カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

セクハラって奥が深いです   スキャンダル

2020-11-29 | 映画

スキャンダル/ジェイ・ローチ監督

 いわゆるこれは、「me too運動(#metoo)」の発端物語のようである。実際、映画としての演出はあるものの、少しばかりドキュメンタリー的な事実っぽい様子が見て取れる。
 大物ディレクター(ニュース部門のオーナーのような人。日本には例が無いが、ナベツネみたいなものなのだろうか)が、美人で足のきれいな若い女性を部屋に連れ込んで、いわゆる性的な関係をほのめかして、キャスターなど花形部門を世話する。すでに高齢でぶくぶく太って、歩行器を使って歩くような人物だが、そういうことには精力的だということだろう。
 しかし、トランプの大統領選(当選した四年前のもの)の時に、放送局の方針の沿わずにジャーナリズムとしての発言を優先させたために、結局はクビに追い込まれた人気キャスターが反旗を翻し訴訟を起こす。必ず同調してもらえると賭けに出たわけだが、組織的に大物ディレクターが怖い放送局にあって、その行動に共感のあるものの名乗り出ることのできない女性たちが大勢いるのだった。
 実際権力を使って性行為を強要する男がいることと、やはりそういう女性であることを使ってでも仕事を得たいという女性の心理もあるわけで、さらに性的な問題をテレビ局のような広く知られる環境で公表することの戸惑いもある。家族もいるし、これからの人生もある。(強要だったとはいえ)あの男と寝た女、というレッテルは一生消えないだろう。自分の子供にそのことを何と説明できるというのだろう。
 テンポよくお話は進み、様々な事情を抱えていた背景も映し出し、狂暴な世論や大衆をも敵に回しながら、苦しみぬいて運動の芽が育っていく様を見事に描いている。もともとすちゃめちゃコメディを撮っていた監督だったが、前作の「トランボ」といういい作品を撮っており、今作もなかなかの手腕のひかる一作になっている。大物女優の演技合戦にもなっていて、見どころは満載だ。強い女性であっても、性的な問題を抱えていると、とことんまで追い詰められていくというのがよく分かる。一方で自分たちの魅力が、男たちを動かすこともよく分かっている。しかし世論は、そういう内面まではまったく理解してはくれないのである。
 アメリカ大統領が、どうしてトランプになったのか、ということも含めて、ダイナミックの動いていく巨大なアメリカ社会そのものが見て取れる作品である。セクハラは日本にだってあるのだろうが、たぶんこんな風にはならない。そういうことも含めて、見どころのある力強い作品なのではなかろうか。
コメント
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