元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

きれいと汚いの間のもの美

2021-01-24 | モノについて

カンダミサコさんに神戸ペンショーの時実験的に作ってもらった様々な素材のペンシースの中でも、一番人気があったクードゥー革。
それで2本差しペンシースを作ってもらったら、なかなか好評でした。

アフリカの大型の牛科の動物であるクードゥーの革は、自然の中でいきているため、傷やムラが多く、厚みもバラバラです。

しかし、それがこの革の景色というか、模様のようになっていて、面白味のある革だと思っています。

キメの揃った作り込まれた完成度の高い革もいいけれど、私はどうしてもこういう素材感に溢れたものに惹かれてしまう。

こういうものを私はきれいと汚いの間と日頃から言っていて、モノのあり方として最高のモノとしてきました。

その価値は、かけた手間や金額では推し量ることのできないモノのあり方で、完全に自分の好みだけど、そういう自分だけのモノの見方の基準もあってもいいと思います。

きれいと汚いの比率はその有り様によって様々ですが、この間に存在する全てのものを私は拾っていきたい。

ちなみにクードゥーの革の度数は、きれい3:汚い7くらいのかなりの上級者でないと理解できないものだと思っています。

クードゥーの革のユニークなところは、表革がかなり暴れているのに、裏革はスウェードに使えるくらいのキメの細かさと、揃った毛並みを持つところです。この表裏の極端な差を知ってから、さらにこの革に惹かれるようになりました。

 

 

 

 


手帳

2019-09-13 | モノについて

 

とても小さなことかもしれないけれど、考え続けていたことがまとまって、自分の小さな手帳に書くことができた時に喜びを感じる。

書いたものが何かになることはないかもしれないけれど、ひとつの考えがまとまったということが嬉しいし、手帳に書き込むという行為が何とも好きです。

自分が手帳に書き込むことが好きだからこの仕事をしていて、自分でも使いたいと思うものをオリジナルで作ったりします。

大和出版印刷さんの名作の紙リスシオ1で最近作ったミニ5穴システム手帳用のリフィルはただでさえ楽しい手帳に書くことを、ものすごく楽しくしてくれるものだと思って、私も毎日使っている。

しっかりした紙質、極上の書き味、くっきりとした筆跡は文字が上手くなったように勘違いする。

手帳に書いたものは、自分の思考の記録として後から読み返すことができて、その時の雰囲気のようなものを懐かしく感じることができればそれでいい。

毎週金曜日にホームページに更新している「店主のペン語り」でオリジナルダイアリー2020年版が出来上がったことをご報告します。

10年前にオリジナルダイアリーを最初に作った時、リスシオ1を使っていたことを思い出した。

当時その書き味に感動して、ただ書いていたいと思いました。それは今も変わっておらず、その書き味を味わうために書きたいとさえ思います。

リスシオ1はある古い機械でしか作ることのできない紙で、リスシオ1を作るためだけに老朽化した機械を維持することができず、機械が廃棄処分になってしまい、リスシオ1は二度と作ることのできない貴重なものになってしまった。

貴重な素晴らしい紙なので、細部にこだわって、神戸の腕の良い町工場の力を借りて、自分でも使いたいと思えるミニ5穴のリフィルを製品化した。

小さな紙片だけど、これは私以外の人たちにも大きな喜びをもたらしてくれるものだと思っています。

9/15()かなじともこさんの智文堂Pop Up Storeというイベントを当店で開催します。新作のミニ5穴リフィルも発表されるということで、手帳を楽しくする新たなものをまた当店で扱うことができます。


究極のガラスペン

2017-12-12 | モノについて

先日、江田明裕さんのガラスペンを当店で買われたお客様からメールをいただいて、あんなに細く滑らかに書けるガラスペンは他にないとお褒めいただきました。

様々なものに詳しく、厳しい目をもって実際に使い込まれる方なので、その言葉は本当に嬉しかった。

江田さんのガラスペンは、万年筆、革製品、木製品が中心と並ぶ当店において、いいアクセントになっていると思います。重厚なものの中に、透明感があって、清らかな明るいものがある。

