語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】「小林新党」成功のカギ ~参院選~

2016年05月19日 | 社会
 (1)5月9日、政治団体「国民怒りの声」設立・・・・というニュースが各紙で報じられた。
 安全保障法制は違憲だとして廃止を訴える小林節・慶應大学名誉教授(憲法)が設立するという。「設立宣言」には
   「政府自身が公然と憲法を破った」
   「立憲主義の危機」
などという言葉が並ぶ。基本政策は他の政党と大きな違いはない。 
 夏の参院選に小林氏を含め全国比例区で10人以上の擁立を目指すというのだが、早くも野党側からは、「今頃新しい野党を作っても票を奪い合うだけ、自民党を利する」という批判が出ている。

 (2)小沢一郎氏が提唱した地域政党との連携策である「オリーブの木」構想は頓挫した。
 亀井静香氏が提唱した「さくらの木」構想も、同様に挫折してしまった。
 これらの「統一名簿方式」では、各野党が小選挙区での独立は維持したまま、反安倍政権という一点で協力するために、全国比例区だけは政党を超えて候補者を統一の名簿で立候補させる。当選した議員は、選挙後、元の政党に戻るという方式で、死票が少なくなり、野党の議席が増えるという利点がある。

 (3)では、「オリーブの木」や「さくらの木」の動き、野党共闘の動きと今回の「小林新党」の動きとの違いは何か。そして、今頃新党が本当に必要なのか。
  (a)野党共闘というと聞こえがよいが、実際は民進党議員を統一候補として、市民に応援させるだけという選挙区がほとんどだ。無所属の形をとっても、一皮剥けば民進党という例も多い。共産党は嫌だけれど、民進党も同じくらい嫌だと考える無党派層は非常に多いが、彼らから見ると、そんな野党は何の魅力もない。
  (b)元は純粋な市民候補という場合も多少はあるが、素人だけでは選挙運動ができず、結局は政党の中に取り込まれていく例も多い。
  (c)「オリーブの木」も「さくらの木」も、実は落ちぶれた政党・政治家の生き残り策でしかなかった。このため民進党は、どう考えても世論の支持を得られないと判断し、参加を拒否。どちらの構想も頓挫した。

 (4)小林氏の新たな動きが既成政党に頼らない市民の運動体を目指すとすれば、まさにそこが「差別化」のポイントだ。
  (a)既成政党に幻滅し、民進党も共産党も嫌だという無党派層の受け皿となれれば、この運動の「存在意義」が見えてくる。今後、世間が驚くような著名人が合流し、認知度が上がれば、大きなうねりが生まれる可能性は十分にある。
  (b)逆に言えば、魅力的な有識者候補が集まらず、最終段階で落ちぶれた既成政治家が入ってくるようなことにでもなれば、世間は見向きもせず、安倍政権に抑え込まれたマスコミにも泡沫候補扱いされて終わりだろう。つまり、この構想は大失敗に終わる。

 (5)(4)-(b)となれば、既成政党に頼らない新たな政党の設立という運動に大きく水を差し、日本の民主政治にとって深刻なダメージを与える可能性がある。
 最後まで既成政党・政治家に頼らないという姿勢を堅持できるか。
 これから1ヵ月が正念場。その帰趨に注目したい。

□古賀茂明「「小林新党」成功のカギ ~官々愕々第199回~」(「週刊現代」2016年5月28日号)
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書評:『二人で少年漫画ばかり描いてきた -戦後児童漫画私史-』/『トキワ荘青春日記』

2016年05月18日 | ノンフィクション
 藤本弘と安孫子素雄は国民学校時代の同級生である。少年期に出会った映画と漫画、ことに手塚治虫漫画に決定的な影響を受けて、二人は漫画家を志した。
 上京して2畳の部屋に二人して下宿するが、ほどなくトキワ荘に移った。
 当時としては高額な敷金3万円を置いていく、という手塚治の好意のおかげである。
 同宿の先輩、寺田ヒロオはじつに面倒見のよい人物だったらしい。彼の傘下に同じ志をもつ者同士が集まり、「新漫画党」を結成した。
 アニメに手をだして失敗した。
 青年コミックに進出するが、読者のひとことから児童漫画に回帰する。

 二人の作品だけではなくて、他の漫画家による主な作品も紹介している(巻末に年表を付す)。
 昭和34、5年を境にテレビ受信機が急速に普及し、同時期に貸本店が衰退して(昭和37年の後半に終焉)、貸本漫画家が週刊誌へ進出した。
 こうした文化史的証言もふくんでいて、興味深い。

 知覚心理学者が喜びそうなデータもある。
 たとえば、影になって見えないはずの部分も詳細に描く、といった少年漫画の特徴。あるいは、「おばQ」の主人公は当初は頭の毛が10本、太りじしだったが、連載5、6回目には頭毛は3本に減少し、贅肉をおとしてスリムな体型となった。ゲシュタルト心理学の簡明化の法則を思わせるではないか。

 かにかくに、『二人で少年漫画ばかり描いてきた -戦後児童漫画私史-』は、戦後の少年漫画史の貴重な資料である。それ以上に、漫画ひと筋のまじり気のない情熱がさわやかだ。

   *

 『トキワ荘青春日記』は、昭和29年から昭和36年まで、二人が20歳から26歳まで、トキワ荘で過ごした7年間の記録である。大学ノートで20冊を越える日記に加えて、欄外面白付録と称する頭注がある。登場人物や雑誌の解説や昭和40年の物価一覧(ラーメン40円ほか)である。写真もある。当時と現在の。さらに「トキワ荘の同窓生」たちとの鼎談、漫画家略伝、カットや作品のさわりが挿入されている。
 ただの日記がじつに豪華な本に変貌している。

 新書版である。豪華というのはなかみのことだ。
 金銭的な豪奢のことではない。むしろ生活はじつに貧しく、慢性的な金欠病と呼んでもよかった。何度も書き直しを要求されたり、注文をこなしきれずに穴をつくってその後一時干されたりもした。
 順調満帆ではなかったにもかかわらず、「毎日がお祭りのような、ぼくたちの黄金時代」だったのは、個性的で活発、暖かみのある同業者との付きあいがあったからだ。

 トキワ荘は木造2偕建て、全22室。各室とも4畳半。
 手塚治虫が転居した後、二人はその部屋を借りた。入居当時「スポーツマン佐助」や「背番号0」を描いていた寺田ヒロオがいたし、やがて鈴木伸一、森安なおや、少し遅れて石森章太郎、赤塚不二夫が加わった。さらに、トキワ荘の住民ではなかったが、永田竹丸、つのだじろうが日参した。
 勤務時間に縛られることなく(ただし締切日に縛られ)、各自やりたいことをやって、楽しく充実していたらしい。
 管理社会の、しかも21世紀にはいってタガの緩んだ管理社会の片隅に棲息する者は、羨望の吐息をつくだろう。

□藤子不二雄『二人で少年漫画ばかり描いてきた -戦後児童漫画私史-』(毎日新聞社、1977)
□藤子不二雄『トキワ荘青春日記』(カッパブックス、1981)
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【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~

2016年05月17日 | ●佐藤優
 (1)安倍晋三・首相とウラジミール・プーチン・ロシア大統領が、ソチ市(ロシア南部)で、5月6日15時50分から19時(日本時間21時50分から7日1時)まで、3時間10分会談した。
 会議終了後、同行記者団に対して世耕弘成・官房副長官(参議院議員)がおこなったブリーフィングの記録によれば、(2)以下のとおり。
 なお、官房副長官の記者ブリーフィングは、情報源として「政府筋」と表記して実名を記さない慣行がある。そのブリーフィングの記録も首相官邸や外務省の公式ウェブサイトには公表されない。国民の知る権利に応える観点から、この種の情報は全面的に開示されるべきだ。

 (2)今回の首脳会談の目標は、安倍首相とプーチン大統領の個人的な信頼関係の強化だった。それは基本的に達成された。日本側の包括的アプローチがプーチン大統領の琴線に触れた。
 包括的アプローチとは、ロシア側が望む経済案件を大量に盛り込んだ上で、北方領土問題の解決策もその中に入れておき、これらを全体としてロシアに受け入れさせようとする外交技法だ。安倍首相は具体的に次の8点の提案を行った。
  (a)日本式最先端の病院、日露健康長寿センターの建設・運営など医療水準を高め、ロシア国民の健康寿命の伸長に役立つ協力。
  (b)快適・清潔で住みやすく活動しやすい都市作りへの協力。具体的には、都市問題に対応してしてきた我が国の知見と技術をいかした寒冷地仕様住宅、廃棄物処理システム、渋滞緩和、上下水道の強靱化、都市交通網と郵便ネットワーク整備、ブラウンフィールドの開発などについての協力。
  (c)日露抽象企業の交流と協力を抜本的に拡大する協力で、ビジネスマッチング、ベンチャー支援、職関連の交流などの推進新主体の設置。
  (d)石油ガス等エネルギー開発協力。生産能力の拡充、さらには生産する石油製品の多角化に関する協力。上流から下流まで従来の協力を超える連携強化。象徴的な大規模プロジェクトの形成。
  (e)ロシアの産業の多様化促進と生産性向上のための協力。
  (f)極東地域における抜本的な産業振興、アジア太平洋地域に向けた輸出基地化のための協力。港湾、農地開発、水産物加工、製材所、空港整備etc.、
  (g)原子力、IT、日露の知恵を結集した先端技術面での協力。
  (h)日露双方の相互理解を一層深めるため、大学、青年等の若者交流や観光客の増大、そしてスポーツ文化などの幅広い分野の人的分野の人的交流の抜本的拡大。

