元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

同窓会

2012-02-25 | 仕事について

パーカータイプのボールペン芯の良いところは互換性の高さです。今思いつくだけでも、パーカー、アウロラ、カルティエ(一部を除く)、デルタ、デュポン(一部)、ファーバーカステル、モンテグラッパ、モンテベルデ、ペリカン、ロットリング、スティピュラ、ビスコンティ、工房楔(!)が挙げられます。当店では、工房楔のボールペンをたくさん扱っていますので、それらの活用の幅を広げてもらいたいと思い、工房楔に合うモンテベルデセラミックゲルローラー芯を8色ほど用意しました。

 

仕事の都合や何やかやで、今まであまり同窓会に出ることができませんでした。

年末にも中学校の同窓会があって、かなり行きたかったけれど、店の営業時間中だったので行くことができませんでした。

年賀状で20年前にアルバイトをしていたカラオケボックスの同窓会をするという連絡をいただいていました。

今回は何とか都合をつけて行きたいと思いました。

最初、三宮で開催と言っていたのが、明石になり、最終的には皆の思い出の地伊川谷(神戸市西区)になりました。

カラオケボックスのアルバイト時代はとても楽しかったけれど、最も不安な日々でもありました。

バイト先やその周辺に行けば誰かいて、話したり、車で出かけたり、コンビニに買出しに行って後宴会ということをほぼ毎日していました。

でも一人になるとこれでずっと生きていけるはずがない、何とかしないといけないという不安や焦りにさいなまれる。

そんな最も戻りたくないけれど、楽しかったフリーター時代の仲間たちと20年振りに再会しました。

皆40歳以上になっているけれど、当時の呼び方で呼び合い、20年前の話題で盛り上がりました。

それぞれあの場所を抜け出して、別々の道を歩き出して、いろいろなことがあったと思う。20年という月日は本当に長い。

皆見た目は変わっていないけれど、人生の辛酸はそれぞれ舐めてきたのだと思うと感慨深い。

忙しく働いて、仕事が充実している子(あえて子と言います)、今年遅い結婚をする子、幸せな家庭を築いている子。

それぞれが地元に帰ったりして、自分の人生を手堅くまとめようとしている中、まだ伊川谷でがんばっている子もいたり。

大学生が住むワンルームマンションと、若い家族が住むマンションがたくさん建っていて、間に店店がある町。

ここは以前私たちのホームグランドでしたが、近くに住みながら本当に久し振りに来ました。

そんな土地の懐かしさと、人の懐かしさ。間の月日を飛ばして、一気に20年前にタイムスリップした感じ。

夜更けの伊川谷は、あの頃とあまり変わっていないと思いました。

 

 

 


時計の修理

2012-02-24 | 仕事について

限定入荷のペリカンM605とM600ホワイトトータスが入荷しました。

M600はM400とM800に挟まれたどちらかというと存在感の薄い万年筆ですが、ちょうど良い感じの大きさのボディとM400やM800にはない柔らかな書き味のペン先で、独特の味わい深い万年筆だと思っています。

ぜひご覧いただけたらと思います。

 

15年ほど着けっ放しにしていた時計を電池交換に出したら、修理が必要だと言われて、2ヶ月もの時間ともう少し出せば同じ時計が買えるほどの値段がかかりました。

でも、こういうものを直したいという心は値打ちとか、金銭的なことに関係ないと思いました。

15年間着けてきたという時間の重みと、わが家が本当に貧乏な時に妻が買ってくれたという経済的な重みがあって、そんな重みのあるものは絶対に手に入れることができないし、今同じ金額を出しても大した時計は買えないことを考え合わせると、修理の見積もりがいくら高くても直すしかないと思いました。

それにしても海外のメーカーの時計は本当に法外に高くなってしまった。

大学生の時に欲しかったエクスプローラーⅠは倍以上の値段になって、庶民に買えるものではなくなっています。

もちろんそれだけの価値があるのだと思います。

例えば、それらの時計は、きっと何年経っても修理すれば直るけれど、私のセイコーはもう部品がなくて次修理に出した時には直せないかもしれないとのこと。

でも今では愛用の時計が直ってきて、喜んで着けています。


親の想い、子の思い出

2012-02-19 | 仕事について

たまに息子がまた小さな子供の頃の夢を見ることがあります。


今ではしっかりとしているふうに見えているし、本人としては一人前になっているような態度でいますが、小学校低学年までの彼は頼りなくて他所のの子と比べても幼く見えました。

