フォードVSフェラーリ/ジェームズ・マンゴールド監督
どうも、実話をもとに作られた物語らしい。1960年代にフェラーリはル・マンの24時間レースで連覇するなどしていたが、経営難に陥りフォードに身売りしそうになったが、結局フィアットと提携してフォードを蹴った。その上フォードの二世社長を罵倒した。これに怒ったお坊ちゃんフォード社長は、ル・マン参戦を決意する。そこでル・マン優勝経験のあるシェルビーという男にレースの協力を託すのだが、巨大組織であるフォードの命令系統は複雑で、シェルビーは自由に仕事をさせてもらえない。性格には癖があるものの、レーサーとしても自動車の整備の腕も確かなマイルズをシェルビーは使いたいのだが、どうしてもそうさせてもらえない。結局レースには負けたために、少し坊ちゃん社長を焚きつけて、やっとマイルズを自由に使えるようになったのだったが……。
マイルズという男は、確かに癖がありすぎて協調性に欠ける。その上短気なのでシェルビーとも平気で喧嘩する(まあ、仕方ない面はあると思うが)。しかしまあ、美人の奥さんに愛され、息子からも敬愛されている。借金で自分の経営する自動車整備工場は傾いているが、要するに顧客からちゃんと料金を取れないお人よしなのかもしれない。そうではあるのだが、車にかける情熱はすさまじく、レーサーの腕も非常に高い。ところがフォードという会社は、ちゃんとレースに勝つことより、いろいろと社内のメンツが大切で、せっかくのレースを台無しにしようとばかり邪魔をする。シェルビーは、そのために間に立って苦心するが、自由人マイルズは、そんなことに頓着してない。最後はどういう訳か妥協するのだが、まんまと会社に騙されて可哀そうなことになってしまう。
まあ、変な物語なのだが、大筋では実話をもとにしているようだ。アメリカ社会というのは、自由なんだか不自由なんだかよく分からない話だ。メンツを重んじて、それなりに愚かである。個人の中には優秀な人たちがいて頑張っているので、いろいろと栄光をつかむことができるというお話なのかもしれない。
まあそういうことではあるが、面白くない映画ではない。わざわざ身内が邪魔をしなければ、もう少し簡単にレースで勝つことができたのだろうが、組織というものがそれを許さない。まるで日本の会社の物語みたいだが、アメリカだっておんなじだということだろう。でももう昔のお話だから、ひょっとすると今はもう違うのかもしれない。だからアメリカは元気で日本はダメなんだということを言いたいわけではないのだが、少しはそんな気もする。日本社会もこれを見て、頑張ってもらいたいものである。