 (3)安倍首相はプーチン大統領に対して述べた。
 「(前略)このように私としては従来の発想を超えて、ロシア国民が直接恩恵を実感でき、ロシア経済も発展するような協力プランを考えている。これが実現すれば、両国の関係をわれわれ二人で大きく深めることができる。それに向けて私は最大限努力する考えだ。ウラジミールにもこれに応えて真剣に検討してもらいたい。二人で協力して日露関係を飛躍的に発展させたい」
 プーチン大統領は、8項目提案に対して述べた。
 「すばらしい。このようなプロジェクトは是非実現したい」
 プーチン大統領が、この包括的アプローチに対して強い関心を示したので、会談が3時間10分に及んだのだ。

 (4)今回、北方領土交渉に関する内容について、双方は外部に漏洩しないように細心の注意を払っている。安倍首相は、プーチン大統領と北方領土問題について、以下、述べた。
 「これまでの発想にとらわれないアプローチで交渉を精力的に進めていこう。今までの交渉の停滞を打破しよう。この問題を二人で解決しよう。交渉における双方の立場の違いを克服して、問題を解決するためには、2国間の視点だけではなく、グローバルな視点も考慮に入れた上で、未来志向の考えに立って交渉を行っていく、新しいアプローチが必要である。先月、ウラジミールが国民との直接対話の後にプレスに対し、妥協するためには恒常的で切れ目のない対話を行う必要があると述べたことに、私も同意見である。平和条約交渉の次回会合は6月に実施予定ということにしようではないか」
 その上で、安倍首相は、次のように述べ、プーチン大統領も同意した。
 「今後の日露関係、わけてもウラジミールの訪日準備を進めていく上で、日露双方が静かな交渉環境を維持しなくてはならない。互いの国民感情に配慮をして、相手の国民感情を傷つけるような行動や発言は控えるべきだ。今私が申し上げたことに大筋賛同頂けるのであれば、是非この後はふたりきりで話をしようではないか」

 (4)安倍首相とプーチン大統領は、通訳だけが加わっちゃテタテ(1対1)会談を35分間行った。その結果について、安倍首相はこう述べた。
 「双方に受け入れ可能な解決策の作成に向け、新たな発想に基づくアプローチで交渉を精力的に進めていくことで一致した」
 このことから、安倍首相が、「北方四島に対する帰属の問題を解決して平和条約を締結する」という「東京宣言」(1993年10月)の確認に固執していないことが窺える。
 今回の首脳会談を契機に、日本政府は脱「東京宣言」に静かに舵を切り始めたのだ。

 (5)プーチン大統領は、東方経済フォーラム(9月2・3日、於ウラジオストク)に安倍首相を招待した。ウラジオストク(ロシア極東)で日露首脳会談が成立する可能性は高い。
 この場で、プーチン大統領を山口県(安倍首相の選挙区)へ招待するというカード(安倍首相が腹案として持っている)を切るのであろう。プーチン山口県訪問は、非公式な正確を帯びることになるが、そこで両首脳が北方領土問題の解決に向けた大きな政治的決断を行う可能性は十分にある。

 (6)今年は、日ソ共同宣言が調印(1956年10月)されて60周年にあたる。
 プーチン大統領は、日ソ共同宣言で定められた平和条約後の歯舞群島と色丹島の日本への引き渡しは、ロシアにとって義務であると公言している。今後の北方領土交渉では、日ソ宣言の2島引き渡し条項をどのように実施するかということと、日ソ共同宣言で帰属が確定しなかった国後島と択捉島の2島についての取り扱いをどうするか、が交渉の焦点になる。

 (7)もっとも、安倍応援団には、北方領土について、「四島一括返還」に固執する人びとがいる。
 この人たちは、日ソ共同宣言に基づき、歯舞群島、色丹島の引き渡しに着手するというアプローチに反発する。この「右バネ」を抑え込むことが安倍首相の宿題だ。

□佐藤優「急進展する日露関係と安倍首相が取り組む宿題 ~飛耳長目 第119回~」(「週刊金曜日」2016年5月13日号)
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佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
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『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
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【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

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【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~

2016年05月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)熊本地震で注目された「エコノミークラス症候群」。車中避難中だった女性の死亡に続き、複数の方々が病院に搬送された。
 エコノミークラス症候群は、狭い空間で長時間同じ姿勢を取ることにより血液の流れが滞る状態だ。
 特に、
   膝から下の静脈内にたまった血液が固まり、
   ふくらはぎの静脈内に血栓ができる
と危険度が増す。
 狭い場所から這い出して、身体を動かしたとたん、血栓が肺動脈に飛び、大事な血管を詰まらせてしまうのだ。肺動脈が詰まると、
   息苦しさ、
   息切れ、胸の痛み
が生じる。重症になると突然死の恐れもある。

 (2)熊本地震は、4月14日の発生以降、震度6を超える余震が群発。
 倒壊の恐れのある家屋にとどまることができず、車中泊を選択した被災者が多かった。その選択が、別の危険を呼び込んでしまったのだ。

 (3)この事態を受け、循環器系7学会は、連名でエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)の予防法を発表した。やむをえず車中泊をする場合や、避難所で運動ができない場合に実行してほしい、としている。そのポイントは、次のとおり。
   ・適切な指導の下、弾性ストッキングを着用する。
   ・長時間自動車のシートに坐った姿勢で眠らない。
   ・時々、足首の運動を行う。
   ・ふくらはぎをマッサージする。
   ・十分な水分を補給する。
   ・可能であれば、避難所で簡易ベッドを使用する。

 (4)重要なのは、寝る際に足をできるだけ心臓と同じ高さに保つこと。車のシートで寝る場合は、足の下に台を置くとよい。足首を回したり、その場で足踏み、爪先と、かかとの上げ下げも効果的だ。

 (5)状況によっては、水分や場所の確保は難しいとしても、医療用の弾性ストッキングを非常用持ち出しバッグ内に常備しておこう。
 女性の足のむくみ解消用と思われがちだが、男女を問わずエコノミークラス症候群の予防に威力を発揮する。適度な圧力で静脈の動きが活発になるからだ。
 地震大国日本の住民として、覚えておいて損ではない。

□井出ゆきえ(医学ライター)「長期の避難に備えて/弾性ストッキングを用意 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.300~」(「週刊ダイヤモンド」2016年5月21日号)
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 【参考】

【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

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【佐藤優】英才教育という神話

2016年05月15日 | ●佐藤優
   
 ①橘玲『言ってはいけない残酷すぎる真実』(新潮新書 780円)
 ②薬師寺克行『公明党 創価学会と50年の軌跡』(中公新書 840円)
 ③菊池英博/稲村公望『「ゆうちょマネー」はどこへ消えたか “格差”を生んだ郵政民営化の真実』(彩流社 1,700円)

 (1)人間の成長は遺伝と環境の双方の要因によってなされる。そういうことを、①は生物学的知見を援用しつつ、興味深く物語っている。
 <19世紀末は、どのような子どもでも正しい訓練によって天才に育てることができると信じられていた。ウィリアム・ジェイムズ・サイディスの両親は、自分たちの子どもが早熟であることに気づいて、一生を彼の教育に捧げることにした。
 英才教育の効果は目覚ましく、ウィリアムは18ヵ月で文章を読むようになり、6歳で数ヵ国語を操り、小学校に入学すると6ヵ月間で公立学校の7学年次まで修了した。その後は家庭で勉強を続け、11歳でハーヴァード大学に入学し、その数ヵ月後にはハーヴァード数学クラブで「四次元物体」と題した講演を行って聴衆を驚かせた。
 (中略)大人になるとウィリアムは親に背を向けるようになり、父親の葬儀にも姿を見せなかった。学問の世界とも訣別し、頭を使わない安月給の事務仕事を転々として、46歳で心臓発作で死んだ。独身で、無一文で、完全な不適応状態に陥っていたという>
 英才教育という神話に取り憑かれている親にとって、必読書だ。
 竹内久美子・動物行動学者の見解とも親和的だ。

 (2)②を読んでも公明党の実態はわからない。
 <公明党は「出たい人より出したい人」の集団である。多くの議委員はこつこつとまじめに政策を勉強し、支持者らの要求を法律や予算に反映させようと活動する。(中略)こういう人たちは政党間の駆け引きや調整には向いていない。したがって重要政策をめぐる自民党と公明党との協議はしばしば自民党ペースで進む。百戦錬磨の自民党議員を相手に駆け引きのできる人材の育成は公明党にとって大きな課題だろう>
 著者はこう述べるが、安保法制、首相の戦後70年談話、軽減税率導入においても公明党が自民党を押し切った場面が多い。公明党と創価学会との関係についても、ステレオタイプの分析に終始している。
 著者は元「朝日新聞」の政治部記者だが、公明党の新しい動きを捉え損ねている。

