元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

週末には文房具が欲しくなる

2009-01-29 | 万年筆
仕事が好きな人や道具にこだわる人はそうだと思いますが、週末、特に日曜日の夕方、翌日からの仕事をより楽しく、円滑にするために文房具を揃えたくなる人が多いと思います。
このメモ帳を使うともっと仕事がはかどるとか、このノートだとインスピレーションが刺激されるとか、それぞれだと思いますが、文房具屋さんや文房具コーナーをウロウロして、何か使えそうなものを物色することが私もあって、それはとても楽しいと思っています。
それとまた違うパターンで、本を読みながら書き込みを入れるための細字のペンが欲しいというように用途が決まっていて、その道具を使うアイデアを早く試したい場合。
その物を手に入れるまでは居ても立って居られなくなります。
他にその用途に代わるものがあるにも関わらず、それが欲しいと思って忙しいのにそれだけを買いに街に出たりしてしまいます。
それは万年筆に対する欲求と同じで、手帳用に使うことができる細字の万年筆が欲しいと思うと、居ても立っても居られなくなります。
用途を決めて新しい万年筆を購入しようとするなどと言うと、理性的な感じがしますが、実は用途を無理やりこじつけているだけで、ボディがきれいだからと万年筆を買う人と、あまり変わらないかもしれません。

祝 大和出版印刷金賞受賞

2009-01-23 | 仕事について
Sublima 印刷コンテストという商業ポスターのコンテストに出品する作品の受付締め切りまで、あと数日しかないと状況でそのプロジェクトは実際に動き出しました。
昨年、一昨年と大和出版印刷が金賞を受賞していて、V3を目指さないといけないということは、全社員が分かっていたと思います。
題材とするテーマについて様々な意見が出ていましたが、まとまらないまま月日が流れてしまいましたが、ポスター製作にあたったスタッフがそれぞれ1年間繰り返し考えてきたことが、今回の受賞作を生み出す原動力になったのでしょう。
今年の題材に当店を取り上げたいということを大和出版印刷の多田さんから聞いた時、たまたまその場にモンテグラッパのブランドコーディネーターの井本さんがおられました。
モンテグラッパのペンが今回のポスターの題材としてとても相応しいと思った多田さんは、その場でモンテグラッパをポスターに使う許可を井本さんから取りつけました。
思い返せば、今回のポスターの受賞は多田さんのこの強運も大きく働いているような気がします。
改めて見ると、このポスターの中心となる万年筆はエンブレマ以外に考えられません。
実際の撮影作業は様々なシーンを何枚も何枚も撮る本当に辛抱強い作業でした。1枚のポスターを作るのにこんなにも時間と労力がいるということを目の当たりにしました。
その後、一旦完成したポスターを社長が気に入らず、締め切り直前に最初からやり直したというハプニングもあり、完成した磨きに磨き上げられた作品だと思います。
柔らかな羽を思わせる12000枚のペン先の上に横たわるエンブレマは、静謐さを感じさせながらも強い力を感じさせてくれて、とてもいい作品だと思います。
実際に作業にかけた時間とクオリティは必ずしも一致しない、そして前向きな思考を持った人たちが極限まで自分たちを追い詰めることによってすごい力を発揮するということを知りました。
ポスターは当店内に展示しておりますし、このポスターを大和出版印刷さんから相当数いただいておりますので、ご希望の方に差し上げております。ご来店時に私共にお申し付けください。

日日是好日(にちにちこれこうじつ)森下典子著(新潮文庫)

2009-01-18 | 万年筆
お茶のお稽古に行き出して季節が一巡りと少ししました。
相変わらずお手前は上手くなりませんが、お茶のお手前の全てがお客様をおもてなしするためという目的達成に徹底的に向かっていると言えます。
型通りのお手前も何かイレギュラーが起こって何か咄嗟の判断が必要な時でも、その判断の基準はどの方法がお客様のためになるか、ということだと解釈していて、お茶のお稽古は販売を仕事とするものにとっての他にはない心の有り方の勉強になると思っていました。
しかし、この本をお客様のMさんに薦められて読んで、それだけではないということを知りました。
道具、掛け軸、お花など全てにおいて季節感を出すように努力するのは、忘れかけている自然の営みを心と体で感じて楽しむことですし、指輪や時計など身に着けているアクセサリーを全て外さなければならないのはお道具に傷を付けないためではありますが、お茶室には外界の虚栄心や気忙しさなどを持ち込まず、日常から自分自身を解放することなのだということも思いました。
それは茶道の精神的なルーツになっている禅の思想が関係しているのかもしれません。
日常生活や集団行動の中では人はどうしても競ったり、比べてしまったりしてしまいますが、上下、優劣はなく、それらは単なる違いであり、自分らしく堂々としていればいいというのがお茶だということを知りました。
そのような悟りの境地に達するのに作者も20数年かかったそうですが、私もあと20年はかかるようですが、幸運にもお茶を習う機会を得たお稽古にさらに身が入りそうな気がします。
お茶をしていない方でも、この本に書かれている考え方を日々の生活に取り入れることによって、より張合いのある時間を過ごすことができると思いました。

