語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  

2014年03月25日 | 社会
【経済】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 

 (1)大手建設会社の受注額が、2013年には前年度比で21%も増えた。
 東北復興需要の上に、安倍政権になってから、アベノミクスの第二の矢として、公共事業の壮大なバラマキが始まった。大義名分に「国土強靱化」やら「消費税対策」も加わり、昨年来、日本中が建設バブルに沸いている。

 (2)建設関連業界では実は、
  (a)人手不足による人件費の高騰
  (b)供給力不足と円安に伴う資材費の高騰
  (c)輸送能力の限界
などが加わり、工事の遅れや入札不調が続出している。「ぼろ儲け」と言われた建設業界でも、思わぬコストアップで
   「増収だが減益」
という企業も出てきた。
   保育園の建設が遅れて働く母親たちを直撃
などという「被害」も出ている。
 3・11から3年が経って、この事態が東北の復興の足を引っ張ってきたいることも、改めて指摘された。五輪特需が加われば、東北の状況はさらに深刻化するだろう。

 (3)しかし、安倍政権の公共事業偏重の政策は止まりそうもない。
 そこには安倍政権の大誤算がある。アベノミクス実施により、円安による輸出増やそれに伴う大規模な設備投資の復活で、消費増税までに景気の索引役が現れる・・・・と予想していたのだが、現実には、輸出量は増えず、設備投資も冴えない。
 一方、肝心の成長戦略も手つかずだ。
 当初のシナリオは完全に崩れ、今や公共事業のバラマキしか手がないのだ。

 (4)本来は、どうすべきなのか。
  (a)民間の対応を見ればわかる。
    「建設費高騰で出店抑制 イオン、2~3割減」【3月9日付け日経新聞1面の大見出し】
    民間企業は、適正な期間で投資回収が可能かどうかを精査したうえで投資する。建設コストが高騰すれば、当然、投資規模は縮小される。その結果、全体の需要が落ちて、バブルも終わり、建設コストも下がる。それを見て、企業の投資もまた増える・・・・という循環になるはずだ。
  (b)では、政府はどうか。
    官僚たちは、一度手にした公共事業の利権は絶対に手放さない。「工事発注抑制」という文字は彼らの辞書にはないのだ。彼らの答えは単純明快。単価のアップだ。同じ工事をはるかに高いコストで実施するのだ。むろん、財源は国債、将来の税金だ。

 (5)しかし、(4)-(b)はまったく本末転倒の考えだ。景気対策として公共事業を増やすのは、工事量を増やして景気を良くするのが目的だ。
 しかし、すでに建設業界の供給力を上回る工事量がある。2013年の受注量がピークで、2014年はこれを上回ることは困難だとも言われている。 
 つまり、これ以上公共事業の執行を増やそうとしても、価格を上げるだけだ。
 景気対策にならないばかりか、税金の無駄遣いになるだけだ。

 (6)さらに、重要な問題がある。
 今無理に増やしている公共事業には無駄なものが多い。お蔵入りとなっていた事業が、次々に復活している。その維持更新コストなどは、将来世代の重い負担となる。
 最も深刻なのは、民間の設備投資が建設コストのあおりで抑制され、将来の成長の芽を摘んでしまうことだ。
 官が民の成長を止めているのだ。

 (7)安部総理は、今国会を「好循環実現国会」と銘打った。
 現実には、アベノミクスは完全に公共事業中毒の悪循環経済に陥っている。
 政治の重要な機能の一つに、政策の優先順位決定機能がある。今こそ、それを正しく発揮すべきだ。東北復興事業を除いて、公共事業の発注を押さえればよい。
 その結果、東北の復興が加速し、しかも、民間投資の復活により将来の成長につながる。これこそ「好循環実現」の道筋だ。

□古賀茂明「「建設バブル」の本当の問題 ~官々愕々第102回~」(「週刊現代」2014年3月29日号)
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