カワセミ側溝から (旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

昨年観たお勧め映画(17)

2018-01-20 | なんでもランキング

 また今さら企画。

 年末に観た映画に印象に残るものが多かった。

 特に素晴らしいと思ったのがこれ。
黄金のアデーレ・名画の返還/サイモン・カーティス監督
 実話をもとにした映画は怪しいものが多いが、こういうものなら満点だろう。単純な反戦モノに終わらない、実に現代的な物語になっている。今の世の中でなければなしえなかった奇跡があるという感じである。演技も素晴らしいのではないか。大人が鑑賞するなら、このような映画にすべきである。

 この作品もお勧め。
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男/ジェイ・ローチ監督
 アメリカ社会は多くの過ちを犯してきたが、それにも屈せずに這い上がってくる人々もいる。いや、多くの人はいやおうなく潰されてしまったが、不屈の精神の人がいるという事か。まったく凄いことである。

 今気づいたが実話ものが三つつづいた。やはり事実は小説より奇なりなのか。
ショコラ 君がいて、僕がいる/ロシェディ・ゼム監督
 フランスでも黒人は苦しんだ。そうしてもがいて生きた人がいる。ちょっとイラつく感じもあるが、時代の中で正直に生きるとこういうことにもなるのかもしれない。お孫さんたちはどうしておられるのだろうか?

 これは普通の年だと第一位だったかもしれない。さすが西川監督という感じ。
永い言い訳/西川美和監督
 ただし、観てスカッとする類の映画では無い。そういう意味では危険な話なのだ。しかし、良い映画は観られるべきなのだ。

 これはちょっと強烈という気もするが、気分が悪くなっても観るべきかもしれない。
灼熱の魂/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
 こういうアイディアを考えついても気分が悪くなったりしないのだろうか。恨みの連鎖というのは、簡単に無くなるものでは無いことがよく分かるのではないだろうか。
 
 政治家がカッコよすぎるけれど、面白いものは仕方ない。
シン・ゴジラ/庵野秀明・樋口真嗣監督
 コジラってこういう話にも出来るんだな、という事で、素直に感心してしまった。

 普通はおバカ映画だけど、いいんではなかろうか。
ヒロイン失格/英勉監督
 娯楽としての映画に徹していて、楽しかったのです。

 これはコメディと思って観ていて、大変に感心させられた。
殿、利息でござる!/中村義洋監督
 非常にいい話である。子供は観るべきではないだろうか。また行政や政治家も観るべきではないだろうか。

 こういうコメディもありなんだな。
あやしい彼女/水田伸生監督
 若返るっていうのも、こういう話なら悪くない。面白いです。

 これはなかなかいい映画ではないか。
ヒメアノ~ル/吉田恵輔監督
 グロテスクだけど、いじめ問題を真正面に考えているような気もする。ちょっと行き過ぎていて恐ろしい。

 これは僕にとってはホラー映画に近い。
さざなみ/アンドリュー・ヘイ監督
 どんどんすれ違う人間の感情に、年をとっても惑わされる危険があると知った。恐ろしい。

 ホラー色はあるがいい映画だ。黒澤(清)作品は、たまにこういうことが起こる。
岸辺の旅/黒沢清監督
 海外でも盛り上がったらしいが、日本人にもわかる話である。変ではあるけれど。

 この映画は迫力勝ちである。あちらの人の演技は、ほんとに上手いな。
レヴェナント/アレハントロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督
 ディカプリオってやっぱり上手い俳優さんだよ。ちょっと寒そうだけど。

 コメディですよね。でも実話らしい。スゴイ。
偉大なるマルグリット/グザヴィエ・ジャノリ監督
 こんな人がいるのは迷惑だが、面白いからいいのである。

 正直言ってもう見たくないが、それは拷問が多すぎるから。
沈黙―サイレンスー/マーティン・スコセッシ監督
 しかしだからといって悪い映画では無い。やはり落とせない作品として。
 

 昔の映画だけど、改めて見て感心したいくつか。
 この映画は何故か見落としていた。素直に面白く、話がどんどんでかくなって行ってどうなるんだ? って感じで最後まで行けます。
目撃/クイント・イーストウッド監督
 
 これは素直に傑作。
ゼイラム/雨宮慶太監督
 しかし、オタク的な感心と思われてはいけない。人間は努力で道を切り開けるという事が教訓的に分かる。お金だけがすべてじゃない(製作費として)。

 ほのぼのとしたラブコメ。昔のアメリカ人は純情である。そして女は奔放で悪い(それが魅力的なんだが)。
男性の好きなスポーツ/ハワード・ホークス監督

 前にも観たことがあるが、大人になってみると、また一段と味のある映画。いや、こんなに面白い映画だったんだな、と非常に感心しました。
ペーパームーン/ピーター・ボグダノヴィッチ監督

 
できれば見なくてもいい酷い出来栄えの映画も紹介。
マッド・マックス~怒りのデス・ロード~/ジョージ・ミラー監督
 だけどこれはこれで楽しいとは思う。馬鹿でいいならこれもありだ。人間成長がすべてではない。馬鹿でも生きられる社会がいいのだろう。

 これは酷いので見なくてもいいだろう。よくもまあこんなひどいの作れたものだ。でもたぶん真剣にやってたんだろうな。信じられない感性です。
アフター・アース/M・ナイト・シャマラン監督

 これも酷過ぎ。時間をつぶして自己嫌悪に陥るに違いない悪魔的酷さ。
ギャラクシー街道/三谷幸喜監督



 さて、最後には捨てるには惜しい。作品をいくつか。
いしゃ先生/永江二朗監督
 これはいい話じゃないですか。平山あやって人はおバカな人だと思ってたが、大変に失礼しました。とても知性的なんで良かったです。

ブリッジ・オブ・スパイ/スティーブン・スピルバーグ監督
 淡々と理屈を貫く姿勢が描かれている。冷戦っていうのはアメリカにもずいぶん問題あったんだな。一応終わって本当に良かった。

リップヴァンウィンクルの花嫁/岩井俊二監督
 なんだろうこれは。っていう不思議さもあるが、岩井ワールドなんだから仕方ない。世間がものすごく狭い。

海よりもまだ深く/是枝裕和監督
 なんだろうこれは。っていう不思議さもあるが、是枝ワールドなんだから…。ひとの心理は深いですな。
 
ハドソン川の奇跡/クイント・イーストウッド監督
 これだけ知られた事件が映画として再現されて、なお面白いんだから凄いことである。終わった後もいろいろあったんだな。

 という事で、今年も面白い映画にあたるといいですね。
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昨年読んだお勧め本

