元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

元気の素

2009-10-25 | 仕事について
毎日の生活の中で処理できない感情が増えてくるとストレスに押し潰されそうになります。ひとつひとつの問題がゆっくりとやってくると自分の中でそれなりの納まり所というか、気持ちの持って行きようが見つかりますが、それが大きすぎたり、一気にたくさんやってくると本当に辛いと思います。
そんなストレスいっぱいの日々の生活の中で元気になれる、元気の素を持っている人はそのストレスから自分を解放する手段を持っていると言えます。
万年筆を集めるのもそうかもしれませんし、どこかに出かけたりすることもそうかもしれません。
そんなふうに時間を忘れて好きでできることが元気の素で、それは誰にでも必要なものだと思います。
私の元気の素は、少し変かもしれませんが靴磨きです。
靴にブラシをかけたり、クリームを塗って磨くことが好きで、夜家族がテレビを見ている時や、寝静まった後、一人で玄関で靴を磨いています。
自分の磨く靴がなくなったら、妻の靴まで磨くという有様で、これをしていると楽しくて仕方ありません。
思えば中学生や高校生の頃、スパイクやグローブを磨くのも好きだったことを靴を磨きながら思い出しました。
以前の私はそんな元気の素を持っていませんでした。
仕事以外に興味のあることがなく、それは自分が仕事が趣味で、唯一情熱を傾けることができるものだからだと思っていましたが、それは大きな間違いで元気の素が必要なほどのプレッシャーが仕事でかかっていなかっただけだと最近思いました。
今の仕事はもちろん好きですし、生き方そのものだと思っていますが、自営業というプレッシャーはそれなりにかかっていて、やはり元気の素が勝手にやってきました。
皆さんは元気の素、持っていますか。

万年筆で描こう!(10月23日金曜日に変更)

2009-10-23 | 仕事について
今月も神谷利男さんの万年筆画教室、万年筆で描こう!を10月23日(金)19時から21時に開催します。
今月のテーマは自画像を描こうです。
自画像と言っても本格的なものではなく、サインや寄せ書きの横に自分の顔の特長を捉えたイラストなどが描けたらいいと、私は勝手に思っています。
それは各人の力量に応じて自由に描いていただきたいと思います。
前回のお気に入りの物を描こうは男性の集まりが良く、皆さん車(写真)、時計、カメラなど趣味的なものを持って来られて、楽しそうに書いていました。

万年筆を描こうの今後の予定は、10月23日の自画像の後、11月20日(金)に卒業制作の日とします。卒業制作の課題は自画像とお気に入りの万年筆を描く事になっています。
卒業制作の課題は、12月1日(火)から12月25日(金)当店で展示し、12月25日夜7時から卒業、クリスマスパーティを簡単な軽食で開催します。(お酒はありません)
クリスマスパーティーは課題を出されていなくても参加できますので、お気軽に参加してください。
神谷さんの万年筆画教室の来年以降の予定は検討中ですが、何らかの形で継続していきたいと思っています。
ぜひ万年筆を描こうにお気軽にご参加ください。

服装

2009-10-21 | 仕事について
とても個人的でくだらないことですが、自分の服装についてずっと迷いがありました。
ル・ボナーの松本さんや分度器ドットコムの谷本さんなどは、ご自分のドレスコードみたいなものを持っていて、自分らしくとても似合っている、カッコいい服装をしていますので参考にしたいと思っていましたが、なかなか様になりません。
長い間、スーツにネクタイで仕事をしていて、ほとんどスタイルや主張なしでそれらの服を着ていましたので、自分はどんな服装が似合うのか、どんな服装をしたいのかさえも分かりませんでした。
でもダイアリーに自分が憧れる大人の暮らし方、仕事のスタイル、考え方などを書き連ねるうちに、私は自分の仕事に疑問を抱くことなく、繰り返しの毎日の仕事を黙々とこなす物静かだけど男らしい農夫のようになりたいと思っていることが分かりました。
子供の頃に見てきた、こだわりのないカッコいい田舎の男たちの姿が心の片隅にあったのだと思いました。
繰り返しの毎日を受け入れることで、毎日の通勤や掃除など、今まで時間を取られていてできれば要領良く避けて、頭脳労働に時間を割きたいと思っていたことが、とても楽しくなりました。
服装もそういった暮らしや仕事のしかたに合った、田舎のおじさんをイメージしたものにしていきたいと思いました。
もちろん自分なりのイメージで、そのままのスタイルではありませんが、憧れと考え方、仕事や暮らしのスタイルに合うものに変えていきたいと思い始め、少しずつ変わり始めました。



思いが重なるその前に

2009-10-18 | 仕事について
10月15日、工房楔の永田さんに女の子が誕生しました。おめでとうございます。
永田さんは、その仕事に向かう姿勢同様かなり前からはりきっていて、楽しみにされていたので、毎日赤ちゃんかわいくて仕方なく、いじりまわしているのではないかと、その光景が目に浮かびます。

