語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~

2015年04月01日 | 社会
 (1)古賀茂明氏は27日のテレビ朝日の「報道ステーション」に出演中、古舘伊知郎キャスターから中東情勢への意見を求められた際に話題を変え、早河会長らの意向で降板に至った、と発言。続けて「菅(義偉)官房長官をはじめ官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきました」と述べた【注1】。

 (2)テレビ朝日は31日、年度末の定例社長会見に出席した早河洋会長が「皆さまにおわびをしたい」と陳謝した。
 会見で早河会長は、政治家からの圧力については、「一切ありません」と述べ、古賀氏が「バッシングを受けてきた」と話したことについては、「具体的な中身について聞いていない」とした【注2】。

 (3)番組のコメンテーターに求められるのはどんな役割なのか。
 最近、在京の民放番組で「強い意見を言う人」が求められていない。長くコメンテーターを務め、選挙期間をのぞき、局側から発言の規制はないが、「左派」に限らず「右派」と言われる人も出番が減った。異なる主張をぶつけあう討論番組自体もここ10年で尻すぼみになっている。局側の体力不足がある。制作費が削られるなどして余力がなくなり、面倒なことになるような発言をする人を避けているのかも。一方で、池上彰・ジャーナリストや林修・予備校講師のように、わかりやすく「解説する人」が重宝されている。本来、視聴者が多様な意見を知り、判断するのが民主主義。でも今は意見や論評よりも解説が望まれる。そんな状態がよいのかどうか、考えるきっかけになればよい。【森永卓郎・経済アナリスト】

 (4)官房長官や官邸からバッシングを受けたとする古賀氏の発言に、安倍政権も神経をとがらせる。
 菅官房長官は30日、会見で「まったくの事実無根」【注3】としたうえで、「放送法という法律があるので、まずテレビ局がどう対応されるかを見守りたい」と述べた。放送法は4条1項で「報道は事実を曲げないですること」と定める。
 菅官房長官が放送法に言及したことに、政府から放送免許を受けているテレビ局側は、「何かといえば放送法を持ち出す空気が気になる。放送法を権力側が都合よく使っていないか」。
 実際、放送局に対し、「政治的に公平であること」と定めた放送法に沿った注文がつくケースが増えている。自民党は昨年11月、在京テレビキー局に、衆院選の報道に「公平中立、公正の確保」を求める文書を送り、街頭インタビューなどでも一方的な意見に偏らないように要請。TBSのニュース番組に出演した安倍晋三首相が、「街の声」の選定について注文を付ける一幕もあった。
 今年3月には、維新の党が大阪都構想に反対する立場のコメンテーターの起用を疑問視する公開質問状を大阪の朝日放送に送っている。
 そもそも放送法は権力側が放送局に介入しないという趣旨の法律ではなかったか。【ある民放幹部】
 放送法3条は定める。「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」

 (5)今回の最も大きな問題は、政権与党と放送メディアとの関係だ。官房長官が「放送法」を持ち出したのは非常に巧妙。直接的ではなくても、口に出すことで圧力になる。今後、テレビ局側が当たり障りのないコメンテーターを使うなど、結果的にメディアによる権力批判が封じられることにつながる可能性がある。言論表現の自由は本来、市民が権力を批判するためにあるもので、権力を持っているものが振りかざすものではない。権力者が振りかざす表現の自由は、権力に都合のよい言論の自由にすり替わる。【砂川浩慶・立教大学准教授(メディア論)】

 【注1】古賀発言とテレ朝の対応に係る視聴者の受けとめ方の一例・・・・【TABIBITO「テレ朝「報ステ」古賀降板騒動と、米NYタイムズ東京支局長の忠告──安倍政権とともにメディア界も、いよいよ「ここまで来たか」といえる深刻な事態なのか 」(「自然に 素朴に 明日をみつめて」 2015年03月30日)】
 【注2】実は去年からそういう動きがあって、1月の初めには全部決まっていたらしい。【田中龍作「古賀茂明氏、単独インタビュー ~テレビ朝日編~」(BLOGOS 2015年03月29日)】
 【注3】事実無根? 【記事「事実無根じゃない! 菅官房長官が古賀茂明を攻撃していた「オフレコメモ」を入手」(LITERA 2015年03月31日)】
---(引用開始)---
Q 会見で出た、ISILの件でまったく事実と違うことを延々としゃべっていたコメンテーターというのはTBSなんでしょうか。
A いやいや、いや、違う。
Q テレビ朝日ですか?
A どことは言わないけど
Q 古賀茂明さんですか?
A いや、誰とは言わないけどね。(※肯定の反応)ひどかったよね、本人はあたかもその地に行ったかのようなことを言って、事実と全然違うことを延々としゃべってる。放送法から見て大丈夫なのかと思った。放送法がある以上、事実に反する放送をしちゃいけない。本当に頭にきた。俺なら放送法に違反してるって言ってやるところだけど。
(中略)
 ようするに、嘘をついていたのは古賀氏でなく、菅官房長のほうなのだ。明らかに、「放送法違反」という言葉で古賀氏と『報道ステーション』を攻撃しなから、平気で「事実無根」などと強弁する。捏造と謀略による報道弾圧を繰り返してきた安倍政権の官房長官ならではの手法といえるだろう。
---(引用終了)---

□記事「報ステ古賀氏発言、暴走か圧力か 局側の萎縮懸念」(朝日新聞デジタル 2015年4月1日)
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