2018-01-14 | なんでもランキング

 休刊になってしまったが「考える人」という季刊誌があって、そこで向井万起男が本を紹介するエッセイを楽しく読んでいた。実際に紹介された本もいくつか読んだが、圧倒的に読んで良かったと思われたのが、
病の皇帝「がん」に挑む/シッダールタ・ムカジー著(早川書房)
 だった。
 素晴らしい本の一言。上下巻の大部のものだが、読みだすと面白くて止まらない感じになる。そうしてものすごくためになる。医者じゃなくても読むべきは、絶対にこれだ。人間が癌と戦ってきた歴史は、人間がこれからも生きて行こうとする歴史に他ならない。ほんとに面白いんですってば。
 
 昨年は改めて福岡伸一の本も読んだ。この人の文章も素晴らしい。まだ読んでないのも読まなければ。

 ミステリは古いのを二つ。

スターリン暗殺計画/檜山良昭著(徳間文庫)
 は、歴史ドキュメンタリーっぽいもの。フィクションと断ってあるのに、本当の話に思えてならない。
刑事マルティン・ベック 笑う警官/マイ・シューバル、ペール・ヴァールー著(角川文庫)
 は、古い話だとは気付かなかった。こういう物語の掘り下げ方があるんだと感心してしまった。北欧の暗い世界というのは、九州の人間には大変に異質だった。

 他の本も売れているようだが、川上本はこれからも人気が続くのではないか。ユーモアがちょっと取っ付きにくいかもしれないが。
鳥類学者無謀にも恐竜を語る/川上和人著(技術評論社)

 謝罪の研究があるなんてまったく知らなかった。日本でもいろいろ研究して欲しいものだと思った。
怒りを鎮める うまく謝る/川合伸幸著(講談社現代新書)

 冲方丁にこんな体験があるなんて知らなかった。
冲方丁のこち留/冲方丁著(集英社インターナショナル)
 映画の「それでも僕はやってない」のような恐ろしい体験版だ。こんな話が自分に役立てることが無い人生を送りたいものである。

 今年(去年だった)はいろいろ忙しくて、特に人間関係がこじれた訳でもないのに少し気分が乗らないことがあった。それで手に取ったと思われるのだが、大変に助かったと思う。
「折れない心」をつくる40のルール/大野裕著(PHP研究所)
はじめての認知療法/大野裕著(講談社現代新書)
こころが晴れるノート/大野裕著(創元社)
 本当に平易な文章にしてあるが、内容が薄い訳では無い。この読みやすさで人助けができるかもしれないという渾身の工夫なのだろうと思う。

 読んで考えさせられたのはこれ。
自由とは何か―監視社会と「個人」の消滅/土屋雄裕著(ちくま新書)
 監視社会は恐ろしげな未来予想のようでいて、実は僕らはその社会を望んで身をまかせているのかもしれない。いろいろあって職場の車にもドライブレコーダーを付けてしまった。皆自らを守る為に、管理されることを望んでいるのである。

 読んで考えさせられたもう一つはこれ。
ぼくらはそれでも肉を食う/ハロルド・ハーツォグ著(柏書房)
 僕の関心のあるクジラのことは書かれていないが、西洋人が生き物に対していかに屈折しているのかよく分かる。そうして日本人もこの病に年々侵される人が増えてきている。僕はペットも飼っているので、ますます考え込んでしまいそうだ。

 これも考えさせられた。
垂直の記憶/山野井泰史著(ヤマケイ文庫)
 そこに山があるから、というのは、そんなに単純な冒険じゃないようだ。人間の生き方のすさまじさというのが、山登りにはあるのである。

 前野本は多少気負っている感じもあるが、読ませる。
「死ぬのが怖い」とはどういうことか/前野隆司著(講談社)
 確かに死ぬのは怖いが、逃げていても怖さは消えない。向かい合うという姿勢として、こういう考えもあるのだろう。
 
 最後は漫画だが、鬱がどういうものかかなり理解できると思う。
うつヌケ/田中圭一著(角川書店)
 抜けられないトンネルは無いと思いたい。人が頑張ることも、よく考えてみなければならないのではなかろうか。

 そういえば、と思いだすのは
騎士団長殺し/村上春樹著(文芸春秋)
 特に語ることは無いが、イベントなんで読まなければ。そしてやっぱりそれなりに面白い。文学賞がどうとかいうような作品でもないけど、村上作品は発表されるだけで意味があるようにも思う。また頑張って書いてください。
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分業して専門性を高めよう

2017-08-26 | なんでもランキング

 高校野球やリトルリーグなんかだと、ピッチャーで四番を打つ選手をよく見かける。優れた万能能力をもった人が一人でも、けっこうチーム力は高くなることは間違いなさそうだ。まあ、それくらい野球というスポーツの、ピッチャーに対するウェイトが高いということは言えそうだけど。
 しかしながらプロ野球やメジャー・リーグになると、やはり分業しなければ難しいとは分かる。大谷選手なんてのは、だからものすごく珍しいのだが、いまだにどちらかに絞るべきだという意見があるのも、やはり専門化した方がより高い能力を発揮できると実感している人がいるためだろう。
 リーグによってはいまだにピッチャーが打席に立つ場合もあるが、やはり攻撃力を上げるにはDH制をとった方が有利だろう。日本の場合実力はパ・リーグの方が高いと言われるが、おそらくそれはDH制をとっている為に、ピッチャーの負担が大きい分、実力が高くなった可能性が高い。そういう中でも大谷君がいるんだから、やっぱり彼は凄いな。
 ところで打撃の成績は専門性があがっているにもかかわらず、記録的には古いものが結構残っているという。大リーグに渡った選手が残っていれば、日本の記録も影響があった可能性もあるが、おおむね近年は投手力が向上した可能性が高い。何故なら100年以上の歴史のある大リーグの記録も、近年は投手の記録の方が高くなっているから。
 これには明確な理由があって、投手も分業化が進んでいるからだ。いまだに先発投手の役割がいくぶん重いように思うが(単にイニングが長いから)、現代は中継ぎ、抑えと一試合に3人以上投入するケースがほとんどだろう。ワンポイントで左打者専門、という人だっている。変化球の種類が増えたというのもあろうが、三振数は増えており、平均打率も、小さいが下降気味という。もちろん、球場が広くなったりなど、別の要因も絡んでいるのだろうけど、投手力は現代の方が以前より高くなっていると言われている。
 要するに人間の能力は、マルチよりスペシャルな方がいいということが、一般的には言えるようだ。分業化する方が効率が高くなり、より高度な実力が発揮されやすくなるということか。そうはいっても人件費が…、というのが日本の現状なら、やっぱり成長は難しい問題かもしれないですね。
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買ったけど(持っているけど)使われてないもの

