真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻一番! 二人きりトゥナイト」(2021/制作:ラブパンク/提供:オーピー映画/監督・編集:髙原秀和/脚本:宍戸英紀・髙原秀和/音楽:野島健太郎/撮影:下山天/照明:田宮健彦/録音:田中仁志/助監督:森山茂雄・福島隆弘/協力:末永賢・能登谷健二/スチール:本田あきら/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:希島あいり・七菜原ココ・長谷川千紗・東野良平・重松隆志・小田飛鳥・酒井健太郎・安藤ヒロキオ・直樹フェスティバル・山岡竜生・森川凛子・加藤絵莉・三森麻美・西坂伊央里)。
 トロリーバッグを引き引き、希島あいりが土手を画面奥に進む。振り返り、左手の指輪を抜き放り捨てかけ、思ひ直してタイトル・イン。先走ると当然、アバンを引つ繰り返し手前に歩いて来るのがラスト。そこだけ掻い摘むと、まあ綺麗な構成を採つてはゐる、そこだけ掻い摘むと。
 劇中明示はされないものの、まづ間違ひなく新宿のロックバー「VELVET OVERHIGH'M d.m.x」、屋号の闇雲さが何か象徴的。映画監督で雇はれ店長の和田黎明(重松)が、育成中の若手脚本家・奥野一平(東野)に書かせたホンをVer.Ka,Ver.Ka、もといバーカバーカ木端微塵に酷評するプチ修羅場に、上京して和田を訪ねて来た人妻・相澤か相沢真夏(希島)が闖入。映画を十年発表してゐない和田にとつて、目下の監督らしい仕事は精々地方で開催される映画祭の審査員くらゐ。その出先、戯れに和田からスマホを向けられ女優に口説かれた真夏が、何と家を出て来たものだつた。さうは、いへ。その場の軽口を真に受けた間抜けを、ただでさへ尊大な和田が相手する訳もなく。ぞんざいにあしらはれ激昂した真夏は、珍グダムのジャリタレ主人公なんぞより余程腹から出る見事な発声で、バカッ!と叩きつけ「d.m.x」を飛び出す。後述する一旦中略、橋の上にて一平と再会した真夏が、福本桃彦(酒井)が大将の居酒屋を経て、完全に酔ひ潰れた状態から目覚めるとそこは一平のアパートで、しかも―お乳首をチラ見せする―下着姿。フィクションの嘘を煌めかせそのまゝ居ついた真夏は、二人で和田の鼻を明かさんと一平の尻を叩く。
 「d.m.x」を飛び出したガチのマジで次のカットで、バットマンみたいなラバーマスクで「ワン」と鳴く奴隷男に真夏が引く。凄まじく唐突な木に接いだ竹には面喰ふのも通り越し、普通に度肝を抜かれた。上映素材がフィルムのプリントといふならまだしも、円盤なのによもやまさか飛んでゐるのではあるまいなとか本気で不安になつたぞ。気を取り直して配役残り、山岡竜生のゼロ役目が犬以下の犬もとい豚で、髪をアップにすると令和の早乙女宏美ぽく映らなくもない、七菜原ココが女王様の斎藤華香。マキシワンピとスクエアがエモい小田飛鳥は、一平が橋で待ち受ける中学からの同級生・新山由佳、実は杉原みさおと同じメソッド。小田飛鳥が裸仕事も辞さない御様子につき、ピンク本格参戦して呉れないものか。インティライミに肖つたのか直樹フェスティバルは、一平のバイト仲間・田辺謙司。カウンター下で和田に尺八を吹いてゐる、元カノ・井原未来(長谷川)の露を払ふ背中しか拝ませないロン毛男は、多分能登谷健二。この御仁が一番最初に組んでゐたか入つてゐた、バンドに辿り着けない。過剰気味の前髪が絶妙にオタクみ漂はせる安藤ヒロキオが、真夏捜しに奔走する夫・高志。高志が最初に「d.m.x」の敷居を跨ぐ折、カウンターにもう一人ゐるのは末永賢。改名したのか何となく併用してゐるのか、凜子と名義が二つあるのが紛らはしい森川凛子以下四名は、SMクラブに劣るとも勝らない壮絶なノーモーションで真夏が参加する、スピリチュアルに片足突つ込んだ劇団「キズナアヤトリ」のワークショップ要員。但し、七菜原ココ込みでもなほ頭数の方が一人多い。逆からいふと名前が一人分足らないのは、この際解けなくとて別に困らないミステリー。あと山岡竜生が、キズナアヤトリ主宰。
 驚愕の電車痴漢トリプルクロスを構築した、当サイト選城定秀夫最高傑作「痴漢電車 マン淫夢ごこち」(2016)。工藤雅典の大蔵第三作にして、実に十二年ぶりともなる久々の白星「人妻の湿地帯 舌先に乱されて」(2020/橘満八と共同脚本)。ピンク三戦目の希島あいりを主演に据ゑた、髙原秀和大蔵第五作。しかし最早ヤケクソなのか、とかく昨今、キマッた公開題が散見されるやうに思へて仕方ないのは気の所為か。二人きりトゥナイト、グルッと一周したカッコよさはあるけどさ。
