一期一会 ~万年筆店店主のブログ~

哲学、想いを発信している、Pen and message.店主吉宗史博のブログです。

年の終わりに

2012-12-30 | 仕事の考え

今までの私は過去に極端に興味を示しませんでした。

子供時代のことはブログに書くことはありましたが、書く題材としてふと思い出したことを書く程度だったし、終わった仕事に関しても同様に興味がありませんでした。

でも最近、過ぎた時間に愛着のようなものを感じることが多くなりました。

それは思い出とかという具体的な出来事に対する想いではなく、もっと漠然としたものです。

店を始めてから、ただひたすら年月が過ぎてほしいと思ってきた私の心の中のささやかな変化だと言えます。

同様に今自分が存在しない場所への愛執のような想いも感じるようになっています。

夜のなって家に帰れば、家でしかできないことに全ての想いが向かっていましたが、今まで自分がいた店のその空間が愛おしく思えたりしているのも、過ぎた時間への愛着からくるものなのかもしれません。

そんな気持ちを抱くようになっているので、2012年が終わるのは何か寂しいような気持ちでいます。

今年も今までの年同様に、良いことも苦しみ悩んだこともあり、その時その時をじぶんなりに精一杯積み重ねてきただけでした。

来年も同じように毎日を積み重ねていくだけで、待っていても何も起こらないので、行動を起こして、自分の生活をおもしろく、店をおもしろくしていきたいと思うだけです。

今年1年も続けることができたことへの感謝を皆様、お客様に申し上げるとともに、当店に関わってくれた人たちに心からお礼を伝えたいと思います。

そして来年もよろしくお願いいたします。

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大和座狂言事務所 大阪能楽会館での公演

2012-12-29 | 仕事の考え

大阪の街中にこんなに古い、趣のある建物があるとは知りませんでした。

大和座狂言事務所の大阪能楽会館での公演に行ってきました。

お客様のT田さんと、駒村さんたちとにぎやかに大阪の街をゆっくりと見ながら、途中食事もしながら東の方に歩いていきました。

T田さんは同じ中学校のひとつ下の学年で、私はT田さんのことは覚えていました。

そのせいではないけれど、飲み会などの時、その豊富な経験から適当な店を教えていただいているという、日ごろから大変お世話になっています。

能楽会館についてまず驚いたのは人の多さでした。開演直前に分かりましたが、450人以上収容の会場が満席になって立ち見の人がでているほどでした。

大和座の公演でいつもお邪魔する千里中央のA&Hホールの時は、演者と観客の高さが近く、平日の昼間という日程もあって、のんびりとした雰囲気の中で行われている感じで、それはそれで懐かしいような気分になれました。

でもこういった大きな会場でたくさんの人を入れて行われる今年最後の公演も違う雰囲気があり、楽しいと思いました。

安東先生の独唱で比較的長めと思われる「雪山」の後、2つの狂言の演目の間に、韓国の浪曲とも言えるパンソリとチェロ(大和座の井上放雲さんはプロのチェリスト)のコラボレーションに安東先生の舞い。

シルクロードを通って、大陸から朝鮮半島に伝わった文化の高揚、そして悲痛とも言えるパンソリの歌声のようなものを表現していたのでしょうか。

安東先生の舞いは、能面をつけた重く、悲しみをたたえたような舞い。(後で先生にも電話でお聞きしましたが、やはり能の舞いと呼んでいるものだったそうです)

専門的なことは分からないけれど、狂言の中での安東先生も良いけれど、シリアスで物悲しい題材では77年間生きてきた男のが負っている悲しみのようなものが表現されている。それはもしかしたら誰もが背負っているもので、最も共感を持って観ることができた場面だったかもしれません。

狂言師安東伸元先生の生き方はいつも気になっていて、能舞いのシーンもしっかりと脳裏に焼き付けました。

公演終了後、最後の挨拶として先生が言われた「こんなにたくさん入っていただいて、ありがとう」に万感が込められていました。

公演の日は、安東先生の著書、「日々新面目」の発売日でした。

全編、老いを知らない怒りに満ちた強い言葉で、年末年始に読んでみたいと思っています。

最終営業日は12月29日で、15時に店を閉めて、大和座狂言事務所の忘年会に参加しようと思っています。

 

