語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~

2014年05月06日 | 社会
 (1)安部政権の「列強になるための10本の矢」。
 その輪郭がほぼ明らかになった。

 (2)政権奪取後、最初に話題に上がったのが「憲法改正」だ。参議院選挙への影響を考慮し、結局後回しにされた。
 しかし、自民党の憲法改正案にその意図が明確に示されている。ここには、2本の矢が込められている。
  【第1の矢】国防軍保持・・・・現行憲法では自衛隊は保持しなくてもよいが、自民党案では国防軍保持が憲法上の義務となる。しかも、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため」の軍隊である以上、中国に負けないくらいに強力でなければ「憲法違反!」ということになる。
  【第2の矢】基本的人権の制限・・・・個人の権利は「公益及び公の秩序」に反しない範囲でしか認めない、とすることで、戦争のために人権を製薬することを可能にする。戦争批判の言論を弾圧したり、戦時徴用にも使える規定だ。

 (3)昨秋以降、「矢継ぎ早」に3本目以降の矢が明らかになった。
  【第3の矢】日本版NSC法・・・・閣議でなく、わずか4人の閣僚で戦争開始の決定ができる。臨時国会で成立した。戦争に必須の手段だ。
  【第4の矢】特定秘密保護法・・・・戦争に至る過程の情報隠しを許し、マスコミの取材活動を制限する。臨時国会で成立した。戦争に必須の手段だ。
  【第5の矢】日本版CIAを創設する構想・・・・特定秘密保護法の国会のチェック機能の議論の中で出てきた。あまり報道されていないが、戦争に欠かせない。 
  【第6の矢】集団的自衛権の行使を容認・・・・海外で戦争するため、ウルトラC(憲法解釈の変更)によって容認するのも時間の問題だ。
  【第7の矢】武器輸出3原則の廃止・・・・【第6の矢】に先だって、既に実現した。
  【第8の矢】ODAの軍事利用・・・・容認が目前だ。【第7の矢】と同時に、日本の軍事産業が実は世界中で武器・武器技術の話を密かに進めてきたことが明るみに出た。

 (4)【第6の矢】、【第7の矢】、【第8の矢】によって、日本は「戦争できる国」ではなく、「戦争なしでは生きられない国」への道を歩む。残り2本も、議題にあがるのは目前だ。
  【第9の矢】徴兵制の導入・・・・強力な国防軍が憲法の要請だ、という理由で、若い兵力の確保が議題となる。少子化による人手不足の中では、徴兵制を採るしかない。
  【第10の矢】核武装・・・・原発と核燃料サイクルの維持にここまでこだわる理由は、核武装しかありえない。

 (5)驚くべし、矢はまだあるのだ。
  【第11の矢】産めよ増やせよ。
 4月下旬に出てきた。富国強兵時代の政策だ。列強となるための国力の基本は人口だけだ、ということか。1億人レベルを維持するために数値目標を立てる、という。「女性1人に付き2.07人子どもを産む」・・・・
 元々は、経済界が長期的な労働力確保のために考えた案だが、安部総理は別の思惑から飛びついた。
 しかし、【第11の矢】計画は、他の矢と違って頓挫するだろう。
 女性を「産む機械」と言って批判を浴びた大臣と同じ発想だからだ。数値目標なら、子育て予算GDPの○○%、1年で待機児童ゼロ、労働時間の2割短縮、有給休暇100%取得・・・・など、いくらでも設定できる。出生率向上はその結果でしかない。
 安部総理は、【第11の矢】によって、「女性にやさしい」という「衣」の下から、戦争のためなら何でも可という「鎧」を見せることになった。

□古賀茂明「戦争国家への「11本の矢」 ~官々愕々第107回~」(「週刊現代」2014年5月10.17日号)
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 【参考】
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【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
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