カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

僕には勤まらない職業   裏切りのサーカス

2013-09-20 | 映画
裏切りのサーカス/トーマス・アルフレッドソン監督

 最初は確かによく分からないところが多かったのだが、じわじわとその緊迫感と作りの緻密さの伝わってくる作品だった。いろいろ伏線が張ってあったような事は、もう少し最初から気付けて観ていればよかったのかもしれない。もっともDVDだったので観返せば済むことだったのだけど、そう思ったのは返却した後だった。
 それというのも後になってどんでん返しがあるとかそういうことを何となく期待しているところがあって、そういう感じにスジを追って観ている自分がいた。結果的にそれなりに意外な展開にはなっていくものの、はっきり言ってそんなに派手なことにはならない。ならないがしかし、そのじわじわの緊迫感は持続していて、改めて恐ろしいという後味は残った。
 僕のやっている仕事に緊迫感が無い訳ではないが、スパイと比べると、その緊迫感の質はぜんぜん違ったものではあるだろう。勤めたくないし、そういう境遇になることも無いとは思うのだが、ある意味でいつも自分の命のかかっているような境遇で仕事をやろうという人間が居ることが、何より不思議な気がする。それが一種の政治の必要だったり戦争の犠牲だったりするということは分かるのだが、とてもじゃないが、生活が成り立つとは考えにくいのである。いつも気を配るということはそうなのだが、僕なら必ず酒量は増えて、そうして終いには寝られなくなると考えられる。そうやって自分の身をかえって危険にさらしているという自覚が芽生えると、さらにそのような行動を自制出来なくなるに違いない。考えただけでもそうなのだから、とても適正にもとることは間違いなさそうだが、たとえば家族の人質があるとか、他にも致し方の無い事情があって似たような事をしなければならなくなるとしたら、いったい僕はどうなってしまうのだろうか。
 観ながら自分のことばかりでは恐縮ではあるのだけれど、そのような恐怖感というのは、精神的には非常につらいのである。見つかったら四の五の言わず逃げるにしかず、ということになるのだが、逃げ切れるかも自信が無い。やはり自分の命を絶つということを最初からある程度覚悟しておく必要がありそうで、失敗を前提に生きていくというような心構えがいるのではなかろうか。
 僕は仕事などの事でもプレッシャーを感じている時は、何も命までは取られる訳ではないという自らの励ましをもって、何となく心の平静を保っているようなところがある。そういう保険の使え無い職業という意味で、スパイものが必要以上に怖く感じられるのかもしれない。よく出来た映画なのだが、そういう理由で、同時に大変に怖い思いをしたのだった。
コメント
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