元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

オマスの廃業

2016-02-28 | お店からのお知らせ

老舗万年筆メーカーオマスが廃業することになりました。

メーカーがなくなってしまったことで、オマスを愛用して下さっているお客様の万年筆の修理などアフターフォローに支障が出ることになり、とても申し訳なく思っています。

もっと早くオマスのオーバーサイズの万年筆パラゴンの良さを知って、たくさん売れるように努力できていたら、ウッドミロードの魅力をもっと伝えられていたらと思うと、とても悔やまれます。

当店だけの努力でまさかオマスを救うことはできないけれど、自分の力不足がとても恨めしく思えるほど人ごとに思えません。

オマスには他の万年筆メーカー以上の思い入れがあります。

自分自身がその万年筆の良さに魅せられてよく使っていて、お客様にもお勧めしていたこともありますが、一番大きな理由は2010年、ボローニャ本社をル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんと訪れて、最も身近に感じていた海外万年筆メーカーだったからです。

通訳してくれる人はいましたが、英語をあまり理解できない私たちをとても暖かく迎えてくれて、未発表の限定品や工場を見せてくれました。ボローニャでお勧めのレストランだと教えてくれた店は本当にびっくりするくらいおいしい店でした。

オマスの社長のブラアン・リー氏や他の人たちは、万年筆メーカーの知らない外人ではなく、ともの戦う同士のように思っていました。

オマスの万年筆は当店で売れる万年筆の中でも大きな割合を占めていて、それも痛手ですが、それよりも皆どうしているのだろう?そしてオマスに関わっていた人たちはこれからどうするのだろう?という心配の方が大きな影を私の心に落としています。

世界的に見たら小さな万年筆メーカーが消えてしまっても大した影響はないかもしれないけれど、万年筆の業界においてはポッカリ空いた穴は埋められるものではないと私は思っています。

昨年90周年を迎えて記念万年筆をいくつも発売して、オマスらしさを失わずに活発な動きを見せていましたので、今年も元気にやっていってくれることを当たり前のように思っていました。

小さいながらも私も経営者の端くれで、会社というのは少し傾けば簡単に潰れてしまうことは理解しているけれど、今でも信じられない気持ちでいます。

残念ながら自分にはまだまだその力はなく、身の程知らずにも悔しく思うけれど、どこの国の人でもいいから誰かオマスを再興してくれる人はいないかと、思っています。

 


姫路の街

2016-02-23 | 実生活

いつも心の中に姫路はあって、また行きたいといつも思っています。

姫路の街が私の心を打つのは、姫路城という立派なお城のある城下町だということもあるかもしれませんが、街中に昭和が残っているからです。

神戸にはあまり残っていない古いものが、姫路にはたくさん残っています。

 

書道教室が休みの日に、妻と写真を撮りに、久しぶりに姫路を訪れました。

姫路城には入らず、その周りの道をゆっくりと歩きました。

世界の観光地である姫路城がすぐ近くにあるけれど、地元の人しか通らない散歩道で、のんびりした気分で歩いていられます。

気温は低いけれど、歩いていると温まってきます。

 

今回姫路に写真を撮りに来たのは、姫路動物園で動物を撮るためでした。

200円という、もう40年ほど変わっていない入場料にも驚きましたが、観覧車などの遊具が古く、1950年に設置されたものが多いようでした。

ライオン、シロクマ、キリン、象など動物園の定番の動物は一通りいて、動き回るシロクマなどは撮るのがなかなか難しかったけれど、ほとんどの動物を夢中になって撮りました。

敷地はあまり広くないけれど、2時間くらい寒さを忘れて遊んでいられました。

 

商店街などの街中も少し歩きました。

姫路のお花屋さんのFさんが言うように、地方の商店街の多くがシャッター街になっている中、姫路の商店街には空き店舗が少なかった。

たい焼き屋さんがいくつかあって、どこかで買って食べながら歩くのも楽しいと思います。

御座候でもいいけれど。

 

動物園の他に写真を撮りたいと思っていた場所がもうひとつありました。

お城から少し離れた手柄山の展望台から姫路の街を撮りたいと思って、19年振りに展望台に行きました。

平日の夕方などは人がほとんど訪れない場所で、1966年に開催された姫路大博覧会の時にできたヨーロッパ風のお城のような風変わりな建物があったりして歩くだけで楽しい。

展望台から見える姫路の街は、お城というとても立派なシンボルと世の中の流れから取り残されたような建物が点在していて、胸が痛くなるような、懐かしさをかき立てる。ずっと忘れられず心の中にあったのは、ここからの景色でした。