 魔法使ひ昇格を目前に控へた童貞男の部屋に、スレンダーでクッソ美人な人妻が転がり込んで来る。ナベならば脇目もふらず全身全霊を注ぎ込み、好調時の加藤義一でも猛然と突つ込んで来るであらうエクストリームなファンタジー。に、潔く全てを賭ける賢慮を、髙原秀和に望むべくもなく。不用意に色目を使つた各々のドラマに尺を割く、以前に男主役たる筈の東野良平が―無駄に鈍重な割に―甚だ突進力に欠き、本丸の―筈の―エモーションは逆の意味で力強く心許ない。こゝの変貌ぶりは確かに素晴らしい、姿形を変へ要は二番手が二度飛び込んで来る、件の舞台がSMクラブと演劇ワークショップ。何れも結構突飛なシチュエーションであるにも関らず、殊に最初の女王様パートの導入、といふか突入は本当に衝撃的であつた。その、都合二回火を噴く暴力的に無造作な繋ぎを除くと、在り来りな焦燥に端を発する、気紛れな自分探しのアバンチュールに繰り出した人妻が、適当に羽目を外したのち臆面もなく家に戻る。屁より薄く他愛ない、もしくは女優と童貞を強迫的に連呼する痛々しい物語は石川欣が復活した怪我の功名―怪我なのか―で、腹は立たない程度に途方もなく面白くはない。東野良平と重松隆志に、忘れてならない山岡竜生。安藤ヒロキオ以外根本的に場数不足の絡み素人が介錯役に居並ぶ、大根男優部に後ろから撃たれる裸映画も、如何ともし難い女優部の持ち腐れ。といふか誰を連れて来るのも髙原秀和の勝手にせよ、最も肝要なシークエンスである以上演技―ないし艶技―指導くらゐ満足に施して欲しい、仕事しろよ。反面、明後日か一昨日で爆裂するインパクトがex.マギー直樹(マギー一門九番弟子/但しのちに一門系図から削除)といふ、異色の経歴を誇る逸材・直樹フェスティバル、の面構へ。出て来た瞬間目を疑つたのが、フェスティバル齢が若い―のと髪型がマッシュルームな―のを差ッ引くと荒木太郎とほぼ全く同じ顔。と、なると。逆に直樹フェスティバルが出演してゐる体で、荒木太郎を紛れ込ませる復権か復縁の奇策も十二分に画策可能。何なら直フェスの父子二役を騙り、父親役はシレッと荒木太郎。関係の拗れたサラブレッドでなく、あくまで直樹フェスティバルですといふ形にしておけば、ある意味大蔵の体面も保たれる。そもそも、梯子を外した方が悪いにさうゐないのだが。兎も角当然ゆくゆくは、直樹フェスティバル第一回監督作品。本物フェスティバルに対しては、今上御大経由で兄弟子の青木和彦を連れて来て説得して貰はう。

 頑なに中途で端折り続ける中、締めの濡れ場をも遂に挿入、しこそすれ。筆下しの一平が、終に射精には至れず仕舞ひに終るギッリギリの未遂は、真夏の犯した不貞を薄皮一枚軽くする、それはそれとしてそれなりの論理性、あるいは自堕落な免罪符と解したい。に、してもだな。肥大した体躯でモッソモソ不格好に蠢くしか能のない、東野良平の絡みがどうしやうもなく酷くて見てゐられない。つ、いでに。和田黎明の、傲岸不遜な造形が鼻につくばかりでてんでサマにならない重松隆志も、そこは大人しくなかみつせいじの役なやうな気は否めず。


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 「制服の誘惑 テレクラに行かう」(1992/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/脚本:池袋高介/撮影:伊東英男/照明:内田清/編集:フィルム・クラフト/音楽:OK企画/助監督:石崎雅幸/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:佐野良介/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:如月しいな・斉藤桃香・水鳥川彩・野澤明弘・青木和彦・栗原一良・姿良三)。
 縫ひ包みから室内を舐めると勉強中の真未(如月)が、平然と聞こえて来る嬌声にスポイルされる。スナップも掠めない両親は、母親も父親の赴任に同行する形で二年海外。真未はその間、姉の文重(水鳥川)と夫の斉藤昭夫(野澤)が暮らす津田スタに厄介となつてゐる格好。ヘッドフォンでCD3を聴く抵抗を試みはしたものの、手つ取り早く断念。ベッドに飛び込んだ真未がワンマンショーをオッ始めて、下の句が何故か怪談フォントのタイトル・イン。真未はフィニッシュまでには至らず、クレジット明けで再開した夫婦生活は完遂。翌日、登校時に合流した親友の前田理佐(斉藤)は、未だ処女の真未にテレクラを勧める。正直ビリングの頭二人が、清々しいほど女子高生に見えない点はこの際気にするな。
