老舗万年筆メーカーオマスが廃業することになりました。
メーカーがなくなってしまったことで、オマスを愛用して下さっているお客様の万年筆の修理などアフターフォローに支障が出ることになり、とても申し訳なく思っています。
もっと早くオマスのオーバーサイズの万年筆パラゴンの良さを知って、たくさん売れるように努力できていたら、ウッドミロードの魅力をもっと伝えられていたらと思うと、とても悔やまれます。
当店だけの努力でまさかオマスを救うことはできないけれど、自分の力不足がとても恨めしく思えるほど人ごとに思えません。
オマスには他の万年筆メーカー以上の思い入れがあります。
自分自身がその万年筆の良さに魅せられてよく使っていて、お客様にもお勧めしていたこともありますが、一番大きな理由は2010年、ボローニャ本社をル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんと訪れて、最も身近に感じていた海外万年筆メーカーだったからです。
通訳してくれる人はいましたが、英語をあまり理解できない私たちをとても暖かく迎えてくれて、未発表の限定品や工場を見せてくれました。ボローニャでお勧めのレストランだと教えてくれた店は本当にびっくりするくらいおいしい店でした。
オマスの社長のブラアン・リー氏や他の人たちは、万年筆メーカーの知らない外人ではなく、ともの戦う同士のように思っていました。
オマスの万年筆は当店で売れる万年筆の中でも大きな割合を占めていて、それも痛手ですが、それよりも皆どうしているのだろう?そしてオマスに関わっていた人たちはこれからどうするのだろう?という心配の方が大きな影を私の心に落としています。
世界的に見たら小さな万年筆メーカーが消えてしまっても大した影響はないかもしれないけれど、万年筆の業界においてはポッカリ空いた穴は埋められるものではないと私は思っています。
昨年90周年を迎えて記念万年筆をいくつも発売して、オマスらしさを失わずに活発な動きを見せていましたので、今年も元気にやっていってくれることを当たり前のように思っていました。
小さいながらも私も経営者の端くれで、会社というのは少し傾けば簡単に潰れてしまうことは理解しているけれど、今でも信じられない気持ちでいます。
残念ながら自分にはまだまだその力はなく、身の程知らずにも悔しく思うけれど、どこの国の人でもいいから誰かオマスを再興してくれる人はいないかと、思っています。