当店は長い間、ガラスペンを扱ってこなかった。これと思うものに出会わなかったのがその理由ですが、お客様からガラスペンはないの?とはよく聞かれていました。

たまたま休みに倉敷を歩いていて、立ち寄った建物の一角に江田さんの工房があって、ガラスペンが目についた。

試し書きして書きやすかったから購入したということにしているけれど、もちろん試し書きはしたけれど、本当は江田さんの人柄がその作品を物語っていて、良いはずだと直感で買って帰りました。

そして、持ち帰って試してみたら書きやすかった。

直感は、この人とは波長が合いそうだとか、この人なら良いものを作りそうだというようなものだったけれど、本当に幸運な出会いによって、当店は江田明裕さんのガラスペンを扱っている。

もし私がたまたま倉敷のあの工房に入らなければそれはなかったと思うとヒヤヒヤしますが、当店はどこにでもあるものばかりを扱いたいわけではなく、自分が良いと思うモノ、尊敬できる人のものを扱っていたいと思っているので、展示会などに出向いてもあまり収穫はないのかもしれない。

 

万年筆に限らず、ペンの書き味において細く滑らかに書けるということは究極だと思います。

太くて滑らかに書けるものはいくらでもあるけれど、細く尖ったもので滑らかに書けるようにするためには、技術が優れていないとできませんし、時間もかかる。

大量生産されるガラスペンでは書き味の調整まで気が回らないのは当然だと思います。

江田さんは、美しい軸のペンを作るというガラス作家としての仕事と同じくらい、書き味にもこだわっていて、滑らかな書き味のガラスペンを作りたいと思っておられる。

これからもこういう当店ならではのモノと出会いたいと思うけれど、これは本当に運なのかもしれない。

 

 


消せる安心感

2016-12-13 | モノについて

フリクションボールペンが世界中で売れていることに、確かに便利だから当然だと思う反面、ボールペンの文字を消したいと思っている人が多いことが信じられないような気がします。

ボールペンや万年筆のインクは消えないからその価値があるような気がしていますので、それが消せるのは、消せる安心感よりも消える不安感の方が私は強い。

フリクションを、消しカスを出したくないからペンシル代わりに使うのなら分からなくもないけれど。でも消せたと思っても実は60度以上でインクが透明になっているだけです。

消えない安心感を求めて、中には顔料インクなどを使う人もいるくらいなので、本当にそれぞれだと思います。

消せないことがインクの価値ではあるけれど、どうしても消さないといけない時もあります。

私の場合、手紙を書いていて、後の方で間違えた時です。

本来書き直すべきですが、その手紙をペリカンロイヤルブルーで書いていた時はよかったと思います。

ご存知の方も多いと思いますが、ペリカンロイヤルブルー用消しペン/訂正ペンスーパーシェリフというものがあります。

万年筆のインクを消すことができるものは、以前からガンジーという会社から発売されていたものが、今はプラチナから発売されているけれど、これは2種類の液を使わないといけない面倒なものでした。

しかし、スーパーシェリフは白い方で消したい文字を塗りつぶすだけで消える。
スーパーシェリフで消した跡に万年筆のインクは乗らないので、反対側にあるブルーのペンで書き直します。

このブルーがペリカンのロイヤルブルーと同じ色なので、ペリカンのロイヤルブルー用ということになっていますが、消すだけならラミーもモンブランも消すことができます。

ちなみにラミーからはラミーブルー用インク消しINK-Xというものがスーパーシェリフと同内容で発売されています。

私の場合、手帳な2本線で消してしまうけれど、几帳面な人は手帳に使うといいと思います。

消しペンがあるからペリカンロイヤルブルーで手紙を書くということもあって、消せる安心感もやはり自分の中にもありました。


ペンテルマルチ8

2016-12-11 | モノについて

筆文葉会議の時に金治智子さんがマルチ8をガシャガシャと色を変えながら使う姿を見て、どうしても欲しくなって、私も買ってしまいました。

マルチ8は私が仕事に就いた時からある商品で、文具店にとって超定番だと思っていましたが、新しくできたお店は扱っていないことが多いことに気付きました。

マルチ8はたいていの場合、製図・デザインに分類されますが、変に特別扱いせず複合筆記具に分類すればもっと売れる良い商品だと思います。

新しいお店にマルチ8がないのは、簡単に売れる商品ばかりを扱いたがり、こういう説明の必要な商品を嫌う傾向にあることと、文具店の売り場に製図・デザインのコーナーがなくなっているということが理由なのかもしれません。当店では扱おうと思います。