 配役残り青木和彦は、今回珍しく二つ机の並んだオフィスのロケも工面する、昭夫の職場の後輩・片岡。テレフォンクラブを介して出会つた理佐と交際する、テレクラに関してはパイセン。栗原一良は合コン的なイベント―の割に理佐と片岡は脊髄で折り返す速さで捌ける―に連れて来られる、片岡の後輩・沢口。小川和久(現:欽也)の変名である姿良三は、昭夫がよく使ふ仮称「摩天楼」のマスター。のちにワン・カット背中だけ見切れる、マスターに一杯奢る男は流石に判らん。
 何気ない裸映画でしかないやうに見せて、案外さうでもない気もする今上御大1992年最終第十三作。それぞれ理佐と片岡に、斉藤家with真未の外堀を埋めさせる会話が、へべれけなイントロダクションに堕すでなく、脚本・演出とも思ひのほかスマート。よしんば、あるいは単に、それが至つてど普通の水準であつたとて。オフィスは用意した反面、教室ないし校内ロケは相変らず等閑視。それでも―外から勝手に撮れる―校舎のロングから、真未と理佐下校時の往来へのティルト。理佐にテレカを借りた、真未の初陣。電話ボックスから出て来る真未を、理佐が待つ俯瞰。撮影にも、らしからぬ意欲を垣間見させる。片岡の名を騙つた昭夫と話が纏まりかけた真未が、ランデブーする文重と沢口を目撃。一旦偽片岡を理佐に押しつけたため、後日ツイン片岡とのダブルデートが成立する展開は素面で結構気が利いてゐる。ついでで沢口と遊んでゐる文重の、帰りが遅くなる夜。晩酌にでも付き合はせようと、ヘッドフォンでズージャーなんて聴いてゐる義妹に近づいた昭夫が、何だかんだか何が何だかな勢ひでザクザク手篭めにしてしまふのは、突破力を活かした野澤明弘(a.k.a.野沢明弘/ex.野沢純一)の真骨頂。で、あるにも関らず。最大の衝撃は、理佐とリアル片岡に、真未と偽片岡こと昭夫。各々の第二戦が頻繁なクロスカッティングの火花を散らす、締めの濡れ場。理佐らが先に駆け抜けて、真未が追走するものかと思ひきや、よもやまさかの主演女優―の筈―の絡みをある意味見事に放棄してのけるのには驚いた。そもそも、自宅にて義兄から手篭めにされる、割とでなく大概な真未のロストバージンから、中途で端折る始末。テレクラでの男捜しに二の足を踏む真未に対し理佐が投げる、平素とは一味違ふ何気な名台詞が、「誰でもいいぢやん、恋する訳ぢやないんだから」。適度な距離感を保ち、飄々と日々を楽しむ。ドラマ上実は最も安定する理佐の立ち位置を見るに、今上御大が二番手に移してゐた軸足は、繁華街を真未と沢口が他愛なくブラブラするインターバル挿んで、斉藤桃香で十分の大熱戦を序盤にして撃ち抜く地味でなく凄まじい尺の配分に、既に顕著であつたのかも知れない。


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 「盗撮レポート 人妻浮気現場」(1992/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/脚本:池袋高介/撮影:伊東英男/照明:内田清/音楽:OK企画/編集:フィルム・クラフト/助監督:石崎雅幸/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:佐野良介/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:小川真実・水鳥川彩・伊藤舞・吉岡市郎・鳥羽美子・栗原一良・杉本まこと・青木和彦・久須美欽一)。
 望遠レンズにタイトル開巻、何処から持つて来たのかまんま「探偵物語」ライクな、フュージョンの劇伴が鳴る。タイトルバックは有りもののエロ写真を適当に並べて、本篇の火蓋を切る久須美欽一のモノローグが「私は私立探偵」。清々しい直球ぶりが、豪快に火を噴いてのける。曰く覗きが昂じて興信所所員となつた―また派手に昂じたな!―野上博行(久須美)は、苦手を自認する尾行を始め失敗続きで、茶を挽く日々に燻る。その割に何某か営業職に就く概ね内縁の妻・サチコ(伊藤)と暮らし、サチコのために何時か大金をだなどと、浜省の歌詞みたいな安い野望を胸に秘めもする。そんな最中、行きつけの鳥羽美子がママの実店舗にて、野上は三谷産業社長の三谷(市岡)と出会ふ。野上が探偵だといふのに喰ひついて来た三谷は、社員の素行調査を持ちかける。
