしている。

当店はオープンから今までの、物語で言う第一章を終え、第二章を始めたばかりなので、それが中断されるようでもどかしい気がするけれど、年末年始の休暇は自分にも必要な期間なので仕方ないと思っています。

ご存知の方も多いと思いますが、第二章はスタッフMの加入で始まりました。

若いスタッフを迎えて、店は今まで以上に明るくなった。

店内のレイアウトを5時間かかったけれど変えて、スタッフMの居場所を作りました。

経営者として働いてくれる人は少ない方が人件費が少なくてすむので、気楽でいいに決まっている。

店を始めたばかりの時は後継者となる人の育成はどうするのかという問題を突き付けられた時、全く考えられませんでしたし、近年はまだその余裕はないと思っていました。

しかし、きっと余裕などは待っていても一生できなくて、後継者を迎えると決めて行動しないといつまで経っても状況は変わらないということが分かってきました。

私は生きていくために店をしているけれど、維持するだけに必死になる段階は過ぎているような気がしています。余裕はないけれど。

維持するということの次の段階、もっと良くしていきたい、そして自分の仕事を展開していきたいと思っていました。

後継者と思える人がいないうちは第二章の展開などイメージできなかったけれど、Mが入ると考えた途端にいろいろと見え始めてきて、夢が見ることができて、それぞれの立場にならないと見えない世界があることを実感しています。

万年筆の業界をもっと良い、ずっと続いていくことができるしっかりしたものにしていきたいとも、今まで以上に強く思うようになって、同じ業界の心ある人と話すと、やはりその話になります。

まず自分と直接関わりを持ってくれている人、会社と協力し合って、もっと万年筆の状況を良くするようにしていきたいと思って、当店の第二章はそれを絡めた活動をしていきたいと思っています。

一人入っただけで店の業績が急激に良くなるわけではないし、もう一人養っていかなければならないと考えると今までのように気楽にはいられないけれど、それも楽しい努力で、必要に迫られて頭を振り絞って生まれるアイデアもあるので、来年はもっと頭を使っていきたいと思っています。

 


本を読む

2015-12-15 | 仕事について

本を読むのがとても好きで、それは何を得るとか、自分のためになるということではなくて、私にとってはテレビを観るのと同じような感覚です。

活字を追って、その本の中に書かれている考えを読んで自分に当てはめて考える作業が好きです。

ブログやホームページなど、自分が書いているもののネタになればという気持ちも本当はあるけれど。

ある程度の年数かけて、少ないながらもある程度の本を読んで思った本を読むことの効用は、様々な考えを読んでその中から自分が共感できるものを知って、自分の言葉や考え、モノの好みをかためていくことができることだと思います

もし今まで本を読んでいなければ、自分の好きなものとか、考え方、目指す生き方などはっきりと見えていなかったかもしれないと思っています。

きっと人の後についていくだけの、右往左往する、ブレまくる生き方をしていたと思います。

別にそういう意識を持って本を読まなくても、本を読むとはそういうことで、読んでいるうちに自然と考えはかたまってくる。本を読んで様々な考え方を知り、それを自分に照らし合わせるようになります。

でも会社に入ったばかりの時、それぞれあまり差がないのに、20年ほど経ったら埋めようもないほどの差になっているというのは、そういう考えを積極的に取り込むようにしたか、受け身で教えられることだけを習得してきたかという差なのかもしれないと思います。

 

最近私はあえて本を読まず、書くことや考えることに専念しようとしていました。

読みたいと思うものに残念ながら出会えていなかったこともあるけれど、本を読むと自分が書くこと、考えることに影響を与えそうだったので。

なるべく自分らしく方針を決めたいとか、行動したいという時には読まない方がいいのではないかと思いました。

その自分らしさも、本を読むことの蓄積で形成されるものだと思います。

10代、20代の自分らしさで世の中を渡っていくなんてきっとできなくて、若いうちはひたすら吸収して自分を確立する。

そして然るべき時にしっかりと考えを発信できるように準備する。そのために本を読んで考えをかためる。

それはきっとどんな仕事にも当てはまり、様々な場面で応用できる、知識よりもはるかに大切な考えを形成することだと思います。


仕事時間

2015-12-13 | 実生活

今も思い出す自分の仕事の原風景(?)があります。

会社に入ったばかりの週末で、たくさんのお客様が来られて、先輩方はとても忙しそうに働いていたと思います。

私は何もできないので、入口の横に立ってずっと「いらっしゃいませ」と言っていました。

他に何もできないので、それ以外にできることがなかったからですが、そうしながら自分は定年になるまでこうやって、休憩時間や閉店時間を待つのかと、これから続く途方もなく長い仕事時間を思いました。

