バイト敬語というのがあるらしい。いや、話は聞いたことがあるよ、と思っていたのだが、読んでいると身に覚えがある。僕はほとんどファミレスやコンビニを利用しないので知らなかったのだが、学生時代にバイトしているときは、こういう言葉遣いは普通だったように思う。というか、そういう言葉遣いをするよう強要されていたことを思い出した。
僕が17から19ぐらいの間のことだから、その当時の店長が40代ぐらいだったから、団塊の世代かそのちょっと後ぐらいの人だったろう。だから、たぶんそれくらいの大人の人の語感とか、その時代の背景がそういう言葉を生み出した可能性がある。僕らが日頃使う言葉とか、学校やクラブ活動など団体生活で使う言葉とは異質なものだったので、僕なりに苦労して覚えたという記憶がある。
五千円とか一万円からお釣りを払う時は大声で「一万円からお預かりします」と言え、といわれていた。違和感があったが、業界用語だろうと思ってそうしていた。確かに恥ずかしい気がする。まあ、あの頃の思い出なんて恥ずかしいことばかりだが。
同じく「~のほう」とか「いらっしゃいませ、こんばんは」とか、「よろしかったでしょうか」は、そういわなければ怒られた。今思うとこっちが怒ってやりたい気分である。若い頃は辛抱強いので我慢ができたが、今ならとても勤まる環境ではない。今の若い人は更に偉いものだと思う。恐らく素直に先輩や上司の言葉を倣っているのだろう。
しかしながら少し違うのは、「ございます」はつかっていた気がする。当時の銀行では「~さん」といっていた気もする。今は押しなべて「~様」になってしまったが、僕は「様」と言われたくない。なによりはしたなく思えるし、恥ずかしい。しかし、もう無理だろうな。仕方ないので引きこもりたいが、逃げるのも嫌である。
話を戻すが、若者言葉といわれるものも、企業を展開する無知な世代が最初に作り出した可能性の方が高い気がする。チェーン展開する店や、マスコミ、音楽業界など、当時の新興企業が現在の走りだったのではないか。僕が当時覚えているのは、「パニくる」というような新語がどんどん生まれていたのは、学生時代に入った後ではなかったか。その前にはいきなり古いが、父などが「メッチェン」とか「オルグ」とかいっていた程度の隠語としての若者言葉だったのではないか。
若い世代が変な敬語を使うのは、見苦しいが、仕方がない。今は社会に浸透するので困るけれど、敬語という考え方さえ、古いものになるのかもしれない。いや、今の企業に至っては、却って言葉遣いは利用しているに違いない。ひところ政治家なども「させていただきます」なんて連呼して、失笑を買っていた。消費社会の宿命として、こういう変な感じは更に拡大していくのだろうと思う。