 配役残り、茂みに潜んで青姦を撮影する野上のイントロダクションに登場するカップルは、初めから特定可能なやうには抜かれてゐない。栗原一良(ex.熊谷一佳)はカウンター内のバーテンダー、但しアテレコ。ボックス席には、姿良三(=小川和久)もシレッと見切れる。水鳥川彩は三谷の浮気相手・ノリコ、三谷産業社員。そして小川真実が、三谷が当初は―無駄に―社員とか偽つた素行調査の標的にして、実は妻。杉本まことは三谷が夫人の浮気を疑ふ、確か日野のハウススタジオに教室を構へる社交ダンスの講師。青木和彦はその他生徒、ではなく杉まこのアシスタント。
 淡々と今上御大旧作を見られるだけex.DMMで追つて行く、小川和久1992年第五作。少なくともピンクは全部見てしまつた上で大悲願のハンドレッドにはなほ全然遠い、大御大を新着させて貰へないものか。それなりに抱へてゐなくもない筈の、エク動含めて。
 比較的女の裸にすんなり親和した物語かと思ひきや、意表を突いて青木和彦も参加する三谷夫人の巴戦写真を、何を血迷ふたか野上が三谷夫人―正確には吉岡市郎が三谷妻人―に売つた方が金になると踏む辺りから、みるみる迷走する展開が逆の意味で見事。正方向にいふと、まあ、アレだ。小川真実の両脇を水鳥川彩と伊藤舞のキューティーなツインドライブが固める、三人体制期のBABYMETALにも似た布陣はそれなり以上に強力。では、あるものの。藪からに下手な大風呂敷をオッ広げた挙句に、百万ぽつち入る入らない以前の、当然自身にも懸念され得る正しく致命的なリスクを、浜辺のロングに託(かこつ)けて野上が無造作に等閑視してのける壮大に惜しくも一歩手前の盛大なラストは、幾らイズイスティック映画とはいへ流石に底を抜かすにもほどがある。全篇を通して野上が逐一露呈する、お茶目な粗忽さくらゐしか見所も見当たらない一作。主要キャスト劇中唯一無垢なサチコが、男運がクソなばかりに終に報はれない点に関しては、地味に後味の悪い心を残す。


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 「痴漢 穴場びしよ濡れ」(1996/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/編集:㈲フィルムクラフト/脚本:岡輝男/協力:亀有・名画座/監督助手:加藤義一・山田大作/撮影助手:郷田有/照明助手:佐野良介/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:小川真実・早川優美・杉原みさお・太田始・青木和彦・久須美欽一・姿良三・寺島京一・林田義行・生方哲・白木努・丘尚輝)。他人に書かせても、脚本はこの位置なのね。
 クレジット除けば劇中特に明示はされない、当時既にピンクの小屋であつた亀有名画座(1999年二月末閉館)。開館前の劇場内、館主の妻・依子(小川)が、映写技師の増村俊彦(太田)とオッ始める。今朝はまだ来ないとする依子の思惑は外れ、館主の琢也(姿良三=小川和久/現:欽也)も来館、あるいは出勤。まだ誰も出て来てゐないものと思ひ映写機をセッティングする琢也は、映写室の小窓から嫁と従業員の不貞を目撃し仰天。した弾みで爆弾を抱へる心臓に発作を起こし、そのまゝ悶死。崩れ落ちる琢也がボタンを触り、映写機起動。不意に始まつた上映に、依子と増村も漸く事態を認識する。映写機に被さる依子の「貴方!」といふシャウトに続いて、劇伴共々思ひきり長閑な遠景にタイトル・イン。四十九日も明け、亀有名画座の休館解除。ここで青木和彦は向かひの蕎麦屋の大将で、杉原みさおが、大将いはく「女だてらにポルノ写真が好き」な女将。一旦田舎に帰るも、帰りきらなかつた増村も戻り、兎も角営業再開。完全に、もしくは現金に増村と一緒になる気の依子に対し、不用意に琢也の死を引き摺る―おかしかないか、別に―増村が煮え切らない中、増村が郷里で偶さかな一夜を過ごした、ストリッパーの玲菜(早川)が増村の部屋に転がり込んで来る。