 (3)③で、菊池氏は、
 <最近、わたしがひじょうに危惧しているのは、「日本人が、日本固有の国民の資産を、日本国民のためではなくて外資に売り渡すことに積極的に動いている」ということです。その典型がまさに、このゆうちょ銀行です>
 と指摘するが、国家や民族に価値を認めない多国籍資本と、その出自において国家と深く結びついている優勢事業の間で、
    資本対国家
の熾烈な闘争が展開されているのだ。

□佐藤優「英才教育という神話 ~知を磨く読書 第149回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年5月21日号)
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 【参考】
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~
【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~
【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
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【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
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【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
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【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
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【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 




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【東京】都知事の豪遊 ~舛添よりもっと恥知らずな石原慎太郎~

2016年05月14日 | 社会
 (1)舛添要一・東京都知事が批判を浴びている。外遊時はファーストクラスにふんぞり返り、現地では高級ホテルのスイートルームに宿泊する放蕩。首都の知事なのに、毎週末のように温泉地・湯河原の別荘に滞在する危機管理感覚の欠如。しかも、別荘に行く際は公用車を使う公私混同。
 にもかかわらず、会見では悪びれた様子もなく反論する。
 新聞雑誌にテレビが声をそろえて批判するのは至極当然。同乗の余地はまったくない。

 (2)実は、前々任の知事のほうが、もっとひどかった。
 石原慎太郎は、1999年から計4期13年、東京都知事を務めた。
 例えば2006年、石原の登庁はなんと週に2~3日ほど。公用車で神奈川・逗子の別邸に赴いたこともあった。日ごろ口先では責任感を誇示していたが、危機管理の感覚はゼロであった。
 放蕩外遊は舛添に輪をかけてひどかった。30回以上の海外出張で使ったのはファーストクラス、宿泊先は超高級ホテル。2001年に観光まがいの出張でガラパゴス諸島を訪れた際には、クルーザーを乗り回した。2008年に北京五輪の開会式に出張した際は、1泊24万円のスイートルームに宿泊した。
 こんなのはほんの一例にすぎない。
 公私混同もすさまじかった。超高級料亭やレストランで「公費接待」を繰り返した。例えば、2006年に赤坂の料亭で行った会食は一人当たり料金が55,000円。1回の会食の合計が50万円以上のこともあった。1本数万円のワインを抜栓したことも数え切れない。その接待相手には友人や側近が多数含まれていた。
 挙げ句の果てには、石原の肝煎りで始めた文化関係の事業に自称画家の四男を関わらせ、報酬を与えたり、公費で出張させていたことが発覚した。ところが、石原は「息子でありながら立派な芸術家」「余人をもって代えがたい」などと開き直った。

 (3)石原都政では、このほか、1,000億円以上もの税金をつぎこんで大失敗に終わった新銀行東京など、都政上の問題も数々あったが、ここではさて措く。ただ、公私混同、放蕩外遊、危機管理感覚欠如は舛添の比ではないことだけ指摘しておく。
 だが、メディアの批判は、当時、借りてきた猫だった。石原の強圧的なメディア対策にびびったのか、いわゆる作家タブーのせいか、メディアの対応は微温的だった。結果、石原は都知事の座にながながと居座り、戦後では鈴木俊一に次ぐ2番目の長期都政を誇ることになってしまった。

□青木理「舛添氏の豪遊もひどいが、もっと恥知らずな都知事が最近まで居座っていたのでは?」(「週刊現代」2016年5月21日号)
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【メディア】国谷裕子という人 ~インタビューという仕事(番外編)~

2016年05月13日 | 社会
 (1)「時代が大きく変化し続ける中で、物事を伝えることが次第に難しくなってきた」
 1993年4月に始まったNHKの報道番組「クローズアップ現代」の3月17日の最終回終了後、国谷裕子・キャスター(59)はこんなコメントを残した。そして、「世界」(岩波書店)5月号に「インタビューという仕事『クローズアップ現代』の23年」を寄せた。

 (2)国谷氏といえば、2014年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定後、菅義偉官房長官が生出演した際、国谷氏の重ねての質問に官邸筋がNHKに猛烈抗議、国谷氏は楽屋で涙したと写真週刊誌「フライデー」が報じた。
 キャスター降板の理由ともされるこの“事件”について、「世界」に書いている。
 集団的自衛権の行使容認で憲法解釈を変更したことへの違和感や不安をどう払拭するのかという国谷氏の問いに、菅官房長官が答えている途中に放送が終わった。「生放送における時間キープも当然キャスターの仕事であり私のミスだった」と書いた後、続ける。「聞くべきことはきちんと角度を変えて繰り返し聞く、とりわけ批判的な側面からインタビューをし、そのことによって事実を浮かび上がらせる、それがフェアなインタビューではないだろうか」と。

 (3)国谷氏の文章が「世界」に掲載されたことは、読者にインパクトを与えた。新聞を含め多くのメディアが取材を申し込んでいただろう中、国谷氏がまず選んだのは反安倍政権の「世界」だった。
 こんな場合、つまり有名人の節目の独占手記や独占インタビューの場として選ばれるのは月刊「文芸春秋」が多い。
 <例1>2016年1月号の小泉純一郎元首相。題して「小泉純一郎独白録 首相退任後初のロングインタビュー4時間半 安倍政権、進次郎、原発・・・・すべてを語り尽くした」。安倍晋三首相も第1次政権後の独占手記「わが告白 総理辞任の真相」を2008年2月号に寄せている。
 <例2>みのもんた・タレントは、次男の窃盗未遂などで週刊文春でたたかれたが、2013年12月号に独占手記「私はなぜここまで嫌われたのか」。
 <例3>筑紫哲也・ジャーナリストは2008年11月に肺がんで亡くなった後の2009年2月号に、「がん残日録 告知から死までの五百日の闘い」を残した。

 (4)「文芸春秋」の発売日は毎月10日。「世界」とほぼ同じ時期で、両誌のカラーは対照的とみられている。「世界」5月号の特集タイトルが「テレビに未来はあるか」であることを差し引いても国谷氏の強い意思が窺える
 国谷氏は、「婦人公論」5月10日号(4月26日発売)のインタビューも受けている。TBSの報道番組「NEWS23」のメインキャスターだった岸井成格氏を批判する全面広告を載せた読売新聞。その傘下の中央公論新社が発行する雑誌で、さらりと「フェアなキャスターとは何か」について語る。ここにも「意思」がある。

□山田道子(毎日新聞紙面審査委員)「クロ現・国谷裕子さんが月刊誌「世界」に書いたこと」(「世界」2016年5月号)
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 【参考】
【メディア】フェアなインタビューとは ~インタビューという仕事(3)~
【メディア】テッド・コペルと言葉の力 ~インタビューという仕事(2)~
【メディア】インタビューという仕事 ~「クローズアップ現代」の23年~
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【古賀茂明】三菱グループの「親バカ」 ~その反社会的行動~

2016年05月12日 | 社会
 (1)二度にわたって詐欺を働いた息子を助けるため、親が身銭を切って後始末をし、穏便な措置を周囲に要望した。その親は名望家だったので、大目にみようということになった。
 しばらくたって、そのバカ息子がまたもや詐欺事件を起こした。今度は、親が甘やかすからいけない、と非難が出始めた。
 三度目も子どもを助けるのかどうか。

 (2)いま、三菱自動車の燃費データ偽装で三菱グループが揺れている。
 同社は、2000年に1977年から続けてきたリコール隠しが発覚して販売が急落。独ダイムラー・クライスラー社(当時)の支援と三菱のブランド力で凌ごうとしたが、2004年にも再びリコール隠しが発覚。強い批判を浴びて経営危機に陥ったが、御三家(三菱重工・三菱商事・三菱東京UFJ銀行)を中心とした三菱グループによる6,300億円もの支援で生き延びた。
 ところが、その傷もほぼ癒えたかに見えた2016年4月、今度は燃費偽装が発覚した。
   三菱の軽自動車2車種 15.7万台
   日産へ供給した軽2車種 46.8万台
の燃費をデータ偽装で5~10%良く見せていた、というのだ【注】。しかも、それは「故意」によるもの。社会一般の常識では、完全な「詐欺」にあたる。

 (3)三度も消費者と社会を裏切った企業をそのまま存続させるなど、普通ならあり得ない。
 しかし、「スリーダイヤ」の威光を誇示する三菱グループでは、そうはならない。不祥事発覚直後、グループ企業のトップが集まる「金曜会」、中でも御三家の関係者からは、「三菱ブランド維持のために守るしかない」という趣旨の発言ばかりが伝わってくる。
 
 (4)マスコミ、特にテレビ局でも、大スポンサーである三菱グループを敵にまわすことはできないらしく、三菱自動車自体は非難しても、グループによる救済を表立って批判する番組はほとんどない。逆に、下請け企業が可哀想だというVTRを流し、グループによる支援もやむなし、という論調の番組さえあったくらいだ。

