語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~

2015年04月09日 | 社会
 (1)新聞であろうと、テレビであろうと、雑誌であろうと、ネットメディアであろうと、民主主義社会のメディアとジャーナリズムの最大の役割が「権力の監視」にあるのは言うまでもない。改めて強調するのは恥ずかしいほどの、イロハのイだ。
 しかし、メディアに対して極度に強圧的な現政権下、全国紙の過半は完全に牙を抜かれ・・・・というか、自ら嬉々として牙を抜いてしまい、政権の応援団に堕している。系列のテレビ局も大同小異で、政権の政策に正面から疑義を突きつける報道や番組は見られない。
 
 (2)他方、たとえ不十分でも一応はファイティング・ポーズをとっているメディアもある。それが少ないのが情けなくて、テレビの硬派なニュース番組では次の三つぐらいだった。
   テレ朝の「報ステ」
   TBSの「NEWS23」
   TBSの「報道特集」
 こうした番組には、陰に陽にプレッシャーがかかる。生出演した首相が、番組中に「おかしいじゃないですかっ」とブチ切れたのは「NEWS23」だった。直後に自民党は、選挙報道における「公正中立」を求める文書を在京キー局に送りつけた。

 (3)(2)の「公正中立」強要文書ほど露骨でなくとも、例えば身内であるはずの政治部記者が政権の意向を忖度して文句を言ってくることもあるし、政権ベッタリの文化人や出演者からさまざまな形で横やりが入ることもある。
 事なかれ主義の幹部がのさばり、現場に萎縮や自粛が広がることもある。
 こうしたケースのほうが多い。

 (4)(1)でいう「権力の監視」を実際に貫くのは容易なことではない。
 まして現政権は、NHKの幹部や経営委員会に自らの息のかかった人物を幾人も送り込むといったメディア介入・・・・過去の政権でも例を見ないほどのメディア介入を平然とやって恥じない。
 今回のテレ朝「報ステ」問題にしても、官房長官が「放送法」を持ち出し、一見やんわりと、しかしその実、露骨な圧力を加えた。

 (5)しんどい思いをしてまで「権力の監視」を続けるなんて止めたほうが賢い・・・・といった萎縮ムードがさらに広がる懸念がある。
 事実、多くのニュース番組は政権批判を避け、時にはヨイショし、大半は毒にも薬にもならない情報を垂れ流し、トラブルと無縁の「安全運転」に拘っている。
 他方、政権にファイティング・ポーズをとれば、さまざまな形のトラブルが降ってくる恐れが増える。
 権力から圧力を受けるのは、むしろ勲章であり、メディアが役割を果たしていることの証左なのだ・・・・が、しんどい思いまでしてババを引くのは嫌だ、と考える腰抜けマスコミ人が増えるのだ。
 結果として、ニヤニヤとほくそ笑むのは誰か。政権だ。

□青木理「ニュース番組よ、今こそ「権力への監視」を強めるべきだ ~ジャーナリストの目 第247回~」(「週刊現代」2015年4月18日号)
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 【参考】
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~


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