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年末雑感

2012-12-23 | 仕事の考え

12月に入ってからの日が過ぎるスピードの早さを今までで一番感じています。

今年一年も本当に早く過ぎ去ったので、それを象徴する12月でした。

創業5周年という記念すべき年として、気負いを持って臨んだ一年でした。

久し振りのオリジナル万年筆「Cigar」を作ることができたり、WRITING LAB.の活動もできたり、幸せな一年だったと思っています。

やはり健康で、苦しみ悩みながらでも、今まで通り仕事を続けられることが私たちにとって一番の幸せであり、そうするために行動を起こし続けていると言えます。

続けていくということは、お店の場合お客様に物を買ってもらえるかどうかで、今年一年も当店で物を買って下さって当店の継続の助けをして下さったお客様に心から感謝しています。

仕事において最も偉大なものは情熱であり、最も必要なものはバランス感覚だと思っています。

知識よりも何かを成し遂げたい、伝えたい、変えたいというような情熱に人は惹きつけられ、ついてきてくれる。

多少知識がなかったり、方法が違っていたとしても、人の意見を聞く謙虚さをあわせもっていればその仕事は良くなっていくと思っています。

自分が情熱を持って仕事ができるように精神的、肉体的なコンディションを保つ努力を一番にするべきだと思うようになりました。

バランス感覚は、仕事を続けていく上でもっとも大切な感覚で、それがあるからこそやりたいことと、上がり下がりする業績の平衡を保ってゆっくりでも進んで行ける。

急加速できないことをもどかしく感じられずに、粘り強く進んでいける感覚がバランス感覚だと思います。

自分が独創的で才能溢れる人間でなくて、そして比較的辛抱強い人間で良かったと思います。

自我を全面に出すことなく、それぞれの職人さん、作家さんの作品、人柄をお客様にお伝えすることで、今の当店が成り立っていますし、そこに仕事の面白さも感じていて、これが自分のやり方だと思っています。

まだまだ半人前で、来年は精神的にも技術的にもグレードアップしていきたいとは思っていますが。

 

まだ2012年のお礼を言うにはまだ早く、お一人ずつのお名前を挙げてのお礼は控えさせていただきますが、当店に関わって下さった皆様に心から感謝しています。

 

 

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日常の風景 ~うたた寝~

2012-12-18 | 仕事の考え

起きていると寝ているのはざ間で夢なども見たりする感覚がとても好きで、うたた寝をよくしてしまいます。

ここで寝たらアカンやろというところでもその障害がかえって強く私をうたた寝へと誘っていく。

例えば湯舟の中や、次が降りる駅だという電車の席で。

湯舟でうたた寝をすると気がつくとお湯が冷めていて、非常に寒い思いをするし、電車の場合は当然乗り過ごして隣の舞子駅から折り返してくるはめになり、これが結構なんどもやらかしています。

普通電車の終点の西明石駅まで行ってしまい、遅かったために戻ってくる電車がないということもありました。

妻に西明石まで迎えに来てもらって、さすがにその時は申し訳ないと思いました。

妻に言わせるとすぐにうたた寝をする私は意思が弱いことになっているけれど、寝たらいけないというスリルと寝ていると起きているの間の状態では学校時代のプールの後や昼休みの後の授業中に寝てしまった時の感じを思い出したり、他の懐かしいことを思い出しながら眠りの入り口に漂っていることが多く、それが楽しくてうたた寝をしようとしているところもあります。

でもやはり意思が弱いと言われれば反論できないけれど。

最近さすがに学習して、帰りの電車で座らずに立って本を読むようにしているので、乗り過ごすこともなくなったけれど、WRITING LAB.の打ち合わせの帰り、いつもより早めの電車だったので比較的空いていて、座ってしまいました。