 (5)国土交通・経済産業の両省もがっちりグループを支える。
 2004年の隠蔽事件当時、産業再生機構による再生処理も視野に入ったが、国交・経産両省は三菱グループの意を汲み、自主再建を支持した。
 両省、特に経産省にとって同グループは電力業界に次ぐ優良天下り先だ。640のグループ会員企業には無数の天下りポストがあり、運命共同体となっている。
 「金曜会」が三菱自動車救済のニュアンスを出せば、両省ともことを穏便に済ませようとするはずだ。
 両省の主管課を取材したある記者は、次のコメントに言葉を失った。
 <燃費偽装程度なら販売した車の買い取りは不要。経営危機にはならない>

 (6)三度もの不正を犯しながら、巨大グループの手厚い支援で生き延びてきた三菱自動車に、もはや存在意義はない。無理に温存しても、結局大リストラは不可避だ。どこかの優良企業に身売りしたほうが、下請けにも労働者にも遙かにマシだろう。
 連休明け早々開催の「金曜会」が、仮にこの「反社会的企業」をまた救済するならば、三菱自動車だけでなく、三菱グループ全体が「反社会的」グループだということになる。

 【注】ほぼ全車種において違法測定を行っていたことが明らかになった【記事「違法測定、ほぼ全車種 燃費データ 三菱自、91年以降」(朝日新聞デジタル 2016年5月11日)】。

□古賀茂明「三菱グループの「親バカ」 ~官々愕々第198回~」(「週刊現代」2016年5月21日号)
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 【参考】
【古賀茂明】世界が危惧する日本の報道弾圧 ~八方塞がり~
【古賀茂明】政府・大企業を批判しない大手マスコミ ~波紋を呼ぶパナマ文書~
【古賀茂明】亡国の農政 ~安倍政権の選挙対策~
【古賀茂明】武器輸出大国を目指す安倍政権 ~豪州政府との商談
【古賀茂明】民進党綱領の茶番 ~原発推進政策~
【古賀茂明】バカじゃねえのか、この国は ~被災者が見る原発推進~
【古賀茂明】【原発】再稼働の愚 ~事故頻発~
【古賀茂明】岩盤規制に負けた「安倍ドリル」
【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言
【古賀茂明】シャープ救済劇と官僚の思惑
【古賀茂明】ルールが守られない国、日本 ~途上国体質~
【古賀茂明】争点化すべき企業献金問題
【古賀茂明】基地をめぐる二つの選挙
【古賀茂明】前半がバラマキ政策、後半が憲法改正 ~「先楽後憂」の今年~
【古賀茂明】玉虫色の民主・維新政策合意 ~平和主義も放棄?~
【古賀茂明】シリア空爆の裏にある真実 ~軍需産業の大儲け~
【古賀茂明】橋下市長の去就で、憲法改正が現実味?
【古賀茂明】空虚な「日本再興戦略」 ~成長戦略の挫折~
【古賀茂明】「なかったこと」にされた議事録 ~閣議決定の記録~
【古賀茂明】【原発】大手電力のエゴ丸出し
【古賀茂明】勝っても負けても安倍自民には得 ~大阪ダブル選
【古賀茂明】問題だらけの軽減税率 ~最悪の方向へ~
【古賀茂明】【原発】骨抜きの「ノーリターンルール」
【古賀茂明】アベノミクス「第二ステージ」 ~失敗を隠す官僚の常套手段~
【古賀茂明】難民と安倍とメルケルと ~ドイツと差がつく日本~
【古賀茂明】安保法成立の最大の戦犯
【古賀茂明】軽減税率、本当の問題 ~官々愕々第170回~
【古賀茂明】国民のために働く官僚の左遷 ~読売新聞の問答無用~
【古賀茂明】安倍首相の「積極的軍事主義」が根付くとき
【古賀茂明】電力自由化は進んでいない
【古賀茂明】【TPP】の漂流と「困った人たち」
【古賀茂明】安保法案の裏で利権拡大 ~原子力ムラ~
【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~
【古賀茂明】維新の党の深謀遠慮 ~風が吹けば橋下市長が儲かる~
【古賀茂明】腐った農政 ~画餅に帰しつつある「日本再興」~
【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~
【古賀茂明】「信念」を問われる政治家 ~違憲な安保法制~
【古賀茂明】機能不全の3点セット ~戦争法案を止めるには~
【古賀茂明】維新が復活する日
【古賀茂明】戦争法案審議の傲慢と欺瞞 ~官僚のレトリック~
【古賀茂明】「再エネ」産業が終わる日 ~電源構成の政府案~
【古賀茂明】「増税先送り」「賃金増」のまやかし ~報道をどうチェックするか~
【古賀茂明】週末や平日夜間に開催 ~地方議会の改革~
【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

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書評:『眠れない時代』

2016年05月11日 | ノンフィクション
 1950年2月、ジョセフ・レイモンド・マッカーシー上院議員は国務省職員205人を共産主義者として告発した。以後、1954年の暮れまで、告発対象者を陸軍、マスコミ、映画、大学、ニューディーラーの各界の関係者にひろげ、審問にあたっては自白、密告、偽証、協力者のリスト提出を人々に強要し、事実を歪曲しては米国全土を恐怖におとしいれた。 
 いわゆるマッカーシー旋風、アカ狩りである。

 1952年、非米活動調査委員会による第2次喚問がおこなわれた。
 戯曲家リリアン・ヘルマンも呼び出された一人である。
 前年に喚問された者に、リリアンの夫、ダシール・ハメットがいた。『マルタの鷹』ほかのハードボイルドで、今なお、日本でもファンの多い作家である。
 ダシールは、党との関係を認め、入獄した。出獄してから死ぬまでの10年間は、無収入であった。

 リリアンたち被喚問者は、前年の審問会をまのあたりにしていたから、失職、社会的地位の喪失も覚悟していた。
 委員たちの高圧的にして一方的な追求に対して、筋をとおすには勇気がいる。
 じじつ、喚問された者の大部分は屈した。
 映画界では、たとえば、美男子として名高い俳優ロバート・テイラーは、委員会側の「友好的な証人」となり、委員会に迎合して自分の意見をねじ曲げ、はては3人の脚本家を売った。
 たとえばまた、脚本家にして『エデンの東』ほかの映画監督エリア・カザンは、40名の友人を引き渡した。

 リリアンは、過去の言動や交際していた人々の顔ぶれからして、夫と同じ裁定がくだされる可能性が高かった。
 リリアンは、夫ダシールと異なって、党との関係はなかった。そう証言し、自分が知る党員の名をあげれば追求をまぬがれることはわかっていた。
 しかし、リリアンは、他の人を陥れることで自分自身の「潔白」を証明するつもりはなかった。
 「良心を今年の流行に合わせて裁断することはできない」

 毅然たる性格が危機を乗り越えさせた。
 「自分については語ろう。しかし他の人への言及を要求されるならば憲法修正第5条を援用する」と、事前に委員会へ書簡を送ったのだ。
 弁護士は、機敏にうごいた。取材中の新聞記者へ書簡のコピーをばらまいたのである。世論を味方につける作戦である。
 リリアンは無傷で審問会をやり過ごした。
 この対抗方法は、後に続く者の導きの糸となる。
 トニー賞、ピュリッツァー賞受賞の劇作家アーサー・ミラーも、リリアンにみならった一人である。

 1991年、映画『真実の瞬間』が公開された。
 アカ狩りにあった主人公の映画監督(ロバート・デ・ニーロ)は、職も友人もつぎつぎに失うのだが、審問会の席上、友人の名を売ることを断固として拒む。
 リリアンの抵抗がここにも引き継がれている。
 『真実の瞬間』は、映画の町ハリウッドの、映画による、いささか遅すぎた自己批判である。

□リリアン・ヘルマン(小池美佐子訳)『眠れない時代』(サンリオ文庫、1985、後にちくま文庫、1989)
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【メディア】への政治家による圧力は犯罪とならないのか ~停波問題~

2016年05月10日 | 社会
 (1)与党政治家またはそれに近い者が何らかの形でマスメディアを統制している。だが、それがどこでどのように行われているかはわからない。以下紹介するのは、理論的にありうる犯罪である。
  (a)前提1・・・・現実には何の犯罪も行われていなかったとしても、現在の日本のメディアのあり方は外国から見ると民主主義に対する脅威であることを確認しておく。
   ①マスコミの幹部が政治家と会食などしようものなら、それだけで当該メディアの中立性に対する国民の信頼は害されると考えられている。
   ②英ガーディアン紙やエコノミスト誌は、2016年2月に相次いで、日本の複数の放送局で人気キャスターの降板が決まったことなどを疑問視する記事を公表した。
   ③同月8日に高市早苗・総務相が、政治的に公平でない放送を繰り返した放送局に電波停止を命じる可能性を述べたことなど、意味がわからないレベルの事態だろう。
 