それが親としてはかわいくて、でもこんな風でこの子は大丈夫かと心配しながらも、甘やかしているのではと思うほどかわいがっていました。

でも当然学年が上がるほどしっかりしてきて、それはそれで喜ばしいことだし、大きくなった息子もかわいく思いますが、いまでは可愛くて甘えん坊だった息子とは別人のように思えます。

私たち夫婦の共通の話題のひとつに息子のことがありますが、息子が赤ちゃんだった時のことや、小さかったときのことを思い出して、よく二人で言い合って懐かしんでいます。

同じ話題を何度も言い合ったりしていますが、息子が小さかった時の話は夫婦お気に入りの話題のひとつです。

たぶん何歳になっても息子が小さかった時の話をして懐かしんでいるだろうし、思い出したいと思います。

子は幼いうちに一生分の親孝行をすると言いますが、こういうことかと最近分かるようになってきました。

親は子供の小さかった時の思い出をいつまでも大切に持って、それを記憶の引き出しから何度も出して見返してまたしまうことを繰り返している。

子供は10年あれば著しく成長するけれど、私たち親にとって10年はあっと言う間に過ぎてしまう年月で、親は子供の10年前に置いてきぼりにされている感覚なのだろうか。

 


トリッカーズ カントリーシューズ6518

2012-02-17 | 仕事について

トロンコ(http://writinglab.jp/)に影響されたこともあって、イギリスの風土や製品が気になって仕方ありません。

トロンコもきっと、トリッカーズやクロケットアンドジョーンズの靴を履いていて、時に無心になれる靴を磨く作業をしているのだと思います。

 

トリッカーズのカントリーブーツを履きだして、次は短靴が欲しいと思っていました。

ブーツはフィット感やパンツの丈をあまり気にしないでいいことなど履いている分にはとても良いけれど、脱ぎ履きがとても面倒なのです。

お茶のお稽古や食事に行った先で靴を脱がなければいけないところには絶対に履いて行くことができないと思っていましたので、短靴は必要に迫られていました。

トリッカーズは海外の靴に多い、足幅が非常に狭く、甲が低い木型ではないのか、とても履きやすくでもちゃんと足にフィットしていました。

それに先が長かったり、尖っていたりする靴は私には似合わないので、トリッカーズの形が感覚的にしっくりきましたので、他のメーカーのものに手を出さずに、また同じトリッカーズに選んでしまったのでした。

どんなものでも装飾の一切ないシンプルなものが好きで何か作るときもそれを心掛けていますが、靴の好みだけは違っていてプレーントゥのようにすっきりしたものではなく、ウイングチップにメダリオンが入っているフルブローグと言われるゴテゴテした感じのものが好きだと分かりましたので、カントリーブーツと同じデザインのものを選びたいと思っていました。

私は1つ気に入ると色々試さずに同じお店やメーカーばかりに集中してしまうところがありますので、トリッカーズを連続して買うところも自分らしいと思いました。

日常生活の中では、雨の日もあるし、アスファルトの上も歩くし、様々なところを歩きますので、安心感のあるコマンドソールに今回もしたいと思っていました。

色は前回のビーチナッツよりも少し赤みがかったよりトリッカーズらしいマロンアンティークにしました。

とても気に入っていて、この靴に合う服を選びたいと思いました。


万年筆で美しい文字を書こう教室からの告知

2012-02-14 | 仕事について

堀谷先生は教室が始まる前の月曜日に次回の教室のお手本を持ってきて下さいます。

まだ次の教室まで日がありますが、昨日次回のテーマ「漢詩を味わう」のお手本を持ってきて下さいました。

李白の名詩を書き、その意味、李白の足跡を感じることができる、今までとは少し違った、でもとても楽しみなテーマです。

万年筆の試し書きで何を書いていいのか分からず、取りあえず自分の名前を書いてしまいますが、こういった漢詩などを書くのもよろしいのではないかと思います。

「万年筆で美しい文字を書こう」教室では4月16日(月)から5月6日(日)まで作品展示を予定していて、参加者を募集しています。(教室に来ていただいている方は全員参加していただけると思っています)