2017-02-26 | なんでもランキング

 買ったけど使われていないものの代表として、よくジューサーミキサーがあがる。これは、使うのがあんがい面倒だからだと思う。まず何をミキサーにかけるのかという問題があって、ジュースなどにする素材そのものを買うのが面倒だ。また、こういうのが習慣づくのにそれなりに修練が必要そうだ。その後飽きるというのもある。使った後洗うのも面倒というのもあるだろうし、けっこう場所をとるので、結局しまい込むということもあろう。でもまあ一番は、これはいいな、と思う動機が、シンプルに安易すぎたせいではないか。でもミキサーで出来たものを消費するのは一瞬。それに対して準備や片付けまでの手順が多すぎるというギャップが大きすぎるのではないか。僕は子供の頃、玉子と牛乳をミキサーで混ぜて飲んでいた記憶がある。ちょっと砂糖も入れてたっけ? あれは何の流行だったのかまったく思い出せない。けれどやはり長続きはしなかった。結構マメにミキサーを洗っていた記憶もあるんだけどな。
 大阪の人は必需品だと言われるが、タコ焼き器も眠っている家は多いのではないか。なんとなく欲しくなるのは分かるが、本当にそんなにタコ焼き焼くだろうか。縁日のようなところで買うというのは楽しいが、家でタコ焼き焼いて食べるというのが、やはり習慣にないし、家庭の風景としても無い。それは大阪人という人達との違いといってはなんだが、当然という気もする。それにやはりたこ焼きを上手に焼くのは結構難しい。熟練の技になるために、いったいどれくらいの消費を必要とするのか。修行が足りないまま離脱する。そうして結局遠ざかる。タコ焼き愛が足りないだけだろうが。
 電動髭剃りもどこかに行ったな。これは剃刀負けしたからだ。剃れるのは悪くないが、その後すぐに痒くなって閉口した。僕にはダメだと思って普通にお蔵入り。いまだに出勤中にすれ違う車の中で電動で髭を剃っている人を見かけるが、器用というより、肌が強い人なんだろうな、と思います。
 電動歯ブラシも一回くらい使ったきりだと思う。結局使いづらいというか、そんなに効果が実感できないというか。電動で無い方が細かく磨けるような気分があるかも。
 ぶら下がり健康器は子供の頃にあったかもしれない。思い出すだけでなんとなく恥ずかしい。友人の家でも見かけたりして、バカにはしないが、お互いに恥ずかしい。
 まったく使わない訳では無いし、必要だから数年に一度は買うが、タイヤチェーンも探せばいくつかあると思う。やはり雪があんまり降らないし、降っても相当でなければ使わない。できれば使いたくないという意識もあるだろう。使われない方がいい道具である。
 栓抜きは瓶ビールを買わなくなったから。缶切りも缶詰自体をやはり買わない。それに最近の缶詰は、缶切りがいらないものが多いんじゃないか。ワインオープナーもあんまり使わないけど、これは持っておかねばという気もする。
 服ではマフラー。これは相当年数した経験が無い。もう持ってもいないかも。
 以前は長らくアコーディオンを持っていた。結局弾けないというのがあった。練習もあんまりしなかった。でももったいない。その後人にやったかもしれない。
 絵の道具や習字道具も眠っている。自発的にはやはりやらない方面かもしれない。彫刻刀もどこへやら。学校教育は身につかないということかもしれない。
 実は読んでない本が一番たくさんあるかもしれない。でもまあ読書家なら知っての通り、そういうものなんで仕方がない。これは使わないというものとは意味が違うと思いたい。いや、もう物理的に許される限り続くことなんだろうと思う。
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お勧め戦争映画10ちょっと

2017-01-15 | なんでもランキング

 何故か今頃、戦争映画のお勧めを紹介する。戦争映画という括りというのは、実はかなりおおざっぱすぎるのだが、まあ、それはそれでいいだろう。映画は娯楽だが、人間の物語として、もっとも語られたのは戦争かもしれないと思う。人が死ぬというのは、題材としてこれほど映画に向くものは無いということかもしれない。ということで、最初から無謀だが、興味のある方は観てみてください。

キリング・フィールド/ローランド・ジョフィ監督
 まずはカンボジアの内戦を描いた作品。これは戦時下の人間の描き方が実に恐ろしいと思う。賢く生き残る人間とはどういう人か。ほとんどは運だが、しかし注意深く生きることは出来る。そういうことも含めて、実に考えさせられるのである。

プラトーン/オリバー・ストーン監督
 今度はベトナム。これもちょっとした運命の分かれ目を思う。さらに悲惨な戦闘の意味も考える。オリバー・ストーン監督は、自身がベトナム帰還兵だという。その経験がこの映画をつくった事は間違いなくて、娯楽作でありながら、どこか本当のような気分が伝わる映画だ。

JSA/パク・チャヌク監督
 国が分かれた朝鮮人同士の友情を描いた作品である。段々と明かされていく事実をサスペンスとして追うだけでも衝撃的である。僕は北に対する印象が、この映画によってかなり変わった。国家はクレイジーでも、住んでいる人は人間なのだ。

地獄の黙示録/フランシス・コッポラ監督
 これはデレクターズ・カットが後に出て、そちらの方がまとまりが悪く、映画的には劣るはずだが、しかし僕はそちらの方が好きである。なんだか妙で意味がよく分からないのだけれど、戦争の狂気は伝わってくる。映画そのものが狂気と化している現場もあったらしく、映画としての魅力のある作品である。

硫黄島からの手紙/クイント・イーストウッド監督
 日本人であるせいか、「親父たちの星条旗」よりもこちらを推す。まあ、両方観ていいが。戦闘も凄まじいけれど、小さく取り上げられるエピソードもまた戦争自体を伝えるものとしていいと思う。人道的に日本より上である(と思っている)米軍が、降伏してくる日本兵が面倒な場合は射殺したりしている。そうして、このような絶望的な戦闘でも生き残ることが出来た人もいる。いったい人間とは何なのだろう。

プライベート・ライアン/スティーブン・スピルバーグ監督
 ノルマンディ上陸作戦の場面は、実に多くの映画がある。しかしこの映画の前と後では、その場面の描き方が大きく変わったと思う。前半のその場面だけでも、映画として大変に貴重なのではあるまいか。戦争映画というジャンルそのものを、映像の力で変えることが出来たというのが、スピルバーグ監督のシンドラーのリストのような映画とはまた別の、功績であると思う。

