映画の中で、キャバクラ嬢が実は学生で、いわゆる苦学生なのだという設定になっていた。本当は性的な目的が一番だったはずの男は、それで一瞬ひるむような感じになるのだが、はて、しかしそれってふつうにありふれたことなんじゃないか、とみている僕は思っていた。ぜんぜん意外なことなんかでなく、普通過ぎることに過ぎないことを知っているからだ。
実際の風俗産業というのは、主婦や学生がいないと成り立たない世界である。そればっかりではないとはいえ、むしろ夜だけの人の方が珍しいのではないか。まあ、本当はキャバクラ嬢というのは、一定の会話能力も必要だし酒も飲めないといけないので、高校を卒業したばかりの女の子にはハードルが高く、女子学生の多くは風俗嬢の方を選択する場合の方が多いのだというが、話が複雑になるので詳細な実態はすっ飛ばして語るとすると、苦学生が夜の街で働くというのは、今も昔も当たり前の話である。知らない方がどうかしている。
しかしながら、そうかといって学生だと明かす人が、必ずしも学生であるとは限らないこともある。それというのも、そういう話の展開で、もっとありふれた話というのを結構聞いたことがあるからだ。
苦学をしてそういうところで働いているというと、確かに妙に感心してしまう男というのは結構いるようで、いわゆるお金をはずむという行為に至る場合があるのである。はずみすぎて、実際に援助を申し出る人だって見たことがある。匿名ではないので「あしながおじさん」ではないが、そういう行為をしたがる小金持ちというのはいるのである。もちろん下心があって、一種の囲いというか、愛人というか、そういう関係に至ることを期待している場合もあるんだろうけど、たとえそうであっても、お金を提供しやすい口実であることは間違いない。いきなりお小遣いをちょうだい、なんて言っても、くれる人なんてほとんどいないだろう。
でもまあ、本当は学生じゃなかったけど、勉強は大切だし援助するから、と言われて、学校に行き直して就職した、という女の子の話を聞いたことはある。夜も好きだからまた働きだしたということで、何だかちょっと回り道したという感じもしないではないが、美談ではある。
そんなことを聞いて心配になる人もいるかもしれないが、実際こういうところがあることで、苦学した女学生の多くは感謝している場合の方が多いのだという。普通のバイトだといくつも掛け持ちして時間を取られ、勉強する暇さえない。奨学金などの借金も必要なくなった人さえいるらしく、いわゆる一流企業へ就職できた大きな要因は、風俗のおかげだとする女性も多いのだという。
また、田舎だと学校自体が無いから、要するに都会の学校を選択した女子限定の話ではある。地元だと自宅から通うので、そもそもそういう危険は少ない。田舎のスナックの年齢層が高いのは、そういう現実をあらわしているのだろう。