  (b)前提2・・・・不正な目的のための公金支出は一切ないものと考えて説明を進める。
   ①そうした支出があれば、業務上横領罪(刑法253条)や背任罪(同247条)に該当しうることはもちろんだ。
   ②それ以外の場合については、「情報操作の罪」という犯罪類型はない(どころか、逆に特定秘密保護法や個人情報保護法により、情報を流通させることが処罰されるに至っている)ので、その手段となる行為を既存の法律で規制しうるのかが考察の対象となる。
   ③実は日本でも、証券市場における情報操作は、厳罰の対象とされてきている。ライブドア事件で、堀江貴文・被告人は、金融商品取引法上の有価証券報告書虚偽記載罪などで懲役2年6月の実刑判決を受けた(最高裁もこの結論を維持)。堀江氏は不正行為によって私腹を肥やしたわけではないため、従来の量刑基準からすれば執行猶予となるはずだったが、それよりはるかに重い刑が選択された。
   ④2015年11月10日に東京地裁が言い渡した早大マネーゲーム愛好会OB事件判決では、③と同法の相場操縦罪により、30代半ばの被告人らに対し、3億9,000万円という巨額の追徴が命じられている。ともかく、市場の情報操作については厳罰化傾向が看取される。
   ⑤しかし、他の場面での情報操作が広く犯罪とされているわけではない。
    ・詐欺罪は財産をだまし取る場合だけだし、
    ・偽造罪は書類や電子ファイルのねつ造が対象で、
    ・偽証罪・虚偽告訴罪は司法作用に対する罪だ。
   ⑥特定の勢力がマスコミの操作によって主権者をだますことは、民主主義を破壊する「大罪」であるにもかかわらず、これ自体を直接に規制する法律はない。

 (2)ある者が暴行や脅迫によってマスコミに文字どおりの圧力をかけた場合、「人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害」する罪=強要罪(刑法223条)や脅迫罪(同222条)が成立する。
 そのような粗暴犯はまさかあるまい・・・・と思うのは早計で、暴行罪(同208条)を通り越して傷害事件(同204条)になっている例が国会議員について報道されている。
 想定される犯罪類型の幅は広がっている。
 暴行・脅迫にまでは至らなくとも、人の自由意思を制約する「偽計」や「威力」を用いた場合には、業務妨害罪(同233条・234条)となりうる。最高裁の判例によれば、ここでいう「妨害」とは、実際に業務を遂行できなくしたことまでを要件とするものではなく、妨害「行為」を意味する(危険犯説)。
 さらに、主体が議員などの公務員である場合には、偽計や威力を手段とするのではなくても、公務員職権濫用罪(同193条)に該当しうる。「公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した」場合に成立する罪だ。強制やだます行為が要件でないため、本罪は比較的広く解釈されている。安川判事事件の最高裁決定では、裁判官が女性被告人を夜間に喫茶店に呼び出して同席させたことで、この罪による有罪判決を受けている。
 そうだとすると、
   たとえば議員が職権を濫用して、
マスコミ関係者を食事に呼び出して同席させたり、あるいは報道したいと思っている情報を報道させなくしたりすると、本罪に該当しうることになろう。

 (3)公務員職権濫用罪においては、呼び出された者が具体的な被害者となるだけでなく、同時に、国に対しても、職務の公正さを害する罪を行ったことになる。
 同様に、職務の公正さを害する公務員犯罪として代表的なものが、賄賂罪だ。しかし、通常の賄賂罪は、公務員が利益を収受し、民間業者が贈賄するものだから、ここで対象としている形態とはむしろ逆だ。ここで扱うのは、マスコミなどの民間企業に対して、政治家が賄賂を贈ってこれを買収し、自己に有利な報道をさせる場合だ。
 整理して比較すると、公務員の職務の公正を守るための処罰を定める刑法197条1項(賄賂罪)は、次のように定める。
 <公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する>
 このほかにも多くの加重処罰類型があり、全体に対応する贈賄罪の処罰が198条で定められている。

 (4)民間における贈収賄罪を(3)と比べてみると、その処罰規定は次のとおりだ。会社法967条(取締役等の贈収賄罪)
 <第1項 次に掲げる者が、その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
 一号 第960条第1項各号又は第2項各号に掲げる者(引用者注:株式会社の役員・従業員等のこと、二号・三号は略)>
 <第2項 前項の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する>
 この処罰規定は、会社の国民経済的重要性を背景として、1938年に最初に設けられた。立法目的は、株式会社の取締役等の職務の公正さを守ることだとされる。刑法に規定される贈収賄罪との違いは、
  (a)主体が公務員ではなくて株式会社の役員や従業員であること。
  (b)刑法では、「賄賂」の中には、財産以外の利益(情交など)も含むとされるが、会社法では対象が「財産上の利益」=金銭に換算できる利益に限られる。だがもちろん、これには有償役務の無償提供や「饗応」なども含まれる。
  (c)「不正の請託」という要件における「請託」は、明示的である必要はなく、黙示的に依頼の趣旨を表示することも含まれるとされる。そして、「不正の」は、法令に違反する場合のほか、会社の事務処理規則の重要なものに違反する場合も含むとされる。形式的には裁量権限内の行為でも、職務上の義務に違反してなされ、著しく不当のものであるときは、これに含まれる。

 (5)会社法上の贈収賄罪は、これまでにほとんど適用された例がないが、(4)のような解釈からすれば、実際には適用の余地がかなりありそうに見える。明文の規定に違反する場合だけを考えてみても、放送法3条(放送番組編集の自由)は、
 <放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない>
としているのであり、干渉や規律を加えることはこれに明らかに反する。
 法律による制限の例は、少年の匿名報道(少年法61条)が挙げられるだろう。
 こうした実質的な制限根拠がない限り、何人も放送番組を干渉や規律の対象としてはならないのだ。放送法は、1条・4条1項でも、真実の報道と表現の自由を求めている。

 (6)情報操作が(5)に反することも明らかだろう。
 情報操作は、積極的に虚偽の情報を流す場合だけでなく、相対的に重要性の低い情報ばかりを流すことによってより重大な情報の流通を妨げる場合や、誤解を招く方法を用いる場合にも行われている。
 <例>特定の政治家の意見をそのまま流す場合、それは個人の意見であるという情報がカッコ書きなどでわずかに示されていたとしても、視聴者はその「内容」が真実であるかのように誤解しやすい。
 このような工作も、結局において国民の知る権利やその他の視聴者の権利を侵害する(詐欺罪の領域では、こうした「真実主張による詐欺」も犯罪として処罰されている)。

 (7)高市早苗・総務相発言が象徴するように、一部の政治家は、およそ表現の自由を含む基本的人権という観念自体を共有していない。そのことは自民党改憲草案が明らかに示している。同草案21条 (表現の自由)は、
 <第1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する>
 <第2項 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない>
とし、まさに表現の自由の保障を正面から否定したも同然だ。自国民は弾圧できても、国際関係がこれで成り立つとは到底思われない。

 (8)次の参議院選挙で与党が改憲勢力に達した場合に導入されるといわれる、同草案の「緊急事態条項」は、国民の多数派が事実上の憲法停止状態を無期限に続けることができる内容になっている。
 それは「政府は法律を制定することができる」とした1933年のナチス全権委任法1条に類似し、また関東大震災後の混乱を契機に緊急勅令から出発した日本の治安維持法の展開を想起させる。
 北朝鮮やソ連におけるような「表現の自由」が日本で実現する日も近いのか。

□高山佳奈子(京都大学大学院法学研究科教授)「政治家によるメディアへの圧力は犯罪とならないのか」(「世界」2016年5月号)
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 【参考】
【メディア】放送の「自由」と「公平・公正」とは ~停波問題~
【メディア】安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 ~停波問題~
【メディア】自民党のテレ朝への圧力が契機に ~停波問題~
【メディア】安倍政権による行政指導の誤り ~放送電波停止発言~
【メディア】高市総務相は「脅し」の政治家、報道は「健忘症」
【メディア】総務大臣には、停波命じる資格はない ~放送電波停止発言~ 
【メディア】や高市発言にみる安倍政権の「表現の自由」軽視
【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言
【メディア】政治的公平とは何か ~「NEWS23」への的外れな攻撃~
【NHK】をまたもや呼びつけた自民党 ~メディア規制~
【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~
【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~

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【佐藤優】資本主義の内在的論理

2016年05月09日 | ●佐藤優
   
 ①カビール・セガール(小坂恵理・訳)『貨幣の「新」世界史 ハンムラビ法典からビットコインまで』(早川書房 2,100円)
 ②佐々木隆治『カール・マルクス』(ちくま新書 860円)
 ③國分功一郎『民主主義を直感するために』(晶文社 1,500円)

 (1)①は、古代貨幣から現代のビットコインに至るまでの知的刺激に富んだ貨幣史だ。著者は、
 <デジタルな仮想通貨は、貨幣の将来の姿なのかもしれない。しかし広く社会に普及して、主要な基軸通貨を脅かす存在になるのは容易ではない。なぜなら、国境内で何が法定貨幣として認められるか、あるいは認められないかに関しては、政府が決定する権限を握っているからだ。たとえばかつてルーズヴェルト大統領は、金の退蔵や利用を禁じた。むしろビットコインは、テクノロジーとして普及する可能性のほうが高い>
と指摘する。
 国境内で流通する通貨には、国家の承認が必要である以上、ビットコインが完全な通貨となることは難しい。

