モガディシュ 脱出までの14日間/リュ・スンワン監督
舞台は90年のアフリカ・ソマリア。韓国と北朝鮮は国連加盟のため激しいロビー活動を展開していて、アフリカ諸国に働きかけをしていたという事らしい。そういう訳でソマリアのモガディシュという街に大使館を置いて、国を挙げての活動をしていた。お互いにライバルなので妨害をかけたりして政府機関にとりいっていたのだが、そういう時に市民武装勢力が隆起し内戦となる。現政府に近い両国の大使館は武装勢力の暴動の波に襲われ、最終的に力を合わせて国外脱失を図ることになるのだったが……。
最初は北朝鮮大使館が武装勢力に襲撃される。着の身着のまま、暴徒に殺されるかもしれない状況に放り出される。頼れるところが無く、よりによって政敵である韓国大使館に頼らざるを得ない。何しろ命には代えられないではないか。しかし最初は韓国の態度は冷たい。何しろロビー活動では散々妨害され、面白く思っていないのである。しかし状況は状況で、仕方なく受け入れることになり、そうして韓国大使館も盤石な防御は出来なくなり……。
緊迫しているが、同時に喜劇的でもある。犬猿の仲がそう簡単に和解できるわけがない。しかしながら命がけでもあり、時間も限られている。武装勢力は東洋人なんて虫けら同然の扱いしかしていない。そもそも大使館の人間なんて、政府軍の協力者だったわけで、明確に敵なのである。頼れるのは付き合いのある国同士の大使館しかない。方々連絡を取るが、なんとかイタリア大使館が国外退避の飛行機に空きがあるということで、そこを目指すことになるが、その道のりに武装勢力がわんさか待ち受けているのである。絶体絶命にどうしたらいいのか、という展開になっていく。
もとは同じ民族の仲間なのに、北と南に分かれている国の悲劇がある。韓国と北朝鮮の関係は、本当に複雑なものがあるようだ。一緒に食事をとるシーンがあるのだが、北の人々は、なかなか韓国が提供したメシを食うことができない。腹ペコで仕方ないのだが、恵んでもらうような形では、食べることができないのだ。ここらあたりはかなりアジア的な心情だと思うのだが、大使館の家族は、子供たちを含めてソマリアにやってきている。そういう政治的にはプロではない人々が、複雑な心情のもとに別々の国で屈辱的に暮らしている現実がある。お国の為もあって、個人ではどうしようもできない事なのに、それに逆らうことができないのである。こういうのは、可哀そうとか、そういう次元の問題では無いのである。
基本的には娯楽作なので、気楽に観てもいいのだと思うが、北と南問題はこれからも切実なテーマとして取り扱われることになるのではないか。残念ながら、そう簡単に終わりそうには無いのだから……。