 配役残り久須美欽一は、イヤミな造形の伊達男常連客。寺島京一も常連客で、どちらかといはずバッチコーイな杉原みさおに痴漢を繰り返す。OK劇伴が流れるゆゑ、自作かと思ひきや関根プロダクション作で面喰ふ、寺島京一と杉原みさお一回戦の際の上映作は、川井健二名義での1993年第三作「媚肉人形」(脚本:ミスター・チャン/主演:林由美香)。林田義行以降は観客要員しかない筈だが、林田義行が辛くも確認出来る程度で、ノートの液晶だと丘尚輝=岡輝男も目視不能。
 三年前に少なくとも東京近郊では回してゐた、小川和久1996年第二作。小屋主未亡人と間男の映写技師が付かず離れずウジウジするピンク映画館に、すつかり映写技師の女房気取りのストリッパーが飛び込んで来る。スクリーンの前に舞台があるのを看て取つた踊り子は、脊髄で折り返して舞ひ始める。滅法酷いと逆の意味で評判を呼んだ割に、所々にピンク映画愛―ないしは惰弱な擁護―を織り込みつつの案外オーソドックスな人情譚は、いふほど派手に破綻するでなく、下手に構へると拍子抜けするほど粛々と進行して行く。久須りんと再婚するだとかいひだした依子と決別した増村は、玲菜を連れ何処ぞの港町―といつて、六畳間にポンポン音効を鳴らすだけ―に。惚れた男の気持ちを酌み、己の恋心は押し殺し増村の背中を押してやらうとする健気な玲菜の姿は、如何にも有体か都合のいい紋切型ともいへ、早川優美はいい芝居をさせて貰つてゐると結構本気で心に沁みた。それ、なのに。触れずには始まらぬゆゑ平然とバレてのけるが、緊急帰京した増村が、アバンを引つ繰り返した今度は終映後の場内にて、依子に情熱的な告白。依子も脊髄で折り返した抱擁で応へ、クライマックスの名に足る締めの濡れ場に猛然と突入。あとは、確かに結婚の約束を交し、今は依子と二人で亀有名画座を切り盛りする、久須りんの去就さへどうにか出来れば堂々とした大団円が花開いた、ところが。矢張り映写室の窓からその現場を目撃した久須りんはといふと、普通にキレて35mm主砲を点火。往事と同様不意に始まつた映写に、依子と増村が琢也の幻影に慄くエンドとは全体何事か。後味がどうかう以前に、折角綺麗に盛り上がりかけたエモーションを、木端微塵に爆砕してのけるデストラクティブな作劇には素面で度肝を抜かれた。大御大・小林悟をも時に易々と凌駕する、茶の間ごと卓袱台を重機で圧し潰すが如き小川欽也の暴力的な無造作さに、叩きのめされグウの音も出ない殆どショック映画である。


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 「お色気セールス 人妻なまめく香り」(1995『セールスレディ バイブ訪問販売』の1998年旧作改題版/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/編集:《有》フィルム・クラフト/脚本:水谷一二三/監督助手:西海謙一郎/撮影助手:倉田昇/照明助手:佐野良介/スチール:津田一郎/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学㈱/出演:早川優美・小川真実・林由美香・杉原みさお・葉月螢・杉本まこと・太田始・栗原一良・青木和彦)。何故か各種資料には池袋高介とあるものの、脚本の水谷一二三は小川和久(現:欽也)の変名。独特の位置は、何か知らんけどそこが落ち着くのであらう。もう、さういふことにでもしてしまへ。
 化粧品訪問販売の森津也子(小川)が得意の主婦・水上美保(早川)に、日頃の謝恩に半額でお分けすると取り出したのが、手首ごとオブジェ感覚の中指バイブ。贅沢にも暇を持て余す、美保から持ちかけたパートの件は決まつたらしく、津也子は辞す。カーテンを閉めた美保が、腰を下し手首を手に取つたところでタイトル・イン。そのまゝスタッフからクレジット起動、まづはお乳首に当てて俳優部、パンティ越しに中指を添へた観音様に、小川和久の名前が入る何気に磐石なタイトルバック。
 社名不明の何とか化粧品何処そこ営業所、所長(杉本)と、上司と部下に止(とど)まらず、所長とは男女関係にもある北村和枝(林)が見やる営業成績のグラフに並ぶ名前が、左から溝口・森・北村・黒沢・成瀬・今村・小津・大島・伊丹。シネフィル臭い、些末か小癪な映画好きアピールなんぞ要らん。さういふ真似がしたいのなら、当時大蔵レギュラーの小林(悟)・山崎(邦紀)・市村(譲)・川合(健二/a.k.a.関根和美)とかにすればいい。案外といふか何といふか、かうして見てみると寧ろ今よりも薄い。兎も、角。常に断トツの売上を誇る、津也子の営業手法に所長―と和枝―は一応程度の猜疑を懐く。