マルチ8を簡単に説明すると、8色の色鉛筆やボールペンを1本で切り換えて使うことができる芯ホルダーで、マルチ8は8色の色鉛筆が装備されていて、スーパーマルチ8は3色のボールペンと色鉛筆を装備していますが、中身は自分でアレンジして入れ替えることも可能です。

マルチ8は透明なボディで内部機構を見ることができます。
尻軸をノックすると1本の芯が弾倉に装填されて、重力によって降りてくるところが見えて面白い。


当店オリジナルダイアリーも筆文葉リフィルも白地図のようなものです。
そこに書き込んで、色を塗ることで完成する。

色がビッシリとある世界地図よりも枠線だけの白地図の方が私はワクワクします。

未完成のダイアリーやシステム手帳の中身を完成させるためのおもちゃ・・・いやツールとしてマルチ8と万年筆を使っています。

 


ラミーの世界観

2016-11-20 | モノについて

おそらく世界中のラミー扱っているお店に置いてあると思われるラミーの新製品Lxの専用什器。

面白そうなので、当店も置いてみました。

床面積をあまりとらず、色も黒なので当店でも違和感なくさりげなく置くことができていると思っている。

使っている家具のせいか、当店はメーカーさんが用意した什器があまり合わず、結局外してしまったり、始めから頼まなかったりすることがほとんどなので、この什器は珍しい。

真四角で黒のベースに黒でLAMYのロゴ。さすがラミー、とてもシンプル。

あれ?この什器何かイガん(歪ん)でない?

この什器を見た人皆が思うかもしれないけれど、上に乗っているディスプレイはわざと歪めにセットするようになっている。

それが証拠に、中は正面を向くようになっている。

さすがバウハウス。シンプルだけでなく、いつもどこかヒネリが利いています。

ラミーは、こういった什器や箱などの備品にもこだわっていて、世界観をとても大切にしています。

ブランドなども世界観を大切にしていて、こだわっているけれど、それが価格に大いに転嫁されているし、何か違います。

ラミーの製品は、どれもそれについて何かしゃべることができて素敵だと思っていて、什器ひとつとってみても、人を和ませることができる。

そういうことがだんだん大切に思えるようになってきました。

 


システム手帳再興

2016-11-15 | モノについて

万年筆で書くことが楽しいと思ってもらって、万年筆を使う人を増やしたいということが当店発足の理念です。

書くことを最も楽しくしてくれて、趣味的にも使えるものとしてシステム手帳に行き着くと思っています。

綴じ手帳はリング部分がなく、書きやすいというメリットはあるけれど、システム手帳のリフィルを抜き差しして、自由にページ構成を作ることができることは魅力で、中身をそのままに気分によって外側を替えることもできます。

業界内各地で勃発的にシステム手帳再興の動きが起こっていて、皆同じことを考えているのだと思いました。

革の本体も重要ですが、システム手帳が再興したと思えるのはやはり中身のリフィルが充実した時だと思います。

メモとダイアリー以外の様々なリフィルが世に出てくると楽しく、開発者のロマンはそういうところに表れる。

金治智子さん企画の、当店のシステム手帳リフィルのブランド「筆文葉」はシステム手帳再興のエンジンのひとつになれると思っています。

今5種類だけの商品構成だけど、他所にないものを少しずつ増やしていきたいと思っています。

 

