真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ドキュメント 性熟現地妻」(1995/制作:シネキャビン/配給:大蔵映画/脚本・監督:勝山茂雄/撮影:西川卓/照明:桜井雅章/編集:酒井正次/録音:中村幸雄《シネキャビン》/音楽:黒木和男/助監督:遠藤聖一/監督助手:女池充・坂本礼/撮影助手:鏡早智/照明助手:南園知男/スチール:大崎正浩/現像:東映化学/タイミング:鈴木功/録音スタジオ:シネキャビン/効果:㈲東京スクリーンサービス/リーレコ:港リーレコ/タイトル:ハセガワプロ/協力:上野俊哉・松岡邦彦・西山秀明・中野貴雄・柴原光・成瀬正行・小川真実・杉本まこと・国沢実・榎本敏郎・吉村泰治・スノビッシュプロダクツ・オフィスバロウズ/出演:摩子・葉月螢・姫ノ木杏奈・太賀麻郎・神戸顕一・樹かず・山本清彦・サトウトシキ・上野俊哉・桜井雅章・坂本礼・原田徹・柴田あゆみ・秋吉宏樹・久須美欽一)。タイトル・イン直後とエンド・クレジット時とでビリングが異なり、タイトル・イン直後は、秋吉宏樹と久須美欽一が久須美欽一・秋吉宏樹の順で姫ノ木杏奈と太賀麻郎の間に入る。
 支那の風景を切り取るスチールと如何にも支那的な劇伴連ねて、成田空港に降り立つた、美麗(摩子)が偶々ぶつかつたブローカー(何とサトウトシキ)に捕まりかける。美麗が就労目的で来日した訳ではないのを知つたブローカーは、名刺だけ渡して潔く捌ける。美麗の目的地は新宿、都内に向かふ車載カメラに、ズンチャカ適当極まりない劇伴が起動してタイトル・イン。明けて新宿到着、相変らず支那スチと新宿の画に乗せて、俳優部と勝山茂雄のみのクレジットに、即ちスタッフは後ろに回してゐるにも関らずモッサリモッサリ費やす二分超の長尺に募る不安は、結論を先走ると逆の意味でものの見事に的中する。
 二人の子供が生まれたばかりの千葉(太賀)を、来客が訪ねる。北京出張中に軽く知り合つた―多分寝てる―美麗が日本どころか会社にまで現れたのに仰天した千葉は、その夜ホテルに美麗を誘ひ、事後美麗がシャワーを浴びてゐる隙に三万円の小銭と、小屋ならば判読出来たものか否か微妙な置手紙を残して姿を消す。どうやら帰国する旅費は持ち合はせないらしき美麗は、ブローカーに渡された名刺を頼りにパブ「蜂の巣城」で働き始める。そこは支那人のホステスに、店外で売春させる店だつた。
 配役残り消去法で原田徹が、満足に面相も見せない千葉の同僚・長坂。姫ノ木杏奈は「蜂の巣城」のホステス・リンファで、山本清彦がノリッノリで羽目を外す常連客。坂本礼と秋吉宏樹は「蜂の巣城」のウェイターとフロアマネージャーの村上、ファースト・カットでは茶を挽き気味の葉月螢が、この人もホステス・シュンファイ。正直リンファとシュンファイに関しては、呼称が―音声的に―安定してゐなくて些かならず覚束ない。盤石の悪代官ぶりでトメに据わる久須美欽一が、「蜂の巣城」の経営者・田代。照明部から華麗に出撃する桜井雅章は、ジミー土田みたいな造形の客。樹かずは、確かネイティブの筈にしては関西弁が御愛嬌なヤクザ客。軽く悶着を起こし村上と睨み合ふカットでは、秋吉宏樹と並ぶと殊更に際立つ樹かずの小顔ぶりに軽く度肝を抜かれる。上野俊哉は葉月螢とポッキーを挟み食ひする客で、神戸顕一が頑なに体を売ることを拒む美麗を、最終的には縛つて手篭めにする客。柴田あゆみは、別の店に売られたリンファの穴を埋める、新しい女。
 意外にも大蔵であつた、勝山茂雄デビュー作。とはいへ大蔵ながらゴロゴロする四天王や七福神の名前に国映の刻印は濃厚で、ここはもしやすると、シネキャが、あるいはシネキャで映画を作ると大蔵配給となるといふだけの話なのかも知れない。勝山茂雄は「人妻 濃密な交はり」(2005/脚本:奥津正人/主演:真田ゆかり)以降Vシネ含め監督作は見当たらず、CFなりPV、講師業に軸足を移してゐる御様子。
 はてさて映画の中身はといふと、初陣で若気を至らせるですらなく、何処までも何処までも、何ッ処までも漫然とした出来、グルッと一周して清々しさをも覚えかねないほどに面白くも何ともない。そもそも繰り返す要から疑問でなくもない、支那の風情を―安普請のその先で―伝へるスチールの乱打で二度三度とただでさへ決して長くはない尺を空費。当然、始終にリズムの生まれやう筈もなく。超絶美人の摩子とコケティッシュ巨乳の姫ノ木杏奈を擁するものの、ことごとく中途で終る濡れ場は却つてフラストレーションを募らせる始末。かといつて、絡みも疎かに、素といふ意味での裸のドラマに総力を傾注する、風にも特に見えないんだな、これが。今や日本で売るものは日本で作つた方が安くなりつつある昨今、文字通り隔世の念も禁じ得ない、経済格差を背景とした女性搾取からわざわざ物語を組み立てておいて、描写は何れも平板で、それなり以上の俳優部が揃つてゐる割に兎にも角にも何にも響かない。腐つても人の作りしものが、どうすれば斯くも無味乾燥たり得るのかが理解に遠い、不可思議の領域に突入して掴み処のない一作である。もうひとつ全般的な単調さを際立たせるといふか火に油を注ぐのが、別に西川卓の所為ではないと思ふけれど、頑なにカメラが恐怖症かの如く演者に寄らない。

 ところで、少なくとも地方在住ピンクスにとつてとんと沙汰の聞こえて来ない勝山茂雄ではあるが、先般急逝した堀禎一最新作―その日の―終映後、打ち上げの模様を伝へる主演女優のツイートで、元気な姿が確認出来る、女池充とともに。

 訂正< 勝山茂雄のデビュー作は、岡沢勝洋名義の「契約妻の奴隷寝室」(新東宝/1989/脚本:田辺満/主演:小川真実)とのこと


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