 配役残り太田始は、結婚一年にして早くもレス気味の美保夫。水上に、美保が津也子からガバガバ化粧品を買ふ稼ぎがあるのかしらん、といふのも疑問といへば疑問。葉月螢が、双方熱愛のどうかした勢ひで入れ揚げる水上浮気相手。ここで改めて振り返ると、太田始の最新といふ意味で最後の新作ピンク出演が、大絶賛今をときめかない荒木太郎の2014年第二作「巨乳未亡人 お願ひ!許して…」(主演:愛田奈々)。多呂プロに復権の芽が全く見えない、どころですらない状況下、太田始は今上御大が伊豆映画で救済なりサルベージしてあげればなんて、相も変らず埒の明かない繰言。さて、措き。杉原みさおは、団地を攻める和枝・美保と別れた津也子が例によつてジョイトイでオトす、恐らく戸建住まひの主婦。美保は和枝の勧めで、大東銀行ことぶき―独身―寮(物件的には東映化学/現:東映ラボ・テック)を訪ねる。栗原一良がそこの鈴木で、最終盤に漸く登場する青木和彦が鈴木と同期の山本。適当につけましたといはんばかりの、苗字が清々しい。忘れてた、営業所内にもう一人見切れる男は井戸田秀行、ではなく。テレビ畑を主戦場にキャリアを積み重ね、昨年遂に長篇デビューを果たした西海謙一郎。別館調べだと、旦々舎に参加した形跡が最も多く窺へる。
 ex.DMMに記載された粗筋に目を通した際、如何にも焼き直しの元作臭いと身構へつつ、単に煌びやかなまでに類型的な物語―と、いふほどのものでもない―に過ぎなかつた、今上御大和久時代(昭和51らしい~1998)の1995年第六作。
 津也子―美保も―は何某か良からぬセールスをしてゐやしまいか、あるいは、何気にスリリングな水上夫妻の夫婦仲。展開の動因たり得る二点に関して、前者は本当に触れるだけ触れて綺麗に等閑視。後者も後者でことぶき寮にて自身も羽目を外す美保が当分様子見する方向に、華麗に棚上げする。さうなるとドラマが転がりも深まりもする訳がなく、あとは必ずしも男女の絡みに限らずとも淫具を駆使しての、ひたすらにひたすらにただひたすらに、濡れ場濡れ場を連ねるに終始するある意味ひたむきな、より直截には水のやうな裸映画。前半は残りの女優部に見せ場を譲り、後半ことぶき寮を大爆走して盛り返す主演女優。葉月螢と太田始のエモい対面座位等々見所はそれなりに見当たる中でも、最大のハイライトはパッと見何がどうなつてゐるのかまるで判らない、特殊な器具を陰部に装着した杉原みさおが、豪ッ快な大股開きで飛び込んで来る振り切れたカット。


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 「襲はれた若妻」(1989/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:図書紀芳/照明:内田清/助監督:石崎雅幸/脚本:水谷一二三/編集:金子編集室/音楽:OK企画/スチール:津田一郎/撮影助手:戸澤潤一・三栗屋博/照明助手:佐野勝巳/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:南野千夏・風間ひとみ・詠美・久須美欽一・工藤正人・青木和彦・吉岡市郎・姿良三・熊谷一佳・中村芳晴・斉藤治朗)。何某かの意図でもあるのやらないのやら、超絶中途半端な位置にクレジットされる脚本の水谷一二三と、出演者中姿良三は小川和久(現:欽也)の変名。
 舗装もされてゐない田舎道を、赤い車がブーと走るロング。南野千夏がハンドルを握り、大体運転手視点の画を暫し見せた上で些か不似合に石がデカいのはさて措き、左手薬指には人妻である旨示す指輪が。伊丹玲子(南野)が運転する車に、未曽有の無造作さで男(ビリング推定で斉藤治朗、か中村芳晴)が飛び出して来る。文字にすると本当にウワーッ!とか叫んでる、ポップな悲鳴が早速ジワジワ来る。玲子が車を止めると、ウワーッ氏―以後宇和氏―は見事にといふか綺麗にといふか、兎も角そこかしこから大流血。およそ動かせさうにもないゆゑ、玲子がお医者を呼んで来ようと車を出した繋ぎで、赤バックに書き殴つた筆致が迫り上るタイトル・イン。時代劇か西部劇みたいにペットが哭く、エキサイトメントを直撃する劇伴もいい塩梅。