本を読んでいると、塩屋駅で急激に眠くなって寝てしまい、気付けば舞子駅のホームに電車が滑り込んでいた。

折り返しの電車は15分後だったのと、ルミナリエが開催されている上に雨が降っていたのでタクシー乗り場で30分待ったことで、家までいつもの倍の時間かかってしまいました。

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匂い

2012-12-16 | 仕事の考え

小学校5,6年の頃好きだった女の子がいて、その子のご両親が共働きのお家によくお邪魔していました。

玄関を開けるとその家独特の匂いがあって、その匂いがとても好きでした。

それは普通の家庭の匂いだったけれど、そこに良い感情があれば、良い匂いに感じたりするものだと、当時も分かっていて、匂いの感覚は感情によって印象が変わることを初めて知った時でした。

 

お茶のお稽古で先生が焚いてくれるお香の香りは鼻で嗅ぐのではなく、気持ちで感じるような香りの強さで、とてもさりげない。

何の香りという具体的なものではなく、気分を作る、想いをかき立てるような感じで、それがお茶のお香の役割なのかもしれません。

聞香会(今月は22日開催です)の講師をしてくださっている森脇直樹さんが的確に言い当ててくれているけれど、香りというのは遠い日の記憶を呼び起こしてくれるようなところがあります。

そういうこともあって、自分自身はもちろん、店でもなるべく変な匂いをさせたくないといつも思います。

強烈に主張するような匂いでなくても、その匂いを嗅いだら何かしらの想いを抱いてくれるようなものにしたいとはいつも思っています。

しかし、匂いというのは不思議で意図的に発している香りだけでなく、その場所のにおい、いる人のに匂いなどと混ざり合って違う匂いになります。

季節や気候によって、それらは変わっているらしく、自分の香りはなるべくコントロールしたいと思うけれど、冬には冬の香りを楽しみたいと思います。

そしていつか同じ匂いを嗅いだ時に思い出せるような記憶をたくさん持てるように、初々しく毎日を過ごしたいと思うのです。

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スペックでは分からない

2012-12-11 | 仕事の考え

家電を選ぶ人の多くはカタログを入念に見比べてスペックのより高い方を選ぶことが多く、カタログではなくお店の人の話を聞いてその場で判断して今まで家電などを買っていた私はいかにも不勉強に買い物に臨んでいました。

それが理由かどうか分かりませんが、日本の製品には数値を追い求めたものが多いに思いました。静穏設計何デシベル、1年間の電気使用量何円とか。

私の好みで言うと絶対に壊れないタフな仕様になっています、と言われるとコロッといってしまいます。

日本製品の数値争いは車に今顕著に表れていて、燃費合戦に各メーカー総力をあげているように思えます。

それを現在のところ制しているトヨタはスポーツカーを発売する余裕を見せている。

家電や自動車と違って非常に無意味だけど、万年筆業界もかって数値争いに終始していたことがありました。

60年代終わり頃のことでした。

パイロット、セーラー、プラチナの国産3社は金の含有量競争を展開していて、14金から18金、最終的に24金が出る。

数値上金の比率は増えたけれど、ペン先は小さくなっていって、それは書き味に何ら関係がないことに皆が気付いたのだと思います。

万年筆は数値で選ばれるものではないので、私は好きなのかもしれないし、万年筆を販売することを仕事にしているのかもしれません。

では何を基準に選べばいいのかと聞かれると、感じるしかないと少し困った回答になってしまいますが。

でもその物の雰囲気、手に取った感じ、書いた感じなどのご自分の感覚を信じて選ばれると、間違いがないと思います。

スペックでは選ぶことができない、そういう曖昧な感じ、感覚的な感じが万年筆にはあって、そういうところが私に合っているのだと思っています。

 