あの頃の自分はどうしているのか

2009-01-17 | 万年筆
大黒摩季のある曲を聴くと懐かしく思い出す風景があります。
小さな軽自動車の後部座席のチャイルドシートに息子を座らせ、家族3人でどこかへ出かける時に必ず通る、朝霧の団地から朝霧病院へ下る坂道。
暖かい桜が満開の季節の風景です。
その頃行きたい所もなく、車で行ける近所のサティやイトーヨーカドー、イズミヤに毎週出かけて行き、ブラブラして帰ってきました。
わりと若いうちに結婚した私は、早くに子供を授かり、毎日家に帰って家族と過ごすことだけが生き甲斐で、特に仕事に熱意を持っていたわけでもなく、それを憂鬱に思うことはあっても、深く考えることもなく、自分が将来どんな仕事をしたいかなどというイメージや夢は持っていませんでした。
もし私が何も気付かず、あの頃のままだったら、今頃どうしているだろうと思いますし、幸せに暮らしているだろうかと思います。
今の私は生き方も、考え方も何もかも変わってこうしていますが、あの頃のことが懐かしくないわけでもなく、でも戻りたいわけでもなく思い出します。

延長営業で最後まで残って下さったお客様4人と話していて、思い出しました。

厄除け

2009-01-14 | 万年筆
交通量が非常に多い、171号線を反れると急に道幅が狭くなり、閑静な住宅街の中を通ることになります。
細い道を走っていると、ちょうど講義の終わった時間なのか、たくさんの女子大生が駅の方向に向かって歩いていました。
下校時間になった小学生たちも大勢歩いていて、静かな住宅街は一番賑やかな時間を迎えていることが分かりました。
そんな住宅街の中に、門戸厄神はありました。
かなりたくさんの車を収容できそうな駐車場(といっても30台から40台)はほぼ満車で、たくさんの人たちが訪れていると思いました。
車を停めて、住宅地の中の細い参道を歩いていきました。
厄除け祭が近いためか仮設テントの屋台までありました。
参道の両脇の家では甘酒や饅頭を売っていました。
行き交う人も適度で、平日のこの場所にしては人通りは多いほうなのかもしれないと思いました。
参道の坂道を上がっていくと丘の中腹に門戸厄神がありました。
子じんまりとしたお寺でしたが、何となく居心地の良い感じの場所で、気持ちが落ち着きました。
今回門戸厄神を訪れたのは、本厄に突入してしまったので、厄除けに来たのでした。
中学生の時、父の厄除けで家族で来たのを思い出しました。
今関西で最も話題のショッピングセンター西宮ガーデンズの帰りに来ましたが、この門戸厄神の雰囲気とそこから見える家々がたくさん建っている西宮の街を見た方が心が晴れたような気がしました。
小さなお寺や神社、その周辺の街にある侘びた風情がとても好きです。

1月の延長営業日

2009-01-13 | 仕事について
ご連絡ができておりませんで、誠に申し訳ありません。
今月の延長営業日(夜9時まで営業)は1月16日となっております。
ご来店お待ちしております。

年始早々に発売を開始しました、オリジナルボールペンTACTの人気が高く、お客様方が求められているものを再確認しました。これからもオリジナルの企画ものにも力を入れていきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。

ブックマークに当店のお客様のshenさんのブログを登録しました。こちらもぜひご覧ください。http://mizuuminohotoli.blogspot.com/

