(1)ある国、ある時、ある人々の会話。
「総理、もし、その情報が間違っていたらどうするんですか」
「米国のCIAの情報だから大丈夫だろう」
「でも、万が一、後で間違いだとわかったら、大変なことになりあすよ」
「大丈夫だよ。これは特定秘密だからね。当分は開示されない」
「でも、国会の情報監視審査会で審査されたら、とても持たないですよ」
「大丈夫。国の安全保障に著しい支障を及ぼすと言えば、提示を拒否できるじゃないか」
「審査会が特定秘密の解除を勧告してくるかもしれません」
「それも大丈夫。その時のために、勧告には従わなくても良い、ということにしてあるんだ」
(2)「情報監視審査会」とは何か。
特定秘密に関する政府の運用状況を監視する国会の常設機関で、衆参両院に設置されることになっている。
(3)2013年秋の臨時国会で特定秘密保護法が制定される際、大きな反対運動が展開され、国民の関心を集めた。
その1年後、2014年12月、同法が施行される時、衆議院選挙の真っ最中ということもあって、マスコミの取り扱いも反対運動も盛り上がりに欠けたままだった。
特定秘密保護法という法律それ自体にある問題点のほか、法施行に関する重大な欠陥があるのだが、あまり知られていない。
同法施行直後には、「情報監視審査会」が設置されていて、各議院の所属議員が審査会の委員なり、その監視活動を始めていなければならなかった。
ところが、衆参両院の「情報監視審査会」が初会合を開いたのは3月30日。・・・・「政府の恣意的な運用を防止するために、国会による監視が絶対に必要だ」とあれだけ大騒ぎしていたのに、4か月近くの間、どんどん指定されていた特定秘密が監視されないままだったのだ。
マスコミも、チェック機能が弱いのがこの法律の問題点だ、と一貫して批判していたのに、何故かおとなしかった。
(4)「情報監視審査会」は、国会が必要だと判断した特定秘密を国会に出せ、と要求できる。また、政府の運用が恣意的・不適切だと判断すれば、指定解除などを政府に勧告することもできる。
スウェーデンのオンブズマンのように行政に厳しい機関のように見える・・・・が、まったく違う。なぜなら、
(a)審査会の勧告に政府側が従う義務がない。
(b)政府は国の安全保障に著しい支障を及ぼす情報の提示を拒否できる。・・・・政府のほうが国会より強い力を持っている。
(c)監視審査会の構成メンバーは次のとおりだから、運営は与党ベースになる。
①衆議院側・・・・額賀福志郎・会長(自民党)、委員8人中与党が6人。
②参議院側・・・・金子原二郎・会長(自民党)、委員8人中与党が5人。
(5)審査会では、これから具体的な審査ルールづくりを始める、と言う。
どこまでも、「なくても全く困らない」と言っているようなのんびりした対応が続いている。
(6)今後、国家安全保障会議で(1)のようなやりとりが行われ、日本が中東で戦争を始める日が近いかもしれない。
しかも、国民には、それがまったく知らされないままで。
□古賀茂明「役立たずの「情報監視審査会」 ~官々愕々第150回~」(「週刊現代」2015年4月18日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~」
「【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~」
「【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~」
「【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~」
「【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~」
「【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~」
「【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~」
「【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~」
「【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~」
「【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~」
「【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~」
「【古賀茂明】報道自粛に抗する声明」
「【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き」
「【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~」
「【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局」
「【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている」
「【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~」
「【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す」
「【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~」
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
「総理、もし、その情報が間違っていたらどうするんですか」
「米国のCIAの情報だから大丈夫だろう」
「でも、万が一、後で間違いだとわかったら、大変なことになりあすよ」
「大丈夫だよ。これは特定秘密だからね。当分は開示されない」
「でも、国会の情報監視審査会で審査されたら、とても持たないですよ」
「大丈夫。国の安全保障に著しい支障を及ぼすと言えば、提示を拒否できるじゃないか」
「審査会が特定秘密の解除を勧告してくるかもしれません」
「それも大丈夫。その時のために、勧告には従わなくても良い、ということにしてあるんだ」
(2)「情報監視審査会」とは何か。
特定秘密に関する政府の運用状況を監視する国会の常設機関で、衆参両院に設置されることになっている。
(3)2013年秋の臨時国会で特定秘密保護法が制定される際、大きな反対運動が展開され、国民の関心を集めた。
その1年後、2014年12月、同法が施行される時、衆議院選挙の真っ最中ということもあって、マスコミの取り扱いも反対運動も盛り上がりに欠けたままだった。
特定秘密保護法という法律それ自体にある問題点のほか、法施行に関する重大な欠陥があるのだが、あまり知られていない。
同法施行直後には、「情報監視審査会」が設置されていて、各議院の所属議員が審査会の委員なり、その監視活動を始めていなければならなかった。
ところが、衆参両院の「情報監視審査会」が初会合を開いたのは3月30日。・・・・「政府の恣意的な運用を防止するために、国会による監視が絶対に必要だ」とあれだけ大騒ぎしていたのに、4か月近くの間、どんどん指定されていた特定秘密が監視されないままだったのだ。
マスコミも、チェック機能が弱いのがこの法律の問題点だ、と一貫して批判していたのに、何故かおとなしかった。
(4)「情報監視審査会」は、国会が必要だと判断した特定秘密を国会に出せ、と要求できる。また、政府の運用が恣意的・不適切だと判断すれば、指定解除などを政府に勧告することもできる。
スウェーデンのオンブズマンのように行政に厳しい機関のように見える・・・・が、まったく違う。なぜなら、
(a)審査会の勧告に政府側が従う義務がない。
(b)政府は国の安全保障に著しい支障を及ぼす情報の提示を拒否できる。・・・・政府のほうが国会より強い力を持っている。
(c)監視審査会の構成メンバーは次のとおりだから、運営は与党ベースになる。
①衆議院側・・・・額賀福志郎・会長(自民党)、委員8人中与党が6人。
②参議院側・・・・金子原二郎・会長(自民党)、委員8人中与党が5人。
(5)審査会では、これから具体的な審査ルールづくりを始める、と言う。
どこまでも、「なくても全く困らない」と言っているようなのんびりした対応が続いている。
(6)今後、国家安全保障会議で(1)のようなやりとりが行われ、日本が中東で戦争を始める日が近いかもしれない。
しかも、国民には、それがまったく知らされないままで。
□古賀茂明「役立たずの「情報監視審査会」 ~官々愕々第150回~」(「週刊現代」2015年4月18日号)
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【参考】
「【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~」
「【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~」
「【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~」
「【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~」
「【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~」
「【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~」
「【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~」
「【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~」
「【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~」
「【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~」
「【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~」
「【古賀茂明】報道自粛に抗する声明」
「【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き」
「【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~」
「【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局」
「【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている」
「【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~」
「【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す」
「【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~」
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
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「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
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「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」