 (2)②は、完全版マルクス・エンゲルス全集(新MEGA)を精読した上で、マルクスの論理を正確に蘇らせようとしている。
 <マルクスの物質代謝の論理への関心は、共同体の場合と同じく、理念的なものではない。たとえば、ディープ・エコロジーのように自然を理想化し、それによって近代を批判したのではなかった。むしろ、マルクスが注目したのは、時代的な制約があったとはいえ、当時の自然科学の発展によって明らかにされつつあった物質代謝の具体的論理であり、その多様性であった>
 この見方は正しい。マルクスが解明したのは、物質代謝として現れる資本主義の内在的論理なのだ。

 (3)③を読めば、沖縄の辺野古問題の本質が何であるか、よく分かる。
 <自分は大学で哲学を講じている者であり、民主主義についても著書がある。また、東京の地元では道路建設を巡る住民投票運動に関わった経験がある。自分はいま、辺野古に来てみて、ここに日本の民主主義の先端部分があると感じている。かつて、マックス・ウェーバーという社会学者は、国家を暴力の独占装置として定義した。辺野古では、そのような国家の姿がまさしくむきだしの状態で現れているのではないか。選挙で何度も民意を表明しても、国家はそれを平然と無視する。そしてその無視に抗議する住民たちを、暴力で抑えつけようとする。(中略)実際に暴力が現れるのは極限状態においてである。暴力が実際に行使されているとすれば、それはその現場が極限状態にあるからだ。その意味で、辺野古は極限状態にある>
 確かに辺野古で起きているのは、極限状態であり、中央政府が新基地建設を強行すると、抵抗する沖縄の人びとの流血が発生し、沖縄が日本から分離する結果を招来しかねない。

□佐藤優「資本主義の内在的論理 ~知を磨く読書 第148回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年5月14日号)
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 【参考】
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
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【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
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【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
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【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
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【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
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【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
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【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
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【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
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【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

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【メディア】フェアなインタビューとは ~インタビューという仕事(3)~

2016年05月08日 | 社会
 (承前)

 (12)キャスターは、最初に抱いた疑問を最後まで持ち続け、視聴者の思いを掬い取り、納得がいくように伝えるということが大事だ。そのため、重要なことは納得を求めて繰り返し、質問の形を変えてまでしつこく聞く。ときに、インタビュー相手にも、まだそのことを聞くのか、とあきれられたり、ときには露骨に嫌な顔をされることもある。
 2004年のシュレダー・ドイツ首相へのインタビューにおいてもこだわった。インタビューの中心は、フランスとならんで強く米国のイラク戦争に反対したドイツの首相に、米国との関係について、本音でどう考えているのか、首相の口から聞きたい、ということだった。
 ドイツと違い、日本政府はイラク戦争を支持していた。されば、インタビューの核になるテーマだと思われた。
 しかし、首相は今後の独米関係を考慮して口は堅く、言質を取られないぞ、との決意もうかがわれ、最初の答えで、「そのことは既に過去のこと」とかわしてきた。しかし、国谷はめげずにしつこく聞いた。首相はややあきれ顔ながら、一つひとつ丁寧に答えた。
 首相は、さすが老練な政治家だった。国谷は、首相の、今後米国と対等となるようEUの結束を固めていくという言葉で旗を巻くこととした。
 「こだわるインタビュー」が、突っ込んだ良いものだったと評価されることもある一方で、しつこい、くどい、相手に失礼といった評にもなる。しかし、いったん絞り込んだテーマには、納得のいくまでこだわり、しつこく聞くことは大切なことだ。
 ただ相当な準備とエネルギーがいる。

 (13)2014年7月、閣議決定で憲法解釈の変更を行い、集団的自衛権の部分的行使を可能にしたことについて、スタジオで政治部記者とともに菅官房長官にインタビューした。
 インタビュー部分は14分ほど。安全保障にかかわる大きなテーマだったが、与えられた時間は長くはなかった。国谷は、この憲法解釈の変更に、世論の中で漠然たる不安が広がっていることを強く意識していた。視聴者はいま政府に何を一番聞いてほしいのか。その思いを背に国谷は何にこだわるべきなのか。

国谷:確認ですけれど、他国を守るための戦争には参加しないと?
官房長官:それは明言しています。

国谷:ではなぜ今まで憲法では許されないとしてきたことが容認されるとなったのか。安全保障環境の変化によって日米安保条約だけではなく集団的自衛権によって補わなくてはならない事態になったという認識なのでしょうか。
官房長官:いま、わが国の国民は150万人の人が海外で生活しています。そして1,800万人の人が旅行を含めて渡航しています。そうした時代になりました。そしてまた、わが国をとりまく安全保障の環境というものは極めて厳しい状況になっていることも事実だと思います。そういうなかにあって、どこの国といえども一国だけで平和を守れる時代ではなくなってきたという、まずここが大きな変化だと思います。(中略)やはり日米同盟、ここを強化することによって、抑止力が高まりますから、それによってわが国が実際この武力行使をせざるをえなくなる状況は大幅に減少するだろうと、そういう考え方のもとに今回、新要件の三原則というものを打ち立てたわけであります。

国谷:憲法の解釈を変えるということは、ある意味では、日本の国のあり方を変えることにもつながるような変更だと思いますが、外的な要因が変わった、国際的な状況が変わったということだけで本当に変更していいのだろうかという声もあります。
官房長官:これはですね、逆に42年間、そのままで本当によかったかどうかです。(中略)従来の政府見解の基本的論理の枠内で、今回、新たにわが国と密接な関係がある他国に武力攻撃が発生して、わが国の存立そのものが脅かされ、国民の生命、自由、幸福の追求の権利が根底から覆される明白な危険という、そういうことを形に入れて、今回、閣議決定したということです。

国谷:その密接な国とはどういう国なのか、当然、同盟国であるアメリカというのは想像できるのですが、あらかじめ決めておくのか、それともその時々の政権が決めるのでしょうか。
官房長官:そこについては、同盟国でありますからアメリカは当然であります。そのほかのことについて、そこは時々の政府の判断、これは状況によって判断していくということになってくると思います。

国谷:本当に歯止めがかけられるのか、多くの人達が心配していると思いますが、非常に密接な関係のある他国が強力に支援要請をしてきた場合、これまでは憲法9条で認められないということが大きな歯止めになっていましたが、果たして断りきれるのでしょうか。
官房長官:これは新要件の中に、わが国の存立を全うすると、国民の自由などですね、そこがありますから、そこは従来と変わらないと思っています。

国谷:断りきれると・・・・
官房長官:もちろん。

国谷:もう一つの心配は、アメリカと一体にならないよう非戦闘地域での活動に限るなどして、日本独自の活動を行って、一種の存在感を得られてきましたが、今回そうしたプレゼンスを失う恐れはありませんか。
官房長官:それはまったくないと思います。申し上げたように、日本と関係ある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされて、そして国民の生命、そして自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険ということで、しっかり歯止めをかけていますから、これは問題ないと思っています。

国谷:ただ、集団的自衛権の行使が、密接な関係のある他国のために行使した場合、第三国を攻撃することになって、第三国から見れば日本から先制攻撃を受けたということになるかと思いますが。戦争というものは、自国の論理だけでは説明しきれない、どんな展開になるかわからない危険を持っています。
官房長官:こちらから攻撃することはありえないです。

国谷:しかし、そこは集団的自衛権を行使しているなかで、防護の・・・・。
官房長官:ですからそこは最小限度という、ここに三原則というしっかりした歯止めがありますから、そこは当たらないと思います。

 (14)そして、放送が終わりに近づき、記者の質問に対して官房長官が、法案の国会審議のなかで国民に間違いなく理解していただけると思う、と答え、ほとんど時間がなくなった時、国谷はふたたび問いを発していた。

国谷:しかし、そもそも解釈を変更したということに対する原則の部分での違和感や不安はどうやって払拭していくのか。

 残り時間が30秒を切り、あらたな問いを発すること自体無理な状況であり、この問いに対し、官房長官が「42年間たって世の中が変わり、一国で平和を守る時代ではない」と語り始めたとき、放送は終わってしまった。
 生放送における時間キープも当然キャスターの仕事であり、国谷のミスだった。しかし、なぜあえて問いを発してしまったのだろうか。もっともっと聞いてほしいというテレビの向こう側の声を感じてしまったのだろうか。

 (15)日本では、政治家、企業経営者など説明責任のある人たちに対してでさえ、インタビューでは深追いしない、相手があまり話したがらないことは、しつこく追求しないのが礼儀といった雰囲気がまだ残っている。インタビュアー自身がそう思っているのか、視聴者や読者の反発を意識してのことなのか、両方の要素があるのかもしれない。
 批判的な内容を挙げてのインタビューは、その批判そのものが聞き手自身の意見だとみなされてしまい、番組は公平性を欠いているとの指摘がたびたびある。
 しかし、聞くべきことはきちんと角度を変えて繰り返し聞く、とりわけ批判的な側面からインタビューをし、そのことによって事実を浮かび上がらせる、それがフェアなインタビューではないか。

