真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「SUPER逆レイプ 令嬢男狩り」(1992/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:美崎優衣)。
 掴み処のない顔つきの美崎優衣が、ウエディングドレス姿で自らを漫然と乳繰る。暗転して、美崎優衣唯一人クレジット。新東宝テイストな虹色のラメに彩られた、オペラグローブとブラにパンティのみ身に着けた半裸と、とりあへず羽織つてみました的な和服。装ひを換へ適当に乳尻を繋げた上で、再び暗転してタイトル・イン。一応それなりの美人で、均整のとれた美しい肢体は十二分に悩ましい。口跡も決して壊滅的と匙を投げるほどでもない、ものの。微笑みを湛へるといふよりも、単なる薄ら半笑ひ。美崎優衣の凡そ確たる意思を感じさせない、表情がどうにも心許なくてモヤモヤする、性的ではない意味で。
 旧旦々舎和室、和装で花を生ける多分苗字も美崎の優衣(ハーセルフ)に、執事の羽生(平賀勘一)が「もう間もなくですね」。ドラマらしいドラマ―と脚本―の存在に、何となくホッとする。両親を航空機事故で喪ひ五年、当時高校生であつた優衣は、結婚を間近に控へてゐた。優衣と羽生のマッタリした幸福感に水を差すが如く、美崎家の書生(平本一穂)が血相を変へ飛び込んで来る。優衣の祝言に愕然とする平一の脳裏に浮かぶ、座椅子に扮した平一と優衣お嬢様の一戦は、果たして想起した回想なのか、それとも蒸し返した妄想に過ぎないのか。
 クレジット的に全員等閑視される男衆残り、華麗なる第一声が「結婚するつて本当ですか!?」。鮮やかなダ・カーポ感を爆裂させ矢張り飛び込んで来る杉本まことが、平一先輩格の書生・大野。平一同様愕然とする大野いはく、優衣に対し「僕達はどうなるんですか!?」。
 “女はヤサシイだけぢやない!”、“女はヤラセルだけぢやない!!”―原文は珍かな―と、如何にも旦々舎らしい惹句のパケに躍る一作。今後、小屋にて対峙する初見の旧作ないし、新規配信に二番手以降で出て来れば別だが、美崎優衣に、ピンクの出演作はザッと探してみたところ見当たらない。
 平一と大野―は机―が家具であるのに対し、羽生の場合は馬、の役割を交互にスイッチ。執事ならび二人の書生、天涯孤独の令嬢と、屋敷に暮らす男達との情事がひたすらに連ねられる。羽生の口からは“女王様”の呼称が明確に聞こえつつ、“SUPER逆レイプ”とか煽情的に謳ふほど苛烈なプレイが繰り出される訳でもなく、兎にも角にも最も尺が割かれるのは、尺を吹く時間であつたりもする。端から浜野佐知の苛烈な女性主義を担はせるには主演女優が甚だ覚束ない中、さりとていざ絡みとなると美崎優衣の足も漸く地に着き、安定した男優部に品のないメソッドで興を殺がれるでなく、安心して女の裸を楽しんでゐられる安定した一作。絶妙に判然としなくもなかつた、優衣が昼夜で様相を全く異ならせる虚実の別も、同室に四人全員揃つてゐるにも関らず、何故か羽生は参加しない締めの巴戦。白転大乱撃でザックザク雑に繋ぎ倒すエクストリームの果て、羽生が優衣の幸福を祈願する台詞で決着する。それも、兎も角。今回の収穫―かも知れないの―が濡れ場の最中平勘が洩らす、ピンクでは耳覚えのない喘ぎだか呻きを聞くにつけ、さうか、もしくはそれが、いはゆる本番撮影の証左なのであらうか。何れにせよ、甚大なモザイクに粗く塗り潰された向かう側、本番と疑似を見極めるメソッドを未だ当サイトは獲得してゐない。別に、然程ですらなく本気で希求してもゐないけれど。


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