語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】勧告すべきはライオンのほかにも ~トクホ商品誇大広告~

2016年05月01日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)2016年3月1日、消費者庁は、ライオンの特定保健用食品(トクホ)「トマト酢生活トマト飲料」の広告が健康増進法に違反するとし、
   「健康増進法違反であることを一般消費者に周知徹底すること」
   「再発防止策を講ずること」
などを勧告した。
 同庁は、「その食品の摂取が健康の維持増進に役立つ、又は適する旨を表示することだけが許可されていて、トマト酢生活の場合『本品は食酢の主成分である酢酸を含んでおり、血圧が高めの方に適した食品です』が許可表示である>としている。
 ところが、実際には、
   「血圧を下げる効果がある」
   「薬物治療によることなく、本件商品を摂取するだけで高血圧を改善する効果がある」
と表示していたので違反だ、とした。

 (2)トクホ商品について勧告があったのは初めてだ。
 健康食品の誇大表示は、消費者委員会や食品安全委員会でも問題になっている。そうした中で、国の審査に合格したトクホに勧告を出したことは評価できる。
 しかし、今回のライオンのような表示はいくらでもある。

  (a)ライオン「トマト酢生活トマト飲料」
    ヒト試験結果のグラフとともに、
    <臨床試験で実証済み!これだけ違う、驚きの「血圧低下作用」>

  (b)サントリー「ゴマペプ茶」
    ヒト試験結果のグラフとともに、
    <血圧が高めの方が、ゴマペプ茶を飲み続けると4週間で血圧に変化が現れはじめました。そして、12週間で血圧の低下が確認されました!>

 (a)も(b)も、血圧を下げる効果があることを謳っている。(b)は、<ゴマペプチドは、血管を収縮させる血管収縮物質の生成を抑え、流れをスムーズにし、高めの血圧をおだやかに低下させるはたらきがあります>と、ゴマペプチドが血圧を下げる薬であるかのような表現もしている。
 (a)が違反で、(b)が違反にならない理由は定かではない。

  (a)’ライオン「トマト酢生活トマト飲料」
    <毎日、おいしく血圧対策>
    <“薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい”そんな方々をサポートしようとライオンが開発した「トマト酢生活」>

  (b)’サントリー「ゴマペプ茶」
    <血圧対策をしながら毎日飲めるおいしいお茶に仕上がったと思います>
    <トクホのおいしいお茶で、毎日、手軽に、血圧対策!>

 (a)’も(b)’も、 「血圧対策」と謳っているが、(a)’には「薬に頼らずに」という言葉が入っている。「薬に頼らない」という言葉を使わなければ違反にならないのか。「手軽に、血圧対策」という表現も、「薬に頼るような面倒なことをしなくても血圧を下げることができる」という意味にならないか。
 消費者庁は、ライオンのトマト酢生活は、「誤認を生じさせる恐れがあり、高血圧の改善に関し誤った情報発信をする可能性がある」と言うが、サントリーのゴマペプ茶とどういう違いがあるのか。「薬に頼らずに」という言葉さえなければ、違反にはならないと言うのか。

 (3)消費者庁は、ライオンを摘発することで、健康食品業界に自粛を求めているのかもしれないが、逆に、
   「薬に頼らずに」という表現させしなければ違反にならない
と受け止められて、さらに表示がエスカレートする危険もある。
 他の食品ももっと摘発すべきだ。

□垣屋達哉「ライオンのトクホ商品誇大広告に勧告。問題なのはライオンだけ?」(「週刊金曜日」2016年4月15日号)
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