書ける道具

2016-02-21 | 実生活

週1回万年筆に関する文章を書いてホームページに載せるということをして14年経ちました。

今まで一度も締め切りに遅れたり、書けなかったことはなく、それが継続することだけが取り柄の私の自慢です。

前日まで何も思い浮かばず、当日の朝の電車の中で書き上がるということも珍しくないですが、締め切りに追われているという感じはありません。面白い、面白くないは別として、何でも書こうと思えば書けるだろうとどこかで思っているからで、自分の力量を超えて面白いものを書こうと思うから書けなくなるのだと思っています。

だからと言って、毎週面白くない自己満足もできない文章をただ闇雲に垂れ流してきたとは思っていなくて、少しは万年筆を使う人を増やす役に立っているという誇りのようなものは持っています。

このブログには、日頃考えていることを書いていますが、ホームページには (http://p-n-m.net/contents/narration.html) 商品について書いていて、新製品など書かないといけないテーマがある時はどんな風に書こうか考えるけれど気が楽です。
特に新しいネタがない時は書くことには苦労しないけれど、またこの献立と子供たちに文句を言われるお母さんのように、話題が集中してしまいます。
そういうところに私の好みが投影されているのかもしれません。

原稿を書きだして5年くらいはモールスキンのラージノートとペリカンM800という万年筆だけをひたすら使っていて、それらを手放すことはなく電車の中や休憩の時、休みの日にダラダラと書いていました。
そういうノートが10数冊になった時点で置いておいても仕方ないと思い、同じことをする人がいたらその人にはもったいないと言うかもしれないけれど、捨てた。

自分が書いたものはその当時の気分や考えで書いたものであって、考えは常に新しくなっている。読み返すと懐かしい気持ちにはなるけれど、それ以外の効果はありませんでした。

それと同じように書きためるということもしたくない。原稿のストックがあれば楽なのかもしれないけれど、前に書いたものが今の気分と合っているかというと、違うことが多いので、書きためることもしなくなりました。

文章を書くということが1週間ずっと頭にあるので、手に取って構えるだけでどんどん文章が書ける万年筆とノートがあればと思うことがよくあります。

今の私のとってそれに一番近い道具が、大和出版印刷のiiroというノートと長く原稿書きに使っているペリカンM450という万年筆で、これがあれば書くことに困らないと思っています。

万年筆は好みもありますので、どれでもいいかもしれないけれど、締め切りをいつも抱えていて書かなければならない人がいたらiiroのノートを使っていただきたいと思っています。

きっとその人なりの書ける道具があるのだと思うけれど、誰もが原稿が湧きだすように書ける道具があれば、多少の投資は惜しまないと思います。

 

 

 


モノの力

2016-02-14 | 仕事について

以前、かなり若い頃は、モノを販売してお客様からお金を頂戴することの正統的な理由が分からず、お金をいただくことに罪悪感のようなものを感じていました。
モノを売る仕事は誰にでもできる仕事で、卑しいもの。才能がないから今自分はお店で働いていると考えていて、何とかモノを販売する以外にできる仕事をしたいと思っていました。

しかし、どんな仕事でも自分の労働によって、誰かからお金を頂戴して成り立っているわけで、お金を生み出している人など誰一人としていない。
自分がお金を生み出している、どこかから引っ張ってきていると思うことはものすごい勘違いだと思います。

それが最もシンプルで分かりやすい形態の、モノを買ってもらう仕事をしていて今は本当によかったと思っています。

私たち、モノを販売する店を営んでいる人間は、お金というそれだけでは幸せを生み出せないものと幸せを生み出してくれると私たちが信じているモノを交換することで、仕事として成り立たせて毎日仕事しています。

そして、そのモノの中でも万年筆が一番人を幸せにしてくれると思うから、万年筆を多くの人に使ってもらえるように、万年筆店をしています。

趣味の道具だと休みの日しか使うことができなかったり、目にすることができないですが、それが万年筆だと仕事中でも触っていられる。

これは万年筆のすごい特権です。

私たちがモノに惹かれるのは、そのモノ自体をたくさん持ちたい、集めたいというコレクション的欲求と、ノート用の中字があるので次は手帳用の細字が欲しいという実質的欲求、そしてその万年筆があればきっとこれからの仕事時間を楽しい気分でいられるという精神的欲求があると思っています。

新しい万年筆によって、仕事の内容やまわりの状況は何も変わらないけれど、今まで使っていたペンよりも書き心地がすごく良かったり、書きたい気持ちを高めてくれたりする万年筆は仕事の意欲が湧いてきて、仕事のプラスになるに決まっている。
次の日もその万年筆が使えると思うと、明日がくるのが待ち遠しくなります。