 ところが玲子が医師(青木和彦/マギー司郎の二番弟子)を連れて来たところ、現場から宇和氏の姿は消えてゐた。第三者が担ぎ込むにしても、そもそも近隣に他の医療機関もなく。玲子は一旦弁護士の夫(吉岡)が待つ津田スタに帰宅、だからこの物件は築何年なんだ。伊丹には同窓会翌日の二次会で、玲子がゐたことになつてゐたのは六本木。前日の同窓会までは事実として、実際玲子は再会した古橋マモル(工藤)と一夜の過ちを犯した挙句ゐる筈もない辺鄙な土地にて、謎の宇和氏を撥ねたのであつた。
 配役残り、何故かこの頃は今より髪が薄い―不ッ思議だなあ―久須美欽一は、次の日早速玲子に電話をかけて寄こす、自称宇和氏の代理人・キヤマ、正体はノミ屋。風間ひとみは、渡された鍵で玲子が古橋を訪ねたドンピシャのタイミングで乳繰り合ふ、古橋の婚約者・河合美沙。面相は雑だが綺麗な体をしてゐる詠美は、キヤマ馴染のホステス・マリ。姿良三と熊谷一佳に不完全消去法で中村芳晴、か斉藤治朗が、キヤマ殺害事件を捜査する刑事。
 束の間の昭和に滑り込めたのか、矢張り平成が明けてから封切られたのか微妙な和久時代の、今上御大・小川欽也1989年第一作。専門職に就く富裕な夫を持つ若妻が、不在証明の成立しない交通事故を起こしたばかりに、身から出た錆といつてしまへばそれまでの、ジャンル上類型的な悶着に巻き込まれる。と、なると。粗筋だけ掻い摘んでみればあれれれれ?何処かで観た記憶も過(よぎ)るのは、決して気の所為でも迷ひでもないんだな、これが。今をときめきさうで案外ときめききれない低予算映画界のマドンナ・しじみの、持田茜名義による銀幕デビュー作「浮気妻 ハメられた美乳」(2006)と同じお話ではないか!元ネタがあつた、あるいはウワハメに際してはセルフリメイク―焼き直しともいふ―してゐたのか。これは当のしじみも知らぬにさうゐない、とエウレカしかけたところが。
 不動の玲子(が、ウワハメに於いては持田茜/以下同)を筆頭に、配役は大体同じ。夫の水上祐二(なかみつせいじ)は大学教授と、姓と職業は若干変つてゐる。古橋とキヤマも、古川信吾(ひょうどうみきひろ)と崎山晃一(竹本泰志)にマイナーチェンジ。逆に美沙(山口真里)は不変で、宇和氏は石動三六に齢を重ね、姿良三は医師にスライド。人死には発生せず、官憲は登場しない。展開の逐一はおろか個々の遣り取りも、結構そのまんまトレースしてゐる。とは、いふものの。何気にオッパイ部を揃へる三本柱は二作共通ながら、美沙役の山口真里が三番手に下がり、代つて二番手に飛び込んで来る風間今日子が、水上の不倫相手・小林麻衣に扮するのが最大にして決定的な相違点。蓋を開けてみると出々しから全く異なる物語は、百八十度のハッピー・バッドと結末も正反対。正反対どころか、カザキョンの天衣無縫な大暴れが火を噴くウワハメは、オソワカとは斜め上だか下に正反対。しじみ(ex.持田茜)初陣の原典発掘とエウレカしかけたところが、量産型娯楽映画ならではといへばいへなくもない、消費と忘却ないし通過を以て業とするポップ・カルチャーの極北で時に結実する、臆面もないリサイクル作かと一瞬思はせ、実は全然違ふ。これでなかなか一筋縄では行かない、予想外のマジックにしてやられた。要は勝手に喰ひついて、まんまと吠え面かゝされただけともいへ、今上御大、畏るべし。更に時を経た現在、現代ピンクの到達点にして、安らかで慎ましやかな桃源郷。伊豆映画を完成した功績に至る小川欽也の来し方は、矢張り伊達ではなかつた。片岡修二に書かせたものを、のうのうと自脚本と称してのける深町章とは雲泥の差である。金払ひには、禍根を残しもしてゐるやうだが。
 とこ、ろで。ウワハメは一旦忘れ、今作単体に話を絞ると。所詮は大雑把なサスペンスを馬鹿正直だか下手に追つた結果、ワンピース越しにもムッチムチな南野千夏が、シャワーひとつ浴びるでなく尺の後半は見事か無様に温存。折角無理からでも何でも伊丹との夫婦愛を再確認し合ひながら、締めの夫婦生活を堂々と歌ひ上げもせず、抱き合ひはするチューでダラダラ縺れるラストには逆の意味で吃驚した。濡れ場で大団円を偽装する千載一遇の好機であつたらうに、腰も砕けるレス・ザン・尻子玉な裸映画である。一方、ウワハメもウワハメ。風間今日子が支配する世界にラウドなグルーブが確かに轟きはすれど、何れにせよ所詮、派手にブッ壊れた展開にグルッと一周した興を覚える、ツッコミ処の範疇を半歩たりとて出でる代物ではない。二十年近くの歳月を挿んでなほ、単品同士だと仲良く精々他愛ない辺りは、あるいは他愛ない辺りが、昔も今も、和久も欽也も変らない所以。


