語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~

2014年03月07日 | 社会
 (1)第一の矢、大胆な金融緩和で実現した円安により、輸出が増える・・・・という計算は、工場が海外移転してしまった、といった理由により、それほど輸出が増えない。

 (2)第二の矢、機動的な財政出動=公共事業のバラマキは、すぐに、人手、資機材、ダンプなどの不足がコストアップとなって、大幅増益どころか、減益の企業も増えている。これ以上予算を増やしても、工事の消化はおぼつかない限界状況だ。
 さらに、安部総理が再三強調した賃上げも、ほとんど進まない。所得がやっと下げ止まるかどうかという状況では、消費増税による生活への大打撃は必至。消費には、かなりのマイナス要因になるだろう。

 (3)だが、安倍政権は、なぜか根拠のない楽観的期待を持っているらしい。
 深刻な危機感はなくて、アベノミクスの第三の矢、成長戦略がまったく出てこない。

 (4)かかる状況は、国民から見れば深刻な事態だ。
 ところが、他方で、これを奇貨として、着々と焼け太る官僚と族議員がいる。
 官僚どもは、今の深刻な状況を逆手にとって、「成長戦略」、「景気対策」の美名の下に、自分たちの利権をせっせと拡大している。安倍政権は、「タマ不足」だから、官僚の振り付け通り、無駄なプロジェクトに予算をどんどん付ける。
 その最たるものが、官民ファンドだ。

 (5)昨年は、官民ファンドがぞろぞろと創設された。農業関連、クールジャパン、耐震化改修の推進、新たな価値の創造、大学発ベンチャーの支援など、何でもありだった。
 官民ファンドというと、何か特殊なことをやるように聞こえる。しかし、単に普通の投資に税金を入れる、というだけのことだ。
 官民ファンドの必要性として挙げられるのが、「民間だけではできないから官がやる」という理屈だ。
 官僚にそんな能力があるのか、という批判には、「民間から優秀な専門家を連れてくる」と反論する。
 しかし、どこかおかしい。
 普通のファンドなら、ファンドの経営者は自分の資金も投資する。だから、儲かりそうもない事業には手を出さない。
 しかし、同じ人でも、官民ファンドに雇われたら身銭を切らなくてよい。すると、民間ではできなかった事業に投資できる、という。自分の金なら絶対に投資しないのに、国民の税金だから投資できる、ということだ。
 こんなに危ない話はない。
 これらのファンドには、必ず天下りや現役出向の形で、官僚のためのポストもできる。彼らにとっては最高のしくみだ。

 (6)こんなことを止めさせるのが政治家の役割だ。しかし、こちらは、「国土強靱化」「防災・減災」のかけ声の下に、地元への利益誘導に忙しい。
 本州との間に3つの橋をかけた四国。
 その借金を全国の高速道路料金で肩代わりすることになった。「海峡横断道路」と銘打って、長大な橋やトンネルを作る計画が動き出す。正気の沙汰ではない。

 (7)さらには、武器輸出三原則変更さえも利権を生む。
 三原則を有名無実化して武器の輸出を認めるのだが、その個別判断は、経産官僚が担う、という。巨大利権の誕生だ。
 東電福島第一原発の事故処理も、無限に税金と電力料金を投入することが決まった。これが新たな公共事業となって、経産省が完全に仕切る。数十兆円の利権を手にしたわけだ。
 原発推進の方針も決まって、既存の利権を死守した。
 経産省は、「笑いが止まらない」。
 国民は、「涙が止まらない」。
 この事態を、どれだけの人が気づいているだろうか。

□古賀茂明「アベノミクスの限界 ~官々愕々第100回~」(「週刊現代」2014年3月15日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【佐藤優】ウクライナにおけ... | トップ | 【地方分権】ポスト成長期は... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
古賀さん (nn)
2014-03-07 13:12:23
古賀さんの論説はいつもわかりやすく、しかもマスコミが報道しない内容を伝えてくれますね。転載していただきましてありがとうございます。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

社会」カテゴリの最新記事