元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

陶芸家 浅野庄司作陶展のご案内

2007-08-24 | 仕事について
先日私を窯入れに立ち合わせてくれた浅野庄司氏の個展の日程をご案内いたします。
場所 倉敷・中央画廊  ℡086-434-3530
         〒710-0046倉敷市中央1-6-3 (大原美術館分館向かい)
                       
期日 9/4(火)~9/16(日) 10:00~18:00(最終日17:00まで)

浅野氏在廊日 4、8、9、15、16日は10:00~18:00 他は13:00~18:00
           ※6、12、13日は浅野庄司氏は在廊していません。

ぜひお気軽にお立ち寄りください。

陶芸家の後姿

2007-08-23 | 仕事について
夜8時の赤穂の駅から浅野庄司氏が運転する車に乗って、備前に向かいました。
途中の景色は神戸と時間の流れがかなり違うことが分かりすぎる静寂に包まれていて、真夜中に感じられるほどでした。
道中日生というこのあたりでは一番賑やかな町を通りますが、たくさんの建物がかえって、人通りか感じるその時間差を強調しているようでした。
ブルーハイウェイを逸れ、点在する集落抜けて、車はどんどん山の中に入っていきました。
そんな山の中の突き当たりと思えるような場所に蛍光灯の光に浮かび上がった登り窯がありました。
すでに窯には火が入っていて、これから割り木をくべて1500度まで温度を上げる助走をしているようでした。
温度をいかに1500度まであげるか、作品を焼くのではなくそれを入れている窯をいかに高熱で焼くかなどポイントがありますが、浅野氏はひとつひとつ説明してくれました。
先月神戸駅で浅野氏と会った時に。窯入れを手伝わせて欲しいと言い、浅野氏を仰天させてしまいましたが、私が本気であること分かってくれて、今回の窯入れに呼んでいただけたのでした。
窯に着いてしばらくは、何もない山の空気の匂いや雰囲気を楽しんでいましたが、11時頃から作業が始まり、それから10時間火と向き合ったまま過しました。
窯の両側の小さな穴から薪をくべて温度を上げていきますが、浅野氏が炎を見ながら、私にくべる本数、場所などを指示していきます。
窯にあけられた小さな窓から中を見ると、竹の中は炎でいっぱいになっていました。体に高温の熱というか、エネルギーを感じ、木がついたら体中から汗が噴出しています。
物珍しいことへの好奇心もあって、夢中になって作業していると3時くらいまではあっと言う間に過ぎていきましたが、日中仮眠を取ることができませんでしたので、眠気が少しずつ私の上にのしかかってきました。
空が白み始める4時半頃から7時くらいまで、強烈な眠気が襲ってきました。
夜の9時から翌朝7時までそこにいて、窯入れを体験させていただきましたが、浅野氏は5日から7日窯の側を離れることができないようです。
ひとつの焼物が出来上がるまでに作家の命を削るような作業があることを目の当たりにしました。
帰り電車のなかで眠り込んでしまい、姫路駅で車内清掃の方に起こされて、目覚めました。

食事を楽しくする器

2007-08-16 | 万年筆
丹波の立杭で平焼の展示があることを駅で見たポスターで知り、車を2時間走らせて行ってきました。
若い頃の長距離のドライブや、京都からの山越えの帰路でたまたま通り掛かったりしていましたが、立杭に降りるのは初めてでした。
展示が行われている兵庫陶芸美術館は、なかなかの設備を誇る立派な建物で、それも楽しむことができましたが、ポスターに写っていた何とも妖しい光を放つ黄色い蓋付きの器がとても印象に残っていました。
それ以前にも興味を持っていましたが、備前の浅野氏との交流が最大のきっかけとなって焼物の器を真剣に見るようになっていましたので、その大規模な展示をひとつひとつの作品を手にとるように、大切に見ることができました。
しかし、そういったものに興味を示していなかった家族もかなり魅せられていたようだったので、その分かりやすい魅力も平焼のもうひとつの持ち味なのかもしれません。
確かにひとつの技法に捉われず、様々なものにチャレンジしていて、鉄器、漆器、蒔絵、竹細工にそっくりに仕上げたものもあり、非常に自由な発想で江戸時代から近代まで作り続けられていたようでした。
お盆の15日でほとんど観光客もなく、食事をするところがほとんどありませんでした。
ようやく1件の民家に暖簾を下げただけのような家を見つけ値段も分からずに、恐る恐る入りました。
お婆さんが一人で店番をしていて、入っていった私達に驚いたようでしたが、食事をさせていただきました。
その家では器も焼いていて、食器全てが自家製の立杭焼でした。
素材感が手に伝わり、シンプルで何の飾りも、技巧も凝らされていないものでしたが、なかなかの逸品で、素朴な家庭料理のような自然な味付けとお婆さんの気遣いと相まって、私達はとても気持ちよく食事をすることができました。
良い器人の気持ちが食事を楽しくするということを体験し、気分良く他に客のいない家を後にしました。

燈花会

2007-08-14 | 万年筆
漆黒の闇の中でのろうそくの光がこんなにも周りを照らすものだとは思ってもみませんでした。
奈良という千数百年の歴史を意識しなくても、どうしても感じてしまう土地で、素晴らしいものを見たと思っています。
現代のように、光を大量に作り出すことができなかった大昔、夜は闇で、人々はろうそくなどの弱い光で生活していたのだと、実感しました。
燈花会は奈良の観光地区数ヶ所で行われていて、全ての会場を巡って、ろうそくの光によって強調された夜の闇を楽しむイベントです。
煌びやかなで派手な光によって多くの人を集める神戸の冬の光の祭典ルミナリエとは違う、奈良人の侘びたセンスがその燈花会の深くささやかな光に表れていました。

幸福な出会い

2007-08-04 | 仕事について
ある金融機関のその担当者氏とは、私が独立を決意して、ただ融資申し込み用紙をもらいに行った時に「よかったら、お話を伺いますよ。」と言って下さったのが出会いでした。
何の資料も用意していませんでしたが、自分が今までしてきたこと、これからしようとしていることなど話しました。
その担当者氏はとても興味を持って話を聞いてくれて、それまで嫌というほど経験して途中で話す気がなくなってしまった「それで儲かるの?」といった反応とは全く違っていましたので、とても長い時間、話し込んでしまいました。
その時に教えてもらった話などをもとに資料を何度も作り直して、出来上がるたびに、その担当者氏に見せに行き、アドバイスをもらいました。
やっとこちらの体勢が整い申し込みを済まして、先日大雨に中その金融機関に面接に行きました。
担当者氏は、今回の融資にあたり、私が書いたもの全てを読んでくれていて、私が万年筆に携わるようになったきっかけなど、私のバックボーンなど全てを理解してくれていて、「ああいうのを読むと興味がすごく湧いてきますね。」と万年筆にも興味を持ってくれたようでした。
お金の話は、何となく口にするのをためらうことがありますが、会社にとって血液であり、活動の源です。
そんなお金の調達でも、とても幸運な特別な出会いがあったことに心から感謝しています。