 (16)「クローズアップ現代」では、日本にとってとりわけ重要な国、米国、韓国、中国の要職にある人物には積極的にインタビューしてきた。駐日米大使もそうで、国谷は4人の就任直後の新米大使へのインタビューを行っている。
 2013年11月に就任した初の女性大使(キャロライン・ケネディ)へのインタビューは翌年3月になったが、その間、12月の安倍首相の①靖国神社の参拝、②歴史認識をめぐって、日韓関係の冷え込みが日米関係に影を落とし始めていた。
 在日米大使館は、
   ①に対し、失望とのコメントを出していた。
   ②に対しても、NHKの会長や経営委員の発言に対して米国側から批判の声が出ていた。
 大使へのインタビューは、そういう難しいタイミングで行うことになった。インタビューをフェアなスタンスで貫くことができるか、放送の場がNHKの番組であったがゆえに、これまで以上に問われている状況だった。
 <日本とアメリカの関係は、安倍政権の一員、それにNHKの経営委員や会長の発言によって影響を受けていると言わざるを得ません>
 このように国谷はケネディ大使への質問の中でNHKのことに触れた。番組の信頼のためにも、この言葉を避けて通るわけにはいかなかった。

 (17)1988年、国谷は大統領選を米国で取材中、ホワイトハウスでいつも大統領に手厳しい質問をするサム・ドナルドソンに、なぜ、あなたは大統領に厳しい質問ばかりをするのかと聞いたことがある。
 <国谷さん、小さな田舎町でアップルパイコンテストがあり、そのコンテストの優勝者が隣に住む素敵なおばあちゃんだったとしましょう。僕はそのおばあちゃんに、優勝おめでとう、でもおばあちゃん、そのアップルパイに添加物は使わなかったかい、と聞きますよ>
 ドナルドソン記者は、そう答えた。どんな場であっても、相手がどんな人であっても、聞くべきことをきちんと問う。インタビューの基本だ。しかし、日本だったら、果たして、こう聞くことができるだろうか。
 歴史の証言者になりうる人びとから徹底的に話を聞き、それを記録として残している御厨貴・政治学者は、質問文化が日米では違っていて、米国型の攻撃的インタビューは日本ではまだそぐわない、と以前書いていた。
 しかし、情報が国境を越えて行き交い、ジャーナリズムの発信元が国内だけにとどまらなくなっている現在、聞くべきことは聞くという意味において、文化の違いを乗り越える時が来ているのではないか。

 (18)国内外で時代のうねりが大きくなり、生き方も価値観も多様になる中で、報道番組におけるインタビューの役割とは何か。
 直接情報を発信する手軽な手段を誰しもが手に入れ、ややもすればジャーナリズムというものを「余計なフィルター」と見なそうとする動きさえ出てきている。
 しかし、アップルパイを作ったおばあちゃんにあえて「添加物を使ってないか」と尋ねる(ジャーナリズムとしての)インタビューの機能が失われてもいいのだろうか。
 社会が複雑化し、何が起きているのか見えにくくなるなか、人びとの情報へのリテラシーを高めるためにも、権力を持ち、多くの人びとの生活に影響を及ぼすような決断をする人物を多角的にチェックする必要性はむしろ高まっている。

 (19)23年間にわたる「クローズアップ現代」のキャスターとしての仕事の核は、問いを出し続けることであった。それはインタビューの相手にだけでなく、視聴者への問いかけであり、絶えず自らへの問いかけでもあった。
 言葉による伝達ではなく、言葉による問いかけ。
 これが、キャスターとは何をする仕事なのか、という問いに対する国谷の答えかもしれない。

□国谷裕子(キャスター)「インタビューという仕事 「クローズアップ現代」の23年」(「世界」2016年5月号)
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 【参考】
【メディア】テッド・コペルと言葉の力 ~インタビューという仕事(2)~
【メディア】インタビューという仕事 ~「クローズアップ現代」の23年~
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【メディア】テッド・コペルと言葉の力 ~インタビューという仕事(2)~

2016年05月07日 | 社会
 (承前)

 (6)風向きがメディアによって広められているうちに、その風が強くなり、誰も逆らえなくなるほどになると、「みんながそう言っている」ということになってしまう。その中で、少数派、異質なものの排除が進んでいく。
 これが、井上ひさし・劇作家のいわゆる「風向きの原則」だ。
 最近、そうした同調圧力がますます強くなってきている。流れに逆らうことなく多数に同調しなさい、同調するのが当たり前だ、といった圧力。そのなかで、メディアまでが、その圧力に加担するようになってはいないか。

 (7)もともとテレビは、世の中の空気を読むため、知るための手っ取り早いメディアとして機能してきた。
 しかし、テレビは世の中の動向を知りたい視聴者の欲求を満足させ、その影響力の大きさゆえに、感情やものの見方を均一的にしてしまいがちだ。
 一方で、テレビの送り手側も多くの視聴者を獲得したいがために、視聴者の動向に敏感にならざるを得ない。
 この視聴者側と送り手側の相互作用はとても強力だ。感情の一体化を進めてしまうテレビ、それが進めば進むほど、こんどはその感情に寄り添おうとするテレビ。
 こうした流れが生まれやすいことを、メディアにかかわる人間は強く意識しなければならない。

 (8)『紋切型社会』【注4】で、社会を硬直させてしまう、固まらさせてしまう言葉が数多く取り上げられている。そのなかに
   「国益を損なう」
という言葉が出てくる。この言葉もとても強い同調力を持っている。本来ならば、どう具体的に損なうのかと問うべきときに、その問いさせ国益を損なうと言われてしまいそうで、問うこと自体をひるませる力を持っているのだ。
 テレビ報道の仕事を通じて国谷が感じてきたことに重なる想いを、さまざまな人びとが抱き始めている。

 【注4】武田砂鉄・編集者の著書。『紋切型社会--言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015)

 (9)米国がベトナム戦争に負けた1975年、国谷は米国で大学生活を始めた。
 ベトナム戦争は、テレビによって生々しく報道された初めての戦争だ。そのテレビが戦争終結の一翼を担った、とされている。加えて、国防総省、ペンタゴンがベトナム戦争を分析した秘密文書をニューヨーク・タイムズが掲載し、ワシントン・ポストもウォーターゲート事件をスクープ、ニクソン大統領を辞任に追い込んでいた。
 このようなメディアに対する信頼は厚く、この頃のジャーナリズムには意気揚々とした空気が満ち溢れていた。
 ペンタゴン秘密文書の掲載について司法省は、「国家の安全保障に関する問題だ」としてニューヨーク・タイムズに対して連載の差し止めを命じた。
 連邦最高裁はしかし、言論の自由を最優先し、政府には機密報告書の掲載を差し止めることはできない、とした。判決の中でブラック・連邦最高裁判事は、
 <自由かつ制限のない報道のみが政府の欺瞞を白日の下にさらすことができる>
と書いている。ジャーナリズムが健全に機能したことで、ようやくベトナム戦争に終止符を打てたという認識が社会全体に広がっていた。
 そうした米国の空気を肌で感じながら国谷は大学生活を送った。

 (10)1970年代、次第にテレビは衛星中継を通して世界中の人と生でつながることができるようになった。
 テッド・コペルがキャスターを務める米国ABC「ナイトライン」は、毎日その日のテーマの当事者や専門家などを結び、コペルによるインタビューを中心に構成されていた。相反する立場の人たちが画面を通して議論していた。国谷は、毎回当事者が生放送で語る言葉に聞き入っていた。
 短時間に複数のゲストに対して的確な質問を投げかけ、相手がはぐらかしたり、自分の言いたいことだけを答えると、実に巧みに割り込み、質問に真正面から答えるよう促す。
 誰に対してもコペルの距離感は均等で、出演者への質問がフェアな姿勢で貫かれていた。
 1988年6月9日の「ナイトライン」に出演したブッシュ副大統領(当時、次期大統領選挙の候補者の一人)が、厳しい質問をかわそうと政権が評価されてきた点に話をもっていこうとすると、コペルは、
 <評価されている点については選挙戦で話したり選挙コマーシャルで伝えられます。私がこの場で取り上げるのは政権が評価されてない点です>
と副大統領にむかってさらりと切り返した。

 (11)そのコペルに対して国谷は、2004年3月、イラク戦争1年のタイミングで混迷を深めるイラク情勢についてインタビューした。その時紹介した「ナイトライン」のなかで、コペルはブレマー長官【注5】へのインタビューをしている。米軍の撤退の見通しなどを聞いた後、コペルはイラク国民の声に耳を傾けないと批判されてきた長官に辛辣な質問をなげかけた。
 <あなたは壁の外で自分がなんと呼ばれているか知っていますか。アヤトラ・ブレマー、自分の教義をふりかざすイスラム教の聖職者のようだと言われています。外で何が起きているのかあなたは見ようとしません。失望し、怒る大勢の人が答えをもとめてきているのに。王様気分はいかがですか。いいですか、悪いですか?>
 ブレマー長官は、この問いに対して「私は大統領の要請によりここで職務を遂行しているだけ。とても疲れます」と答えるのが精一杯だった。
 国谷は、コペルへのインタビューの最後で、イラク戦争の教訓は何かと尋ねた。
 多くの戦争報道に携わってきたコペルはこう答えた。
 <それはどの戦争からも得られる教訓です。どのような軍事計画も、最初の弾丸が放たれるまでの命です。予期していたことと違うことが常に起きます。そしてある行動を起こすと次の行動を起こさざるを得なくなっていくのです>
 コペルの「ナイトライン」は視聴者に信頼され、2005年11月まで25年間続いた。
 「ナイトライン」に出演することはコペルという精密な秤に載せられることを意味した。当事者が「ナイトライン」への出演を避ければ、視聴者に説明できない何か都合の悪いことがあるにちがいない、とまで思わせる存在感のある番組だった。
 テレビの持つ力、とりわけ映像の力が人びとの気持を大きく動かすようになっていった時代。ハルバースタムが「テレビが伝える真実は映像であって言葉ではない」と講演で指摘した状況が生まれつつあったなか、テッド・コペルはインタビューという言葉の力で真実を浮かび上がらせようとしていた。
 国谷は、インタビューの持つ言葉の力を学んだ。