火垂るの墓/高畑勲監督
 これは何度もテレビで再放送されていたので、知っている人も当然多いという作品だ。戦争の中の飢えというものを、これほどストレートに描いたものは少ないのではないか。大人社会そのものが子供にとっては敵のようなもので、弱いものはとことん弱くなってしまう戦争という残酷さを、これでもかというようなストーリーで紡いでいる。まったくやりきれない作品である。

 ここで二つ番外として紹介する。
若き勇者たち/ジョン・ミリアス監督
 戦争ものは反戦モノばかりではない。一見戦争賛美にも捉えかねない作品だってある。これはそのような批判を浴びた作品なのだが、しかしどうして、僕にはこのような高校生が戦うために立ち上がるこのストーリーにも十分戦争の狂気が描かれていると思う。いきなり高校が戦闘に巻き込まれる荒唐無稽さも、妙に面白い映画である。
パトリオット/ローランド・エメリッヒ監督
 この監督さんはバカ映画もたくさん撮るが、バカなりに逆に考えさせられるということはある。西洋人が考えている疑いのない正義というものは、このような逆説的なものが土台になっているということがよく分かる映画になっている。愛国心と個人の正義が融合するのは、このような意味があるということなんだろう。利口ぶってばかりでは、分からなくなる人間感情かもしれない。

ライフイズ・ビューティフル/ロベルト・ベニーニ監督
 これは単なる寓話だけれど、さらにひどく残酷だけれど、このように生きていきたいという気持ちはよく分かる。それが出来なくなるのが戦争だと思うけれど、人間は考え方次第で、地獄をどのようにも見ることもできるという訳だ。西洋人の欺瞞に過ぎないと、吐き捨てるには惜しいファンタジーではあるまいか。

ディア・ハンター/マイケル・チミノ監督
僕はこの映画で初めてロシアン・ルーレットを知った。この場面に自分が立たされていると想像するだけで、ひどく恐ろしいトラウマ映画だ。戦争の傷はそこまで人を追いこむのかということを、嫌というほど知らされることになる。さらにその狂気を楽しむ群衆がいるのである。これは子供に見せるべき映画の第一だろう。

フルメタルジャケット/スタンリー・キューブリック監督
 そうして特に傑作だと思う傑作は、やはりキューブリックだ。そうして本当にひどい映画だ。その酷さがそのまま戦争という実態を見事に描き出している。様々なパロディを生んだことでも有名だが、その胸糞の悪くなるような人間模様が、ちょっとしたギャグにも見えてしまうためだと思われる。強烈過ぎて気分が悪くなりながら戦争体験をするといいと思う。
もちろんキューブリックは「突撃」もいい。塹壕のワンカットは、映画史上に残る遺産のような素晴らしさである。
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お勧め音楽映画その5

2016-11-24 | なんでもランキング


 あの頃、ペニーレインと/キャメロン・クロウ監督。これはバンドを追っかけて記事を書いているライターの目からバンドを見た、という視点が面白い。基本的には恋愛映画ではあるんだけれど、ツアーという興業で食べているバンドマンというのは、まさに旅芸人なんである。かなり無茶苦茶で変な仕事である。人気稼業だが、しかし他人の目なんて気にしてたらやってらんない。若いころには憧れていた職業だけれど、僕にはとても無理だな。まあ、平凡というのは尊いことかもしれません。

 ヘドウィグ・アンド・アグリーインチ/ジョン・キャメロン・ミッチェル監督。元ミュージカル作品だというが、まあ、そうですか。内容的にもショッキングな感じもあるし、色物でもあるんだけれど、だからといって名作でないと誰が言えるだろう。そういう目で敬遠せずに、楽しんで観たらいいと思う。考えさせられることもあるだろうし、素直に笑い飛ばしても全然いい。しかし屈折していても素直であるという生き方については、僕は勇気づけられましたです。素晴らしいです。

 ジャージー・ボーイズ/クイント・イーストウッド監督。これは元ミュージカル作品があるらしい。さらに実話をもとにしたことがよく分かると思う。成功談だが、同時に悲しい人間の性も描かれる。イーストウッドの実直な演出ながら、物語にもぐいぐい引っ張られる。映画としていい映画だ。当然歌も素晴らしい。エンディングも好きだな。

 エンディングで思い出したが、タケシの座頭市もいいし、ファレリー兄弟の映画のエンディングもそれぞれに楽しみである。映画を全編見直すことをしなくても、エンディングの歌を皆で歌っていい気分、というのがいいのだ。アメリカ人の監督さんも僕と同世代なんだな、などと夢想する。日本もアメリカも青春時代に流れていた音楽は、よく似ているのである。

 アンヴィル/サーシャ・ガヴァシ監督。これはもう文句なく一位。涙なしには見られない名作といっていいと思う。けど結構笑えもする。実はほとんどドキュメンタリーで、いやしかし、ドキュメンタリーだからこそ、奇跡的なお話のようにも感じる。ミュージシャンにとって桃源郷があるとしたら何処か? 驚きの結末におののくがいいと思う。
 内容としては同じく、ミッキー・ローク主演の名作「レスラー」とよく似た構図の映画。これも面白いので、あわせて楽しんでください。

 以上、25作品+αの紹介をしてきたわけだが、音楽映画も実に多様なものだと改めて感じた。思い出せなくて紹介できなかったものや、当然パスした作品も多い。好みということでご勘弁ください。また、こんなのも面白かったよ、というのがあれば教えてくださるとありがたいです。僕自身コツコツ楽しみたいと思います。また、補充できることがあれば、将来的に紹介できるといいなと思います。
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お勧め音楽映画その4

2016-11-22 | なんでもランキング


 入江悠監督。SRサイタマノラッパー・シリーズ。言わずと知れた日本を代表する名作映画群といっていいと思う。これだけ恥ずかしく痛々しい音楽映画はそうそうあるものではない。しかしそれを単純なギャグとして笑い飛ばしている訳では無く、悲しくも本当に心からの愛をラップミュージックに捧げているのである。馴染みのない人には(いや、僕も馴染みなんてないが)、なんだこれは? という嫌悪感を抱く人もいるかもしれないが、僕は感動しました。本当に。これが分かる映画ファンこそ、僕の友達だと思ってます。

 スクール・オブ・ロック/リチャード・リンクレイター監督。ジャック・ブラックの強烈な個性が前面に出ていて、彼のための映画といってもいいかもしれない。型は違うが、ジム・キャリーが出演している映画は、すべてジム・キャリーが食ってしまう現象というのがあったけれど、なんだかそんな感じとも言っていいくらいの強烈さはあるのではないか。さらに音楽的な実力も高いというのが、またいいのである。無茶苦茶になってもそのテンションが正常のような錯覚に陥るので、日常では困った人かもしれない。