そこには将来の希望もなくて、ただ諦めのような気持ちだったことをはっきりと覚えています。

きっとこれは人によって違うのだと思うけれど、こう考えると仕事は面白くなるのだという、自分の仕事に対するコツのようなものをひらめいていから、仕事は格段に楽しくなって、わずかながらの成果も上がるようになっていった。

そのひらめきは自分のことを知るということに近いような感覚だけど、仕事は他の誰かの役に立つようにするものだけど、結局はまず自分と向き合う、自分自身との戦いのようなところがあります。

途方もなく長く感じられた道だったけれど、今思うとあっと言う間に24年ほど経ってしまって、遠い所まで来てしまっているけれど、その時の自分の気持ちは今も忘れられない。

新しい仕事を始めた若者がいたとして、当時の私と同じ気持ちになっている人がいるかもしれないけれど、誰でもそうなのだと気にしないで欲しいし、これから続く仕事時間を無駄にせずに蓄積していって欲しいと思います。

いい齢になったときその蓄積したものがその人の仕事においての価値を決めるから。


模様替え

2015-12-08 | 実生活

店内の家具のレイアウトを入替えて模様替えをしました。

ただ気分転換がしたかったわけではなく、作業効率や他の理由があるためですが、いずれお分かりになると思います。不確定だけど。

長年前のレイアウトで営業してきたのは、あれで完璧だと思っていたからでした。開店させることで必死で、心の余裕のない状態で作ったわりに、長く使い続けることができたのは、何かが降りてきたとしか思えない。

それを今更変えるのは、実はなかなか勇気が要りました。風水や迷信、ゲン担ぎではなく、その店を見た時にお客様が直感的に受ける心理的作用が変わる、店の相が変わることが怖かった。

前のレイアウトは悪いものではなかったので、8年続くことができたのだと思っていて(本当はいろんなことが総合的に作用するのだと思いますが)、それはどうだろうと思っていましたが、今のレイアウトに満足しています。

こうやってレイアウトを変えると、数日間は落ち着かないし、右ハンドルの車から左ハンドルの車に乗り換えたような感じがしますが、いろんなところに手を入れて微調整をしています。

細部にもこだわって手を入れていると、自分の店への愛着がさらに強くなって、もっと凝りたいと思っています。


出張販売

2015-12-06 | お店からのお知らせ

来年1月23日(土)24日(日)代官山蔦屋書店T-site内で開催される「2016ステーショナリーサロン」に出店いたします。

当店としては他所に出て行くというのは初の試みで、長年店というお客様が来て下さる場所で仕事をしてきましたので、慣れないことではありますが、外に出てみたいと最近思っていたところでしたので参加させていただくことにしました。

イベント期間とその前日1月22日(金)23日(土)24日(日)は臨時休業とさせていただきます。

今まで頑なに夏と年末年始以外は水曜定休を守り通して、それを少し誇らしく思っていました。
これが店をする人間の信じる道だとばかりに、そうすることが商売を続ける者の務めだとばかりに、ある種宗教のようの守ってきましたので、このお話をいただいた時、店の営業があるので検討の余地無しと思っていました。

しかし、私には別の宗教があって、「おもろい」と思ったことはやった方が良いという信条もありますし、代官山蔦屋書店さんは好きな場所で、東京に行った時にはいつも立ち寄っていました。万年筆を販売する場所として、一番フレッシュな場所だと思っていましたので、思い直して出店することにしました。

長机ひとつという限られたスペースですが、どうせやるなら神戸の店をそのまま持って行くつもりで臨みたいと思っていて、非常に重いペン先調整機も持って行くつもりにしています。

関東方面にお住まいの方で、日頃お会いすることができない方とお会いできるのを楽しみにしています。

もしご用意させていただけるものがございましたら、ご用意させていただいて、イベント会場でお渡しすることもいたします。何なりとお申しつけ下さい。

何かイベントが入ると、それがひとつの目標になって前に進む力が強くなる。他店には当たり前のことかもしれないけれど、当店としてはかなり実験的な試みで、今後こういったことを継続できるかどうかも試したいと思っています。

代官山蔦屋書店内でのイベント会場でも、皆様とお会いしたいと思います。
ぜひご来場下さい。よろしくお願いいたします。