筆文葉発売当初からの対の企画としてあるカンダミサコバイブルサイズシステム手帳にコンチネンタルを追加しました。

コンチネンタルのシリーズにいつも使うエージングの楽しい革ダグラスを使い、内側はブッテーロのワイン。コンチネンタルのものだけリングをゴールドにしていて、なかなか合っています。

自分が使っていて楽しいものを皆様と共有できたらと思い、楽しみながらシステム手帳の企画も進めていきたい、そしてシステム手帳と万年筆の組み合わせを追究していきたいと思っています。


銘木の楽しみ

2016-10-11 | モノについて

 

イベント後で様々な種類の木のものが入荷していますので、少しご紹介します。

高級素材ローズウッドこぶ杢です。模様の美しさ、色艶、手触りの良さ全てと持っている素材だと思います。

ローズウッドこぶ杢の中でもさらに希少な白バラです。多少の色変化も期待できそうです。

花梨は楔の素材でも定番中の定番で、玉杢の美しいものがよく使われます。

ハワイアンコアの根杢です。見る方向、傾け方によって3Dのように見える杢が大変美しい。

左が楢の杢、右がチークです。こういった単純に美しいという言葉では言い切れない、味わい深さを持った素材が私は好きです。
チークは油分を多く含み、独特の手触りがあります。

 

手前はエージングが楽しめるキューバマホガニー、奥が手触りを楽しむブラックウッド。

銘木は本当にたくさんの種類があります。当店では「樹種事典」なる本を販売していて、それと工房楔の銘木作品と合わせて見るととても楽しいのでお勧めします。




ペンを立てる

2016-08-23 | モノについて

万年筆の保管は寝かせておく方が良いか、立てておいても良いのかとよく聞かれます。

移動中などは、胸ポケットなどにペンを固定するためのキャップについたクリップの位置から想像できるように、ペン先を上に向けて立てて持ち歩いた方がいいのだと分かります。
今のペンはあまりインク漏れはしないけれど、何らかの衝撃が加わった時にキャップ内にペン先のインクが落ちないようにするためです。

静止している状態での万年筆の保管方法については、私は立てても寝かせてもいいけれど、中には立てておくとインクがタンク内に落ちて(戻って)しまって、ペン先が乾いてすぐに書き始めることができないものがありますので、そういうものは寝かせて保管して下さいと申し上げます。

一部の万年筆は寝かせておかないといけないけれど、立てて置いておくというのは場所をとらなくて、スペースの効率は良くなります。

smokeペンスタンドはペンを立てて保管しながら、すぐに見分けて使うことができますので、複数の万年筆を道具として使い分けることに役立つものだと思っています。

3本用とか、5本用などはホームページに掲載できていますが、10本用は箱がなく店舗でのみ販売していました。

素材はウォールナットで左右の柱の形を違えているのが面白い、そして10本も立てておくこのモノの存在も面白いと思っています。価格は34200円(税込)です。

こういうご紹介できていないモノがあります。


原稿用紙で遊ぶ

2016-08-02 | モノについて

原稿用紙の使い道、遊びについて考えていたら、ペン習字教室の堀谷龍玄先生から良いアイデアをいただきました。

満寿屋のミニサイズの原稿用紙を葉書に貼って使うというものです。

ミニ原稿用紙はハガキサイズなので、カットせずにそのまま貼ることができるし、失敗したらまた書き直せばいいだけで、官製はがきを無駄にしなくていい。

葉書に貼る糊は何でもよくて、よく事務仕事で使うようなスティックのりでも充分貼ることができます。

原稿用紙の罫線が何ともいい雰囲気を出す、特別な葉書になります。

私もやってみました。

官製はがきではなく、和紙の耳付きのはがきに書いたミニ原稿用紙を貼り付けます。

罫線の色、形は何種類かありますが、私は一番シンプルなものを選びました。

この満寿屋のミニ原稿用紙がせっかくハガキサイズなので、ポストに投函できるくらい厚かったらいいのにと思っていたけれど、こういう形態だからどんどん使うことができます。

さすが堀谷先生。

とても簡単で効果の大きい、原稿用紙の葉書貼り、ぜひやってみて下さい。