 ローズ/マーク・ライデル監督。基本的にジャニス・ジョプリンがモデルになっていることは見ているとすぐに分かる。演じているベッド・ミドラーの演技も歌も素晴らしい。劇中歌った歌がヒットして、さらにスタンダード・ナンバーになっているので、聞いたことのある人もいるだろう。最初にこの映画を観たときは(高校生くらいだっただろうか)破天荒でぶっ飛んでる自由さに、ただただ呆れ、驚いた。これだけ馬鹿な女だが、愛おしいというのもよく分かる。まあ、だからといって好きになったりはしないけど。この映画を好きな友人と、酒を飲みかわして盛り上がったこともある。いい映画は友情も深めるのである。
 厳密に似ている映画という訳ではないが、その無茶苦茶ぶりにおいて、デビット・リンチ監督作の「ワイルド・アット・ハート」も僕は大好きです。

 ブルース・ブラザーズ/ジョン・ランディス監督。この映画のドタバタぶりが、全編を通してロック的だと思う。カルト的に人気の高い映画で、これを映画のベストと呼ぶ人も多いのではないか。でもまあ、好きだから好きになる映画ともいえて、どうでもよい人には限りなくくだらない映画かもしれない。だから素晴らしい訳だが…。

 センチメンタル・アドベンチャー/クイント・イーストウッド監督。これはロードムービー。イーストウッドは音楽に造詣が深く、他にも音楽に関する映画を数多く撮っている。荒れているが、心のどこかに良心のようなものがあるというのが、なんだか高倉健的にカッコよかったりする。このあたりはアメリカも日本も変わらないかっこよさかもしれないですね。子役はイーストウッドの実の息子だそうです。
 今回はなんとなく音楽主体ということで外したけど、イーストウッド作品としては「恐怖のメロディ」もいいですよ。マイケル・ダグラスの「危険な情事」よりはこっちを観るべきだと思います。まあ、どっちも面白いけど。
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お勧め音楽映画その3

2016-11-20 | なんでもランキング


 ギター弾きの恋/ウディ・アレン監督。ショーン・ペンがいい感じ。伝説のギタリストの伝記的映画っぽいが、架空らしい。ジャズ・ギター奏者として調子に乗っている愚かな男を描いている。そうして本当に大切な愛とは何かも。映画として素直にいいのではないか。自分なりに素直なつもりでいきがって生きていても、自分を見失うことはある。そうしてそれは過ちで済むことでは無いのかもしれない。その代償は、結局自分が背負うことになるんだろう。

 シャイン/スコット・ヒックス監督。ジェフリー・ラッシュの演技が凄い。後にいろんな役をするようになるが、僕はこの映画の演技は、演技でなく本当なのかもしれないと見たときは思ったものだ。このようなピアニストがいるらしいことは聞いたことがあって、多少はもとになっているのかもしれないと思わせられる。緊張感もあって、いい映画である。

 ダンサー・イン・ザ・ダーク/ラース・フォン・トリアー監督。変態監督の代表であるトリアー監督の問題作。というか、この監督はまともな映画なんか撮れるんだろうか? いや、だから素晴らしい訳だけど。ビヨークの天然のイライラするような演技と絡まって、賛否両論真っ二つの、毀誉褒貶の激しい作品になっている。でも実は僕はこれはいいと思う方で、衝撃のラストというが、まあ、この人たちならこうなってしまうのではないか。童顔で可愛らしいビヨークだが、実はしたたかで悪女なんではないかと僕は思います。もちろん、それがいいのです。

 ハッスル&フロウ/クレイグ・ブリュワー監督。黒人のアンダーワールドってこんな感じなのかな、って思わせられる。この価値観はまったくいいとは思えないが、これがしびれるほどいいと思っているらしい人たちがしのぎを削って命をすり減らすようなことになっている。でもこれが面白いのも確かで、緊張感もあっていいと思う。米国にはラップを題材にした映画は多いが、商業的にあまり成功しなかったこの作品は、埋もれた名作と言えるのではないだろうか。

 フォーチュン・クッキー/マーク・ウォーターズ監督 いわゆる入れ代わりもの。それも母親と娘が。これで問題が起きないわけが無くて、ドタバタしてしまう。そういう中でバンドが結構重要な位置を占めていて、実際にこの若い役の女優さんの見せ所になっているという仕組みである。そういう意味ではプロモーションを兼ねた映画のようにも思える。まあ、楽しめるのならいいか、という感じですか。
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お勧め音楽映画その2

2016-11-18 | なんでもランキング

 
 はじまりのうた/ジョン・カーニー監督。これは演奏シーンがなかなか映画的に上手いと思う。こんな感じで曲が組みあがっていくんだなというのが、映像的に分かる。もちろん映画的なフィクションはある。でも、やっている人たちは、こんなイメージで曲が出来たらいいといつも思っているはずなのだ。多少ご都合主義なところはあるにせよ、楽しくいい映画ではなかろうか。僕にはちょっと清々しいかな、とは思うけれど。

 暗い日曜日/ロルフ・シューベル監督。これは隠れた名作だと思う。というか映画的に面白い。この曲を聞くと死にたくなるという名曲が生まれるのだが、それにまつわる男女の恋の行方と、戦争や人種を巻き込んだ残酷物語でもある。サスペンス映画としても楽しめる。友情がありながら、恋が絡むととんでもないことが起こる。人間というのは本当に恐ろしいのである。ついでながら出演しているハンガリーの女優さんのヌードも大変に美しい。男が女の人に溺れる感じがよく分かると思う。

 ドアーズ/オリバー・ストーン監督。ジム・モリソンの伝記映画。最初はキャストとしてそんなに似てない(ヴァル・キルマー、すいませんでした)と思っていたが、映画を観ていると本当にモリソンに似ているような気になってくる見事な演技である。アメリカのこともいろいろわかる。面白い人がたくさんいるアメリカというのは、だから強いのかもしれないとも思わせられた。映画としても素晴らしいし、この頃のメグ・ライアンも大変に可愛らしい。

 ところで、ミュージシャンが俳優として出てる映画も数多い。人気者だから当然で、プレスリーなんかが代表か。日本でも加山雄三がいるけど、彼の場合は俳優で歌手かな。
デビット・ボウイ、スティング、ミック・ジャガー。不思議な役どころも多いが、いちおう俳優らしい演技もやっているみたい。日本だと、泉谷しげる、みたいに演技が個性的でなかなか上手い人もいる。彼の詩も凄いんだけどな。他、けっこう活躍している人はいるようだが、ここではそういうのは基本的に割愛する。

