語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~

2015年07月15日 | 社会
 (1)衆議院における安保法案の採決が秒読み段階に入った。採決の日程に関して、与野党の対立が激しさを増している。7月13日、与党側は15日に委員会で採決する方針を固めた。これに対し、民主党などは、15日の採決には応じられないと強く反発し、民主党と共産党は14日の委員会には欠席した。(7月14日現在)。【注1】

 (2)日程とともに与党が必死になっているのは、採決への野党の出席確保だ。反対してもよいから席に着いてくれ、というのだ。
 その理由は何か。
 来年選挙を控えた参議院議員は、世論の動向に敏感だ。与党議員でさえ風向きを読んで、来年の選挙のためには反対に回ったほうが得策だ、という誘惑に駆られても不思議ではない。
 そこで、安倍政権としては、「強行」採決の色彩を少しでも弱めるために、採決への野党の「出席」を重視しているのだ。

 (3)最近、安倍政権に不都合な事象が次々に現れている。
  (a)毎日新聞の調査で、内閣発足以来初めて内閣不支持が支持を上回った。支持率低下が顕著なのだ。安保法案の今国会成立に対する反対もどんどん増加し、反対が7~8割に昇っている。
  (b)自民党議員の報道弾圧が、支持率低下に拍車をかけた。
  (c)世論の変化を察知した週刊誌も、記事のトーンを安倍批判へと転換し始めた。
  (d)最大の変化は、若者の間に反自民の風潮が急速に高まっていることだ。安部総理は、ネトウヨ(ネット右翼)に支えられ、若者に人気があると思い込んでいたからこそ、選挙権年齢を18歳に引き下げた。が、これが裏目に出かねない情勢だ。

 (4)(3)-(d)は、とりわけ学生の団体「SEALDs」の運動が注目される。【注2】
 SEALDsは、特定の政治思想を持つ団体ではない。ごく普通のまじめな学生たちだ。特定秘密保護法をきっかけに、日本の将来の危機から、自分たちが最も影響を受けるのだ、という皮膚感覚で若者たちに訴えている。
 ソーシャルネットワーク(ツイッターやフェイスブックなど)を駆使して急速に拡大を続けている。
 その運動のスタイルはおしゃれで、プラカードもキャンペーンに使う言葉も、既成の反政府運動とはまったく異なる。反安倍をファッションにまで昇華させている。今や、「自民感じ悪いよね」という言葉がツイッター上で爆発的に拡大しているほどだ。
 見逃せないのは、純粋な若者の運動に大人たちが自然に合流を始めていることだ。(大人の運動は、各団体の主導権争いもあって、大同団結できない。)
 ハチ公前では、広場を埋め尽くす群衆の前で、何と、共産党と維新の議員が握手するシーンまで出現した。
 毎週金曜日には、土砂降りの雨でも国会前に3,000人が集まる。

 (5)1960年安保では、国会を30万人のデモ隊が包囲し、ついには岸政権が倒れた。
 今回は、おそらく、数万人規模でも、選挙を控えた政党や議員の心は揺れるだろう。
 危機感を強めた安部総理は、テレビに出たい、と言い出した。まずは自民党の番組に出演し、YouTubeでもネット放送されたが、反響は今までと違って芳しくなかった。【注3】
 SEALDsのような若者たちの運動が、日本の危機を回避する最後の切り札になるのではないか。

 【注1】記事「安保関連法案 採決前日に、身内の石破大臣から「待った」」(フジテレビ系(FNN) 2015年7月14日18時23分配信)
 【注2】志葉玲(フリージャーナリスト)「安倍政権を揺るがす!?学生団体SEALDsが今週3日間連続で安保法制強行採決反対の国会前抗議」(YAHOOニュース 2015年7月14日)
 【注3】記事「たとえ話で伝わる? 安保法案、首相がネット番組で説明」(朝日新聞デジタル 2015年7月12日)

□古賀茂明「「反安倍」の起爆剤 ~官々愕々第163回~」(「週刊現代」2015年7月25日・8月1日合併号)
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