つまらない日常ではないけれど、私も気に入った服を着ているととても楽しい気分になれます。
実際、私のデニムの生地の織り方他のモノと違っていたとしても誰も気付かないけれど、自分は嬉しい。
モノの力というのはそういった自分への精神的作用にあって、それはとても大きいと思っています。

 


書いたことは実現するのか

2016-02-09 | 実生活

一昨年末からシステム手帳を本格的に使い出しました。保存バインダーに溜まった1年で書いたものはそれなりの厚さになっていて、我ながらよくこれだけの紙を無駄にしたと感心しましたが、自分の生活の中で時間を作って、いろんなことを考えて、手帳にたくさん書くことができたら私は幸せを感じていられるのだと思います。

その書いた量が私の幸福感、満足感に比例している。

モノを書くということは趣味や楽しみにもなり得て、書くことによって自分の仕事や生活も良くなり、その書くことを一番楽しくしてくれるものが万年筆だと思っています。

でも何の役に立たなかったとしても、書くことは楽しい。それは寝る前に正しい満足感をもたらしてくれるし、必ず仕事や暮らしを良くすることにつながると思っていて、それは人生を良くすることに繋がっていく。

その楽しみを知っている人にはもっと楽しんでもらえるように、それを楽しむ素質がありながらまだ書く楽しみや万年筆に出会えていない人がそれらに出会えるようにすることが当店の役割です。

きっと革靴屋さんもジーンズ屋さんもカメラ屋さんも自分が扱っているものが、人を幸せにすると思うからそのお店をしていて、お店をするということはそういうことなのだと思います。

万年筆でスケジュールや原稿など、必要に迫られたもの以外も書くべきで、日記など思っていることは毎日とまでいかなくても書いた方がいい。
何をしたか、どういうことがあったということでもいいけれど、私は何がしたいかをなるべく書きたいと思っています。

同じ繰り返しでもよくて、書いているうちに少しずつ自分がその方向に近付いていたりすることがあって不思議に思うけれど、きっと書くモノというのは自分にできることしか書かないのではないかと思います。

書いただけで、願いが叶う、想いが実現するわけではなくて、自分の頭のどこかにある、やらなければならないことをただ書きだしていて、書き出し続けることによってそれが実現するチャンスがあった時に一気に行動に移れるのかもしれません。

自分が書いたものがいつまでも実現できずにそこにあるというのは、チャンスを見逃しているか、チャンスがまだ訪れていないかということ。

自分が常日頃思っていて、書き出していることしかチャンスが来ても気付かなかったり、ものに出来なかったりと考えると、自分の懸案事項、目標などをいつも目にできて頭の片隅にいつもあるようにするということは必要なことなのだと思います。

ただ好きでしていて、それをしているだけで幸せだと思える書くということを自分なりに分析してみました。

 

 


「3.11東北へ届けよう 蝶と桜のオーナメントづくり」 2月11日(木祝)

2016-02-07 | お店からのお知らせ

2月11日(祝木)、「3.11東北へ届けよう 蝶と桜のオーナメントづくり」を紙モノ作家SkyWindさんが来店して開催いたします。
いまだ仮設住宅で暮らしておられる被災者の方々を応援しているギャラリーShinhttp://www.gallery-shin.jp/で開催される展示に送るオーナメントをSkyWindさんと一緒に作ります。
オーナメント作りが難しければ、メッセージを書いていただくだけでもいいとのことで、お気軽にご参加いただければと思います。

 

とても良い写真ばかりで、当店に来ていただく理由にもなると思っているSkyWindさんのポストカード用の什器を作りました。

以前からもっと大きくスペースをとって、目立つように決まった場所を作りたいと思っていましたのでやっと実現したという感じです。アイデアばかりで、実現が遅くなってしまったけれど。

新しくできたポストカードコーナーはとても気に入っていますが、この什器もとても自慢に思っています。

先日の蔦屋書店のイベントが決まった時に、どのように用品を並べるか真っ先に考え、イベント什器として使えて、イベントのない時はポストカード什器として使えるものをペンテーブルhttps://www.p-n-m.net/contents/products/WL0034.html、ペンカウンターhttps://www.p-n-m.net/contents/products/WL0035.htmlを製作してくれていますsmokeの加藤さんにお願いしました。

お金をかけてせっかく作ったものをイベントだけで使うのはもったいないし、使わない時に置いておく場所にも困ると思い、兼用できるものをお願いしました。

ポストカード什器の時は真っ直ぐに伸ばして壁に立てかけられるようにして、イベントの時はA型に立てて使う。
2つ折り構造なのでそれほど大きくならず、車のトランクにも十分入りました。

こういうものが出来上がると、店の中が充実していくようでとても嬉しい。

お客様からの評価も高いSkyWindさんのポストカードに見合った場所がやっとできたと思っています。