私も一人の子の父親ですが、時間を作って育児を手伝ったり、なるべく一緒にいるように努力したりすることがあまりありませんでした。
それに対して激しく後悔したりすることはありませんが、子供の成長は本当に早くて、その日その日でどんどん変わっていきます。
そんな子供の一日一日をちゃんと確認して、記憶しておけばよかったと少しだけ後悔しています。
平井堅の「思いが重なるその前に」という曲を聞くと、息子がまだ小さくて頼りない甘えん坊だった小学校低学年の時のことを思い出します。
あまりにも幼くて親としてはとても心配で、でもとても可愛らしく思えました。
授業参観に行っても、全員手をあげているのに一人だけ手をあげていないことにハラハラしたり、ディズニーランドのシンデレラ城の中が暗いことを怖がり、母親の手をきつく握って離さなかったり、競争が苦手で運動も得意ではなかったことをよく覚えています。
そんな息子も高学年になると急に変わり始め、積極的に色んなことをするようになり、運動や勉強も一生懸命する活発な子になっていきました。
その変化があまりにも急激だったので、親の私たちは息子が幼くてかわいかった時を懐かしんでばかりいます。
かわいかった、ポッチャリした小さな男の子が、細くて、背の高いしっかりした中学3年生になって、時の流れ、子供の成長についていけない私たちがいます。

中華バー天清

2009-10-13 | 仕事について
今週のワークションプは来週23日に変更になっていますが、今週の第3金曜日(16日)は夜9時まで延長営業いたします。
何もイベントのない久しぶりの延長営業日、よろしければ遊びに来てください。

先週の土曜日、ル・ボナー、分度器ドットコム、Pen and message.(収入の多い順)の定例会を青木にある中華バー天清で行いました。
定例会の目的はお互いの店の情報交換をして、それぞれの店の活性化に役立てるという、立派に経費として認められる活動だと思っています。
と言っても、仕事の話ばかりしているわけではなく、無駄話で親交を深めるという笑い声が絶えないものであることは否めません。
以前から松本さんが信じられない値段で高級中華を食べさせてくれる店があると言っていて、機会があればぜひ訪ねたいと思っていたお店が中華バー天清でした。
谷本さんがアルファロメオ(最近では似合いすぎるくらい似合っています)で迎えに来てくださり、六甲アイランドへ松本さん拾うために向かいました。
アルファロメオのエンジンの音が良いのも、エンジンが車をぐいぐい引っ張っていく感じも、乗り心地が適度に硬めで心地よいのも十分すぎるくらい私は理解していて、この車の魅力は分かっています。
しかし、松本さんと谷本さんは私があまりにも物を買わないことを冷やかして、私が車を買う時はきっとプリウスを選ぶだろうと言っています。
そこに違和感を覚えます。
松本さんの道案内で阪神青木(おおぎ)付近までたどり着きましたが、数回しか来たことがない上に、夜ということもありお店の場所が分からなくなりましたが、谷本さんがアイフォンの地図から見つけてくれました。
こういう時、松本さんと私は適当なので全く役に立ちませんが、谷本さんはいつも冷静で頼れる存在です。
阪神電車青木駅の南の関西スーパーの南側の小さな路地に天清はありました。
入ると中はカウンターだけの小さな店で、名前の通り小ぎれいなバーのようでした。
松本さんが予め予約しておいてくれていたので、4人ともお茶を注文したらコースが始まりました。
ピザのように大きな餃子や炒飯などおいしくいただきましたが、圧巻は鱶ヒレでした。
今までの人生で鱶ヒレスープに入っているバラバラの鱶ヒレしか食べたことがなく、塊の鱶ヒレを初めて食べることができました。
その後、神戸牛のタタキや一口ステーキまで出てきて、超豪華コースを驚きながら楽しみました。
後悔があるとすれば、ご主人が聞いてくれた時(谷本さんに向かって聞いていた)に、小食の他3人が神戸牛の量を200gを4人で分けるとか、最後の汁そばを1つを4人で分けると言ってしまったことでした。
青木と言えば、阪神電車沿線で下町のイメージのある場所なので、有名ホテルで腕を振るっていたご主人が本格中華を食べられるお店を開く場所として不釣合いなような気がしました。
しかし、そんなアンバランスさもとても素敵だと思える満足感の高いお店だと思いました。(誕生日月ということで、松本さんと谷本さんがおごってくれたのですが)
機械の不調で、ダイアリーのカバーが遅れる(11月になる)ことを初めて認めた松本さんのごめんなさい、ごめんなさい、逆切れがとても可笑しくて(待って下さっているお客様方には申し訳ありませんが)、10月になって急に過ごしやすくなって、気持ちいい夜風にあたりながら、大笑いしながら4人で歩いて車に戻りました。

「私は夢中で夢を見た」 石村由起子 (文藝春秋)

