「森の文化史」

2007-04-26 | 読書
●森の文化史/只木良也/講談社学術文庫/2004年06月10日発行/960円
 森林に関する興味深い知見が、めいっぱいつまった本である。1981年に出版された原本の改訂、文庫化である。
 読者は、人間が如何に森の恩恵によって暮らしてきたか、にもかかわらず森を破壊して生きてきたかを思い知ることになろう。森を食いつぶすと都市も滅亡するとある。
 植生ついて述べられたところでは、われわれが何気なく眺めている風景が、いかなる遷移の過程にあるかを教えられる。白砂青松というが、それは人為によるものであって、決して、自然なままのものではないという。白樺林が、何故すがすがしく美しいのかも語られる。群れとしての植物の姿が分かり易く説かれる。
 また、土は単なる鉱物ではないとある。それはそうと皆思うだろうが、そのわけが分かり易く説明されている。いかに貴重なものであるかを知ることになる。日本における森の種類の水平分布、垂直分布等、多くの図表も駆使され素人でもある程度理解できるものとなっている。
 さらに、人間という生命体が、いかなる生態系のなかにあるかも深く認識させられる。生きとし生きるものが、如何に深く結びついているかが、もったいぶった語り口ではなく、実態として語られている。われわれの、自然観、世界観、社会観、人間観が問われるのである。人生論の書ではないのに、われわれの生き方にまで、思いを馳せらせるのである。
 もう一度言っておこう。貴重な情報が満載の書である。