 リンダ・リンダ・リンダ/山下敦弘監督。女子高生バンドを描いた青春もの。バンドにはメンバーがいるから、それぞれの事情が絡んだドラマになりやすいのかもしれない。そうして音楽で感情が上手く表現できる類のことってやっぱりあるんだと思う。危機的な状況にありながら、少しの奇跡と若い力いっぱいの頑張りがあって、やっぱり感動してしまうのである。

 青春デンデケデケデケ/大林宣彦監督。四国の観音寺が舞台。原作小説も傑作である。実を言うと、僕自身の青春のバンドの記憶と重なるところが多くて、面白いんだがどうしても泣けてくる。だから涙ながらに観なくてならない作品で、つらいが凄くいい映画だ。四国にも行きたくなるし(いわゆる映画巡礼をしたくなる)友達とも会いたくなる。本当に素直に日本の青春という感じで、素晴らしすぎるのである。今の人がこれを観てバンドをやりたくなるのかどうかは分からないが、少なくとも僕らはこんな風にしてもう一度バンドをやりたい。しかし青春は、二度と戻らないからこそいいものなんでしょうね。
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お勧め音楽映画その1

2016-11-16 | なんでもランキング

 音楽を題材にした映画は数多い。音楽と映画は相性がいいのだと思う。音楽の多くは興業を目的としているし、映画も基本的にそうだからかもしれない。音楽が無くても映画は作れるが、音楽があってこそいい映画というものも数多い。今や切っても切れない仲のような関係かもしれない。そうしてズバリ音楽そのものを扱ったような、または音楽自体が重要なキーになっているおすすめ映画をいくつか思い出してみた。

 欲望/ミケランジェロ・アントニオーニ監督。前振りしたのにもかかわらず、実はあんまり音楽とは関係のないともいえる映画である。でも僕個人としては貴重な映画で、映画自体はたいして面白くもなんともないが名作といわれる変な映画だと思うけれど、やはりどうしても外す気になれない。それというのもジェフ・ベックのヤードバーズを見ることが出来るからだ。単に劇中に彼らが演奏している場面があるだけのことだが、それだけでつんのめって見る価値がある。実にかっこいいのである。

 カサブランカ/マイケル・カーティス監督。言わずと知れた大名作映画。これも実は音楽映画とは厳密に言えないかもしれない。しかし何と言っても、アズ・タイム・ゴーズ・バイが素晴らしい。劇中に使われる曲としてこれほど重要なものも珍しいのではないか。そうしてその後の映画にも、このような音楽の使われ方は度々まねされていると思う。いや、今風にいうとオマージュか。ともあれ、映画を楽しんで、音楽も忘れることは無い。もう何度見たことだろう。本当に素晴らしい。

 サウンド・オブ・ミュージック/ロバート・ワイズ監督。子供たちとドレミの歌などを歌う牧歌的な映画みたいに思われている向きもあるが、むしろサスペンス映画として名作ではないか。まあ、歌が楽しい映画には間違いないが。僕は子供の頃にこの映画を観て、かなりハラハラドキドキした覚えがある。ワイズ監督、なかなかやるもんです。

 アマデウス/ミロス・フォアマン監督。これはモーツアルトを描いた作品。しかし視点が変わっていて、モーツアルトを憎み(才能に嫉妬というか)ながら崇拝するサトエリという宮廷音楽家から見た、だらしが無く奔放で才能に満ちた青年を描き出している。まったくひどい人間もいたものだと思うが、それが素晴らしい旋律を生み出す天才なのだ。努力の人からすると、そんな人間が身近にいたら気が狂いそうになるのではないか。しかし同時に同時代に生きられたしあわせもある。何より音楽を愛しているからだ。屈折した人間模様を見事に描き出した傑作である。もちろん音楽も素晴らしい。

 まだまた紹介したりないのに長くなりだした。これ、続きます。
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漱石、読むなら何?

2016-09-09 | なんでもランキング

 雑誌「考える人」をぱらぱら読んでたら、漱石の小特集が組んであった。多くの人が漱石作品を読むならなんだ、と紹介している。
 僕が初めて読んだのは、ご多分に漏れず「坊っちゃん」だった。短いのですぐ読めると言われたが、薄い本でも結構根気よく読んだ気がする。何しろ漢字が多かった。まあ、面白いというのは分かって、「吾輩は猫である」も手に取った。これはかなり格闘した記憶があるが、当時はあまり面白いとは思えなかった。休み休み読んでひと月ほど読んでいたのではなかったか。たぶんこれが小学生か中学生の頭くらいのことで、もう漱石はいいかな、と思ったようにも思う。大人になってから「猫」を拾い読みすると、まったく違った落語のようなバカバカしさと面白さがあることに気づかされたけれど、子供にはやはり分かりづらかったのだろうと思う。
 高校生の時に教科書に載っている「こころ」を読んで(そして本も買い直して)、まだ若かったから感動した覚えがある。こんなに面白い作家だったのか。お話が面白いというのもあるし、文体もこんなに分かりやすいものだったのかと改めて思った。今読むと「こころ」はあんまり感心しないから、若い時代の心情と「こころ」のような作品は、よく合うのではなかろうか。調子に乗って「草枕」なども少し読んだが、拍子抜けして面白くは感じなかった。これはたぶん今なら逆に思うだろう。
 しかし「それから」は、違った。何というのだろう。僕はまだ恋愛というのはよく分からない(今も分からないと言えばそのままだけれど)ながらも、この話は自分の話のように感じた。ちゃんと仕事をしないのは感心できなかったけれど、いい話ではないかと思った。その後の自分の人生といえば大げさだが、なんとなくこのような気分は後々まで残った。
 他は何を読んだかはっきり覚えがないが、「行人」「虞美人草」などは途中で放り出したような気がする。「硝子戸の中」とか「坑夫」などは、読んだけれどよく分からなかった。面白くもなんともないので、不思議と印象に残ったという感じであった。
 今は、ふと思い出して、キンドルで「三四郎」を読んでいる。なかなか面白くて、いいぞ。
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死ぬ前に何を食べるか

