苦しいが好きだという矛盾した存在がサウナである。サウナの中では苦しくて仕方が無い。早く出たいが我慢している。でもまあ頃合いがあって、そろそろだという決断がついたら外に出て水風呂に入る。
軽く洗面器で体に水をかけて汗を洗い流し、そうして水風呂の中に勢いよくざぶんと入る。実は冷たいのが怖いのだが、そろりと入るのはもっと怖い。仕方なくざぶんと入るしかないのである。
心臓がドキドキして死にそうになる。実際にこれで死ぬ人もいるのだと聞いたことがある。しかしこの苦しい冷たさが、何故か爽快だったりもする。
この矛盾した苦しみと爽快さを求めて、さらにこの行動を二度繰り返す。苦行をしている気分になるが、一度でやめるのはなんだか気が引ける。後を引くということかもしれない。しかし4度目くらいになるといい加減にしなくては、という気分になる。3回くらいでちょうどいいのである。
サウナからあがるとビールなのだが、もちろんこれが旨いのだが、しかしやはり何かくらくらするような効き目がある。一杯飲んだくらいでろれつが回らなくなったりする。大変危険だが、そのうち焼酎に移行するようになると、少し酔いは衰えて元に戻る。
戻るが急激に眠気に襲われることがたまにある。寝ないようにするのは大変につらい。いっそのこと目をつぶってしまえば楽になるのだが、そのまま寝ると深い眠りになりそうで怖いのである。実際に寝てしまうと、本当にぐっすり寝た気分になる。短くても深い眠り。サウナというのは、たぶん大変に体力を使うのであろう。
疲れがたまって何もしたく無くなると、サウナに行くといいと思う。特に夏バテに良い気がする。もっとどうしようもなく疲れてしまって、深い眠りに落ちて、そうして回復する。違うかもしれないが、そんな感じがする。そうして本当には体に良くない気がする。
体に良くない後ろめたさが、さらに気分を良くする。ひょっとすると長生きできないかもしれない。それでも年をとってもサウナに行きたくなるのではないか。もちろんその時にまた考えればいいのかもしれない。
短くても元気になるのなら良いような気がしないではない。まあ、そういう気分に、サウナはなるということである。