2013年10月、APEC首脳会議で安倍晋三・総理は大見得を切った。
<改革は、待ったなし。岩盤のように固まった規制を打ち破るには、強力なドリルと強い刃が必要だ。自分はその「ドリルの刃」になる>
今年もこの文句を繰り返しているが、その後の安部は
国家安全保障(日本版NSC)法、
特定秘密保護法、
武器輸出解禁、
集団的自衛権行使容認の解釈改憲
などにまっしぐら。肝心の規制改革は、単なるパフォーマンスに終始している。
その典型が、医薬品のインターネット販売だ。
アベノミクスの第三の矢、成長戦略(2013年6月発表)は、規制改革の中身がないと烙印を押され、大失態(総理の記者会見中から株価大暴落)となった。そのときの目玉が医薬品ネット販売の「全面解禁」だった。
しかし、現実は「全面解禁」からほど遠い。
医薬品には、2種類ある。
(a)処方箋薬・・・・医師が処方しないと薬局の店頭で買えない。
(b)一般医薬品・・・・処方箋がなくても普通に買える。
このうち、(a)から(b)に転換して間もない医薬品など28品目について、ネット販売を認めるかどうかに焦点が当たってた。結局、「まだリスクが高い」という理由で、ネット販売は禁止になった。
とはいえ、28品目は、(b)のうちたったの0.2%にすぎない。それ以外の(b)は解禁されたから、ほぼ「全面解禁」に見えるかもしれないが、それは大間違いだ。
28品目だけがネット販売禁止で、外は自由だといえば、(a)のほとんどがネットで買える、と思ってしまう。ところが、これも禁止なのだ。
(a)がネットで買えれば体調不良、身体不自由、多忙な人は助かるし、諸外国では当たり前だ。
しかし、安倍政権は、「元々リスクが高いとされている(a)から(b)に分類替えした直後の医薬品など28品目のネット取引を禁止したのだから、(a)はなおさら禁止すべきだ」という理屈でネット販売を禁止した。
(a)の巨大市場は6兆円。大衆薬の10倍だ。つまり、岩盤規制の本丸はびくともせずに残されてしまった。
さらに、前記28品目については、ネット販売だけでなく「店頭で」あっても、家族などが本人に代わって買うことが禁止になった。
その理由が驚きだ。
そもそもネット販売を禁止する最大の根拠は、「薬剤師が患者の状況を直接見ながら判断することが大事」というものだった。
しかし、解禁論者は、「家族が代わりに買う場合もあるではないか」と反論した。
当然の反論に追いつめられた薬局側は、「だったら、本人以外には売らないことにしよう」と言い出した。
その結果、28品目は、家族が代わりに買うことが、新たに禁止されてしまった。
実は、いま不動産のネット取引に係る議論が行われている。
その議論では、医薬品とまったく同じように、政官財一体で屁理屈をこねまわす議論が展開され、規制温存の動きが強まっている。
やはり、第三の矢は無理らしい。岩盤規制はいつまでたっても残り続けるらしい。
□古賀茂明「医薬品ネット販売解禁の大嘘 ~官々愕々第118回~」(「週刊現代」2014年8月9日)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
<改革は、待ったなし。岩盤のように固まった規制を打ち破るには、強力なドリルと強い刃が必要だ。自分はその「ドリルの刃」になる>
今年もこの文句を繰り返しているが、その後の安部は
国家安全保障(日本版NSC)法、
特定秘密保護法、
武器輸出解禁、
集団的自衛権行使容認の解釈改憲
などにまっしぐら。肝心の規制改革は、単なるパフォーマンスに終始している。
その典型が、医薬品のインターネット販売だ。
アベノミクスの第三の矢、成長戦略(2013年6月発表)は、規制改革の中身がないと烙印を押され、大失態(総理の記者会見中から株価大暴落)となった。そのときの目玉が医薬品ネット販売の「全面解禁」だった。
しかし、現実は「全面解禁」からほど遠い。
医薬品には、2種類ある。
(a)処方箋薬・・・・医師が処方しないと薬局の店頭で買えない。
(b)一般医薬品・・・・処方箋がなくても普通に買える。
このうち、(a)から(b)に転換して間もない医薬品など28品目について、ネット販売を認めるかどうかに焦点が当たってた。結局、「まだリスクが高い」という理由で、ネット販売は禁止になった。
とはいえ、28品目は、(b)のうちたったの0.2%にすぎない。それ以外の(b)は解禁されたから、ほぼ「全面解禁」に見えるかもしれないが、それは大間違いだ。
28品目だけがネット販売禁止で、外は自由だといえば、(a)のほとんどがネットで買える、と思ってしまう。ところが、これも禁止なのだ。
(a)がネットで買えれば体調不良、身体不自由、多忙な人は助かるし、諸外国では当たり前だ。
しかし、安倍政権は、「元々リスクが高いとされている(a)から(b)に分類替えした直後の医薬品など28品目のネット取引を禁止したのだから、(a)はなおさら禁止すべきだ」という理屈でネット販売を禁止した。
(a)の巨大市場は6兆円。大衆薬の10倍だ。つまり、岩盤規制の本丸はびくともせずに残されてしまった。
さらに、前記28品目については、ネット販売だけでなく「店頭で」あっても、家族などが本人に代わって買うことが禁止になった。
その理由が驚きだ。
そもそもネット販売を禁止する最大の根拠は、「薬剤師が患者の状況を直接見ながら判断することが大事」というものだった。
しかし、解禁論者は、「家族が代わりに買う場合もあるではないか」と反論した。
当然の反論に追いつめられた薬局側は、「だったら、本人以外には売らないことにしよう」と言い出した。
その結果、28品目は、家族が代わりに買うことが、新たに禁止されてしまった。
実は、いま不動産のネット取引に係る議論が行われている。
その議論では、医薬品とまったく同じように、政官財一体で屁理屈をこねまわす議論が展開され、規制温存の動きが強まっている。
やはり、第三の矢は無理らしい。岩盤規制はいつまでたっても残り続けるらしい。
□古賀茂明「医薬品ネット販売解禁の大嘘 ~官々愕々第118回~」(「週刊現代」2014年8月9日)
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【参考】
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」