展示の課題は春の歌を百人一緒などの和歌から選び、和紙の葉書に書くというものです。

作品展で書きたいと思われる歌が決まりましたら、先生のお手本を書いていただきますので、お伝えください。

4月6日(金)の教室で作品展の練習をして、先生に指導していただきます。

※作品展参加に、500円から2000円くらいの額代、マット代(額お持ちの方)が必要になります(決まり次第お伝えします)。


陽気なクラウン・オフィス・ロウ(庄野潤三著講談社文芸文庫)

2012-02-14 | 仕事について

新聞の書評欄は欠かさず読んでいる、最も好きなページです。

そこで紹介されていて、英国の旅、紀行文学ということで読んでみたいと思いました。

チャールズ・ラムのファンである著者が婦人とともにラムのロンドンでの足跡を追いながら、生涯東印度会社の会計係として過ごし、薄幸の作家と言われているラムの生活を偲ぶというものです。

恥ずかしながら、エッセイの名作「エリア随筆」はおろかチャールズ・ラムの作品を読んだことがありませんでしたので、この本の主題であるラムのことを全く知りませんでしたが、かなり限られた地域を巡るロンドン紀行としても大変おもしろく読めました。

著者がロンドン滞在中にどこに行ったかは当然、何をしたか、何を食べたか、目にした人が何をしていて、どんな様子かなど事細かに書かれていて、気付いたらラムの時代1800年代にタイムスリップして、またきづいたら現代の著者の旅に戻っているというような不思議な時間感を感じさせてくれます。

読み終わった後、この本の空気感がいつまでも尾を引いています。

「エリア随筆」読もうと思っています。

 


用途

2012-02-13 | 仕事について

1本の万年筆を使い続けているとそんなことは思わないかもしれませんが、万年筆が何本もあって使い分けているとそれぞれの万年筆に生まれついての役割があるということに気付きます。

正確に言うと、それぞれの万年筆の私においての役割かもしれませんが。

考えてみるとメーカーはその万年筆を作る時にこんなふうに使ってもらいたいというメッセージをそのモノに込めて作っているので、そのメッセージを受け手である我々が自分の用途の中に、そのメッセージに則って落とし込んでいるだけなのかもしれないと思ったりします。

私の場合万年筆の用途はメモ用、ダイアリー書き込み用、手紙用、葉書用、ペン習字用になりますが、それぞれの役割を違えて使うと役不足に感じたりしてしまいます。

例えば手紙用としているものはメモ用としては何の不足もなく使えますが、手紙を書くとか気張って原稿用紙に書くような時、メモ用としている万年筆では役不足というか、軽すぎるように感じます。

字幅も用途を左右しますが、それだけではないと思っています。

ちなみにメモ用としているのはペリカンM450、1931ホワイトゴールド、ペリカン60のペリカン勢ばかりで、どれも小型、中型の大きさのものばかりです。

手紙用はペリカンM800、アウロラ88、オマスミロード、パイロットスーパーなど。

ボディの大きさが問題なのか、インク出も違っているからなのかはっきりした理由が分かりません。

野球のバットにも、それぞれのバッティングスタイルに合ったものがあって、それを理解できるようになるには、少し時間がかかります。

でも万年筆メーカーはその万年筆を何用とあまりはっきりと用途を決めて発売していない(パイロットは字幅ごとには用途を指定していますが)ので、それはやはり使う人がそれぞれで決めないといけないということでしょうか。

ノートのサイズも絵や図形を描くようなものは、大きめのB5以上の方が使いやすいし、文字だけを書くのならA5くらいの方が書きやすいと思っています。

それも理由は分かりませんし、もしかしたら私だけが思っていることなのかもしれません。

でもそれぞれのモノに用途があって、それを感じ取って自分の使い道に当てはめていくことが、使いこなすということになるのでしょうか。


雑誌「BE-PAL」

2012-02-10 | 仕事について

どなたかだいたい分かりますが、きっとどなたかが推薦して下さったのだと思います。

違うページにル・ボナーさんも出ていました。

本当にありがたいことで、万年筆とは畑違いのアウトドア雑誌BE-PAL3月号で当店が冒険道具の店135という特集で紹介されています。

BE-PALを初めて読みましたが、アウトドア~冒険系の雑誌でなかなか面白いことを初めて知りました。

でも旅や冒険と万年筆とは、それほど離れていないような気がしています。

非日常の記録を記すノートは特別なものだと思いますし、それにはやはり万年筆が合っているような気がします。

旅の1日の終わりの宿やテントの中で手元を照らして、万年筆でノートに記して締めくくる。(ただし氷点下になるとインクは凍る可能性があるので、登山などでは使うことができないかもしれません)

