日曜の夜ぐらいは……/新庄毅彦・朝比奈陽子・高橋由妃・中村圭良監督
皆生活に不満があるというか、なんとなく恵まれない境遇にあえいでいる状態にある3人の女性を中心にお話が進む。三人は、あるラジオ番組が企画した聴視者を集めた旅行に参加することにより知り合う。そこでは普段の生活を忘れさせる楽しさがあり、友情が深まり、いわば特殊な人間関係が育まれる。そうして三人は、思い付きで宝くじを一枚ずつ買うが、その中の一枚が、それぞれの不幸な境遇にいる三人を変えることになるのだったが……。
一人は車椅子の母と共に、バイトをしながら公営団地に住んでいる。とにかく普段から、笑顔になることはほとんどない。一人は祖母と共にちくわぶ工場に勤めている。嫌な上司もいるし、友人は皆無。過去に家庭の事情を抱えている様子である(後にひどい母親の存在が明るみに出る)。もう一人はタクシー運転手。元ヤンキーで本来は明るい性格のようだが、客との会話はちぐはぐになり、思うような接客や運転ができない。これも過去に何らかの家庭内の事件があるようだ(家出か?)。
一人は車椅子の母の代理だが、他の二人はふだん聞いているラジオ番組の番外編のバスツアーに参加することになる。最初はぎこちないところもあるのだったが、気が付くと爆発的に仲が良くなり、これまでに感じたことのない充実感と楽しさを満喫するのだった。しかしバスツアーが終わると、当然元の生活に戻ってしまう。そのギャップが怖くて、三人は連絡先も交わすこともなく分かれてしまうのだったが……。
ところが再度三人を引き合わせるのは、宝くじのあたり券だった。団地娘が律義にも、当たった券の賞金を三等分することを伝える。彼女らは一人一千万円ずつ手にすることになる。それだけでも凄いことなのだが、そもそも三人ともろくな境遇に無い。最初は無駄な支出をせざるを得ないことになり、なんだかそのままでは何にもならないことを身をもって知ることになる。だが幸い最初に少し無駄にしたにせよ、一人一千万だ。三人は共同して店を開くことにするのだった。
見終わった今になって考えてみると、観ているときには少しくらい危うい感じの事件も起こっているにもかかわらず、何かとても平和で、満ち足りていて、いい人ばかりが居たような印象を受ける。宝くじで大金を手にするだけでもずいぶん危うい話なのに、これ以上健全な展開は無いのではないかとさえ思えてしまう。
そうしてこれだけ年頃の男女がたくさん出てくるにもかかわらず、何か恋愛めいた展開がまったくないのである。いや、発展してもいい感じにもなるのだが、いわゆるセクシーな方には行かないというか。そういうドラマではないというのは分かるが、ここまで徹底して恋愛を排除した物語というのも、珍しいのではあるまいか。
とにかく不思議なテイストがありながら、いつの間にか最後まで見続けてしまった。それはもう、面白かったという事になるのだろうか。