元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

ペン先の調整

2006-02-28 | 万年筆
ペン先調整をするようになって5年くらい経つと思います。
何も分かっていない私に一番最初にペン先の調整を教えてくれたのは、パイロットのOさんというもうかなり前に退職されてしまった方でした。
その方は万年筆クリニックをしたり、オリジナルのペン先を作ったりという派手な活動はしていませんでしたが、1日数十本の多い時には100本以上にもなる万年筆の修理を一人で受け持っていました。
丸1日Oさんの傍らについてペン先の揃え方、ペーパーの使い方などを丁寧に教えていただき、ペン先調整の基本的なことを全て身に付けさせてくれました。
数ヵ月後特にパイロットの方々にご迷惑をおかけしてしまいましたが、ぜひOさんに万年筆クリニックをしていただきたいと思い、開催させていただいたことがありました。
お客様に対面することをかなり不安に思っておられるようでしたが、あの時のクリニックやOさんのことを懐かしむ方が何人かおられます。
クリニックの数日後Oさんから「楽しかった」とお手紙をいただいた時はすごく嬉しく、Oさんのクリニックを恒例にしようと思いましたが体調不良で退職されてしまいました。

私の全てを伝える

2006-02-23 | 万年筆
ある同僚にペン先の見極め方を教えました。
仕事が終わってからの遅い時間からの始まりでしたが、時間が過ぎるのも気にならないほど聞くほうも話す方も真剣なやりとりをしていました。
同僚は自分にはペン先を見極める素質がないと思っていましたが、それは今まで本当に肝心な見るべきポイントを教えてもらえる機会がなかったことが原因だと分かりました。
同僚はそのポイントを掴むと分かるようになってきたようでした。
私が退職してしまったパイロットのOさんやセーラーのKさんなどの偉大な先生方につきっきりで教えていただいて、分かるようになったのと同じように私もその同僚に全てを伝えたいと思っています。
万年筆についてもっと知識を深めたいと思った人が、ちゃんと知識を持った人に教えてもらうことしか、伝えていく方法はありません。
お客様方がどの店員に当たるかは本当に運しかないということになりますが、店員と話してみたり、自分の持っているペンをチェックしてもらったりして、ちゃんとルーペでペン先を見極めることのできる店員さんを選ぶ事をお奨めします。

クローズド・ノート

2006-02-16 | 万年筆
あるお客様から「万年筆が小道具としてたくさん出てくる小説があるから読んでみたら。おもしろいよ。」と教えていただいたのが、雫井脩介さんの「クローズド・ノート」という小説です。
出てくるペンは、ドルチェビータ、ミニオプティマ、エクリドール、スーベレーン、筆DEまんねんなどスタンダードからマニアックなものまで。
作者はなかなか万年筆にこだわりを持っていて、かなり好きなのだと伝わってきました、この小説を読んだ人はそのストーリーに感動するとともに、万年筆を使ってみたいと強く思うのではないかと思います。
ペンから離れた所にいて、私の気持ちもペンから離れそうになりますが、何人かの人の意識、無意識の励ましで、最近また気持ちが強くペンに向かっています。
私のことを私以上に高く評価して下さって、大切に思ってくれている人たちに心から感謝しています。

私の読書

2006-02-16 | 万年筆
子供の頃から活字中毒で、いつも傍らに本がないと落ち着きませんでした。
どんなものでも、読めるものがあればいつも読んでいましたし、何もなければ新聞を読んでいました。
それは今でも変わっておらず、新しい世界を切り開いていきたいときは新書に記された論文のようなものから読んでいきますし、既知の世界を深めていきたいときは文庫本を探します。
文庫や新書を読むのは、こだわった装丁やきれいな表紙に価値が見い出せないからです、本に大切なのは中身だと思っていましたので、私の本棚は貧相な新書や文庫がびっしりと詰まっています。
最近どうしても、ハードカバーでもいいのですぐに読みたいと思える本に出会いましたので、次回ご紹介します。

元気付けられたこと。

2006-02-14 | 万年筆
他のお店のペンの販売員の方で、私のことを目標だと言ってくれる方が来てくれました。
その方はまだ若いですが、すごく勉強熱心で休みの日にはよくいろんなお店を見て回っていました。
その方が多忙な毎日の中で本当に自分がしたいことができずに、ストレスが溜まって昨年末に体を壊してしまいました。
精神的にも辛く、もう仕事を辞めてしまおうかと思ったときに、考え続けてみるとやっぱりペンを売りたいと思って、私の所に来られました。
何のアドバイスもできるほどの人間ではありませんが、その方のお話をお聞きして、当たり前のことをいろいろともっともらしく言いました。
その方は「元気付けられました」と笑顔で帰られましたが、そういう方が来てくれて一番元気付けられるのはいつも自分自身だと思いました。
そしてペンの販売員として一流になりたいというその方の純粋な想いに、こちらの心も浄化されるようでした。

新入社員の気分

2006-02-05 | 万年筆
画材の売場に職場が変わり、毎日の業務で精一杯の日々が続いています。
本当に何も分からず、どこに何があるのか、そしてそれをどう使うのか、商品ももちろんですが、はさみや輪ゴムなど備品の場所も分かりませんので、誰かに聞かないと何もできません。
誰かに助けてもらわないと何の仕事も完結せず、周りのスタッフに迷惑をかけています。
でも、仕事というのはレベルの違いこそあれ、誰かに助けてもらっているものだということを改めて感じました。
自分が先頭を走っているとそのありがたみに気付きませんが、自分が足を引っ張る立場になるとそれが嫌というほどよく分かります。


10年後の万年筆ユーザーを育てる

2006-02-03 | 実生活
出張で、ある万年筆メーカーさんを訪ねました。
そこでいつもお話させていただく、神様と呼ばれる万年筆職人と会談しました。
会談と言っても私はほとんどお話を聞くだけで、ペン先調整に関する話以外は、その深い話に口を挟むことはなかなかできませんが・・・。
神様は、若い人たちにもっと万年筆を使ってもらえるように努力しなさいと、いろんな例え話を様々な所に脱線しながら、私に言って聞かせました。
私も今年のテーマはそれだったので、言われている意味がすごくよく分かりましたし、それに対して様々な工夫をしていきたいと思っていました。
今までのものと違うターゲットを狙った今年の限定万年筆は、仕様に関してまだ何もお話できませんが、神様にも喜んでもらえると思っています。