いぶろぐ

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不治の病

2020-10-11 01:59:18 | 超・いぶたろう日記

中高のひとつ先輩であり、
教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏の新著、
『麻布という不治の病』面白く読みました。

もちろん僕も含め、
過剰なまでの母校愛には変わりないのに、
なんとしても人とは違う、
自分の言葉で表現しないと気が済まないOBたちによる、
メンドクサ〜イ議論(笑)もそこかしこで始まっておりまして、
やはり不治の病だなとの認識及び自覚を改めて深くいたしました。

別に麻布が進学校だからとか、自由な学校だからといって、
ナンバーワンやオンリーワンを声高に主張するわけじゃないのです。
おそらくはどこの学校にでもあるだろう「ならでは」の魅力が、
比較的わかりやすく面白おかしく語れるということなんだろうと思います。
ただ、どんな学校もそうであるように、
麻布の真の魅力もまた、わかりにくいところに詰まっていて、
それは同じ空気を吸った人間じゃないとシェアしにくいというのは、
大いにあるでしょう。
当の麻布生や、子息を麻布に通わせている保護者でさえも、
誤解しているところが多くある学校です。
そんな難しいテーマに切り込んだだけでも凄い一冊だと思います。

同期の千葉くんを初め、空手部の大先輩である宮台真司氏をはじめ、
前川喜平氏や谷垣禎一氏など、錚々たるメンバーが並び、まさに壮観です。

ただ、東大でも官僚でも医者でもない雑草系OBの僕が言うのも何ですが、
個人的には、麻布の魅力って、
「弁護士・検察官・裁判官ばかりか、被告人までもが人材豊かに揃う」
っていうところにあると思っているのです。
そして何より、少なくとも僕の知る範囲の麻布のいいところは、
知名度や社会的ステイタスに関係なく、
いつまでも同門の仲間をイーブンに受け容れるところ。
結婚式や同期会で再会したら、
医者・弁護士から検事、元被告人、政治家も芸人も怪しげな自営業者も、
みんな何の垣根もなく肩組んで、
いつでもサンタルチアを原語で熱唱できてしまう(笑)。

そしてもうひとつ、麻布卒には既定のレールを外れる人が凄く多い。
絵に描いたようなエリート街道を驀進するヒトも多いけれど、
その先で変わり者として異端視されていたり、
突然別のことがやりたくなっていとも簡単に放り投げちゃったり、
ある日突然医者や弁護士を志して三十代や四十代で叶えちゃったりもする。

だから「おれ麻布なんだぞ凄いだろう」みたいなことじゃなく、
自分がどんな窮地にあろうと、どんな運に見放されていようと、
「ああ、おれ麻布だった、あの中にいたんだから何とかなるだろ」
というタフな美学を思い出させてくれる人生の軸なんでしょうね。

その意味では、いわゆる著名人や成功者ばかりでなく、
一般には「底辺」としか認識されないようなフィールドで自分の流儀を貫き、
独特の異能と「野蛮な集中力」をもって奇跡的に生き延びている、
そんな麻布OBも少なからずいるはずなので、
今度はそこにスポットを当てたものも読んでみたいなあと。
受験ママのムシのいい夢を無惨に打ち砕く一冊。
誰得なんだという気もするし、まあ売れないだろうけど…。

「なんだかんだ成功してるから言えるんだよね」
なんていう予定調和も許さず、
「結局実家が太いから好き勝手やれたってだけだよね」
なんていう短絡も差し挟めず、
「それって麻布に限った話じゃないよね」
なんていうコメントも憚られるような、ぶっちぎりの一冊。

ある意味ではそっちの方が勇気と誇り、
後は根拠のない自信を蘇らせてくれるかもしれません。
大して勉強もせず、好きなことしかやってこなかった僕ですが、
思えばどんな窮地にあっても、
母校はいつもある種の矜持を思い出させてくれました。
数々の伝説に彩られた母校ですが、
僕を奮い立たせてくれたのはいつも、
名もなき豪傑の人知れぬ活躍だったような気もします。

長い人生で、たった6年ほどのことが、
こんなにも大きな支えになろうとは。
つくづく、思春期の過ごし方って大切なんだと思わされますね。