バック・ト・ザ・フューチャーで有名になった自動車が、「デロリアン」だったというのは、実は知らなかった。もちろん映画に出てくるので車は知っていたが、その人物はまったく知らなかった。いかにもアメリカ的で、そうしてやはりアメリカ的に悲しい。そうしてこういう映画にまでなってしまって、ある意味ではさらに可哀そうだ。家族も悲しんでいることだろう。しかしまあ、映画はいい出来栄えになっていて、要するに見世物として格好の人物だったわけだ。人はいろんな失敗をするものだが、こういう失敗はしたくない、という見本のような人なのかもしれない。
愚かな犯罪者といえば、そりゃあたくさんいることだろうが、ふりかえり再現されて検証されるということをされる人たちは、そうたくさんではなさそうだ。若き過ちには違いないが、こういう取り返しのつかないようなことを、いかにも若気の至りでやってしまうというのが、やはり人間らしいことかもしれないではないか。「アメリカン・アニマルズ」は、そういう意味で傑作で、見終わっても感慨深い。ほんとにこんなことをしてしまうという青春の罪を、ひとごとでなく感じられる人間こそ、僕は信用すると思う。
しかしながら、タランティーノの手にかかると、やっぱり悪ふざけになってしまう。そうして躊躇なく歴史を改竄する。先の映画では誰もが知っているヒトラーまで殺してしまう始末だ。彼は分かったうえで、そういうことを面白がっているのだ。そうしてそういうことに、ちょっとくらいはうんざりしないではない気分がありながら、やっぱり映画なんだから面白がってしまう自分がいる。傑作ではないが、よくもまあこんな映画に一流の俳優たちが出るものである。要するにいい面ばかりしていることにも、彼らはうんざりしているに違いないのである。そうして息抜きして、またいい映画を作ればいいのだ。期待してますよ、ほんとに。
ジョン・デロリアン/ニック・ハム監督
アメリカン・アニマルズ/バート・レイトン監督
ワンスアポンアタイム・イン・ハリウッド/クエンティン・タランティーノ監督