語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~

2014年03月16日 | 社会
 (1)集団自衛権の行使は、憲法解釈上認められない、とされている。
 が、「憲法解釈を変えて認めさせよう」と安部総理が声高に叫び始めた。
 戦後日本政府が一貫してとってきた解釈を変えて、憲法の内容をこれまでと正反対のものにしようとしているわけだが、それによって本当は何が起きるのか、実は国民にはよく理解できていない。

 (2)政府がおかしなことをやろうとする時は、まず、全体像を隠す。それが常道だ。
 大目的を達成するために必要な一連の政策をバラバラに提案することによって、国民の「想像力」を限定し、批判を矮小な問題に閉じ込めることができるのだ。

 (3)今回の「一連の政策」とは何か。
  (a)最初に出てきたのが、日本版NSC(国家安全保障会議)設置法だ。民主、維新、みんななどの野党が賛成した。議事録作成の議論も、ウヤムヤのまま終わっている。この時点では、野党も問題の核心を理解していなかった。
  (b)次に出された特定秘密保護法の議論でも、知る権利、報道の自由など議論は盛り上がったが、日本版NSC設置法や集団自衛権との関係はほとんど議論されないまま成立した。

 (4)しかし、実際には、日本版NSC設置法、特定秘密保護法には、一つの共通目的がある。そして、実際の安全保障政策の決定現場において、複合的にその力を発揮し、個別の議論では想定できない驚異的な効果を呼ぶ「恐怖の3点セット」となるのだ。しかし、その問題点は、「想像力」を発揮しないとわからない。
 <例>「イランが米国に先制攻撃をしようとした」と称して、米国がイランを先制攻撃する。「これは自衛戦争だから日本も参戦してほしい」とオバマ大統領が安部総理に電話する。直ちに、閣議ではなくて、日本版NSCが開催される。NSCは、たった4人の大臣だけで決められる。米国から提供される情報にはガセネタが多い(この世界の常識)が、米国からの情報は特定秘密になっていて、外部はおろか、内部の検証も十分にできない。
 ある大臣が反対しても、議事録が作成されないから、無視しても表には出ない。反対する大臣が他の大臣に働きかけて共同記者会見しようとすれば、特定秘密保護法で秘密漏洩・教唆犯になる。
 かくして、安部総理はやすやすと参戦を決めることができる。
 つまり、この「3点セット」には、無用な戦争に巻き込まれる、という「誤った判断」を助長するための制度になるのだ。

 (5)さらに想像力を働かせよう。
 イランは日本を攻撃していない。日本人に好意を持つイラン人も多い。そのイラン人を自衛隊が殺害するのだ。戦争だから、民間人、母親と子どもたちまで巻き込まれ、日本人が「殺す」ことになる。
 むろん、何百、何千という自衛隊員も殺される。自衛隊員といっても、日本人誰かの家族であり友人だ。中東の国を攻撃したことによって、いつテロに遭うのかと怯えて暮らさなければならなくなる。
 日本の強大なソフトパワーの基盤となっていた平和国家のイメージも根底から覆る。
 「殺し、殺される国になる」・・・・その覚悟が、日本人一人一人にあるのだろうか。

 (6)私が決めます、と安部総理は言い、閣議決定の前に国会で議論しろ、と野党が言う。
 「冗談ではない」と言いたい。
 これほど重大な決定を内閣や国会に任せるなど、論外だ。
 憲法改正手続きで、最後は国民投票で決めるべきであるのは、自明のことではないか。
 この先に、武器輸出、国防軍、徴兵制という3点セットが待っている。安部政権の掌に乗って、弄ばれる野党とマスコミが情けない。

□古賀茂明「「恐怖の3点セット」で、いざ戦争 ~官々愕々第101回~」(「週刊現代」2014年3月22日号)
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