新任の経済産業大臣が、原発再稼働に向けて突っ走っている。
高市早苗・総務大臣/前自民党政調会長の「鉄面皮右翼」というイメージとは対照的に、小渕優子・前衆議院文部科学委員長/元財務副大臣は優しい「母親」「女性」像を演じていただけに、原発政策に変更があるのではないかと期待した国民もいたようだが、その期待は大臣就任とほぼ同時に粉砕された。
就任記者会見で、小渕は単純に言い切った。「原子力規制委員会によって」「新規性の基準に適合すると認められた場合には」「原発の再稼働を進める」
「私も子どもを育てているが、女性からは不安の声を聞いている」etc.と、世の中の母親たちの気持ちに寄り添うかのような発言もしていたが、それはあくまで演技なのであった。
会見では、
ひたすら事務方が用意した想定問答の線に沿って、
何を聞かれても「ソフトに」「優しく」答えた。
ただし、「優しく」の発言内容は、驚くべし、実に乱暴だ。
<例1>「規制委員会におけるこの基準というのは、世界においても一番厳しいと言われる規制だ」(断言)
<例2>「再稼働に求められる安全性が確保された」(鹿児島県知事らへ渡した公文書に明記)
田中俊一・原子力規制委員会委員長は、規制委員会の新基準は世界最高とは言えない、と事実上認めている。のみならず、この基準に合致していても安全だとは言えない、と明言している。
小渕大臣の発言は、明らかに嘘である。
では、何故、こんなに乱暴な議論を堂々と展開できるのか。
小渕自身に限界があるのだ
(1)小渕自身には何の知識も定見もない。自分の知識や考えがないので、何を言うにも躊躇がない。乱暴な議論も平気でできる。
(2)官僚に従っていれば安全だ、と信じている(ふりをしている)。あそこまで、完璧に官僚の想定問答をなぞる大臣も珍しい。父親に学んだことかもしれない。
(3)上司の命令に絶対服従することで出世できる、と考えている。上司とはむろん安部のことだ。最近の自民党政治家のほとんどは、普通のサラリーマンと同じになった。派閥が弱体化する中、総理に取り入ることが自分の出世の一番の近道だと考える政治家ばかりになってしまった。中でも、小渕は最優等生ということだろう。
原発再稼働は、安部の政策課題の中で、軍事立国と並ぶ最優先事項だ。
「経済最優先」などと言っても、それは統一地方選挙(2015年春)までのパフォーマンスにすぎない・・・・ということを理解した上で、とにかく不人気政策の原発再稼働を実現すれば、安部の覚えがめでたくなり、出世の階段を駆け上がることができる・・・・と冷静に読んでいるのだ。
40歳の若さで当選5回。早くも2回目の大臣で、しかも経産相という有力閣僚に就任した。
次の自民党総裁選挙(2015年秋)後の人事では、選挙シフトで幹事長に抜擢される可能性も高い。人寄せパンダとして。
そうなれば、総理候補として不足はない。ポスト安部の最有力候補にまでのし上がることができるかもしれない。
そうした小渕の心理は、むろん経産官僚にはお見通しだ。
前のめり。
自分の考えがない。
官僚に従順。
となれば、こんなに使いやすい大臣はない。一見ソフトに見える想定問答に、自分たち官僚がやりたいことを堂々と盛り込める。
従順な大臣+暴走する官僚。
最悪の組み合わせとなった。
□古賀茂明「従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~官々愕々第125回~」(「週刊現代」2014年10月11日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
高市早苗・総務大臣/前自民党政調会長の「鉄面皮右翼」というイメージとは対照的に、小渕優子・前衆議院文部科学委員長/元財務副大臣は優しい「母親」「女性」像を演じていただけに、原発政策に変更があるのではないかと期待した国民もいたようだが、その期待は大臣就任とほぼ同時に粉砕された。
就任記者会見で、小渕は単純に言い切った。「原子力規制委員会によって」「新規性の基準に適合すると認められた場合には」「原発の再稼働を進める」
「私も子どもを育てているが、女性からは不安の声を聞いている」etc.と、世の中の母親たちの気持ちに寄り添うかのような発言もしていたが、それはあくまで演技なのであった。
会見では、
ひたすら事務方が用意した想定問答の線に沿って、
何を聞かれても「ソフトに」「優しく」答えた。
ただし、「優しく」の発言内容は、驚くべし、実に乱暴だ。
<例1>「規制委員会におけるこの基準というのは、世界においても一番厳しいと言われる規制だ」(断言)
<例2>「再稼働に求められる安全性が確保された」(鹿児島県知事らへ渡した公文書に明記)
田中俊一・原子力規制委員会委員長は、規制委員会の新基準は世界最高とは言えない、と事実上認めている。のみならず、この基準に合致していても安全だとは言えない、と明言している。
小渕大臣の発言は、明らかに嘘である。
では、何故、こんなに乱暴な議論を堂々と展開できるのか。
小渕自身に限界があるのだ
(1)小渕自身には何の知識も定見もない。自分の知識や考えがないので、何を言うにも躊躇がない。乱暴な議論も平気でできる。
(2)官僚に従っていれば安全だ、と信じている(ふりをしている)。あそこまで、完璧に官僚の想定問答をなぞる大臣も珍しい。父親に学んだことかもしれない。
(3)上司の命令に絶対服従することで出世できる、と考えている。上司とはむろん安部のことだ。最近の自民党政治家のほとんどは、普通のサラリーマンと同じになった。派閥が弱体化する中、総理に取り入ることが自分の出世の一番の近道だと考える政治家ばかりになってしまった。中でも、小渕は最優等生ということだろう。
原発再稼働は、安部の政策課題の中で、軍事立国と並ぶ最優先事項だ。
「経済最優先」などと言っても、それは統一地方選挙(2015年春)までのパフォーマンスにすぎない・・・・ということを理解した上で、とにかく不人気政策の原発再稼働を実現すれば、安部の覚えがめでたくなり、出世の階段を駆け上がることができる・・・・と冷静に読んでいるのだ。
40歳の若さで当選5回。早くも2回目の大臣で、しかも経産相という有力閣僚に就任した。
次の自民党総裁選挙(2015年秋)後の人事では、選挙シフトで幹事長に抜擢される可能性も高い。人寄せパンダとして。
そうなれば、総理候補として不足はない。ポスト安部の最有力候補にまでのし上がることができるかもしれない。
そうした小渕の心理は、むろん経産官僚にはお見通しだ。
前のめり。
自分の考えがない。
官僚に従順。
となれば、こんなに使いやすい大臣はない。一見ソフトに見える想定問答に、自分たち官僚がやりたいことを堂々と盛り込める。
従順な大臣+暴走する官僚。
最悪の組み合わせとなった。
□古賀茂明「従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~官々愕々第125回~」(「週刊現代」2014年10月11日号)
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【参考】
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」