2016-07-02 | なんでもランキング

 手塚治虫の漫画に「ペーター・キュルテンの記録」という短編がある。ドイツの連続殺人鬼を描いたものだが、そのペーターが死刑に処される前に、シュニッツェル(カツレツのことらしい)をおかわりしたといわれる。自分が死ぬことをわかっていながら平然としている様を描いている訳だが、妙に印象に残るシーンである。死刑はともかく、死ぬ前に自分ならどんなものを食べたいだろうか、というのは、この漫画で考えた覚えがある。ちなみに僕はこの作品で初めてピラフという名前の料理を知ったのだが、実際に食べたのはずいぶん後になってのことだ。何しろ僕が中学生の頃には、地元でピラフを出す店は無かったのだ。
 ということなんだが、死ぬ前に何を食いたいかというのは、好きだから食べたい、という意味にも取れるし、そんなに実は食べたい訳でもない、という捉え方もできる。要するに考え方だが、仮に食事をとれるだけの体力や気力があると前提して、何がふさわしいものかというのは、その人そのもののような気もする。しかし僕自身は、死んだらすべてが終わりくらいにしか考えていないので、出来るだけそのような意味が見いだせないようなものを食いたいような気がする。気がするが、どうしても意味が読み取れるようなことがやはりありそうで、いざ考えると気が重い。
 僕は素直に白身魚のフライが好物で、せっかく死ぬのならそれでもいいかな、とは思う。これとご飯というイメージがあるが、死ぬ前に素面もつまらないかな、とも思う。
 豪華にステーキでも食うか、という気分も少しある。ビールでもいいしワインでもいい。でもそんなことをすると元気になりそうである。死ぬのには、なんだか元気すぎてはいけない気もする。
 鮨をつまんで、じゃあ、というのもよさそうだとは思う。これも貝か、白身のネタがよさそうだ。どんどん注文するような威勢の良さは無しにしよう。
 年に何度も食べる機会が無いのだが、猫まんまも好きである。お茶漬け自体がさらりと旨いというのも捨てがたいが、でも最後なら猫まんまの方がいいかもな、と思う。味噌汁をかけただけというのもいいし、なんとなく後を残さない姿としてもよさそうである。
 死ぬ前に食べるものは決まったが、まだ死にたい訳ではない。実際には死ぬことを考えるのはあんまり無いから、実感のこもったものではないかもしれない。死ぬときにあれこれ考えるのは面倒だから、生きているうちにやりたいことはやっておくべきだ。しかし元気なうちは浮世の義理がある。それは自分の死を思うことを拒んでいるし、やりたいことも拒んでいるように感じる。
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ゲゲゲのしげる

2015-12-02 | なんでもランキング

 水木しげるが亡くなった。ご高齢だったのである程度は覚悟はしていたが、やはりそう聞くと大変にさびしい思いがする。僕も子供の頃から知ってはいたが、ちゃんと水木さんを知ったのは大人になってからという感じだ。正確にいうと、その本当に大きな存在としてという意味だが、もちろん普通の感覚で漫画を読んでも、作品自体が素晴らしい作家であったことが第一である。息子がゲゲゲを熱心に読み(最初はテレビだったのだろうが)、ついでに映画も境港の町にも行ってみた。そうしてやはり作品が素晴らしいと言っていたのが印象的で、水木さんにふれた多くの人は、そういう水木さん自体のファンになっていくものだと改めて思い知らされた。
 マスコミは仕方がないと思うが、水木さんの本質にはどうしても迫ることが出来ないでいるようなもどかしさを感じる。水木さんを掘り下げると、ちょっとマスコミ的な文法には向かない、かなり危うい面も同時に知ってしまうことになるからである。それは俗物的でもあるのだが、しかし落語のバカバカしさにも通じる普遍性がある。素直にそういうものを語ることは、ある意味で本当に勇気のいる世の中になってしまっている。しかしそういう障壁でさえ軽々と、いや、ひょうひょうと飛び越えて悠然と馬鹿をやってしまっている人が他ならぬ水木さんという存在で、これを素直に分かるような人というのは、実はごく少数派なのではないかと思われる。
 人間というのは、特に現代人というのは本当に厄介な存在で、自分たちの偏見の枠の中に納まらない人間を目の前にすると、どうしても落ち着かなくなる。結局水木さんが体験した悲惨な戦争体験などを持ち出して、それは確かにたいへんなものであったことは間違いなかろうが、勝手に納得して自分の気持ちを収めようとしてしまう。水木さんの本質は、そういう安寧さえ破壊しかねない強烈な毒を持っているからこそ成り立っているにもかかわらず、怖くてそこまで掘り下げることが出来なくなってしまっているのだ。結局は作品を読めていないまま、水木さんを表面から語ろうと、もしくは早く分かろうとし過ぎてしまって失敗に終わっているのだ。そういうことが本当に残念で、だからこそ、改めて水木作品を多くの人に手に取ってもらいたいと願うものである。
 水木作品には、誤解を恐れず正直に言うと、多少の不完全さがどうしても混ざっている感じがする。駄作といってもいい作品も少なくないと思う。一本の長い作品も少なく、再編集され、部分部分を断片的に伝えるものが多いようだ。そういう訳で、実際にはそういうもので何を読んでもいいとは思うのだが、やはり代表的なものをコアに読んだらいいのではなかろうか。

のんのんばあとオレ(講談社)
カッパの三平(ちくま文庫、ほか)
悪魔くん(ちくま文庫、ほか)
ゲゲゲの鬼太郎(ちくま文庫、ほか。墓場の鬼太郎なども)
テレビくん(短編、水木しげる妖怪傑作選1・中公文庫、など)


 テレビのみでゲゲゲに親しんだ人にとっては、実は漫画のゲゲゲ・シリーズは少し水木しげるの上級者向けという気もする。もちろん構わず読んでいいのだけれど、このダークな感じがどうしてテレビだと軟弱になってしまうのか、僕のような人間にとっては、少し理解に苦しむところだ。テレビでもこの漫画を素直にアニメ化してくれたらどんなに良かったことだろう(深夜枠で、そういうシリーズは作られたようだが)。
 また水木しげるに感化されて、その生き方そのものに影響を受けている人間というのも面白い人が多い。そういう人が愛を持って語る水木しげるも面白い。代表的なのは呉智英、荒俣宏、京極夏彦だとか。俳優だけど佐野史郎などもいる。今彼らが語りだすかどうかは分かりえないが、過去の解説を含め、耳を傾けてもいいのではなかろうか。どちらかというと著作以外での自分語りが下手だった水木さんに代わって(話すこと自体は好きだったようだが、ついふざけるので内容が理解しづらい)、それらの代弁者の声の方が理解しやすいかもしれない。
 人気作家でありながら不遇時代も長かったのは、本当に実力がありながら、やはり理解されるのに時間がかかったというのがあるのではないか。また人気が出ても、基本的には鬼太郎のダークさがそぎ落とされたのちのエキスのようなものになっている感じもする。もっともそれでも素直な子供は、その不思議さに惹かれて水木を慕ったのではなかろうか。手塚治虫は、自分の息子に自分の作品こそを読んでもらいたがったが、息子は水木作品を好んで読むので嫉妬した、というエピソードがある。もっとも手塚作品は別に孤高の存在として偉大だが、水木作品には、なんだか麻薬めいた不思議な味わいがあるものなのである。そうして繰り返すが、屈折した毒のようなものも含まれている。
 水木さんは戦争の時代と戦後の貧困を生き抜いた苦労人だけれど、しかし生き残るべくして人生をまっとうした人でもあるのではないか。存在自体に価値のある人として、長く記憶に残る日本人となることは間違いなかろう。
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食いたくなるお話いくつか

