太秦ライムライト/落合賢監督
ちなみに太秦は「うずまさ」と読む。京都の撮影所のある場所らしい。
長年チャンバラ劇で斬られ役だった男が、時代の流れにあらがえず、若手に役を奪われ寂しくなってきている。そんな中新人女優の殺陣の指導なんかもしている(その後女優には芽が出る)。いよいよ引退と自ら田舎に引きこもるまでになるが、元師匠として再度撮影所からお呼びがかかるのだが…。
ほとんどノスタルジーだらけの寂しげな展開が続くが、斬られ役とはいえ、殺陣に精通した玄人芸として、多くの信頼を集める人物の物語である。時代の流れにあって多くを語らず、ある程度は仕方がないと諦めているし、また自分の力も確実に落ちている。しかしどうしても諦めきれない心情を捨てることが出来ない。周りもそのことを重々承知しているからこそ、何とかこの男を引き立ててやりたいと願っている。そういう中で、本当にやっと最後に大きな舞台が巡ってくるのだった。
凄いといわれても、映画を観ていてもこの役者さんがある程度落ち目であるのは見て取れる。それは演技ばかりでは無くて、顔に特徴のある存在感がありながら、何か地味な人生を送ったのかもしれないそのものの姿が現れている。寡黙に日々を送る姿は確かに格好よく描かれているものの、何かその未練がとても哀れである。やっぱり引退は避けられないし、同情だけで生きて行くには厳しい社会なのだから仕方ないではないか。
そんなことをどうしても考えてしまう映画で、ちょっと浪花節的な感じもあるかもしれない。例えばヒロインは最初から動きもいいし(演技は素人らしく大根であるが)、才能があるのが一目でわかるが、本番の苦労はワザとらしい。主人公の男もどこかまどろっこしい性格が見え隠れしていて、なんだか素直に応援する気持ちが揺らいでしまう。まあ斬られて倒れる技に、なかなかの迫力があるのは確かだが。
時代劇は廃れる運命だとは僕は思わないが、廃れるものは廃れるのが当然だと思う。そういうものにノスタルジーを感じるからこそ成り立つお話なんだから仕方ないが、新しいものに転換できないものは、早々に退場してもらった方が平和である。それがなかなかできない世の中だから、いろいろ弊害が起こるわけで、迷惑な話なのではないか。
でもまあ未練があるとやめられない。それは人間の持っている性のようなものなのだろう。まったく悲しいものである。