祭りの準備/黒木和雄監督
ひとことで言うと。鬱積したものを抱えたまま悶々と過ごす、土佐の若者の成長物語である。田舎ながらの閉塞感と若者特有の恋愛と性の悩みを中心に、その土地で起こる様々な事件を絡めてスジらしきスジ無く進むお話である。
狭い社会の中の性的な乱れというか、ひどく屈折した人間関係がまず何というか無茶苦茶で、さらに荒っぽい土地柄らしく暴力沙汰も絶えない。親子関係もあるが、他人との距離が近すぎて、愛人関係もおおっぴらで、近親相姦だとか老人の恋の問題なんかもあったりする。本当に変なお話というか変な映画だなあと思いながら観ていると、何となく芸術的な感じもしないではない。しかしながら不必要に安易に女たちは服を脱いでしまうし、青年は衝撃を受けるとやたらに腕を振り回して駆け回っているところを見ていると、少しばかり馬鹿らしく思えてくるのも確かだ。
みんな田舎が悪いのかもしれないけど、土佐の人たちがこれを見て、やはりおいらの若いころは…なんて共感を呼ぶものなんだろうか。まあ、確かにその様なドロドロした大人社会というのはあんがいあることなのかもしれないが、まあ、いっぺんに怒涛のようにその様なことばかり起こっていると、社会そのものがいつかは成り立たないような気がしないではないのだった。
脚本家の自伝的なお話らしいから、あんがい本当のことをベースにはしているものかもしれないが、このような社会に永住していける人というのは、やはりそれなりの才能が必要なのではあるまいか。
何となく画面が汚い感じなので、性的な濡れ場が多い割にそんなにエロであるような感じもしない。しかしながら終始一貫してそちら方面の事ばかり起こるので、見ていて多少疲れてしまうというのはあるかもしれない。人というのはそういうものから逃れられないものかもしれないが、そればっかりで生きていくのもつらいということかもしれない。結果的になんだかそれぞれに破綻していて、せっかく憧れていた幼馴染と結ばれても、やはり感動することは無い。竹下恵子のヌードも話題になったそうだが、なんだかこれでは脱ぎ損になったと思っているかもしれない。そうではあるのだが、吹き替え論争というのがあるらしくて、映画の後に知ったけど、それはそれで面白い。実は僕は観ていてすぐに吹き替えだろうとは思った訳だが…。
いろいろ書いたが結局話題満載であるようで、芸術的な観点から興味のある人は観ておいてもいいだろうとは思った。よく考えなくても変な映画なので、人によっては堪能できることだろう。