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 「泡姫極楽昇天」(1995『最新ソープテクニック ねつとりご奉仕』の1998年旧作改題版/製作:小川企画プロダクション/協力:吉原『ファーストクラス』/配給:大蔵映画/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/編集:《有》フィルム・クラフト/脚本:水谷一二三/監督助手:加藤義一/撮影助手:倉田昇/照明助手:佐野良介/スチール:津田一郎/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学《株》/出演:早川優美・司レイ・風間晶・杉本まこと・真央元・久須美欽一・青木和彦・山本清彦・神戸顕一・姿良三・林田義之・万波成夫・野上正義)。脚本の水谷一二三と出演者中姿良三は、小川和久の変名。協力が製作と配給の間に割り込むクレジット順と、脚本が編集の次に来る謎位置は本篇ママ。
 頼りに上京した高校時代の同級生は、公式勤務先には勤めてゐなかつた。途方に暮れる久保田秋子(早川)が辿り着いたのは、アパートの大家が教へて呉れた吉原大門。秋子が店の前で立ち止まつたところでタイトル・イン、タイトルがインしたまゝカット跨いで吉原のソープランド「ファーストクラス」の看板と表を抜いて、以降クレジット間は店内をツラツラッと舐める。村長息子との縁談を忌避し家出して来た秋子は、男で作つた二百万の借金が泡の道に入るきつかけの、吉川美保(司レイ/多分伊藤清美のアテレコ)の家に転がり込む。ところが、美保には男の同居人が。“ウチの人”と語る点を聞くに、「ファーストクラス」店長にして内縁の夫(杉本)との半夫婦生活にさんざアテられ閉口した秋子は、居候から独立すべく「ファーストクラス」で働くことを決意する。
 配役残り出番の僅少はおろか殆ど脱がない風間晶は、風間晶も「ファーストクラス」の嬢・トモコ。jmdbによると小川組専属で五年間といふ割に数本しかないキャリア―記載漏れの可能性は、大いに留保出来る―の、初見にして謎の男優部・青木和彦は、美保が一通りの実地を秋子に見学させる、常連客の小山。久須美欽一は初体験の風俗で出会つたこちらも初陣の明子に、箍外れに入れ揚げる鳴瀬一郎。神戸顕一は、トモコにエマージェンシーを鳴らさせる性質の悪い客。何時の間にかか何が何やら、秋子は売れつ子に。山本清彦も秋子に執心する常連客、フロント付近に見切れるのみの姿良三は、元々はトモコが贔屓の常連客・杉浦。そして真央元が、出勤前の秋子をナンパする吉田ヨーイチ。秋子はその日はそのまゝ無断欠勤、待合室で待ち惚けを喰らはされる、画面左から順に小山・やまきよ、一人飛ばして鳴瀬の並びの、三人目に林田義之。野上正義は、何だかんだの末、銀座に秋子の店を持たせるパパさん、ついでといつては何だがバーテンは加藤義一。最後に、変名かと思ひきや、高嶺剛の「夢幻琉球 つるヘンリー」(1999/仲里効との共同脚本/編集:鵜飼邦彦)に市民プロデューサーシステムとやらで参加してゐる実在する個人の万波成夫は、鳴瀬のファースト・カットに於いて、待合室にもう一人ゐる客。この時この人は如何なる縁で、量産型裸映画のしかも爆心地に足を踏み入れたのか。
 小川和久(=小川欽也)1995年全九作中第七作は、鈴木敬晴(ex.鈴木ハル)映画祭の最終戦として「高級ソープテクニック3 快感天国」(1993/主演:岡本亜衣)を見た過程で出会つた、新東宝が全七作配給した各種ソープテクニック映画を打ち止めた後に、大蔵が拝借した仁義なき一作。
 当時的にはこれで最新感もあつたのか、定番のプレイで濡れ場の尺もそれなりに喰はなくはないものの、中盤から終盤に至る大半は、鳴瀬に寄つて来られたり吉田にうつゝを抜かしてみたり、秋子の在り来たりな物語に終始する。ところが、鳴瀬があれこれ派手に憤死する、量産型娯楽映画のある意味神髄を感じさせなくもない無造作な超展開に、度肝を抜かれるのはまだ早い。ザギンに仮称「摩天楼」を持たせて貰つた秋子が更なる飛躍を誓ふ、藪から棒にポジティブな結末は、眩いばかりにフリーダムなドラマツルギーにクラクラ来る。ソープテクニック映画仁義なき一作といふよりは、寧ろ止めを刺したといふべきなのか、心なんて、込めた方が負けだ。我々はさういふ地平で、戦つてゐるのかも知れない。


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