 【注5】フセイン政権を倒した後の米国を中心とするCPA(暫定行政当局)のトップで、当時高い壁で守られたバグダッドにある元大統領宮殿にいた。

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□国谷裕子(キャスター)「インタビューという仕事 「クローズアップ現代」の23年」(「世界」2016年5月号)

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【メディア】インタビューという仕事 ~「クローズアップ現代」の23年~

2016年05月06日 | 社会
 (1)1993年4月、ハルバースタム【注1】がNHK放送文化研究所で講演し、テレビ報道について警告を発した。
 <テレビが伝える真実は、映像であって言葉ではない。テレビが伝える内容は単純で、複雑なことは伝えない。苦痛や飢餓を映し出して世界中に伝えることはできるが、複雑な政治問題や思想、さまざまな行為の重要性について伝えることはできない>
 彼は最後に、テレビに携わる人へ向けてこう投げかけた。
 <テレビによってより深く国際社会を理解できるようになるのでしょうか。複雑な出来事の説明はされているでしょうか。テレビによって私たちは世界をより深く理解するというよりも、恐怖心をあおられるのでしょうか>

 【注1】デイビッド・ハルバースタム。ベトナム戦争報道で著名な米国のジャーナリスト。

 (2)ハルバースタムの警告と同じ今から23年前の4月、「クローズアップ現代」の放送が開始された。国谷裕子はキャスターとして、「想像力」、「常に全体から俯瞰する力」、「ものごとの背後に隠れている事実を洞察する力」、そういった力を持つことの大切さを感じながら日々仕事をしていた。
  (a)テレビは映像の持つ力をフルに生かし、起きていること即時に伝えることができるという点で他のメディアを圧倒的に凌駕してきた(テレビの特性)。
  (b)しかし、その特性に頼れば頼るほど、人びとのコミュニケーション力の重要な要素である想像力を奪ってしまう、という負の特性も持っている(テレビの負の特性)。
  (c)だから、こそ、「クローズアップ現代」はテレビの特性とは裏腹の「言葉の持つ力」を大事にしたいと国谷は考えてきた(テレビの負の特性の補償)。

 (3)映像の存在感が高まれば高まるほど、その映像がいかなる意味を持つのか、その映像の背景に何があるのかを語る「言葉の持つ力」はますますその役割が重要になってくる。
 ハルバースタムがテレビには不可能だとした複雑な事象にも、国谷は挑戦した。 
 是枝裕和【注2】はテレビについてこう書いている。
 <わかりにくいことを、わかりやすくするのではなく、わかりやすいと思われていることの背景に潜むわかりにくさを描くことの先に知は芽生える>
 これこそ、「クローズアップ現代」が実践してこようとしてきたことだ。物事を「わかりやすく」伝えるだけでなく、一見「わかりやすい」ことの裏側にある難しさ、課題の大きさを明らかにして視聴者に提示することこそ番組の役割だ。
 そうした「言葉へのこだわり」の表れの一つがインタビューだった。
 「クローズアップ現代」は毎回スタジオにゲストを招いていたし、人物そのものをテーマとしてインタビューを軸に番組が構成されることもあり、人に話を聞くことがキャスターの中心的な役割だった。
 インタビューを軸にした番組を繰り返すうちに、日本の社会に特有の、インタビューの難しさ、インタビューに対する「風圧」を国谷はたびたび経験するに至った。

 【注2】映画監督、テレビドキュメンタリー作家。

 (4)人気の高い人物に対して切り込んだインタビューを行うと視聴者から強い反発が寄せられる・・・・これが、国谷が最初に出会った「風圧」だ。
 1997年7月、同年4月にペルーの日本大使館人質事件を解決、多くの日本人を救出したフジモリ大統領が来日し、日本中に歓迎ムードが広がるなか、大統領をスタジオに招き、インタビューを行った。
 救出にいたる大統領の決断を中心に進んだが、インタビューの間に挿入されるVTRリポートの3本目は、ペルーが抱える貧困の拡大などの課題、そして大統領の強権的手法への批判の高まりについてだった。リポートを受けたやり取りは当然このことがテーマになり、残り時間が2分ほどになったとき、国谷は大統領に質問した。
 「憲法改正による大統領権限の強化や任期延長に疑問を呈した最高裁判事を解任するなど、大統領の手法が独裁的になってきたという声が出ているが」
 大統領は、そもそも独裁者は選挙で選ばれない存在であり、自分は選挙で選ばれていると話を始めたので、国谷は割って入り、
 「国民がそういうイメージを持っているとの話ですが」
などとやり取りするうちに大統領の話の途中で番組の終了時刻がきてしまった。
 この放送に対する視聴者からの抗議や週刊誌などでの批判はとても厳しいものだった。終わり方が唐突で大統領に対し失礼、との指摘は当然だったが、批判や抗議の多くは、日本人を救出した恩人に対してなんと失礼な質問をしたのか、という趣旨のものだった。 
 当時、人質を救出したフジモリ大統領に感謝したい、日本の恩人だ、という空気が広がっていた。そういう感情の一体感、高揚感のようなものがあるなか、大統領が独裁的になっているのでは、との質問は、その高揚感に水を差すものだった。
 しかし、フジモリ大統領の人物を浮き彫りにするためには、ペルー国民の批判について直接本人に質すことは必要なことだった。

 (5)インタビューで相手にとってネガティブな側面から迫っていくと、大なり小なり、批判や反発が寄せられることがその後も起きた。波風を立てる、水を差す、そういったことを嫌う、あるいは避ける日本の慣習とでもいったものが、インタビューの受け取られ方にも表れた。
 感情の一体感という「風圧」がフジモリ大統領のときと同じくらいに強かったインタビューは、2001年の「田中知事【注3】・県政改革の波紋」という放送だ。
 田中知事のあらゆる前例を壊して改革を進めるという姿勢は、当時、県民から圧倒的な支持を得て、全国的にも支持する声が高くなっていた。一方で、 県議会を中心に保守勢力の抵抗もあり、田中知事の動きはメディアで連日取り上げられていた。番組では、VTRリポートで知事の推し進める改革とその生み出している混乱ぶりを描いたあと、長野にいる田中知事に改革の真意についてインタビューした。
 改革の狙いや手法について納得のいく説明をもとめて国谷はかなり切り込む形で質問した。田中知事にとっては意外だったのか、途中からいつもの笑顔が消えた。
 「やり方がトップダウンで、決断のプロセスが見えにくいという声が出ていますが」
 「しかし、議会側にはこれまでの合意形成の方法が知事に無視されたとの気持ちがあります。そういった調整が知事はお嫌いなのですか」
 「今の民主主義はリハビリが必要と話していますが、どこが具体的におかしいですか」
 これは質問の一部だが、聞くべきことは聞いたとの思いが国谷にはあり、田中知事もこれまでの民主主義のあり方を変えるという自らの考え方を質問に即して明快に答えていたので、充実したインタビューができたのでは、と国谷はほっとしていた。
 しかし、その頃、番組への問い合わせや苦情を受け付けるNHKの窓口には、あの放送は何だという抗議が殺到していた。田中知事にあんな質問をするとは失礼だ、田中知事を攻撃するとは国谷は保守派の県議会の応援をするのか、など多くの電話が全国からかかってきていた。
 番組では、インタビューの後、政治学者とのやり取りで、国谷は改革を進める上でのスピードの必要性や知事に対する無党派層の期待の高さに触れていたが、そのことを含めた番組全体ではなく、批判は国谷の知事へのインタビューに集中していた。
 世の中の多くが支持している人に対して、寄り添う形ではなく批判の声を直接投げかけたり、重要な点を繰り返し問うと、こういった反応がしばしば起きる。
 しかし、(田中知事の改革を支持したいといった)「感情の共同体」があるなかでインタビューする場合、そういう一体感があるからこそ、あえてネガティブな方向からの質問をすべきだ。その質問にどう答えるのか、その答えから、その人がやろうとしていることを浮き彫りにできる。

 【注3】田中康夫。作家、長野県知事(当時)。

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【佐藤優】「日本でもテロが起きる可能性」一覧

2016年05月05日 | ●佐藤優
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~

□佐藤優『佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日』(時事通信出版局、2015)
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