ルワンダ中央銀行総裁日記/服部正也著(中公新書)
ルワンダといえば映画を観た所為もあるんだけど、なんだか大虐殺で大変な国だというイメージが付きまとっていて、この本の内容とまったく関係が無いにもかかわらず、なんとなく読むのを躊躇してしまうところがあったような気がする。虐殺に関する解説も本の末尾にあるので、まったくそっちの方面から興味を持った人に無益だとは言えないまでも、むしろこの本は、いろんな意味でビジネス書でやる気を出したいみたいな人の方が読むべき本のように思う。
信念を持って働くとはどういうことなのか。日本人にはほとんどなじみのないようなアフリカのルワンダという小国の発展のために尽力したという一人の日本人の自伝というだけでなく、仕事とはどのようにすべきものなのかということを考えるにおいて、実に示唆に富んだ名著なのではなかろうか。
ルワンダを例えるまでもなく、日本から見て発展途上と考えられるアフリカ諸国が何故思うように発展を果たすことができずにいるように見えるのだろうか。彼らは怠慢で働かないからなのか。圧政で自由が無いのか。もちろん、そういう要素もまったく否定はできないのかもしれないが、日本人が勤勉であるから発展したのかというのであっても、実は限りなく運に近い要素が最大の原因であった過去を検証するまでもなく事実としてある訳で、そういう複雑な要素が絡んだ運の悪さのようなものが、彼らの経済的な発展を拒んできた歴史があるということなのだと思う。それも彼らの置かれた地理的な要因の方が大きく、人間の能力を超えて利権に群がる政治的な先進国の無理解の所為だということも、第一に鑑みなければならないことなのであった。
この著者の服部氏(すでに故人であるらしい)は、そういうことを現地で感じ取り、出来るだけ彼らの手で彼らの自主性を邪魔しない、というか支援するという根本的な信念のようなものをもって仕事に取り組み、見事にルワンダという国が、いくばくかでも立ち上がることを成し遂げようとする現場に立ち会うのである。もちろん本人の視点での話であるから、細かいことを実証することはできないけれど、諸外国の優越的な先入観で現地の利権をむさぼる人たちの防波堤になり戦い働く一人の日本人の姿に、感動を覚える人も多いのではないだろうか。
僕も日本人なのでそう思うのかもしれないが、日本人という公平感のある潔い思想を持った人間だからこそ、そうした差別に毅然とした態度で戦うことができたのではないかという共感も相俟って、実に清々しい読後感をもたらされるのである。
仕事はなんのためにするのか。それは個人個人で違ってもちろんかまわない哲学的な問いだ。個人は一つしかない答えのために働いているわけではないし、そうでなければならないいわれはない。しかし仕事を成し遂げる上でしあわせとは何だろうか。そういうことを考える上での一つの答えは、この本の中にある。僕は服部氏がしあわせな仕事人であったという勝手な確信を持ってこの本を読んだ。故人であるから確かめようのないことではあるが、少なくともこのような生き方のできる人が不仕合せであるはずが無いような気がするのであった。
ルワンダといえば映画を観た所為もあるんだけど、なんだか大虐殺で大変な国だというイメージが付きまとっていて、この本の内容とまったく関係が無いにもかかわらず、なんとなく読むのを躊躇してしまうところがあったような気がする。虐殺に関する解説も本の末尾にあるので、まったくそっちの方面から興味を持った人に無益だとは言えないまでも、むしろこの本は、いろんな意味でビジネス書でやる気を出したいみたいな人の方が読むべき本のように思う。
信念を持って働くとはどういうことなのか。日本人にはほとんどなじみのないようなアフリカのルワンダという小国の発展のために尽力したという一人の日本人の自伝というだけでなく、仕事とはどのようにすべきものなのかということを考えるにおいて、実に示唆に富んだ名著なのではなかろうか。
ルワンダを例えるまでもなく、日本から見て発展途上と考えられるアフリカ諸国が何故思うように発展を果たすことができずにいるように見えるのだろうか。彼らは怠慢で働かないからなのか。圧政で自由が無いのか。もちろん、そういう要素もまったく否定はできないのかもしれないが、日本人が勤勉であるから発展したのかというのであっても、実は限りなく運に近い要素が最大の原因であった過去を検証するまでもなく事実としてある訳で、そういう複雑な要素が絡んだ運の悪さのようなものが、彼らの経済的な発展を拒んできた歴史があるということなのだと思う。それも彼らの置かれた地理的な要因の方が大きく、人間の能力を超えて利権に群がる政治的な先進国の無理解の所為だということも、第一に鑑みなければならないことなのであった。
この著者の服部氏(すでに故人であるらしい)は、そういうことを現地で感じ取り、出来るだけ彼らの手で彼らの自主性を邪魔しない、というか支援するという根本的な信念のようなものをもって仕事に取り組み、見事にルワンダという国が、いくばくかでも立ち上がることを成し遂げようとする現場に立ち会うのである。もちろん本人の視点での話であるから、細かいことを実証することはできないけれど、諸外国の優越的な先入観で現地の利権をむさぼる人たちの防波堤になり戦い働く一人の日本人の姿に、感動を覚える人も多いのではないだろうか。
僕も日本人なのでそう思うのかもしれないが、日本人という公平感のある潔い思想を持った人間だからこそ、そうした差別に毅然とした態度で戦うことができたのではないかという共感も相俟って、実に清々しい読後感をもたらされるのである。
仕事はなんのためにするのか。それは個人個人で違ってもちろんかまわない哲学的な問いだ。個人は一つしかない答えのために働いているわけではないし、そうでなければならないいわれはない。しかし仕事を成し遂げる上でしあわせとは何だろうか。そういうことを考える上での一つの答えは、この本の中にある。僕は服部氏がしあわせな仕事人であったという勝手な確信を持ってこの本を読んだ。故人であるから確かめようのないことではあるが、少なくともこのような生き方のできる人が不仕合せであるはずが無いような気がするのであった。