真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「巨乳拷問 人犬獣倫」(1991/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:真理子・仁村ひとし・吉田正浩)。エンドマークは“FIN”で、薮中劇伴も多用される。
 中折れと広大な面積のウェリントンに、赤いタイを巻いた黒シャツ。全てのアイテムが逆の意味で見事に似合つてゐない、壮絶なスタイリングの主演女優―助演女優がゐるのかといふ話ではある―が、今でいふドヤ顔で廊下を闊歩する。右手の鞭を振り上げた、ストップモーションに真理子とクレジットを入れられ、たところで。三十年以上昔のAV部がノー苗字の真理子だけでは、余程一世を風靡でもして呉れてゐない限り、正直この期に外堀の埋めやうもない。対照的に顔射を浴びたしほらしいアップ挿んで、真理子が二人の男優部に犬の如く引かれるのを尻側から捉へる。改めての、顔射アップが暗転ならぬハレーション転してタイトル・イン。網タイツ越しのオッパイを―サブ―タイトルバックに、“秩序ある生活”。真理子御主人様が、犬男(吉田)と豚男(仁村)を家畜として飼ふ関係性を提示。犬男に持つて来させた、ジョイトイで真理子がワンマンショーに耽る“家畜たちの奉仕”と適当に続いての、“家畜たちの叛乱”。何れかを選ぶやう御主人様に懇願したところ、一笑に付されたのに男優部激おこ。逆上し二人がかりで犯す際、犬男の「女の体はヤラれて感じるやうに出来てるんだよ!」なる台詞には、浜野佐知が全体どんな顔で撮つてゐたものやら、苦笑がてら軽く首を傾げさせられる。
 以降、尺八を吹かせる“女王様の舐め奉仕”。卵を用ゐての所謂WAMを展開する“全身卵黄パック”と、何処に作家の痕跡を望めばよいのか困惑も否み難い、即物的なプレイの数々が漫然と進行。“焦熱の菊座”で熱ロウ責めとアナル×尺八の二穴責めを、しかも豚男と犬男が交互の二連撃。といふエクストリームをも一旦繰り出しつつ、続く次章が“肉壁ワイン洗浄”。割と劇的にパワーダウンもしくはチルアウトしてのける、頓珍漢な構成には祝賀でなく、降伏の意で万歳、それはホールドアップといふ奴だ。そし、て。賽の河原感覚で女体に氷を盛る、“凍える花びら”パートをまるで一時停止感覚で豪快にブッた切り“調教済の女王様”に突入する、凄まじくぞんざいな繋ぎが今作のハイライト、明後日か一昨日にもほどがある。こゝでは真理子が口内に出された精液を、犬男即ち芳正には口移しで返す。最終章が“ある予感”、つげ忠男―次兄が義春―の『ある予感』は昭和61年につき、もしかするとフィーチャーしてゐたのかも知れない。投げ寄越されたウインナーを床で食べた真理子の、何某かが目覚めた気配を感じさせる確かに強い眼差しと、戦慄する犬男と豚男を各々―間抜けな―ズームで抜いた上で、尻は捲られた四つん這ひのチャイナドレスで真理子が不敵に笑ふ姿を最後のカットに暗転、俳優部のみのクレジット起動。豚男と犬男がそれぞれ曰く、「女は矢張り女さ」、「男が主人、女が奴隷」とする歪んだ世界観を再度ブチ壊す物語的な兆しを、一応最後の最後に感じさせはする。ものの、逐一邪魔臭い軽口を叩くのに、わざわざ声を裏返らせる仁村ひとし(=二村ヒトシ)の煩はしいメソッド、以前に。“巨乳拷問”をタイトルで劣情的もとい煽情的に謳ひながら、乳責めらしい乳責めが一向繰り広げられず仕舞ひに終るレス・ザン・画竜点睛、あるいは羊頭狗肉が最大のアキレス腱。


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