2015-09-22 | なんでもランキング

 壇流クッキングで思い出したのだが、小説などを読んでいて、むやみに腹が減るということはある。作中に食事の場面が出てきて、それが効果的に食欲をそそるということである。日本の作家だと池波正太郎が有名だが、確かにその通りでなかなか旨そうだが、ちょっと通というか、大人という感じがする。じゃあ子供っぽいのがいいのかというとそういうことでもないのだが…。思い起こそうと思えばたくさんありそうで、小説じゃないけど東海林さだおなんかを読むとフラフラと大衆食堂などに入りたくなるし、椎名誠なんかだとバーベキューなんかを集団でハグハグ食いたくなる。

「都市生活」(「君のためのバラ」(新潮文庫)収録)池澤夏樹著
池澤夏樹の小説にも、食べ物というのはわりに効果的に出てきているように思う。結構海外にいるような場合が多いようで、料理も日本的なものが少ない感じだ。「都市生活」では牡蠣とケイジャン・チキンである。牡蠣の方はかなり美味しそうに食べることが出来たが、チキンの方はちょっとしたアクシデントというか、食事中にある出来事があってしばしお預けを食ってしまう…。しかしこれはそんなに後味まで悪いわけではない。最悪だった気分が、なんだかフッと心が軽くなるような名短編である。

ロバート・B・パーカーの一連の著作(ハヤカワミステリ文庫)
 おなじみスペンサー・シリーズでは、旨そうな料理がたくさん出てくる。スペンサーは料理が得意らしく、手慣れた感じでさっさと料理を作る。作りながらビールを飲む。彼女のスーザンは素晴らしい女性だが、料理があんまり得意でないようだ。そのこともスペンサーには好材料であって、嬉々として自分の手料理をふるまうのである。
 村上春樹の小説も、時折主人公がビールを飲みながらサンドイッチやパスタなどの料理を作る。ハードボイルドとは違う描写かもしれないが、なんとなくスペンサー的な感じもする。でもまあ、そういうことは他の誰かが指摘しているはずだよな。

「料理小説集」村上龍著(集英社)
 これはずいぶん前に読んだのでうろ覚えだし、本棚でもちょっと見当たらない。でもまあ僕はまだ子供だったはずで、しかしこの小説の大人っぽい感覚の料理には憧れのようなものがあった。村上龍は、妙にエロティックなものが多いのだが、そういう部分は子供の僕にはそそられないのだが、大人になったら食ってみようかな、という感じだ。うまく言えないけど、龍の小説に出てくる料理というのは、驕ってもらうのではなくて、自分で金を払って食いたいな、と思う。もちろん村上龍はセックスとの関係を意識しているはずで、別にフロイト的に何でもセックスということでは無いにせよ、快楽において共通があるせいなんだろう。

「鮨 そのほか」阿川弘之著(新潮社)
 これは特に旨そうということでは無い。ちょっと妙な話なんであるが、寿司が残るとたいそうもったいない気がする。しかしながら捨てるのもどうか。実は僕はいまだに無理をすれば相当数の鮨ぐらいは腹におさめることは可能である。できるけどそうしたくない。そういう気分というものと、年を取ってもう食べられないというのも、関連は無いが分かるような気がする。そうして残った鮨はしかるべき人に食べてもらいたい。この小説では、絶好の相手を見つけることが出来た訳だ。そういえば最近阿川弘之は亡くなったというニュースがあった。特に影響を受けた覚えはないが、ご冥福をお祈りいたします。
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死ぬ前に食うもので悩む

2015-08-13 | なんでもランキング

 雑誌をぱらぱら見ていたら、死ぬ前に何を食いたいか?というようなことが書いてあった。死ぬような時というのは具合がどうなのか、という疑問もあるが、例えばキリストのように元気な立場で食事をする場合もあろう。しかし文化的な背景もあるから、日本人としての自分だとか、家族の目の前だとか、単なる好物でなくて、その場にふさわしいもの、ということも配慮せねばなるまい。だからであろう、回答者の答えは、あんがい素朴なものが多かった。
 ということでふと考えるべきところだが、そういう前提にいろいろあるし、特に格好をつけている訳でないのだが、なんとなくピンと頭に浮かぶものが無い。死ぬ前に腹が減っているのならがっつりとステーキでも食ってもいいかもしれないが、なんとなく威勢が良過ぎてふさわしくないようにも思える。だからといってお茶漬けさらさらというのも、まあ、悪くないが、そんなに納得がいかない。いや、悪くは無いのだが…。
 僕は休肝日や寿司でなければ、晩の御飯にご飯粒を食うことは稀だ。そのためか、最後にご飯という感覚に遠い気がする。帰りのタクシーを待っているときに、塩辛なんかをちょっとつまみ直すような感じだと、少しはしっくりする。腹が減る感覚は理解できるけど、だからと言って安直に食うのは、やはり後がつかえる、という感じではないか。たいがい飲んでいるので、空腹で寝られないということは無い。だから食うと言えば食うけど、ひもじいからではない。しかし、だいたい後は寝るだけというのは、意識を失うだけに、死ぬ前のようなものなのではないか。
 特にお酒を飲んでいる必要もないかもしれないが、チャーシューだとか、海苔だけでもいいんだが、ラーメン屋だと、妙に気を遣う。早く食べて帰ってくれ、というのが本音かもしれないし。
 死ぬ前に静かに食事をするのでなければ、家族がそばで一緒に食事をするのであれば、皿うどんのようなものもいいかもしれない。いわゆる大皿料理。みんなで食べて、楽しく死んでしまいたい。
 それにしてもやはりなんとなく、そのようなものは本来的な死とは遠いもの、という気もする。まったくそれは僕だってそれなりに若いせいだろう。確かに死に近づいてはいる気がするけど、ボチボチではない。まだまだ食いたいものがあるわけで、そんなに最後にしたくは無い。胡瓜の浅漬けなんかをボリボリ食うのはいいかも、とは一瞬思ったが。それならついでに天ぷら揚げなんかも食いたいな、と考えてしまう。今は少し腹が減っているのかな。一品で終わるのが惜しい。
 いくつかランク付けしようと考えたけれど、ちょっとまだ無理みたいである。
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