机上の時間でなくてもこういった場面でも万年筆が使われるのは嬉しいことだと思いますし、私たちはどんどん万年筆を持ち出して外でも使いたいと思います。

 


カンダミサコ「大きいサイズのペンシース」受注締め切り迫る

2012-02-07 | 仕事について

万年筆を1本と手帳だけ持って旅に出たいと思うことがあります。

そんな遠くへ行かなくてもいい、各駅停車のローカル線でのんびり座っているだけでいい。

兵庫県内にはまだローカル線が残っていて、加古川線や播但線、福知山線などで旅情は充分に味わえると思います。

車窓の風景や乗り合わせた人たちを見て、イメージを膨らませて、思い浮かんだことを手帳につらつらと書き留める。旅に出てそれだけできれば私は満足で、観光名所や豪華な食事はなくてもいい。

旅に出て心に残っているのは案外そういう風景や地元の人たちのこと、そして家族とのちょっとしたやり取りだったりします。

万年筆で書くために旅に出るような気持ちで、万年筆で何か書きたいと思えて、たくさん書くことができれば私は幸せだったります。

旅と手帳と万年筆をイメージした時に私はいつもモンブラン149を思い浮かべます。

太くて大きな149が旅の万年筆というのは何か不思議な感じがしますが、旅に1本だけもって行くのはなぜか149。

モンブランは数年前から専門のショップでのみの販売になっていて、どこの店でも買えるものではなくなっているので、万年筆の代名詞的な存在ではないと思っていますが・・・。

話を戻すと、そんなモンブラン149やペリカンM1000などのオーバーサイズの万年筆を1本だけコンパクトに収納することができるカンダミサコ大きなサイズのペンシースの受注が2月12日(日)で締め切りになります。

せっかくの機会ですので、ぜひご利用ください。

 


揃えの美学

2012-02-06 | 仕事について

アウロラが昨夏のマーレリグリアに続いて、マーレティレニアを3月か4月頃発売します。

イタリア半島を囲む4つの海をテーマにしたこのシリーズは、ライトブルーのリグリア、エメラルドグリーンのティレニアときたので、今後どのような色でシリーズ展開をしていくのかという憶測を呼び、皆さんの興味を惹いています。

ティレニアは当店にも当然入荷してきます。

85周年記念レッド、から続くこのシリーズは、ただの色違いだと思いながらも、やはり揃えたくなる魅力に満ち溢れています。

アウロラのこのシリーズでなくても万年筆には揃えることの魅力が仕掛けられているものがあります。

ペリカンスーベレーンのM400からM800はインクの色とボディカラーをコーディネートすることもできるし、年代ごとに微妙に違う仕様の違いを全く同じ緑縞ばかり揃えて楽しむこともできる。

ペン先の設定もたくさんありますので、揃える幅が広がります。

私の知っているある岐阜の木工家のように、オレンジのドルチェビータのシリーズを全て揃えたいと思う人もいるかもしれません。

他にもアウロラの大陸シリーズ、デルタ民族シリーズなど、少しずつ形と色を違えて発売される万年筆の楽しみは揃えの美学を刺激します。

工房楔のパトリオットボールペン、新しく作り始めたマンハッタンボールペン(https://www.p-n-m.net/contents/products/category2-13.html)も形は同じだけど、材料ごとに味わいが違い、まさに揃えの美学を満足させてくれるものになっています。

揃えの美学はそれを一同に見渡すことができるものの存在が不可欠で、万年筆やボールペンの場合ペンケースになります。

ペンケースはただペンを持ち運ぶためのものだと思っていた若かりし日の自分を恥ずかしく思うほどに、ペンケースの中身をコーディネートすることは、実用的には複数本持つ理由が見つけにくい万年筆を複数本持ち歩くエネルギーの源になります。

コンプロット10やコンプロット4ミニhttps://www.p-n-m.net/contents/products/category2-12.htmlはまさにこの揃えの美学のための箱なのだと改めて思うのでした。