オリジナルボールペンTACT発売

2009-01-07 | お店からのお知らせ

何よりも秀でた高機能や繊細で上質なフィーリングや美しさよりもタフであることに長けた物に惹かれます。
それは壊れるということを気にせずに、その物の使命とされた用途に集中して使うことができ、傷だらけになっても長く使うことができるということです。
それが道具であるものの第1の条件であると思っています。
残念ながら今のステーショナリー、特に業界で高級筆記具と分類されるものには上質なフィーリングや美しさはありますが、それは壊れやすさと引き換えのものだと感じます。
確かにそれらは大切に取り扱うべきものですが、タフであることに集中したものがあってもいいのではないかと思っていました。
このボールペンの唯一の機能は、滑らかでとても書きやすい三菱ジェットストリームなどの国産ボールペンのリフィルを扱えるところです。
国産のボールペンは非常に書き易く、それは誰もが認めるところだと思います。
その中でも特にジェットストリームは油性ボールペンでありながら、インクそのものの粘度が低く、サラサラと書くことができます。
これらの国産のボールペンを一度使い出すと、他のボールペンの書き味が重くて使うのが嫌になってしまうほどです。
TACTは合鍵製作機器、錠前、ドアハンドルなど金属加工の専門メーカーヤナイさんの技術によって作られ、1本の金属の棒から作られたため、壊れる要素のない強度を持っています。
手に張り付くような触感を持ったジャーマンシルバーをかなり厚みを残して削り出し、強度とともに重量感が出るようにしています。
ボールペンを書くときどうしても筆圧が高くなってしまいますが、重量感があることにより筆圧が低くなり、手の疲れを軽減してくれます。
1本の棒、TACTのように仕上げたいと思っていましたので、クリップなどの転がり防止の役割をする一切の出っ張りを排して、シンプルなシルエットにしました。
シンプルなデザインを補う機能として、携帯性などを考慮したミネルバボックス革の専用ケースに収めました。
ミネルバボックス革のステーショナリーを一昨年のオープンの時から扱ってきましたが、傷などを気にせず、日常の道具として使うことのできる適度なしなやかさを持った素材で私もとても好きな素材です。
ジャーマンシルバー、ミネルバボックスともに扱いに注意を払うことなく、道具として酷使しながらも、愛着を持って使うことのできる素材であり、このボールペンが目指した頑丈という性能を上げるものだと思っています。
https://www.p-n-m.net/contents/products/OK0031.html


初詣

2009-01-03 | 仕事について
毎年初詣をしていた京都北野天満宮はさすが学問の神様の大本命だけあり、いつもたくさんの人たちで賑わっていて、皆が来ているからご利益があるだろうという安心感もありましたが、もっと静かなお正月を感じたいと気持ちは持っていました。
そんな理由もあり、今年は車で10分ほどのところにある神社へ家族3人で行きました。
綱敷天満宮は須磨海水浴場から、国道2号線を渡ってすぐの場所にありますが、JRをまたぐ高架橋のすぐ横にあるためあまり目立ちません。
境内は程好い人の数で、近所の人たちだけがおせちを食べた後に家族で出掛けてきているような雰囲気でした。
自分の家の近くにも歩いて行ける神社があって欲しいと憧れますが、つまらない新興住宅地にある私の家から歩いて行ける所に名所、旧跡はありません。
夜店の屋台は少なく、たこ焼とベビーカステラしかありませんが、小さな子供たちはそれだけで充分楽しそうでした。
家族で神社に出掛けて、1年の平穏無事、無病息災を祈り、おみくじを引いて、焚き火にあたって帰るだけの行事ですが、子供の頃は楽しみで仕方なく、今も味わい深い、心静かな温かい気持ちになれました。
軒を連ねる屋台をはしごしたり、福袋もない静かな元旦でしたが、子供の頃に感じていたお正月らしさを思い出すことができました。

当店は明日1月4日11時からオープンいたします。今年もよろしくお願いいたします。

大きな変化の年

2009-01-01 | 仕事について
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
人通りの少ない神戸元町の外れにある当店は別世界のように何も変わっていませんが、昨年あたりから世の中が大きく変わり始めたのが、ニュースや新聞から知ることができます。
それは今まで価値を生むと言われていたものが価値を生まなくなった構造の変化を感じさせるものです。
メインマーケットの売上げ不振と円高で国内の大手製造業の業績悪化は、絶対に崩れることがないと思っていた巨大安定勢力が安泰ではないということを知ることになりました。
それは製造業だけでなく、販売においても同じ状況です。
百貨店などの大型店舗の売上げ不振は少し前から言われていますが、それは全ての業界においても同じことが言えるようです。
とても大きな力のある大型店が安泰ではなくなってしまっているのが、今の時期と重なったのは偶然ではないと思います。
これらの事象を見ていると、今とても大きな構造の変化の時期に来ていて、黄金の方程式を持っていた会社は変化に付いていくのが難しいようです。
世界経済の構造が変わりつつある昨今、販売の構造も変わりつつあるのかもしれません。
2009年は全てが変わり始める、激動の年になるかもしれません。