コーヒー&シガレッツ/ジム・ジャームッシュ監督
11のコントを集めた作品。モノクロ。2003だか2005年の作品らしい。当時はまだジャームッシュは人気があって、志村けんなんかも、ちょっとだけ真似たりしていた。あんまりウケるようなコントではないので、たいてい失敗するのだろうが……。まあ、ウケるだろうという計算は高いが、今見ても分かるように、実際にはそんなに面白いわけではない。ああ、狙ってるな、というのが分かる程度である。
ただちょっとびっくりしたのは、ホワイト・ストライプって、その当時から活動していたらしいことかもしれない。実際に売れたのはずっと後だったはずで、しかしジャームッシュと付き合いのあったミュージシャンだったようだ。トム・ウェイツとイギー・ポップなら、なんとなくその関係性は分かるのだけど、ジャック・ホワイトともつるんでたんだろうな。なかなかに感慨深い思いです。
喫茶店なのか、レストランなのか分からないが、そういう店で、主に二人の人物が、コーヒー(だいぶ後半で紅茶もある)と煙草を、延々とプカプカやっておしゃべりをする。時には間が非常に長い。その間に妙な違和感があって、それが笑いのツボである。多くの場合、一方の側の思い込みが、相手の会話で覆るという感じかもしれない。ただその妙に嫌な感じになっていく空気感が、面白い感じでもあるということらしい。分かりにくい話かもしれないが、ジャームッシュ映画というのは、そういうものだった。そういう感じを「分かる」と思うことが、当時はおしゃれだったのだ。
これだけ煙草を吸うので、当時も問題はあっただろうが、今ではとても制作されることは考えにくい作品群だろう。確かにタバコとコーヒーの相性というのは抜群で、そういう嗜好品を楽しむ時間が、人生の豊かさであった時代もあるのだ。もっとも作中でやはり煙草を避難され、吸えないコントも入っているが。また、煙草を素直に吸えない人間の信用のおけなさなども表現されていて、吸わない人間にはちょっと理解しがたいニュアンスもある。僕自身は、このようなコントの良さというのはほとんど分からないのだけど、やっぱり時代の産物だな、というのは分かる作品群なのだった。