2009-10-08 | 仕事について
西宮のララポート甲子園にある文具から生活雑貨まで揃うセレクトショップ、クロッシェの書籍コーナーがとても好きです。
普通の書店と違い、内容や思想ごとに分類されていて、読みたいと思える本を見つけやすくなっていて、いつも何らかの本(著者)との出会いがあります。
今回もそんな本と出合いました。

奈良の外れにある雑貨・カフェの店「くるみの木」とホテルなどの複合施設「秋篠の森」のオーナーである石村由起子さんの店を立ち上げてからの25年間を振り返った本です。
本を買ってすぐ、妻の買物を待つ間にショッピングセンターのベンチに座ってこの本を読み始めました。
今まで本を読んで、そんなことなどなかったのに、読んでいるうちにとても恥ずかしいですが涙が止まらなくなりました。
悲しい内容でもないし、今の自分が辛い状況にあってそれと重ね合わせて涙腺が刺激されたわけでもないのに。
私は周りにいる人たちに助けられて店を始めることができたので、そして店を運営するということに関して15年の学習期間がありましたので、石村由起子さんのように全てを一人で始めて大変な想いをしたわけではありませんでした。
しかし、店を始めることになった時の不安とたくさんのやるべきこと、店が始まったばかりの頃のさらに大きな不安などは、ものすごくよく分かりましたので、強い共感を覚えました。
石村由起子さんはどんな状況でも、いつも夢を持って、それに立ち向かい、次々と生じる困難を克服していきました。
そして、どんなに仕事が順調でもそこに満足せず、安泰することなく、さらに大きな夢を実現して、自分とお客様を始めとする周りの人たちのさらに大きな幸せを実現するための自分から進んで、困難に立ち向かって行くのです。

奈良くるみの木、ぜひ行って見たいと思いました。

誕生日が過ぎて

2009-10-04 | 仕事について
若い頃は時間が無限にあるように感じられて、振り返ると随分無駄にしてしまったと思っています。
将来のことも全く想像できず、やりたいことも分からず、中年の自分が何をしているのかイメージすることができませんでした。
一人になるときまって襲ってくる漠然とした不安と焦燥感を感じていました。
30代になると日々の忙しさに紛れて、漠然とした不安や焦燥感は薄れていきましたが、相変わらず将来をイメージすることはできませんでした。
自分に残された時間がもう半分になってしまったと思うようになったのと、将来のイメージが見えてきたのはほぼ同時期で、最近のことです。
自分の中で、これから先の生き方とゴールの仕方のイメージが定まったので、通り道が分かり、余計に短く感じられるようになったのかもしれません。
そのイメージ通りにこれから先の人生は進んでいかないと思いますが、そのように生きていくと腹をくくることが将来をイメージするということで、やはり人生は短いと感じられます。


ニューヨーク

2009-10-02 | 仕事について
ニューヨークの街の風景などを撮った非常に分厚い写真集を手に入れ、毎日眺めています。
大きなアメリカ合衆国のほんの一部分の小さな場所。
あんな小さな場所になぜ世界の全てが集まるのか不思議で仕方ありませんでした。
大学を卒業した日、ちょうど湾岸戦争で海外に、特にアメリカに行く人が少なくなっていた時に、アリゾナにいる友人を頼ってアメリカへ行きました。
友人にひっついて数日間、南部をドライブする旅でウォーミングアップをしてからニューヨーク行きの旅に出ました。
旅慣れた人なら苦にならないのかもしれませんが、宿も予約せずに行き当たりばったりのニューヨークを訪れることは当時の私にとってすごい冒険に思えました。
ラガーディア空港からのバスでタイムズスクエアに着いた時、誰もが怪しい悪人に見えました。
でも気を取り直して、数日間のニューヨーク滞在の拠点となる宿の確保をすることにし、何軒かのホテルをまわった後、タイムズスクエアに面した驚くほど安いホテルナショナルを見つけました。(後で分かりましたが、田舎に行くと同じ値段でホリデーインみたいなきれいなホテルに泊まれました)
インド系の無表情だけど非常に親切な男性がフロントにいました。
ニューヨーク滞在中の数日間(2,3日)、私はそのホテルを拠点にマンハッタン島の中をほとんど歩きました。
有名な観光名所、映画に出てくる見覚えのある場所、美術館など。
レストランには怖くて入れず、全ての食事はマクドナルドかピザ、露天のホットドックだったり、夕方になると疲れてお腹が空いて、歩くのも遅くなり、ビジネスマン姿の黒人に追い越されながら「ジャップ」と言われたことなどはほろ苦くとてもよく覚えています。
英語もできず、お金もないこの旅で私が得たのは、全て何とかなるということでした。
その写真集を見ると、自分の中に柱となるものがなく、将来をイメージできず、漠然とした不安だけを持っていた当時の気持ちを思い出すことができます。