語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝問題(3)~

2015年04月08日 | 社会
 あの前後、テレビ朝日の局内部でいったい何が起きていたのか。
 なぜ古館伊知郎・メインキャスターは古賀発言に顔色を変え、ムキになって反論したのか。

Q(記者):騒動に関する報道をどう見ていますか?
A(古賀茂明):「古賀茂明vs.古館伊知郎のバトル」というできの悪いストーリーが、週刊誌などにはあふれていますね。これは、安倍官邸からすれば最高の展開ですよ。「報ステの内紛だ」ということになれば、官邸は追求を免れますから。

Q:今回の件を「古賀が政治活動のために番組を利用した」「私怨を晴らすために放送テロを起こした」と言う人までいるようです。
A:私が月に1回報ステに出るかどうかなんて小さな話ですよ。問題の本質は、今、政治権力が容赦ない圧力と懐柔でマスコミ各社のトップを押さえ、その結果、現場の記者たちが戦うことを避けて自粛してしまっていること。こうした状況が続いて、いつしか圧力にさらされているのを自覚することさえできなくなった。その結果、マスコミが、国民にとって極めて重大であるはずの真実を報じられなくなっていると訴えたかったのです。
 そして、そのカギとなる人物が、官邸にいる政権幹部と、テレビ朝日・古舘プロジェクトのトップなんです。

Q:27日の放送で、古舘さんが遮ったために、1枚だけ映されなかったフリップがありましたが。
A:そのフリップには「かつて行政改革で政策金融機関のトップを民間出身者に替えたのに、安倍政権下では、また官僚OBが次々に天下りで返り咲いている」ということが書いてありました。
 視聴者が見たら、「そんなことが起きているのか」と驚きますね。「昔なら一面トップで報じたような事実を、なぜ今のマスコミは大きく報じないのか」という疑問も持つでしょう。それによって、日本のマスコミは大事なことを伝えていないんだな、と実感してもらいたかった。

Q:最後に出したフリップには、マハトマ・ガンジーの言葉が記されていましたが、その狙いは?
A:「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」というガンジーの言葉は、私の座右の銘です。お話ししたように、日本のマスコミは権力に対して何もせず、戦わないでいる。そのうちに、いつのまにか彼ら自身が権力によって変えられてしまっている。これに警鐘を鳴らそうとしたのです。

Q:番組のチーフプロデューサー(CP)と、コメンテーターの恵村順一郎・朝日新聞論説委員の交代について「更迭だ」と古賀さんが発言したら、古館さんは否定して、言い争いになりましたね。
A:正直言って、驚きましたね。古館さんを批判するつもりは全くなかったのに、私をいきなり攻撃してきたので、こちらも本当のことを言わざるを得ませんでした。古館さんが「圧力なんて受けていない、自分の力で立派な報道をしている」という趣旨のことを言ったので、「それはウソでしょう」と応じざるを得なくなったのです。
 報ステのVTRは、様々な圧力がある中で、非常によい内容に仕上がっています。視聴者は、報ステの報道を主導しているのは古館さんだと勘違いしていますが、実態はぜんぜん違います。

Q:具体的にはどういうことですか。
A:最初に言ったとおり、今回の件を古館vs.古賀という構図にするのは、官邸の思う壺。だから、私は避けたいんですよ。
 ただ、このままだと私がウソつきだと思われてしまうので、少しだけ話しましょう。
 古館さんは、今回の一連の人事について私に真剣に謝ってくれました。、
 古館さんは、自分の発言に影響力があると分かっている。周りから「CPや恵村さんが出演できなくなる」という声が聞こえてきたら、普通なら早河洋・会長や篠塚浩・報道局長に「人事の話を聞いたんですが、どうなっているんですか?」と聞くのが当たり前。しかし、自分はわざと知らないふりをしたと。みんなを一切守ろうとしなかった、そう告白してくれました。
 また、今回は自分が何か言ってひっくり返るものじゃないと思った、とも話していました。本当に申し訳ない、と。それほど古館さんも、人事に関する圧力を感じていたんでしょう。
 それなのに、27日の放送では「これは更迭じゃない」と言ったんです。ご自分の立場があるのは分かりますが、そう言われたら、こっちも全部反論せざるを得ませんよね。

Q:その発言にはかなり驚かれたでしょうね。
A:古館さんは、一昨年の3月には「この番組がなくなろうとも、原発のことをしっかり報道します」と明言していました。
 それが、昨年の夏ごろからガラリと態度が変わり、政権に批判的なVTRに対して文句をつけることが増えて、スタッフは不満の声を漏らすようになっていました。政権が怒りそうなVTRが流れると、逃げるようなコメントをすることも頻繁になりました。
 彼は、自分や古館プロダクションの地位を守りたいと考えたのでしょうね。正直に謝ってくれただけでもまだマシかなと思って、もう私は諦めました。でも、古館さんが権力に立ち向かわず、戦う相手として最後に選んだのが私だったというのは、何とも残念ですね。

Q:1月23日の報ステで古賀さんが「I am not Abe」と発言した直後、官房長官秘書官から番組スタッフにメールが届いたと聞いています。また、菅官房長官が複数の番記者に、古賀さんのこととは明言しないながらも、「頭にきた」「オレなら放送法違反だと言ってやったのに」などと発言したという内容のオフレコメモの存在も一部で報じられています。このメモは、古賀さんも持っていますか。
A:菅さんは、わざと複数社の記者に話しているんです。そういう時は、各社とも情報管理が緩くなるんですね。だから、そういうメモがいろんなルートで私のところに回って来るのは、菅さんだって百も承知のはずですよ。
 つまりそれは、テレビ局への脅しでもあり、私への脅しでもある。ならば私は、それに屈してはいけないということを示す必要がある。「I am not Abe」と書いたフリップをカメラの前でかざして見せたのは、そのためだったのです。

□記事「古賀茂明はなぜ怒ったのか 「腰抜け」古舘伊知郎に告ぐ!」(「週刊現代」2015年4月18日号)
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 【参考】
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~


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