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周りに惑わされず

2012-12-05 | 仕事の考え

今から10年ほど前、ヨーロッパは好景気に盛り上がっていて、バブル経済の様相を呈していたということを聞きました。

そういえば、いわゆる生活必需品ではないヨーロッパ製品の価格が倍と言ってもいいくらいに跳ね上がったのもその辺りの出来事だったように思います。

一社だけでなく、特定の業種だけでなく、時計も服も靴ももちろん万年筆も例外ではありませんでした。

原材料の高騰などやむなき事情もあったのかもしれませんが、物作りとそのマーケティングなどの方法が変わって、ブランディングという言葉がやたらと使われるようになった頃と重なっていて、多くの物作りメーカーが洗練されたイメージ作りを始めました。

その物の値段以上の価格で商品を売るためにイメージという付加価値をつけて販売するようになったと、当時実感していました。

景気の良かった当時は、それでも商品は売れていたのかもしれませんが、今の時代は非常に厳しいことは多くの物作りメーカーの実績に表れている。

今は顧客が期待する誠実な物作りをして、付加価値をつけて、やっと製造コストに見合った最低限の値段で売れる時代だと思います。

値段を上げてしまった多くの物作りブランドは、今穏当に苦しんでいると思いますが、今さら10年以上前の物作りに戻ることができなくなっている。

そんなヨーロッパのメーカーの中で(ヨーロッパだけではないけれど)、ペリカンは最低限の値上げしかしなかった稀有のメーカーでした。

代表的な万年筆M800は私が仕事を始めた20年前から52500円で販売されていて、今も変わっていません。

5万円クラスの万年筆というと、レギュラーサイズでバランスが最も良い大型の本格万年筆が揃っていました。

しかし、他の万年筆はみな値上げしてしまい、高いものは倍近くになっています。

当時の風潮に流されず、顧客にとって自分たちがどんな存在か見極めて頑なに万年筆、文具メーカーとしての存在で居続けたペリカンの変わらないという英断が、今輝きを放っているように私には見えます。

ペリカンに限らず、世界の中にはこのような風潮に流されず自分たちらしくあり続けている物作りメーカーが他にもあると思います。

こういった価格に見合った本当に良いものをそれぞれの国に出向いて行って仕入れて、神戸の小さなお店で売っているある方のお店を休日の今日訪ねてきました。

当店を訪れて下さったのが出会いで、その時も楽しくも熱いお話しをさせていただきました。

同年代で活躍されている方と話すのはとても刺激を受ける反面、自分は今の仕事のやり方でいいのかどうか、少し後ろめたいような、焦るような気持ちにもなったりします。

 

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趣味の文具箱vol.24

2012-12-02 | 仕事の考え

長い間、外が明るいのか暗いのか、雨なのか晴れなのか分からないところで仕事していたので、この店を開いて時間の経過、季節の移ろいを感じて、それがいかに戸惑いや寂しさのようなものが込み上げさせるものだということを知りました。

夕方はやはり誰でも寂しい気分になるだろうし、季節が深まってくるとこれも同じ気持ちになる。

12月になると、この月同様の忙しさもあるけれど、あっという間に日が過ぎていきます。

私も忘年会やら何やらで、普段の月にないような予定がたくさん入って、今年を一気に締めくくろうとしている。

今年もいろんなことがあって、それらを回想するのは大晦日の除夜の鐘を聞きながらになりそうです。

 

趣味の文具箱vol.24が発売になりました。

万年筆をを中心とした文具雑誌というもので、24号まで続いているのは本当にすごいことだと思い、この本の制作に携わっている編集部の方々の情熱に敬意を表します。

vol.8からコーナーを持たせていただいていて、今回も当店でのお客様とのやり取りについて書かせていただきました。

テーマは採点用万年筆で、学校の先生のテストの採点向けに万年筆のペン先を調整した経験で、多くの方に興味を持って読んでいただけるものだと思っています。

今回は担当ページだけでなく、「ペン、紙、インク 幸せな三角関係」という特集でも2ページ見開きで当店を取り上げていただいています。

他にも「はじめての万年筆」文集や工房楔ペンスタンド「パラーレ」、ベラゴがま口ペンケース「テューボ」など当店にゆかりのある品々も登場しています。

いつも買って欲しいと思っていますが、今回もぜひお買い求めください。

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